電力会社を比較する際に知っておきたい高圧電力の電気料金の仕組みとは?

電力会社を比較する際に知っておきたい高圧電力の電気料金の仕組みとは?

伊藤忠エネクス メディア編集部

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電力の小売自由化以前、電気料金は、安定した電力を供給するためにかかる費用と旧一般電気事業者の利益を足した額で算定される「総括原価方式」で設定されていました。しかし、2016年以降、小売電気事業者が定める料金は、事業者の裁量で算定される項目と法令によって算定される項目の合計へと変わっています。つまり、小売電気事業者ごとに電気料金の内訳が異なるため、小売電気事業者切り替えや料金プラン変更の際は、しっかりと内訳や算定方法を確認する必要があるのです。

本記事では高圧電力の電力料金の構成や、それぞれの項目の意味を解説します。電気料金の具体的な削減方法についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

※本記事の内容は2024年12月時点の情報です

高圧電力の電気料金の計算方法

多くの小売電気事業者は、大きく分けて「固定単価プラン」と「市場連動型プラン」の2つの料金プランを採用しています。それぞれのプランの概要や計算方法について解説します。

一般的な固定単価プランの場合

固定単価プランとは、使用電力量に応じて発生する電力量料金の単価(電力量料金単価)があらかじめ契約で定められている料金プランです。小売電気事業者によっては季節や時間帯によって電力量料金単価が変動する料金プランもありますが、契約期間中は契約によって定められた単価から変わることはありません。一般的には、以下の計算式で電気料金を算定します。

  • 電気料金 = 基本料金 + 電力量料金  ±  燃料費調整額 + 再生可能エネルギー発電促進賦課金

燃料費調整額は毎月、再生可能エネルギー発電促進賦課金は毎年単価が変わりますが、電気料金に最も大きく影響するのは使用電力量なので、電気料金の見通しが立てやすいです。

固定単価プランは燃料費調整額による電気料金の値上がりのリスクはあるものの、市場価格の影響を受けにくい点がメリットです。電気料金の見通しの立てやすさを重視する企業や、市場価格の高騰リスクに備えたい企業に適したプランです。

一般的な市場連動型プランの場合

市場連動型プランとは、日本卸電力取引所(JEPX)で取引される電気の市場価格に合わせて、30分ごとに電力量料金単価が変動する料金プランです。一般的には、以下の計算式で電気料金を算定します。

  • 電気料金 = 基本料金 + 電力量料金 + 再生可能エネルギー発電促進賦課金

※ただし、各社のプランによって異なります

JEPXの市場価格には燃料の調達コストがすでに反映されているため、市場連動型プランには、燃料費調整額を設定しない小売電気事業者が多いです。

市場連動型プランでは、JEPXの市場価格が割安なタイミングに電力を消費することで、月々の電気料金を安く抑えることができます。電力需要の少ない深夜や早朝の時間帯に設備を稼働できる企業や、太陽光発電によって電力供給量が増えやすい昼間の時間帯に多くの電力を消費する企業は、市場連動型プランへの変更を検討してみてください。

ただし、JEPXの市場価格は、電力の需給バランスや燃料価格などさまざまな要因で急激に高騰する恐れがあります。必然的に電気料金も大幅に値上がりするので、経営計画へ大きな影響を与えかねません。市場連動型プランへ切り替える際は、電力量料金単価に上限が設定されたプランを選んだり、蓄電池や太陽光発電システムといった買電量を調整できる方法も併せて検討したりするのもよいでしょう。

高圧電力の電気料金の構成

数ある料金プランの中から自社に適したものを選ぶには、高圧電力の電気料金がどのような構成になっているかを把握することから始めましょう。

ここでは、高圧電力の電気料金の項目について詳しく解説します。

基本料金

基本料金とは、契約電力に基づいて算定される固定費用のことです。小売電気事業者の人件費や経費を賄う目的で設定されているため、使用電力量に関係なく毎月発生し、必ず支払う必要があることがほとんどです。

