飲食店や小売店を経営する上で欠かせない電気機器の一つが、業務用冷蔵庫です。業務用冷蔵庫は家庭用よりも大容量で出力も大きいため、電気代が高くなりやすい傾向にあります。ここ数年、電気料金の値上がりが続いていることから、なるべく消費電力を抑えたいという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、業務用冷蔵庫の概要や電気代の目安、節電のコツなどをご紹介します。飲食店や小売店で利益を出すには、電気料金を含めた経費の見直しが欠かせません。本記事を参考に、賢く業務用冷蔵庫の電気代を節約しましょう。
※2024年12月時点の情報です
業務用冷蔵庫とは、主にレストランや居酒屋、カフェなどの飲食店の厨房や、スーパーといった食品を扱う小売店のバックヤードに設置されている冷蔵庫のことです。
一般的に業務用冷蔵庫は、家庭用冷蔵庫よりもサイズや容量(定格内容積)が大きく作られています。家庭用冷蔵庫のサイズは、横幅が470〜900mm程度で、容量は150~700L程度のものが多いです。一方で業務用冷蔵庫のサイズは、縦型であれば横幅が610〜1,790mm程度、容量は1,600L以上の大容量のものもあります。
業務用冷蔵庫はより多くの食材を保存できますが、その分多くの電気を消費してしまうため、電気代がかかりやすいのです。
業務用冷蔵庫の種類は大きく分けて「縦型冷蔵庫」と「横型冷蔵庫(コールドテーブル)」の2種類があります。
縦型冷蔵庫は、家庭用冷蔵庫を大きくしたような一般的な業務用冷蔵庫です。主に2ドア・4ドア・6ドアタイプがあり、各メーカーからさまざまな容量・サイズの製品が出ています。メーカーによっても違いはありますが、一般的な縦型冷蔵庫の容量・ドア数・サイズの目安は以下の通りです。
容量(定格内容積) | ドア数 | 横幅 | 縦幅 |
約360〜500L | 2 | 約610mm | 約1,950mm |
約470〜650L | 2 | 約755mm | 約1,950mm |
約570〜790L | 4 | 約900mm | 約1,950mm |
約800〜1,090L | 4 | 約1,200mm | 約1,950mm |
約955〜1,380L | 4 | 約1,490mm | 約1,950mm |
約1,292〜1,380L | 6 | 約1,490mm | 約1,950mm |
約1,600〜1,680L | 6 | 約1,790mm | 約1,950mm |
横型冷蔵庫はコールドテーブルとも呼ばれており、調理台としての役目も果たすのが特徴です。冷蔵庫を置くスペースがあまり取れない小規模な店舗でも設置しやすいでしょう。メーカーによって違いはありますが、一般的な横型冷蔵庫の容量・ドア数・サイズの目安は以下の通りです。
容量(定格内容積) | ドア数 | 横幅 | 縦幅 |
約110〜150L | 1 | 約755mm | 約800mm |
約150〜200L | 1 | 約900mm | 約800mm |
約160〜320L | 2 | 約1,200mm | 約800mm |
約300〜430L | 2 | 約1,500mm | 約800mm |
約210〜330L | 3 | 約1,500mm | 約800mm |
約390〜540L | 3 | 約1,800mm | 約800mm |
約500〜660L | 3 | 約2,100mm | 約800mm |
縦型冷蔵庫でも横型冷蔵庫でも、多くのメーカーは薄型と厚型の2種類の奥行きのタイプを用意しています。一般的に薄型の奥行きは約600〜650mm、厚型は約750〜800mmです。
家庭用冷蔵庫よりも電気代がかかりやすい業務用冷蔵庫ですが、実際にどの程度の電気代がかかるのでしょうか。電気代の計算方法と目安をご紹介します。
業務用冷蔵庫にかかる年間の電気代は、以下の計算方法で算出できます。
年間消費電力量は製品によって異なりますが、各メーカーが発行しているカタログで確認できることが多いです。
業務用冷蔵庫の電気代の目安を、パナソニックの「冷凍・冷蔵庫 KBシリーズ」を例に計算してみましょう。1kWh当たりの電気代は、全国家庭電気製品公正取引協議会が公表している目安単価の31円と仮定して計算します。
※参考:公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会.「よくある質問 Q&A」.https://www.eftc.or.jp/qa/ ,(2024-10-21).
