新電力とは、電力の小売自由化以降に参入した電力会社のことです。名前は知っていても「新電力と大手電力会社は何が違うのか」「乗り換えて本当にお得になるのか」と疑問を抱く方は少なくありません。企業の健全な経営を考える上で、毎月発生する電気料金は無視できない存在のため、新電力について把握した上で乗り換えを検討する必要があります。
本記事では、両者の仕組みや違い、乗り換えによるメリット・注意点を分かりやすく整理してご紹介します。自社に適した電力会社を判断するための6つのチェックポイントも合わせて解説するので、電気料金の見直しをする際の基礎知識として、ぜひお役立てください。
※本記事の内容は2025年12月時点の情報です
目次
新電力とは、電力の小売自由化以降に参入した電気の販売を行う小売電気事業者(Power Producer and Supplier 、PPS)のことを指します。
かつて、事業活動で使用する電力の契約先は、東京電力や九州電力といった地域の大手電力会社に限られていました。しかし2000年から始まった「電力の小売自由化」によって状況は大きく変わり、一定の条件を満たす企業は小売電気事業者として、電力市場に参入できるようになりました。このときに新しく加わった小売電気事業者が、いわゆる「新電力」です。現在では、ガス会社や通信会社、商社など、多様な業界の企業が電力市場に参入しています。
多くの新電力は独自の料金プランや付加価値を提供しており、需要家は自社の電力の使用状況に適した電力会社を選択しやすい環境が整っています。

そもそも電力の小売自由化とは、大手電力会社が独占していた供給体制を見直し、需要家が自ら電力会社を選べるようにした制度改革です。電気料金の適正化やサービスの多様化を促すことを目的に、2000年から段階的に実施されました。
現在までの主な変遷は以下の通りです。
| 年月 | 対象区分 | 内容 |
| 1995年12月 | – | 電気事業法が改正 |
| 2000年3月 | 特別高圧 | 特別高圧電力の小売自由化がスタート 対象:大規模な工場やビル、デパートなど、契約電力が2,000kW以上の需要家 |
| 2004年4月 | 高圧 | 高圧電力(大口)の小売自由化がスタート 対象:中小規模の工場やビルなど、契約電力が500kW以上の需要家 |
| 2005年4月 | 高圧 | 高圧電力(小口)も含めた小売自由化がスタート 対象:飲食店、スーパーマーケットなど、契約電力が50kW以上の需要家 |
| 2013年4月 | – | 政府が「電力システムに関する改革方針」を決定、電力小売業について、全面的な自由化を目指す指針が示される 以降2015年にかけて電気事業法が改正 |
| 2016年4月 | 低圧 | 低圧電力の小売自由化がスタート これにより、全ての電力区分で小売自由化が始まる |
このように20年余りの時間をかけて段階的に進められた小売自由化によって、現在は全ての区分において、需要家が自由に電力会社を選べるようになっています。

電力の小売自由化により電力会社の選択肢が増えたものの「これまで契約していた大手電力会社との違いが分からない」と悩む方もいるでしょう。ここでは新電力と大手電力会社の代表的な違いを2つ解説します。
新電力の事業モデルは、電力の仕入れと小売を担うことに特化し、自社で大規模な発電設備を持たない、もしくは発電設備の保有規模が限定的なケースが多いです。そのため日本卸電力取引所(JEPX)や発電事業者から電気を調達し、送配電事業者へ託送料金を支払った上で既存の送配電網を利用して需要家に届ける仕組みが一般的です。この事業モデルにより、発電所や送配電網の建設・維持といった巨額の固定費を抱える必要がなく、比較的安価な料金プランを打ち出しやすい点が新電力の強みです。
一方、大手電力会社は発電・送配電・小売を一手に担ってきた歴史があります。そのため発電所や送電設備といった大規模インフラを自ら保有している点が特長です。小売自由化後はそれぞれの区分ごとに分社化されたものの、グループ一貫の供給体制を構築できている点が強みです。ただし、設備の維持・管理に伴う固定費は大きくなる傾向にあり、料金プランにも影響する可能性があります。
先述した通り、新電力の多くは自社で大規模な発電設備を持たないケースが多いため、JEPXからの購入が電力調達の中心です。JEPXは国内で唯一卸電力を売買できる市場であり、新電力が安定的に電力を調達するための場所として機能しています。また昨今では、発電事業者と直接契約を結ぶケース(相対取引)や、自社で太陽光発電所などの電源を持つケースも増えており、調達手段の多様化が進んでいます。
一方、大手電力会社の場合、グループ会社の発電所でつくられる電気が電力調達の中心です。水力・火力・原子力などさまざまな電源の種類があり、その内訳は電力会社によって異なるものの、どこも一定の供給力を確保しています。その上で需要状況に応じてJEPXから電力を追加購入し、安定的な供給体制を維持しています。

