石油とは? 石油のでき方や石油製品の種類、主な産出国などについて解説

石油とは? 石油のでき方や石油製品の種類、主な産出国などについて解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

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石油は日常生活に欠かせない燃料資源です。さまざまな用途で使用されている一方、石油には枯渇の恐れや二酸化炭素の排出量の増加といった課題もあります。今後、私たちは石油をどのように活用・消費していけばよいのでしょうか。

本記事では、石油の概要や石油ができるまでの流れ、石油製品の種類、主な産出国などについて解説します。記事の後半では、石油の代わりとなる新たな燃料についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

石油とは?

石油とは、液体状の化石燃料の一つです。化石燃料とは地中深くに埋まっている燃料資源のことで、石油の他にも固体状の石炭、気体状の天然ガスなどがあります。

石油の主な成分は、炭素と水素の化合物である炭化水素です。炭化水素に含まれる元素の比率は石油の産地や油田によっても異なりますが、基本的には、以下に挙げるもので構成されています。

  • 炭素
  • 水素
  • 硫黄
  • 窒素
  • 酸素
  • 金属

詳細は後述しますが、石油は精製・加工されて、火力発電や車・飛行機の燃料、プラスチック製品の原料などとして使われています。

石油ができるまでの流れ

石油は、どのような流れでできるのでしょうか。石油の成り立ちには諸説ありますが、今回は現在主流である「生物起源説」をご紹介します。

  1. プランクトンなどの太古の生物の死骸が、海底や湖の底などの水中に沈んで堆積する
  2. 何百万~何千万年かけて生物の死骸に土砂が積み重なり、地層が形成される
  3. 地中の微生物(バクテリア)によって地層内の死骸が分解され、石油の元となる有機化合物「ケロジェン」に変化する
  4. 土砂の重みや地熱によって、徐々にケロジェンが液体に変化する
  5. 何千万~何億年もかけて、地層の割れ目を通って地層上部に移動していく
  6. 地層の隙間から湧き出し、たまりやすい場所にたまる

上記のとおり、石油は長い年月を経てできる貴重な資源なのです。

石油製品の種類

油田とは、採掘できる石油が地中に埋蔵されている地域のことです。油田からくみ上げられたままの石油を原油と呼びます。油田から採掘された原油は製油所に運搬され、製油所にある高さ50メートルほどの蒸留塔(常圧蒸留装置)で加熱・精製されます。

蒸留塔は塔の上になればなるほど、温度が低くなる仕組みです。原油に含まれている各成分の沸点の差を利用して、異なる種類の石油製品を作っています。なお、沸点の差を利用して分けることを分留(分別蒸留)といいます。

ここからは、石油製品の主な種類についてご紹介します。

燃料

原油から、以下に挙げるようなさまざまな燃料を作り出せます。

LPガス

LPガスは、蒸留塔の中で最も高い位置かつ温度の低い位置で精製される燃料です。分留で得られるプロパンやブタンが主成分の燃料で、液化石油ガスやプロパンガスとも呼ばれています。圧縮や冷却によって液状化する一方で、常温で常圧の状態では気体になります。家庭用の給湯器やコンロなどの燃料に使用される他、業務用のガス機器や火力発電の燃料、タクシーの燃料にも用いられています。

ガソリン

ガソリンは、蒸留塔の温度が約30~180度のときに精製される燃料です。主に自動車のガソリンとして使用されることが多いですが、航空ガソリンや工業用の工業ガソリン、ドライクリーニング用の有機溶剤としても用いられます。

もともと無色透明ですが、常温常圧の状態でも蒸発しやすく危険性が高いので、他の燃料と間違えて使用されないようにオレンジ色に着色されています。

灯油

灯油は、蒸留塔の温度が約180~250度のときに精製される燃料です。ケロシンという成分から成り、主に石油ストーブや石油ファンヒーター、暖房器具、ランプ、漁船・農業用発動機の燃料などに用いられます。ガソリンスタンドやホームセンター、量販店などで購入可能です。