基本料金は、一般的に以下の計算式で算定します。

  • 基本料金 = 基本料金単価 ×  契約電力 × 力率割引または割増

基本料金単価

基本料金単価は、小売電気事業者の裁量によって自由に決められる項目で、1kW当たりで単価が設定されています。同じ小売電気事業者でも料金プランによって基本料金は異なります。東京電力エナジーパートナーの高圧電力向け料金プランを例に、見てみましょう。

【2025年4月1日から適用の料金一覧】

プラン名1kW当たりの基本料金単価(関東エリア)
ベーシックプラン3,030円00銭
市場調整ゼロプラン3,220円00銭
市場価格連動プラン1,500円00銭

※参考:東京電力.「電気料金単価表(特別高圧・高圧)」.https://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2024/pdf/24×1303.pdf ,(2024-12-10).

契約電力

契約電力とは、一度に使用できる電力の上限のことです。契約電力が大きくなればその分多くの電力を一度に使えますが、基本料金も高くなります。高圧電力は、契約電力の大きさによって以下の3つに分けられます。

契約電力の種類契約電力契約電力の決め方
小口高圧電力50kW以上500kW未満実量制
大口高圧電力500kW以上2,000kW未満協議制
特別高圧電力2,000kW以上

「実量制」も「協議制」も最大需要電力を踏まえて契約電力を決定します。最大需要電力とは、30分ごとの平均使用電力を表すデマンド値のうち、1カ月で最も大きい値のことです。同時に使用する設備が多いほど、最大需要電力は大きくなります。

実量制では、当月を含む直近12カ月のうち、最も値の大きい最大需要電力に基づいて契約電力を決定します。一方、協議制では、小売電気事業者と需要家が話し合って契約電力を決定します。契約電力を決定する際には、最大需要電力の他、キュービクル(受電設備)の容量や使用する設備、同一業種の負荷率などが考慮されます。

力率

力率とは、供給された電力のうち有効に働いた割合のことです。発電所から送られる電気は、いくつもの変電所を通って利用可能な電圧まで下げられます。変圧器にはコイルやコンデンサが組み込まれており、これらを電流が通る際に少しずつ有効電力が減っていきます。一般の需要家の力率は平均すると85%程度といわれているので、15%程度は無効な電力なのです。力率は、一般的に以下の計算式で算定します。

  • 力率 = 有効電力(kW) ÷ 皮相電力(kVA) 

皮相電力とは有効電力と無効電力を足した、電源から供給される電力の合計です。高圧電力の電気料金を計算する際は、基本料金に力率割引および割増を適用し、実際に使える電力分を適正に反映させています。割引および割増の計算式は、以下の通りです。

  • 力率割引および割増 = (185 – 力率)÷100

東京電力エナジーパートナーの市場調整ゼロプランの基本料金を基に、力率割引および割増によって年間の基本料金がどの程度変わるのか見てみましょう。

※基本料金単価:3,220円00銭、1カ月当たりの契約電力:100kWで計算

力率割引・割増係数1カ月当たりの基本料金年間の基本料金
100%0.85273,700円3,284,400円
90%0.95305,900円3,670,800円
85%1.00322,000円3,864,000円
80%1.05338,100円4,057,200円

契約電力が100kWの場合、力率が85%から90%になるだけで年間193,200円もの差が出ることが分かります。

※参考:J-Net21.「(受電)力率とは?」.https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/Q1231.html ,(2024-12-10).

電力量料金

電力量料金とは、使用電力量に応じて変動する従量料金のことです。先述の通り、固定単価プランは電力量料金単価が契約で決まっており、市場連動型プランはJEPXの市場価格に応じて30分ごとに変動します。

電力量料金は以下の計算式で算定します。

  • 電力量料金 = 電力量料金単価 × 使用電力量

燃料費調整額

燃料費調整額とは、原油や液化天然ガス(LNG)、石炭といった火力発電に使われる化石燃料の調達コストを電気料金に反映させる項目です。多くの小売電気事業者が、電力量料金の中に燃料費調整額を含んでいます。また先述した通り、JEPXの市場価格に化石燃料の調達コストがすでに反映されているため、市場連動型プランでは燃料費調整額が設定されていないケースが多いです。