新電力と大手電力会社にはさまざまな違いがあるものの、変わらない部分もあります。家庭や事業所へ電気を届ける役割を担う送電線・電柱などの「送配電網」は、これまで通り地域の大手電力会社のグループ企業である送配電事業者が管理・運用しています。新電力の電気も大手電力会社の電気も、同じ送電線を通じて届けられるのです。
そのため大手電力会社から新電力に乗り換えたからといって、電圧や安定性といった品質面に違いが生じたり、停電リスクが高まったりすることはありません。こうした仕組みにより、需要家は従来と同じ品質の電力を供給してもらいながら、自社に適した料金プランを選択できるのです。

新電力は多様な料金プランや独自の付加価値を提供しているため、自社に適した新電力に乗り換えることで、さまざまなメリットを得られます。ここでは代表的な2つのメリットを詳しく解説します。
電力の小売自由化によって、多くの企業が新電力として市場に参入し、需要家のニーズを踏まえた料金プランやオプションを展開するようになりました。特に料金面は比較の中心となる項目であり、差別化を図るために、従来よりも安価なプランを打ち出すケースが多く見られます。
また法人向けに、契約電力や使用電力量、稼働時間などに応じて個別設計できる料金体系を用意する新電力もあります。例えば伊藤忠エネクスが提供する「TERASELでんきfor Biz.」では、固定単価型・市場連動型の2つのプランをベースに、業種や使用状況に応じた電力契約を完全オーダーメイドで設計可能です。
このように、需要家の利用実態に則した料金プランを提供する新電力に乗り換えることで、電気料金を削減できる可能性があります。
自社に適した新電力へ乗り換えるメリットは、料金面だけではありません。カーボンニュートラル実現のために、電力消費の最適化や脱炭素経営が世界的に重視されており、こうしたニーズに応える付加価値サービスを提供する新電力も登場しています。
具体的な施策としては、省エネ設備の導入による消費電力の削減やエネルギー管理システムの提供、自家消費型太陽光発電の導入支援、環境価値(非化石証書等)の調達支援などが挙げられます。
例えば伊藤忠エネクスでは、以下のようなサービスを提供可能です。
高効率空調・LED照明など、省エネ機器への切り替えを支援します
企業の敷地や遊休スペースを活用した太陽光発電設備の設置を支援します
需要家の使用電力量に合わせて、必要な分だけ環境価値を調達します
このようなエネルギーソリューションを提供できる新電力に乗り換えれば、電気料金の削減とエネルギー利用の最適化という2つの課題を一社で解決できます。需要家は柔軟かつ効果的なエネルギー戦略を立てて、長期的なコスト削減や脱炭素経営の推進を実現できるでしょう。