※参考:Panasonic.「冷凍・冷蔵庫 KBシリーズ 冷凍・冷蔵庫(たて型)」.https://panasonic.biz/appliance/cold_chain/freezer/kb/feature01.html ,(2024-10-21).
※参考:Panasonic.「商品ラインアップ 業務用たて型冷凍・冷蔵庫」.https://panasonic.biz/appliance/cold_chain/products/lineup.php?category=freezer ,(2024-10-21).
※参考:Panasonic.「冷凍・冷蔵庫 KBシリーズ コールドテーブル冷凍・冷蔵庫(よこ型)」.https://panasonic.biz/appliance/cold_chain/freezer/kb/feature02.html ,(2024-10-21).
※参考:Panasonic.「商品ラインアップ 業務用コールドテーブル冷凍・冷蔵庫」.https://panasonic.biz/appliance/cold_chain/products/lineup.php?category=freezer2 ,(2024-10-21).
業務用冷蔵庫の電気代を左右するポイントは、主に5つあります。電気代を節約するために、どのような部分で電気代が変わってくるのかを確認しておきましょう。
電気代を左右するポイントの一つは、業務用冷蔵庫のサイズです。
ただし、冷蔵庫の大きさと消費電力は、必ずしも比例しません。製品にもよりますが、大型冷蔵庫は電気を効率的に使える設計になっています。「電気代を節約するために小さな冷蔵庫にしよう」と考える方もいるかもしれませんが、逆に電気代がかかってしまう可能性もあります。
冷蔵庫のサイズを決める際は、確保できる設置スペースの広さや、常時冷蔵庫にストックする食品の量を考慮して選びましょう。特に小さな冷蔵庫に食品を詰め込みすぎると、庫内で冷気が循環しにくくなり、設定温度まで冷やすためにより多くの電力を消費します。電気代を節約するためにも使い勝手を良くするためにも、どの程度の食材を保存するかを考えて、適切なサイズを選ぶようにしてください。
電圧の違いも、業務用冷蔵庫の電気代を左右するポイントです。業務用冷蔵庫には「単相100V」と「三相200V」の電源方式があり、それぞれコンセントの形が異なります。
単相100Vとは主に一般家庭で使用する電気機器に使われる電源方式で、コンセントの差し込み口の形が2つ穴になっています。業務用冷蔵庫の中にも単相100Vに対応したものがあり、後述する三相200Vと比べると小型から中型のものが多いです。コンパクトですが、サイズから考えると電気代が割高になる傾向にあります。
三相200Vは業務用の大型電気機器に使われる電源方式で、コンセントの差し込み口の形は3つ穴もしくは4つ穴です。単相100Vよりもモーターへの負荷が少ないため、電気代が割安な傾向にあります。ただし、三相200V用のコンセントがない場合は電気工事が必要となるので、別途工事費用がかかります。
搭載されている機能によっても、業務用冷蔵庫の電気代は変わってきます。
近年は、省エネ性能の高い業務用冷蔵庫も多く登場しています。例えば、インバーター機能を搭載している業務用冷蔵庫は、冷蔵庫のコンプレッサーの回転速度を適切にコントロールすることが可能です。少ない電力で冷蔵庫を稼働させられるため、結果として電気代を抑えられます。
業務用冷蔵庫の設置場所の気温も、電気代を左右する要因の一つです。
冷蔵庫を設置している場所と冷蔵庫内の温度差が大きければ大きいほど、庫内を冷やすために多くの電力を消費します。気温が低い冬場は電気代を抑えやすいですが、夏場は電気代が高くなってしまいやすいです。
冷蔵庫の電気代を抑えるには、なるべく気温の低い場所に設置するようにしましょう。
ドアの開閉数も、業務用冷蔵庫の電気代に影響します。冷蔵庫のドアを開け閉めすると、その度に庫内の温度が上がり、再び温度を下げるために電力を消費します。そのため、何度も開け閉めを繰り返すと消費電力が増え、電気代も高くなってしまうのです。
冷蔵庫のドアに、どこに何があるかを記載したメモを貼るなどの対策をすると、無駄な開閉を減らせます。
業務用冷蔵庫の電気代を節約するために抑えておきたい、8つのコツをご紹介します。
