オフィスや工場では必ずといっていいほど電気が使用されていますが、近年では電気代が高騰しており、事業における大きな経済的負担となりつつあります。節電してコストを削減し、省エネにつなげたいと考えている企業も多いのではないでしょうか。
本記事ではすぐにできる節電方法や社内で省エネ意識を浸透させるコツを解説します。あわせて空調コントロールによって電気代を削減し、コストやCO2を減らす方法などを紹介するのでぜひ参考にしてください。
電気代は電力を使った量によって決まります。
オフィスや職場の空調にかかる費用は電気代において大きな割合を占めており、さらに季節によって電気代は大きく変動します。
夏と冬では室温と外気温との差が大きいため、快適な空調にするために必要な電気量は特に大きくなり、電気代が増加しがちです。
近年では夏場における電気代が高くなる傾向があります。なぜなら温暖化により夏場の気温は昔以上に上昇し、また猛暑日が増えているためです。
外気温の上昇によって、オフィスや職場では空調を稼働させておかなければならない期間が長期化しています。空調が必要な期間が伸びると事業における電気代の負担はますます増加します。
オフィスの節電には実際に現場で働く従業員の理解と意識作りが必要です。時間はかかっても、社内に節電意識を浸透させるコツを紹介します。
節電による効果を数字で明確に示すと省エネへの意識を社内に浸透させやすくなります。空調の調節による節電やコストダウンの効果は、具体的なデータがなければ従業員にとってはイメージしにくいです。
省エネの取り組みを推進しようとしても従業員にとって分かりやすい伝え方をしなければ、あまり意味のないこととして捉えられてしまうかもしれません。
従業員からの理解を得るためには、省エネの取り組みでどれくらいコストが削減でき、どういったメリットが企業にあるのかを具体的な数字で示しましょう。
明確な節電目標があれば、従業員にとってもモチベーションが湧きやすくなります。節電効果を数字で示す具体的な例については次項で紹介します。
省エネの効果はすぐに目に見えるものではないため、イメージするのが難しいかもしれませんが、事業における「売上」に置き換えて説明すると伝わりやすいでしょう。
具体例を張り紙や社内イントラネットなどで掲示するといつでも目につくため、省エネのモチベーションを維持しやすくなります。
例えば営業利益率が2%の企業の場合、1億円の売上を得た場合の営業利益は200万円となります。オフィスにかかる電気代を年間で200万円削減した場合の営業利益は同じく200万円です。
つまり1億円の売上を上げた場合と200万円の電気代削減は同じ収益効果が見込まれるということになるのです。このように、従業員に対して具体的な金額を記載し掲示することで省エネの価値が伝わりやすくなります。
空調設備を買い替えることなく実践できる省エネの方法を6つ紹介します。
それぞれ解説します。
エアコンを稼働させる場合、電気代が特に発生するのは室内の温度を設定温度にまで下げようとしている時です。そのためエアコンが効いて涼しくなってきてもスイッチを切ってしまうことはおすすめしません。
一度エアコンのスイッチを切り室温が上がってしまうと、次にエアコンをつけた際、エアコンは再び設定温度まで室温を下げようと稼働してしまいます。
エアコンの電源を頻繁にON-OFFすることは、節電しているように見えてかえって電気代を高くしてしまう可能性があるのです。
また、節電のためにエアコンを「弱」で運転すると反対に電気代を高くする場合があります。前述のとおり、エアコンの稼働で電気代が特に発生するのは室温を下げている間です。
「弱」で運転していると室温が設定温度まで下がるのにかかる時間が長くなり、結果として電気代が高くなります。
省エネのためにはエアコンの設定温度を高すぎず低すぎない適温にしておくことが大切です。環境省では快適さを損なわない範囲での省エネを実践する目安として、夏の冷房は約28度、冬の暖房は約20度にすることを推奨しています。
また、環境省によると冷房時の温度設定を1度高くすると約13%の消費電力の削減、冬の暖房時の温度設定を1度低くすると約10%の節電になることが見込まれています。(※)
家庭やオフィスでは環境省が推奨する温度よりも夏場の設定温度を低く、冬場の設定温度を高くしている場合が少なくありません。しかし、エアコンを使用する際は高すぎず低すぎない温度を設定することで快適に過ごせるとともに電気代の節約になります。
※参考:Webページの場合:環境省「エアコンの使い方について」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/2017/result3/detail6/index.html (参照2023-02-21)
エアコンの風量調整を自動運転にすることも省エネに役立ちます。自動運転とは効率的に室温を調節するため、エアコンが自動で風量を加減する機能のことです。
一般的にエアコンは室温が設定温度に下がるまでは強風運転、その後は室温を維持するため微風運転で稼働させると、フルパワーで稼働する時間を最小限にできます。
自動運転なら人の手で風量調節しなくてもエアコンが自動で運転を切り替えてくれます。消費電力を抑えながら部屋を快適な温度に保てるため節電に効果的です。
省エネのためにはこまめにエアコンのメンテナンスをすることも重要です。エアコンのフィルターが目詰まりすると冷暖房の効率が悪くなり消費電力が増加します。環境省によるとフィルターをきれいに保つことで、冷房時で約4%、暖房時で約6%の消費電力を削減できるといわれています。(※)