新電力への乗り換えには多くのメリットがある一方で、事前に把握しておくべき注意点もあります。電力会社の乗り換えを検討しているなら、必ずチェックしておきましょう。
新電力は大手電力会社と比べて歴史が浅く、経営基盤や運営ノウハウが確立されていない企業も見られます。そのため燃料価格や市場価格の高騰といった外部からの影響を受けやすく、事業撤退や倒産に至るリスクがある点には注意が必要です。帝国データバンクの調査によると、2024年3月時点で撤退や倒産・廃業した新電力は累計で119社に上り、2022年3月と比較すると約7倍に増加しています。
万が一契約中の新電力が事業を継続できなくなった場合でも、電力供給が突然止まることはありません。大手電力会社のグループ企業である送配電事業者が電力供給を代行する「最終保障供給」の仕組みが整備されており、一時的な供給は確保されるためです。ただし、最終保障供給は標準的な料金プランよりも単価が高く設定されているため、結果として電気料金が高くなってしまう恐れがあります。
※参考:帝国データバンク.「「新電力会社」事業撤退動向調査(2024年3月)」.https://www.tdb.co.jp/report/industry/5mwc1cunt7/ ,(2025-12-09).
新電力の料金プランには、1年・2年といった契約期間が設定されている場合があり、更新のタイミング以外で解約すると数千~数万円の違約金(解約金)が発生するケースがあります。ただし、これは新電力特有の仕組みではなく、大手電力会社にも当てはまる注意点です。
そのため電力会社の乗り換えを検討する際は、現在契約しているプランの契約期間や解約条件を事前に確認し、切り替えのタイミングを見極めることが重要です。また乗り換え先として検討している新電力の契約書や約款にも、契約期間や違約金の有無が明記されているため、条件を比較した上で総合的に判断する必要があります。不要なコストの発生を防ぐために、契約期間と違約金(解約金)の有無や発生条件は必ずチェックしておきましょう。

新電力へ乗り換える際には、複数の観点から慎重に比較することが重要です。ここでは、電力会社選びで押さえておきたい代表的なポイントを6つご紹介します。
新電力を検討する際は、まず電力の使用状況を正確に把握することが欠かせません。使用電力量や電力の利用が集中する時間帯などの基本的なデータが分からないままでは、料金プランの比較やシミュレーションの精度が下がり、適した電力会社や料金プランを選びにくくなります。
電力会社が発行する検針票やWeb明細では、一般的に以下のような基礎情報を確認できます。
他にもシミュレーションや見積もりに必要な情報があれば、事前に確認してきましょう。