ジェット燃料

ジェット燃料は、灯油と同様に蒸留塔の温度が約180~250度のときに精製される燃料です。その名のとおり、ジェットエンジンを搭載した航空機の燃料として用いられます。ガソリンと灯油の中間の性状を有しており、灯油性状に近い民間機向けのジェット燃料と、ガソリン性状に近い軍用機向けのジェット燃料の2つに分類可能です。

軽油

軽油は、蒸留塔の温度が約250~320度のときに精製される燃料です。大型車や鉄道、船舶用のディーゼルエンジン、窯業・鉄鋼用の燃料、建設・農業機械の燃料、電力用の補助燃料などに用いられます。

重油

重油は、蒸留塔の温度が約350度以上のときに精製される燃料です。粘りの程度を表す動粘度によって、A重油・B重油・C重油の3種類に分類されます。重油の種類によっても用途は異なりますが、主にボイラー・金属加熱炉などの各産業用燃料や、発電・大型船舶の燃料として用いられることが多いです。

アスファルト

アスファルトは、蒸留塔の温度が約350度以上のときに精製される石油製品です。道路の舗装や電気絶縁、防水、防湿、保温、保冷、ブロック、タイルの材料など、さまざまな用途があります。

ナフサ

ナフサはガソリンと同様に、蒸留塔の温度が約30~180度のときに精製される石油製品です。粗製ガソリンとも呼ばれており、発電用のボイラー燃料や都市ガスの原料などに用いられる他、合成ゴムやプラスチックの原料にもなります。

合成ゴム

ナフサを約800度以上の高温の炉の中に入れると、エチレンプロピレンやプロピレンなどの石油化学基礎製品ができ、それを元に合成ゴムが製造されます。

ゴムには木の樹液が原料となっている天然ゴムもありますが、耐熱性や耐油性が高く、気温の変化にも強いという点は、合成ゴムならではの強みです。

プラスチック

ナフサに高温の熱を加えるとエチレンやプロピレンなどができ、それらを結合・連結させることでポリエチレンやポリプロピレンが生成され、プラスチックの原料となります。

プラスチックの原料に添加物などを加えて、粒状にしたものがペレットです。ペレットから、さまざまなプラスチック製品が作られます。

洗剤の原料

合成洗剤は、石油から作られるアルキルベンゼンや高級アルコールなどが原料の石油製品です。アルキルベンゼンや高級アルコールにさまざまな加工、合成をして、油汚れを落とすために必要な合成界面活性剤が作られます。合成界面活性剤にいくつかの薬剤などを添加すると、合成洗剤の出来上がりです。

主な石油産出国

石油(原油)を採掘できる地域には偏りがあります。2022年の原油生産量が多い国と各国の原油生産量をご紹介します。

  • アメリカ合衆国:762Mt
  • サウジアラビア:601Mt
  • ロシア:539Mt
  • カナダ:279Mt
  • イラク:220Mt
  • 中国:214Mt
  • アラブ首長国連邦:202Mt
  • イラン:158Mt
  • ブラジル:157Mt
  • クウェート:142Mt
  • メキシコ:96Mt
  • ノルウェー:91Mt

Mtは石油の量を測る単位の一つで、国別で見るとアメリカ合衆国が最も原油の生産量が多いです。ただし地域別で見ると、石油の産出国は中東地域に多いことが分かります。

※参考:世界のエネルギー・気候統計 – 年鑑2023 . 「原油生産統計」 . https://yearbook.enerdata.jp/crude-oil/world-production-statistics.html , (2024-02-20) .

日本の油田

前述した国と比べると産出量は少ないものの、日本でも原油を採掘することができます。以下は日本にある主な油田です。

  • 北海道:勇払油ガス田
  • 秋田県:由利原油ガス田
  • 秋田県:申川油田
  • 秋田県:八橋油田
  • 新潟県:岩船沖油ガス田
  • 新潟県:東新潟油ガス田
  • 新潟県:南阿賀油田

日本の油田は東北に多く存在し、国内で産出されている原油の半分以上が新潟県で採掘されています。

※参考:新潟県 . 「石油(原油)・天然ガス」 . https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/sogyosuishin/1277420495419.html , (2024-02-20) .

