アドブルーがなくなりそうな場合やアドブルーの費用を節約したい場合、「代わりに水を入れてもいいのだろうか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、アドブルーの代わりに水を入れると思わぬトラブルが起きる可能性があります。
本記事では、アドブルーの代わりに水を入れると起こる4つの危険や、アドブルーのよくある失敗例を解説します。アドブルーがなくなりそうな時の対処法も紹介するのでぜひ参考にしてください。
アドブルーって何? 排気ガスを使用する尿素SCRシステムも併せて解説
アドブルーは排出ガスの窒素酸化物を窒素と水に分解します。
アドブルーを切らしてしまった場合や費用を節約したい場合、代わりに水を使用したいと考えることもあるかもしれません。
しかし、アドブルーの代わりに水を入れると4つの危険性があります。
順に確認していきましょう。
アドブルーの代わりに水を入れると、尿素SCRシステム内の触媒が腐食する危険性があります。
尿素SCRシステムとは排気ガス浄化技術の一つで、軽油などを燃料とするディーゼルエンジン車で用いられています。
ディーゼルエンジン車は低燃費でパワーがある反面、有害な窒素酸化物の排出量が多いことが問題です。窒素酸化物はアンモニアと反応させると、無害な窒素と水に分解されます。
アンモニアは可燃性が高く危険な物質です。そのため尿素SCRシステムには尿素水を用い、システム内で尿素水からアンモニアを発生させることで上記の分解反応を起こしています。
アドブルーの代わりに水のみを入れた場合、尿素SCRシステムがうまく機能しません。窒素酸化物が正しく分解されず、水の割合が多くなることで硝酸が生成されてしまいます。
その結果、尿素SCRシステム内の触媒が硝酸によって腐食することが考えられます。尿素SCRシステムに水を入れたことが原因でシステムが故障すると。高額な修理費用を請求されてしまいます。
アドブルーの代わりに水を入れると、、エンジンの噴射ポンプに不純物が詰まる危険性が生じます。
水道水には、目に見えない不純物が含まれています。水道水に含まれる主な不純物は塩素(カルキ)、トリハロメタン、アルミニウム、カルシウム・マグネシウム・シリカといったミネラル類です。一方、アドブルーには不純物が取り除かれた純水が使用されています。
アドブルーの代わりに水道水を使うと、エンジンの噴射ポンプに次第に不純物が溜まり、詰まりや故障の原因となります。
エンジンが故障すると高額な修理費や交換費を負担する羽目になってしまうでしょう。
尿素SCRシステムは、排出ガスによる地球環境への悪影響を防ぐため、排出ガス規制の一環として登場しました。アドブルーの代わりに水を使用すると、排出ガスを浄化することができません。
一般的な水にはアンモニアが含まれていないため、発生した有害な窒素酸化物を水と窒素に分解することができず、排出ガスを浄化するという本来の目的を果たすことができません。車にも環境にも悪影響なのでやめましょう。
アドブルーを水で代用すると、凍結によりエンジンがかからない危険性が生じます。
アドブルーは純水67.5%、尿素32.5%で構成されており、凍結温度はマイナス11度です。0度で凍結する水道水と比べて、アドブルーは凍りにくいです。
冬の日本では、特に寒い地域でなくても気温が0度以下になることも珍しくありません。アドブルーの代わりに水を入れると、液体がシステムの内部で凍結し、エンジンがかからなくなる可能性があります。
アドブルーの代わりに水を入れることの危険性はお伝えしましたが、アドブルーを水で薄めてしまうこともNGです。アドブルーを水で薄めた場合、アドブルーの代わりに水を入れた場合と同じリスクが生じます。
尿素SCRシステムが正常に機能しエンジンの故障リスクを下げるためには、アドブルーが規定の濃度のままで使用されることが必要です。
また、近年のディーゼルエンジン車では、尿素の濃度センサーシステムがついている場合も多く、水で薄めたアドブルーを入れた場合は警告エラーが表示されたり、エンジンがかからなかったりする可能性があります。
アドブルーの代わりに水を入れたり、アドブルーを薄めたりすると費用削減になると考える方もいるかもしれませんが、本来の効果が期待できないだけでなく、エンジンが故障してしまうリスクを高めます。
修理や交換のために高額な費用が発生する可能性を考慮し、アドブルーの正規品を使用することを推奨します。結局は大きな費用負担が生じるでしょう。
アドブルーのよくある失敗例は以下のとおりです。
それぞれ解説します。
