太陽光発電システムがあれば、作った電気を自家消費して電気料金を削減したり売電して収入を増やしたりすることができるので、設備の導入を検討している方も多いでしょう。またFIT制度により、発電出力容量が10kW以上の設備であれば20年間固定単価で売電できるため、収入予測が立てやすく投資に適しているという声も聞かれます。しかし、売電で利益を出し続けるには、収支のバランスを慎重に計算することが重要です。
本記事では、太陽光発電システムを所有することでかかるコストのうち、固定資産税について解説します。これから太陽光発電システムを導入しようとしている方はもちろん、すでに設備を所有しており、今後の運用について検討している方もぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は2025年3月時点の情報です
※本記事でご紹介している税金の具体的な計算については、皆さまの個々のご事情によって異なりますので、大変お手数ですが、最寄りの税務署または税理士などにご相談いただきますようお願いいたします
固定資産税とは、毎年1月1日の時点で土地や建物、償却資産を所有する方に対して課される税金です。資産が所在する市町村(東京23区の場合は東京都)へ納税します。
償却資産とは、事業に使用する機械や備品のことです。現在未稼働のものであっても事業への利用が可能な状態であれば、固定資産税の対象となります。なお、固定資産税のうち、償却資産にかかる税金を償却資産税と呼びます。
固定資産税と償却資産税の大きな違いは、対象となる資産と申告の有無の2点です。固定資産税は一般的に土地と建物に対して課されますが、償却資産税は償却資産に対して課されます。また固定資産税は登記情報に基づいて課税額を算出するので申告は不要ですが、償却資産税は納税者が市区町村へ毎年申告を行う必要があります。ただし、固定資産税でも、家屋の用途変更や軽減の特例を受ける場合は申告が必要です。
太陽光発電システムは、利用用途や発電出力容量によって償却資産税の対象となるかどうかが変わります。これから太陽光発電システムを導入する方は、設置する設備が課税対象になるかどうかを確認しておきましょう。
以下のケースは、太陽光発電システムの所有で償却資産税がかかる可能性があります。
先述した通り、償却資産は事業に用いることができる資産を指します。そのため個人の住宅に設置した設備であっても、作った電気を自家消費せず一定期間継続して全量売電した場合は事業に該当し、償却資産税の対象となります。また住宅に太陽光発電システムを設置して全量自家消費をしていても、自宅でカフェを営んでいたり教室を開いていたりすると事業用として見なされる場合があるので、注意しましょう。
一般的に太陽光発電システムは、出力10kW未満の設備であれば「住宅用」、出力10kW以上の設備であれば「産業用」と区分されます。産業用に該当すると、実態にかかわらず事業収入を目的とした資産と見なされ、課税対象になる可能性があります。自治体によって判断が分かれる部分なので、発電出力容量が10kW以上の太陽光発電システムを自家消費を目的に導入予定の方は、設置予定の市町村(東京23区の場合は東京都)へお問い合わせください。
なお、太陽光パネルの設置方法によっては、固定資産税の対象となるケースがあります。太陽光パネルを屋根材として設置しており住宅と一体になっている場合、「住宅の性能を高める設備」として家屋の一部と見なされるため、家屋の評価額が上昇し固定資産税が増加する可能性があります。
太陽光発電システムを土地に直接置く「野立て」で設置する場合、土地にかかる固定資産税額が変わる場合があるので注意が必要です。もともと田んぼや畑だった土地に太陽光発電システムを設置する際は農地転用の手続きを行う必要があり、土地の種類を表す地目を「宅地」や「雑種地」に変更しなければなりません。地目が変わると、土地の評価額が上がるので必然的に固定資産税も高くなります。収支のシミュレーションに大きく影響するので、固定資産税がどのくらい上がるのか事前に確認しておきましょう。
以下のケースは、太陽光発電システムを所有していても償却資産税がかからない可能性があります。
作った電気を住宅で自家消費する目的で太陽光発電システムを設置すれば、償却資産税はかかりません。ただし、先述した通り、太陽光パネルが屋根と一体になっていれば家屋の一部として固定資産税が増加する可能性があるので、注意しましょう。
また発電出力容量が10kW未満であれば「住宅用」太陽光発電システムに区分されるので、事業目的の設置でなければ償却資産税の対象外です。ただし、事業の用に供している場合は、住宅用であっても償却資産税の対象になります。
屋根の上に架台を置いて太陽光パネルを設置する場合も、取り外しができる設備のため住宅の固定資産税の評価対象に含まれません。ただし、どこまでを屋根の一部とするかは自治体の判断によるため、屋根に太陽光発電システムを設置する場合は事前に市町村(東京23区の場合は東京都)へ問い合わせましょう。なお、こちらも事業の用に供している場合は、償却資産税の対象になります。
さらに、個人の需要家であれば、太陽光発電システムの課税標準合計額が150万円を下回る場合も、償却資産税は免除となります。課税標準額とは、資産の評価額に特例措置や負担調整措置が反映されたものを指します。ただし、太陽光発電システム以外に償却資産があり、合計額が150万円を超える場合は課税対象となるので注意してください。
※参考:国税庁.「会社員が自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却」.https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/42.htm ,(2025-01-23).