日本の輸入量と消費量

日本で暮らす人々が日常生活を過ごすには、国産の原油だけでは足りません。そのため日本は、原油の大半を海外からの輸入に頼っています。特に中東地域からの輸入が多く、2021年度の石油輸入量の92%はサウジアラビアやアラブ首長国連邦、クウェート、カタールといった中東地域が占めています。

2021年度の各国からの石油の輸入量と輸入割合は、以下のとおりです。

国名輸入量(千kl)輸入割合(%)
サウジアラビア55,59437.3
アラブ首長国連邦54,25636.4
クウェート12,5138.4
カタール11,6007.8
ロシア5,4243.6
エクアドル2,3931.6
バーレーン2,1851.5
オマーン1,0130.7
カザフスタン3380.2
アメリカ合衆国2240.2

また2005年時点の日本の年間消費量は、約2億8,000万klです。日本では輸入した原油の多くが石油製品として転換され、国内で販売もしくは海外に輸出されます。

国際エネルギー機関であるIEAは、安定供給・安全保障の観点から各加盟国に対し、石油輸入量の90日分以上の備蓄をするよう勧告しています。2022年8月時点での日本の石油備蓄量は、約219日分ありました。世界の平均が145日となるので、平均よりも多く備蓄していることが分かります。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「第3節 一次エネルギーの動向」 . https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/2-1-3.html , (2024-02-20) .

※参考:石油情報センター . 「石油の使用量」 . https://oil-info.ieej.or.jp/whats_sekiyu/2-3.html , (2024-02-20) .

石油の埋蔵量と可能採掘年数

2020年末時点での世界の石油の埋蔵量と、可能採掘年数は以下のとおりです。

  • 石油の埋蔵量:1兆7,324億バレル
  • 石油の可能採掘年数:53.5年

バレルとは石油を計量する容積の単位のことで、1バレル=約160リットルです。また可能採掘年数は「可採埋蔵量÷年間消費量」で計算され、あと何年石油を採掘できるのかという一つの指標になります。

近年では、これまで採掘できなかった地層からも原油が採れるようになったり、埋蔵された原油が新たに発見されたりして、埋蔵量や可能採掘年数は増加傾向にあります。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「第2節 一次エネルギーの動向」 . https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/2-2-2.html , (2024-02-20) .

伊藤忠エネクスの石油事業

伊藤忠エネクスでは1961年の創業以来、石油製品を中心とした生活に欠かせないエネルギーを提供しています。

自動車用エネルギー販売事業

伊藤忠エネクスはエネルギー商社として、系列CS(カーライフ・ステーション)にガソリンや灯油、軽油などのエネルギーを販売しています。スマホ給油やカー用品販売のECサイトである「Ene Store」なども展開しています。

伊藤忠エネクスの自動車用エネルギー販売事業

法人向けエネルギー販売事業

伊藤忠エネクスは、日本国内のさまざまな企業に産業用の燃料を販売しています。運送会社には軽油、製造業・工場には灯油や重油といったように、企業のニーズに応じて種類の異なる燃料を提供することが可能です。

伊藤忠エネクスの法人向けエネルギー販売事業

アスファルト販売事業

伊藤忠エネクスは、道路舗装用や産業用資材として利用されるアスファルトを提供しています。国内の10カ所にアスファルト基地があり、全国各地にアスファルトを販売可能です。国内におけるアスファルトの販売シェアは、20%を誇っています。

伊藤忠エネクスのアスファルト販売事業

船舶用燃料販売事業

伊藤忠エネクスは、世界の主要港で船舶燃料の販売事業を行っています。各国の有力なサプライヤーと強固な販売ネットワークを構築している点が、強みの一つです。日本では東京湾や伊勢湾、瀬戸内海、関門港、博多港、大分港などで、配給船事業も展開しています。