業務用冷蔵庫の電気代を節約するためには、冷蔵庫内に余裕を持たせましょう。先述した通り、冷蔵庫内に食材を詰め込みすぎてしまうと、冷気がスムーズに循環しません。庫内全体を適切な温度まで冷やすのにより多くの電力が必要になるので、電気代が高くなってしまいやすいです。また食材を詰め込みすぎると取り出す際に時間がかかってしまうため、庫内の温度が上昇しやすく、再冷却のためにさらに電力を消費してしまいます。隙間なく詰め込むのではなく、余裕を持たせて取り出しやすいように食材を入れましょう。
ただし、冷凍庫の場合は、隙間がないように詰め込んだ方が温度が上昇しにくいので、電気代を抑えやすくなります。
食品を冷やしてから冷蔵庫に入れるのも、電気代節約のポイントです。
調理した食品を温かい状態のまま冷蔵庫に入れると庫内の温度が上昇し、それを下げるために多くの電力を消費するため、電気代が高くなってしまいます。冷蔵庫の故障の原因になることもあるので、必ず常温まで冷ましてから食品を入れるようにしてください。
電気代を節約するためには、業務用冷蔵庫を直射日光の当たる場所に設置しないようにしましょう。
冷蔵庫に直射日光が当たってしまうと、冷蔵庫が放熱しにくくなり熱を持ってしまうので、庫内を冷やすためにより多くの電力を消費してしまいます。また熱気がある場所や火を使う場所の近くといった冷蔵庫が高温になりやすい場所も、同様の理由で電力消費が多くなりやすいです。
冷蔵庫は直射日光が当たらない、できるだけ涼しい場所に設置するようにしましょう。
冷蔵庫を壁から少し離して設置することも、電気代の節約につながります。
冷蔵庫が壁から近いと冷蔵庫の放熱がスムーズにいかず、冷蔵庫自体が熱くなってしまいやすいです。少なくとも壁から5cm以上離して冷蔵庫を設置すると、熱がこもりにくくなって適切に放熱できるでしょう。
メーカーや機種によって壁からの適切な距離は異なるため、冷蔵庫を設置する前に必ず説明書を確認してください。
冷蔵庫内や背面を定期的に掃除することも、電気代の節約には欠かせません。
コンデンサーのフィルターにほこりや汚れがたまっていると冷却機能が低下するため、庫内の温度を下げるためにより多くの電力が消費されてしまいます。また冷蔵庫の背面にある放熱板にほこりがたまるとスムーズに放熱できなくなるので、消費電力が多くなり電気代が高くなってしまいます。
定期的にフィルターや放熱板周辺を掃除するように心がけましょう。
業務用冷蔵庫の電気代を抑えるには、ドアパッキンを交換するのも効果的です。
ドアパッキンは、冷蔵庫のドアをしっかり閉めるために欠かせません。劣化したり破損したりすると、ドアがしっかり閉まらなくなり冷気が逃げてしまうので、庫内の温度が上昇してしまいやすくなります。また汚れている場合もドアの閉まりが悪くなるので、ドアパッキンの状態も定期的にチェックするようにしましょう。
業務用冷蔵庫の電気代を抑えるには、省エネタイプの冷蔵庫に買い替えるのも一つの方法です。
古い業務用冷蔵庫は、新しい省エネタイプの冷蔵庫よりもより多くの電力を消費します。長年使い続けている場合は、省エネタイプの冷蔵庫に買い替えるだけで、数十%もの電気代を節約できる可能性もあります。
電気の契約を変更することも、業務用冷蔵庫の電気代を節約する方法の一つです。
冷蔵庫の電気代は消費電力と1kWh当たりの電気代によって決まりますが、1kWh当たりの単価は電力会社によって異なります。契約している電力会社やプランを見直すことで単価が下がり、電気料金が安くなる可能性もあります。
また業務用冷蔵庫の消費電力が大きい場合は、従量電灯(一般低圧)よりも、低圧電力(動力)や高圧電力の方が電気料金が安くなる可能性もあります。ただし、低圧電力から高圧電力に切り替える際には、キュービクルという受電設備の設置が必要となるため、総コストを試算した上で検討してみましょう。
店舗の規模や電力使用状況などによって適した契約は異なるので、複数の電力会社や料金プランを比較検討するのがおすすめです。
使い方を工夫するだけで、業務用冷蔵庫の電気代は抑えることができます。1カ月に節約できる電気代はわずかでも、長期的に見れば大幅な経費削減につながる可能性があるので、本記事でご紹介した方法を参考に、業務用冷蔵庫の節電に取り組んでみてください。
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