フィルター掃除の目安は2週間に1回です。また、エアコンの効きが悪いと感じられる場合にもフィルターの目詰まりを取り除くことで解決する場合があります。
エアコンのフィルターは取り外し可能で掃除機やほうきで掃除できます。フィルターの汚れはエアコンの故障の原因ともなるため、定期的に手入れすることが大切です。
※参考:Webページの場合:環境省「エアコンの使い方について」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/2017/result3/detail6/index.html(参照2023-02-21)
工場や倉庫などの広い敷地がある施設では、空調を効かせるエリアを仕切ることも省エネに効果的です。広いエリアをそのままエアコンで温めたり冷やしたりしていては、空調の無駄が生じやすくなります。
エリアを仕切ることで温度調整する範囲を狭めることができ、エアコンの消費電力を減らせます。エリアの仕切りとしておすすめなのは、ビニールカーテンや断熱シートなどです。できるだけ分厚いカーテンやシートを用いることで冷気や熱をとどまらせやすくなります。
エアコンをはじめとした空調設備は室外機から外気を取り込み、室内に放出することで室温を調整する仕組みです。室外機の排気口が塞がっているとエアコンの稼働効率が悪くなり、電気代が余分にかかってしまう原因となります。
エアコンの消費電力をできるだけ減らすためには、室外機の周辺を整理し何も置かないことが大切です。
また、室外機を置く場所は風通しが良いところがおすすめです。エアコンの効きが悪いと感じられる場合には、室外機周辺に物が置かれていないか、そして設置場所は適切か確認すると良いでしょう。
電気代を抑えるために企業ができることは照明設備のLED化、太陽光発電の導入、新電力への切り替え、高圧受電装置の確認などです。それぞれ解説します。
電気料金を削減する方法の1つは照明設備のLED化です。LEDは蛍光灯よりも発光効率が良く、電気代を抑えられます。またLEDは蛍光灯よりも明るく、その上寿命が長いことが特長です。近年では効果的な省エネの施策として、さまざまな場所で照明設備のLED化が進んでいます。
例えば医療機関の場合では電球型蛍光灯をLEDに変更することで、約50%の消費電力を削減できるといわれています。
医療機関だけでなく企業のオフィスや工場、倉庫などでもLEDを導入することで電気料金を削減可能です。本体の価格比較ではLEDの方が蛍光灯よりも割高ですが、長期的に見るとLED化によってコストを減らせるでしょう。(※)
参考:経済産業省 「冬季の省エネ・節電メニュー」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/shoene_setsuden/pdf/2022_winter/setsudenmenu_jigyosha02.pdf(参照2023-02-21)
電気料金を減らすためには省エネによって電力の消費量を抑えるだけでなく、太陽光発電を設置することで電気を買わない選択も有効です。
コストダウンのため省エネに取り組もうと思っても電力の使用量を減らすことには不便さが伴う場合が少なくありません。
事業内容によっては電気が不可欠な場合も少なくないでしょう。自家消費型太陽光発電を活用すれば、社内で使える電力を減らすことなく電気代を削減できます。
コストダウンのための節電に限界がある場合は、電力会社との契約を見直すことも一つの方法です。新電力に切り替えることも電気料金の削減につながるでしょう。
大手電力会社の電気料金には燃料費調整額が含まれており、支払い金額が上がっている傾向があります。
今後さらに燃料調整額が上がっていくと、それに伴って電気料金も上がっていくと考えられるため、電力をどこから購入するか見直すことが重要です。
電気料金を下げるためには高圧受電装置を確認することが効果的な場合もあります。高圧受電設備はキュービクル式受変電設備とも呼ばれ、電力会社から届いた電気を施設で使用可能に変換する機能があります。
具体的には受電容量が50kVA以上、4,000kVA以下の高圧電力を利用する場合に電線から電力を引き込むための適切な使用電圧に変換することが、高圧受電設備の役割です。
高圧受電装置の内部では電力会社から送られてきた電気が適切に使用されることなく消えてしまっていることがあります。活用していないのに消費された電気についても電気料金の支払いは発生してしまいます。高圧受電装置で電力のロスが発生していないかを点検で確認することが大切です。
近年では電気料金が高騰し、企業の活動にも大きな影響を与えています。職場内の空調管理は特に電気料金が発生しやすく、コストダウンのためには省エネへの取り組みが不可欠です。省エネの効果を数字で明確に示し、分かりやすく伝えることで社内に省エネ意識を浸透させやすくなるでしょう。
省エネのためにはエアコンを効率的に利用し、こまめにメンテナンスすることが大切です。また、電気料金を削減するには照明のLED化や太陽光発電の導入も役立ちます。新電力への切り替えや高圧受電装置の確認もコストダウンに効果的です。
地球規模で取り組まなければいけない環境対策に力を入れているのが、伊藤忠エネクスです。太陽光発電以外にも、ESGやLED照明に関して、様々な取り組みを行っています。この機会に、ぜひ検討してみませんか?
空調コントロールはコストダウンやCO2削減のため、積極的に取り入れることがおすすめです。
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