伊藤忠エネクスの船舶用燃料販売事業

石油製品トレード事業

伊藤忠エネクスは、世界経済や政治、気候など、さまざまな要因がもたらす需給バランスと価格の変動を見極めながら、石油製品のトレード事業(石油製品の輸出入と国内販売事業)を行っています。

伊藤忠エネクスの石油製品トレード事業

ターミナル事業

伊藤忠エネクスは、海外と国内の市場に向けた石油製品や化学製品の供給基地として、全国に2カ所のターミナルを保有しています。強固な供給ネットワークを構築し、お客さまのニーズにお応えすることが可能です。

伊藤忠エネクスのターミナル事業

石油の代わりになる新しい燃料

石油は限りある燃料資源です。先述した通り、石油の埋蔵量や可能採掘年数は増加傾向にありますが、人々がこのまま石油を消費し続けていけば、いつか枯渇してしまうかもしれません。

また石油を精製・使用する際に二酸化炭素を排出してしまう点も、課題の一つです。石油を消費し続ければ二酸化炭素の排出量が増え、地球温暖化を進行させてしまいます。私たちは石油をはじめとした資源の使い方を見直し、石油の代替となる新たな燃料の活用も考えていかなければなりません。

ここからは、石油の代わりになる新しい燃料をいくつかご紹介します。

バイオ燃料

バイオ燃料とは、再生可能な生物資源(バイオマス)を原料にした燃料のことです。バイオ燃料を燃焼した際に排出される二酸化炭素は、もともと植物が成長過程において吸収したものなので、長期的な視点で考えれば二酸化炭素の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロになるとされています。

RD

RDとは「Renewable Diesel」の略称で、廃油を原料として製造される燃料のことです。石油由来の軽油の代替品として、輸送用トラックや建設機械などの燃料として用いられます。軽油と比較すると、大幅に二酸化炭素の排出量を低減可能です。また軽油は低温に弱い特性がありますが、RDは寒冷地などでも使用できます。

伊藤忠エネクスのリニューアブルディーゼル

合成燃料

合成燃料とは、工場や発電所などから排出された二酸化炭素と水素を合成して製造される燃料のことです。ガソリンや軽油、重油の代替品としての活用が期待されています。

SAF

SAFとは「Sustainable Aviation Fuel」の略称で、日本語では「持続可能な航空燃料」を意味する燃料です。主に植物や廃棄物・廃食油などが原料となっています。石油由来のジェット燃料と比較して、大幅に二酸化炭素の排出量を低減できる点が強みの一つです。

GTL燃料

GTL燃料の「GTL」は「Gas to Liquids」の略称で、天然ガス由来の燃料のことです。建設機械や重機、フォークリフト、発電機などの燃料として用いられます。軽油と比較して、二酸化炭素の排出量を低減できます。

伊藤忠エネクスのGTL燃料

まとめ

石油は火力発電や工業用機械、飛行機の燃料といった産業向けのものから、プラスチックや洗剤、車のガソリンといった身近なものまで、さまざまな用途で使われています。

日常生活に欠かせない燃料資源である石油ですが、埋蔵量には限りがあり、また石油の精製・使用によって二酸化炭素が排出され、地球温暖化が進行してしまうという課題も抱えています。

石油に依存せず、二酸化酸素を含めた温室効果ガスを削減するためには、バイオ燃料やRD、合成燃料、GTL燃料など、石油の代わりになる新たな燃料への転換が必要です。

伊藤忠エネクスでは持続可能な未来に向けて、RDやGTL燃料をはじめとした次世代燃料の開発・提供を積極的に行っています。また自家消費型の太陽光発電システムや、エネルギーの使用状況を管理できるサービスなども取り扱っており、企業の脱炭素経営を包括的にサポートできます。脱炭素経営を目指す取り組みにご興味をお持ちの企業のご担当者さまは、ぜひお気軽にご連絡ください。

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