燃料費調整額は、以下の計算式で算定します。

  • 燃料費調整額 = 燃料費調整単価 × 使用電力量

また燃料費調整額に似た項目に「燃料費等調整額」があります。燃料費等調整額には、燃料費調整額の他に「市場価格調整額」や「離島ユニバーサルサービス調整額」といった、小売電気事業者独自の項目が含まれています。電気料金の構成の中に燃料費等調整額が含まれていたら、電気需給約款を見て、どのような費用内訳なのかを併せて確認しましょう。

燃料費調整単価の計算方法

燃料費調整単価は以下の流れで決まります。

  1. 化石燃料ごとの3カ月間の貿易統計価格に基づき、毎月の平均燃料価格を算定する
  2. 各小売電気事業者が設定した基準燃料価格と平均燃料価格を比較する
  3. 燃料費調整単価が決定する

以下の計算式の答えが、正の値だった場合はプラス調整、逆に負の値だった場合はマイナス調整となり、燃料費調整額分が電力量料金にプラスされたりマイナスされたりします。

  • 燃料費調整単価 = (平均燃料価格-基準燃料価格)×基準単価÷1000

毎月の燃料費調整単価は小売電気事業者のWebサイトで公表されているので、各社でどのくらいの違いがあるのかチェックしてみましょう。

平均燃料価格

平均燃料価格は、3カ月間の原油・LNG・石炭の貿易統計価格を基に算定し、2カ月後の電気料金に反映されます。例えば6月の平均燃料価格は、1月〜3月の貿易統計価格を基に決められているのです。

化石燃料はそれぞれ熱量や数量の単位が異なるので、以下の計算式を用いて同じ熱量・数量の単位に換算して算定します。

  • 平均燃料価格 = A × α + B × β + C × γ
    • A:3カ月における1kl当たりの平均原油価格
    • B:3カ月における1t当たりの平均LNG価格
    • C:3カ月における1t当たりの平均石炭価格
    • α、β、γ:各小売電気事業者が定める換算係数

小売電気事業者によっては、実績燃料価格と呼ぶ場合もあります。

基準燃料価格

基準燃料価格とは、小売電気事業者が料金プランを策定または改定した時に定めた基準価格のことです。平均燃料価格同様、3カ月間の原油・LNG・石炭の貿易統計価格の平均値を基に算定されますが、どの期間を対象とするかは各小売電気事業者が独自に決めています。こちらも、熱量や数量の単位の違いを加味して、算定されています。

基準単価

基準単価とは、平均燃料価格が1kl当たり1,000円変動した際に発生する1kWh当たりの変動額です。

市場価格調整額

市場価格調整額とは、JEPXの市場価格の変動を毎月の電気料金へ反映させる項目です。燃料費調整額とは異なり、含まれていない料金プランも多いですが、先述した「燃料費等調整額」といった名称の独自項目が含まれているプランや、「市場価格を反映したプラン」として紹介されているプランには含まれている可能性があります。一般的に市場価格調整額は、以下の計算式で算定します。

  • 市場価格調整額 = 市場価格調整単価 × 使用電力量

市場価格調整単価は以下の流れで決まります。

  1. 1カ月間のスポット市場価格に基づき、平均市場価格を決定
  2. 各小売電気事業者が設定した基準市場価格と平均市場価格比較しする
  3. 市場価格調整単価が決定する

以下の計算式の答えが、正の値だった場合はプラス調整、逆に負の値だった場合はマイナス調整となり、市場価格調整額分が電力量料金にプラスされたりマイナスされたりします。

  • 市場価格調整単価 = (平均市場価格 – 基準市場価格) × 基準市場単価(または調整係数)

平均市場価格が電気料金へ反映されるタイミングは小売電気事業者によって異なりますが、当月中〜2カ月後である場合が多いです。そのため、平均市場価格を算定する計算式も小売電気事業者によって異なります。