新電力の料金プランは多様ですが、基本的には「固定単価プラン」と「市場連動型プラン」の2つに大別されます。それぞれの特徴を理解し、自社の使用状況に合うかどうかを判断することが重要です。
固定単価プランは、電力量料金単価(円/kWh)が固定されている料金プランです。単価が変動しないため、おおよその使用電力量が把握できていれば月々の支出を予測しやすく、価格変動のリスクを抑えたい企業に適しています。また変動要素が少ないことから、電気料金の比較もしやすく、新電力を初めて利用する需要家でも選びやすいです。
一方、市場価格が下落した場合も電力量料金単価は変わらないため、次に紹介する市場連動型プランのように「市場価格が下がれば料金に直結して安くなる」といったことは期待できません。電気料金の安定性を重視する需要家におすすめのプランです。
市場連動型プランは、電力量料金単価がJEPXの市場価格に応じて30分ごとに変動する料金プランです。市場価格が安い時間帯に電力を使用すれば、大幅なコスト削減につながる可能性があります。電力の使用タイミングを調整しやすい需要家に適したプランです。
一方で燃料費の高騰や需給のひっ迫などにより市場価格が急騰すると、電気料金が大幅に上昇するリスクを伴います。実際、過去には市場価格の高騰により法人の電気料金が急増した事例もあり、リスク管理が必要です。市場の動きに影響を受けやすいプランであるため、導入する際は自社の電力使用状況とプランの適合性を慎重に見極める必要があります。
見積もりを確認する際には、提示された料金プランの内訳を必ずチェックしましょう。新電力の中には、基本料金や電力量料金だけを見ると割安に見えるものの、独自の燃料費調整額が上乗せされることで、結果的に現在よりも電気料金が高くなるケースがあります。
燃料費調整額とは、市場動向や為替レートによって大きく変動する燃料価格を電気料金に反映するための項目です。近年の燃料価格高騰を受け、一部の新電力では独自の計算ルールを適用した「燃料費等調整額」や「電源調達調整費」などの項目を追加していることもあり、これらを含めて料金を比較する必要があります。
燃料費調整額が高いのか安いのかを判断するには、地域の大手電力会社の燃料費調整額と比較するのがおすすめです。「燃料費調整額及び再生可能エネルギー発電促進賦課金はエリア電力会社様と同単価にてご請求させて頂きます」といった文言が見積書に書かれているケースもあります。電気料金のことを考えるとなるべく安く設定されている電力会社を選びたいところですが、あまりにも安すぎる場合も注意が必要です。燃料費調整単価に大きな乖離がある場合は、その理由を新電力の営業担当者に問い合わせてみましょう。
見積もりを比較する際には以下を必ず確認してください。
これらを踏まえることで、見た目の単価に惑わされず、実際に支払う金額を正確に把握できます。
先述した通り、新電力は一定の事業撤退・倒産リスクがあります。そのため料金プランやオプションだけではなく、新電力自体の経営状況も確認する必要があります。
例えば財務状況や事業規模、親会社の有無などを知ることによって会社の安定性や継続性を確認することが可能です。新電力としての歴史が浅くとも、大手電力会社と提携している、あるいは別事業が成長しているといった場合は、経営基盤が比較的安定している可能性が高く、急な撤退や倒産のリスクは低いでしょう。
このように会社の経営状況を把握した上で電力会社を選ぶことで、最終保障供給の対象になるリスクを避けつつ、新電力が提供するメリットを享受できます。
新電力を選ぶ際には、その企業が分かりやすく情報を公開しているかどうかも重要な判断材料になります。経済産業省は、需要家が電気料金の見通しを立てられるよう、電力会社に対して料金構造や算定方法の透明性向上を努力義務として求めています。そのため料金プランや燃料費調整額などが、電力会社のWebサイト上で理解しやすく記載されているかを確認することが重要です。
先述した料金プランや燃料費調整ルールの違いなどは、説明が不十分なままでは、誤解を招く恐れがあります。情報を整理した上で明示している企業ほど、需要家に対して誠実で透明性の高い運営を行っているといえます。
※参考:経済産業省.「電力の小売営業に関する指針」.https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331007/20250331007-1.pdf ,(2025-12-11).
電力会社を乗り換える際は、事前に契約条件を整理しておくことが欠かせません。料金単価や契約期間、違約金といった基本事項はもちろん、更新時期や適用開始日、オプションの扱いなど、プランによって細かい内容が異なるためです。
乗り換えを考え始めた段階で、約款に一度目を通しておけば、スムーズかつ計画的に比較検討を進められます。
電力の小売自由化により、需要家は新電力を含む多くの電力会社から自社に適したところや料金プランを選べるようになりました。新電力と大手電力会社には事業モデルや電力の調達方法といった違いがあるものの、電圧や供給の安定性などの品質面は変わらず、停電リスクが高まることもありません。
自社の電力の使用状況に適した新電力へ乗り換えることで、電気料金の削減やエネルギー利用の最適化などが実現する可能性が高まります。ただし新電力には、事業撤退・倒産のリスクや、解約時に違約金が発生するリスクがあるため、料金プランの特徴や契約内容、企業の安定性などを調べた上で総合的に判断しましょう。
伊藤忠エネクスの「TERASELでんきfor Biz.」では、業種や電力の使用状況に合わせた料金プランをオーダーメイドで設計します。また60年以上にわたりエネルギー商社として培ったノウハウや九州電力などの大手電力会社との提携によって、安定的な電力供給を実現しています。グループ全体で全国に17カ所の発電所を保有・管理しているのも特長です。
本記事でご紹介したように、多彩なエネルギーソリューションも提供可能なため、新電力への乗り換えをご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。
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