故意に水を混ぜたのではなくても、アドブルーにうっかり水が入ってしまうことがあります。例えばアドブルーキャップを閉め忘れていると、雨水が入ってしまう可能性もあるでしょう。
また、アドブルーキャップを紛失してしまう場合もあるかもしれません。
アドブルーキャップを紛失してしまった場合は、ビニール袋といった水を通さないものをキャップ部分にかぶせ、輪ゴムでしっかりと止めておくことで応急処置が可能です。
アドブルーに水が入ってしまうと、前述したように尿素SCRシステム内の触媒が腐食する、噴射ポンプに不純物が詰まる、排気ガスの浄化効果が低下する、凍結してエンジンがかからないなど、さまざまなリスクが生じます。
エンジンの故障を防ぐためには、うっかり水が入らないように注意することが大切です。
アドブルータンクに誤って軽油を入れてしまうこともアドブルーのよくある失敗です。
もしもアドブルータンクに軽油が入ってしまったら、決してそのままの状態で運転しないでください。軽油が混入している状態で運転してしまうとエンジンの故障につながります。
軽油をアドブルータンクに入れてしまった際は車を整備工場に連絡し、軽油をすべて除去してもらう必要があります。ただし、混入した状態では運転できないため、車の移動には牽引車を利用すると良いでしょう。
アドブルーは使用していなくても寿命があります。予備のアドブルーを車内に保管していたら、いつの間にか時間が過ぎてしまい品質が劣化していたということも珍しくありません。
アドブルーが劣化するスピードは気温や保管温度で異なります。外気温の目安による、アドブルーの使用期限の目安は以下のとおりです。
保管外気温の目安 | 有効期限の目安 |
---|---|
35度以下 | 6カ月 |
30度以下 | 12カ月 |
25度以下 | 18カ月 |
10度以下 | 36カ月 |
保管温度が40度を超える場合には、アドブルーを保管しておける期限がさらに短くなります。アドブルーの劣化を防ぐためには、できるだけ風通しの良い場所に保管することが大切です。特に真夏の締め切った車内では、30分程度で40度を超えてしまう可能性があるためアドブルーを保管する際は注意しましょう。
また劣化したアドブルーは、車の故障を防ぐためにも破棄してください。まとめ買いをせず、必要な時に必要な量を購入することをおすすめします。
一般的にアドブルーは軽油使用量の3%を消費し、走行距離は車種や積載量によっても異なります。走行距離によっては数カ月に一度の補充が必要です。補充を忘れてしまったり、アドブルーがなくなってしまったりした時の対処法は以下のとおりです。
それぞれ解説します。
アドブルーがなくなりそうな時の対処法として、まずエンジンを切らないことがあげられます。タンク内にアドブルーがない状態でエンジンを切ってしまうと、車のエンジンがかからなくなるからです。走行中にタンク内のアドブルーがなくなった場合でも、エンジンを切らない限り突然車が止まってしまうことはありません。
アドブルーがなくなっても、その瞬間にエンジンが停止するわけではありませんが、アドブルーの残量がゼロの状態でエンジンを切ってしまうと再度かけることができないため注意が必要です。アドブルーを切らしてしまった場合は、次にアドブルーを補充できるまで、エンジンを止めずに走行し続けることをおすすめします。
アドブルーがなくなりそうな時、またはなくなってしまった時は、エンジンを切らずに最寄りのカー用品店やガソリンスタンドに向かいましょう。
多くのカー用品店やガソリンスタンドではアドブルーを取り扱っています。アドブルーがない状況でもエンジンを切らない限りは走行し続けることができるため、アドブルーを入手できるまでは車のエンジンをかけたままにしておくことが大切です。
エンジンを切ってしまい、車を動かせなくなってしまった場合には、アドブルーを容器に移して車まで運び、給水することができます。
カー用品店やガソリンスタンドに頼むなど、停車している車までアドブルーを運ぶことによって解決できるため慌てずに対処しましょう。
アドブルーの代わりに水を入れると、尿素SCRシステムがうまく機能せず、触媒が腐食してエンジンが停止・故障する原因となります。エンジンが故障すると高額な修理費用が必要となるため、アドブルーの代わりに水を入れてはいけません。
アドブルーがなくなりそうなときの対処法は、エンジンを切らずにカー用品店やガソリンスタンドに向かうことです。また、アドブルーがなくなっても焦らず対処しましょう。
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