基準市場価格は、契約で定められた期間のスポット市場価格を基に小売電気事業者が独自に決めています。

再生可能エネルギー発電促進賦課金

再生可能エネルギー発電促進賦課金とは、小売電気事業者が「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」に基づき再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際にかかる費用をまかなうために、全ての需要家が負担するものです。再生可能エネルギー発電促進賦課金は、以下の計算式で算出します。

  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金 = 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×使用電力量

再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、燃料価格の変動やJEPXの市場価格、再生可能エネルギーの普及状況などに基づいて見直しがされており、年々上昇傾向にあります。年度ごとに経済産業大臣が決めるので、どの小売電気事業者でも再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は同じです。

高圧電力の電気料金を削減する方法

ここからは、高圧電力の電気料金を今よりも削減するための具体的な方法を、3つご紹介します。

契約電力を引き下げる

先述の通り、契約電力が大きいほど基本料金は高くなり、小さいほど基本料金は低くなります。そのため、契約電力を今よりも引き下げられれば、電気料金を削減することが可能です。高圧電力の契約電力の決め方には、実量制と協議制の2つがありますが、どちらも最大需要電力を踏まえて決定します。特に実量制では、たった30分でもデマンド値が大きくなってしまうと、その月から12カ月間は契約電力が大きくなってしまうので注意しましょう。

契約電力を引き下げるには、最大需要電力の値を小まめに確認し調整する方法と、同時に使用する電力を減らす方法があります。具体的には以下の施策が挙げられます。

【最大需要電力の値を確認し調整するする方法】

  • デマンド監視装置を導入して、最大需要電力に近づいたら設備の稼働を止める
  • デマンドコントローラーを導入して、最大需要電力に近づいたら自動で空調などの調整をして消費電力を減らす

【同時に使用する電力を減らす方法】

  • 照明や空調などを高効率のものに入れ替える
  • 従業員に節電を呼びかけて、小まめに設備の電源を落とす
  • 設備を使用する時間帯を調整して、日中だけではなく深夜や早朝などにも稼働させる
  • 蓄電池を導入して使用電力の少ない時間帯に充電し、使用電力の多い時間帯に蓄電池の電力を使用する
  • 太陽光発電システムを導入して、作った電気を自家消費する

使用する電力を減らす方法は「ピークシフト」や「ピークカット」とも呼ばれ、上記以外にもさまざまな方法があります。自社で取り組めるものがないか確認してみましょう。ピークカットやピークシフトについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

力率を改善する

先述の通り、力率を改善するだけで基本料金を削減できます。近年、小売電気事業者によっては、低圧電力などの一部の料金プランで力率割引の制度を廃止しています。しかし、高圧電力・特別高圧電力では力率割引および割増が適用されているケースも多いため、力率の改善による電気料金の削減に取り組んでみましょう。

力率を改善するには、無効電力を調整できる高圧進相コンデンサを設置する方法が有効です。進相コンデンサでは、設備に電気を流した際に少し遅れて流れる無効電力を打ち消すことができます。無効電力を相殺した分だけ有効電力が増えるため、力率を改善できるという仕組みです。

キュービクルを設置した業者や保守・点検を依頼している業者へ、高圧進相コンデンサの設置を相談してみましょう。

小売電気事業者を見直す

電気料金の中には、小売電気事業者の裁量によって定められる項目や単価がいくつもあります。そのため、小売電気事業者や料金プランを見直すだけで電気料金を削減できる可能性があります。

気になる小売電気事業者があれば、見積もりを取った上で、各項目ごとに単価や算定方法を確認してみましょう。見積もりだけでは分からない部分については、電気需給約款や料金プランごとに作られた要綱、重要事項説明書を確認したり営業担当者に問い合わせたりしてください。

まとめ

電力の小売自由化以降、多くの小売電気事業者や料金プランが登場しました。市場の競争力が増して企業にとって魅力的な会社やプランを選べるようになった反面、独自に設定された項目や計算方法をしっかり理解しなくては、比較することが難しくなりました。電気料金は、企業にとって無視できない重要なコストの1つです。本記事を参考に、電気料金の構成についてしっかりと理解し、今よりも電気料金を削減できる小売電気事業者を見つけましょう。

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