償却資産税の課税標準額を算出するには、どの設備が償却資産税の対象となるかを把握する必要があります。ここでは、太陽光発電システムで償却資産税の対象となる代表的な設備をご紹介します。
設備名 | 評価区分 |
太陽光パネル |
|
架台 |
|
パワーコンディショナー | 償却資産 |
接続ユニット | 償却資産 |
表示ユニット | 償却資産 |
電力量計など | 償却資産 |
フェンス | 償却資産 |
野立てで架台を設置する地面の砂利・アスファルト舗装など | 償却資産 |
上記の設備以外も対象となる場合があるので、詳しくは太陽光発電システムを設置している市町村(東京23区の場合は東京都)へお問い合わせください。
収支のシミュレーションをする際に必要な、償却資産税の計算方法を解説します。
償却資産税は資産を取得した翌年度とそれ以降で計算式が異なります。
【資産を取得した翌年度】
【資産を取得した翌々年度以降】
減価率は、法定耐用年数に応じてあらかじめ決まっています。太陽光発電システムの法定耐用年数は一般的には17年とされており、その場合の減価率は0.127です。償却資産税を算出する場合の減価率は、総務省の「減価残存率表」を参照してください。
発電出力容量100kWの太陽光発電設備を1,900万円で購入したケースを例に、年度ごとの償却資産税を算出してみましょう。
【資産を取得した翌年度(償却資産税の支払いが発生する1年目)】
【資産を取得した翌々年度(償却資産税の支払いが発生する2年目)】
【資産を取得した翌々々年度(償却資産税の支払いが発生する3年目)】
なお、自治体によっては太陽光発電システムの償却資産税の減免措置を行っている場合もあるので、必ず確認しましょう。
※参考:東京都主税局.「固定資産税(償却資産)」.https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/shokyak_sis ,(2025-01-23).
※参考:e-Gov法令検索.「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)-別表第二 機械及び装置の耐用年数表31番 電気業用設備 その他の設備 主として金属製のもの-」.https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015 ,(2025-01-23).
太陽光発電システムは作った電気の使用用途や発電出力容量によって、償却資産税の対象となるケースとならないケースがあります。これから導入する場合はどちらのケースに当てはまるかを確認し、本記事でご紹介した償却資産税の計算方法で、当面かかる償却資産税を算出してみましょう。
すでに太陽光発電システムを所有していて、毎年かかる償却資産税を負担に感じているなら、設備を売却するのも選択肢の一つです。
伊藤忠エネクスは、60年以上の歴史を持つエネルギー商社としてのノウハウや知見を生かして、お客さまが保有する野立ての太陽光発電システムを適正価格で買い取ります。所有している太陽光発電システムを売却したらいくらになるのか知りたい方は、伊藤忠エネクスの太陽光発電所買い取りサービスへお問い合わせください。
※本記事でご紹介している税金の具体的な計算については、皆さまの個々のご事情によって異なりますので、大変お手数ですが、最寄りの税務署または税理士などにご相談いただきますようお願いいたします
太陽光発電所買い取りサービス
03-4233-8073 enex_hvo@itcenex.comキーワード検索
キーワード検索