特別高圧電力とは? 電気料金の計算方法や低圧・高圧電力との違いを知って契約の見直しを検討しよう

特別高圧電力とは? 電気料金の計算方法や低圧・高圧電力との違いを知って契約の見直しを検討しよう

伊藤忠エネクス メディア編集部

伊藤忠エネクスは1961年の創業以来 「 社会とくらしのパートナー」として 全国各地の地域に根ざし生活に欠かせないエネルギーをお届けしてまいりました。 老舗エネルギー商社ならではの情報を発信します。

現在、全ての需要家が自由に電力会社を選べますが、その皮切りとなったのが2000年3月に解禁された特別高圧電力の小売自由化です。特別高圧電力の小売自由化によって、商社やガス事業者といったさまざまな企業が電力小売事業に参入するようになりました。

本記事では、特別高圧電力の概要や電気料金の計算方法、他の契約区分との違いを解説します。特別高圧の受電方式や保守・点検におけるルールもご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

※2024年12月時点の情報です

特別高圧電力とは?

特別高圧電力は、電力の契約区分の一つです。契約電力が2,000kW以上の場合、特別高圧電力に該当します。また「電気設備に関する技術基準を定める省令」では、直流と交流で「七千ボルトを超えるもの」が特別高圧電力と定義されています。

特別高圧電力が主に利用されているのは、年間の電気料金が数億〜数百億円に達するほどの大規模なオフィスビルや工場、大型商業施設、空港、鉄道会社、大型医療機器を有している病院などです。契約電力は、電力会社と契約者の話し合い(協議制)によって決まります。

※出典:e-GOV 法令検索.「電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十二号)」.https://laws.e-gov.go.jp/law/409M50000400052 ,(2023-03-20).

特別高圧電力の電気料金の計算方法

特別高圧電力の電気料金の計算方法は、電力会社や料金プランによって異なります。本記事では多くの電力会社で採用されている「固定単価プラン」と「市場連動型プラン」の2つの計算方法をご紹介します。

固定単価プランの場合

固定単価プランは、電気料金を構成する要素の一つである電力量料金の単価があらかじめ契約で定められている料金プランです。

固定単価プランの電気料金は「基本料金 + 電力量料金 ± 燃料費調整額 + 再生可能エネルギー発電促進賦課金」で計算できます。各項目の概要と算出方法は、以下の通りです。

項目概要算出方法
基本料金・契約電力に基づいて算出される
・使用電力量にかかわらず、毎月契約で定められた金額を支払う
基本料金単価 × 契約電力 × 力率割引および割増
電力量料金・使用電力量に応じて変動する従量料金
・契約期間中の電力量料金単価はあらかじめ契約で定められている
電力量料金単価 × 使用電力量
燃料費調整額・燃料価格の変動に応じて単価が設定される調整金
・使用電力量に応じて算出される
燃料費調整単価 × 使用電力量
再生可能エネルギー発電促進賦課金・FIT制度によって再生可能エネルギー由来の電力の買い取る際にかかる費用を賄うために、使用電力量に応じて算出される賦課金
・全ての需要家が負担する
・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は年度ごとに変更される
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用電力量

先述した通り、固定単価プランでは電力量料金単価はあらかじめ契約で定められているため、契約期間中は固定となるのが一般的です。ただし、固定といっても季節や時間帯別で単価が設定されているプランもあるので、必ず契約内容や電気需給約款を確認してください。

市場連動型プランの場合

市場連動型プランとは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格に基づき、30分ごとに電力量料金が変動する料金プランです。JEPXは2003年に設立された、日本で唯一の電力取引所です。

市場連動型プランの電気料金は基本的に「基本料金 + 電力量料金 + 再生可能エネルギー発電促進賦課金」で計算できます。各項目の概要と算出方法は、以下の通りです。

項目概要算出方法
基本料金・契約電力に基づいて算出される
・使用電力量にかかわらず、毎月契約で定められた金額を支払う
基本料金単価 × 契約電力 × 力率割引および割増
電力量料金・JEPXの取引価格に基づいて30分ごとに変動する電力量料金の単価と、使用電力量によって算出される変動料金電力量料金単価 × 使用電力量
再生可能エネルギー発電促進賦課金・FIT制度によって再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際にかかる費用を賄うために、使用電力量に応じて算出される賦課金
・全ての需要家が負担する必要がある
・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は年度ごとに変更される
再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用電力量

多くの市場連動型プランでは、電力量料金に電力調達コストが含まれているため、燃料費調整額は設定されていないのが一般的です。

電力量料金はJEPXの取引価格に応じて変動します。ただし、取引価格がそのまま電力量料金に反映されるわけではなく、単価の算出方法や条件は電力会社によって異なります。市場連動型プランを選択する場合は、必ず事前に確認しましょう。

※参考:一般社団法人 日本卸電力取引所.「沿革」.https://www.jepx.jp/company/history/ ,(2024-11-13).

低圧電力・高圧電力との違い

電力の契約区分には、特別高圧電力以外に低圧電力と高圧電力があります。ここからは、契約区分ごとの違いについて見ていきましょう。

契約電力の違い

契約電力は、契約区分によって異なります。

  • 低圧電力:50kW未満
  • 高圧電力:50kW以上2,000kW未満
  • 特別高圧電力:2,000kW以上

また契約電力の決定方法も、契約区分によって違いがあります。

契約区分 契約電力の決定方法 概要
低圧電力 主開閉器契約 メインブレーカー(主開閉器)の定格電流によって契約電力が決まる
負荷設備契約 使用する全ての電気設備の電気容量によって契約電力が決まる
高圧電力 小口 実量制 当月を含む過去1年間の最大需要電力(デマンド値)によって契約電力が決まる
大口 協議制 電力会社と契約者の話し合いによって契約電力が決まる
特別高圧

利用施設の違い

契約区分によって、利用施設にも以下のような違いがあります。

契約区分主な利用施設
低圧電力一般家庭、小規模の店舗・オフィス・工場など
高圧電力中小規模のオフィスビル・工場・施設など
特別高圧電力大規模なオフィスビル・工場・施設、空港、鉄道会社など

供給電圧の違い

契約区分による供給電圧の違いは、以下の通りです。

  • 低圧電力:100~200V
  • 高圧電力:6,000V
  • 特別高圧電力:20,000~140,000V

電力の供給方法の違い

電力の供給方法も、契約区分によって異なります。

契約区分電力の供給方法
低圧電力電柱に設置された柱上変圧器(トランス)で変圧された後、各家庭や施設に電力が供給される
高圧電力6,600Vの電圧で供給されるため、キュービクルなどの高圧受電設備を敷地内に設置する必要がある
特別高圧電力22,000V〜154,000Vの電圧で供給されるため、特高受変電設備を敷地内に設置する必要がある

※参考:電気事業連合会.「電気が伝わる経路」.https://www.fepc.or.jp/enterprise/souden/keiro/index.html ,(2024-11-13).

電気料金の違い

同じ電力会社でも、電気料金を構成する基本料金や電力量料金の単価は、契約区分によって異なります。基本的には契約電力が大きくなるに従って、電力量料金の単価が安くなる仕組みです。例えば、東京電力エナジーパートナーの低圧・高圧・特別高圧の各プランの基本料金と電力量料金は、以下のようになっています。

契約区分 基本料金(kW) 電力量料金(1kWh)
夏季 その他季
低圧電力 1,098円05銭 27円14銭 25円57銭
高圧電力 業務用電力※2025年以降新規加入の申込受付停止 小口 1,890円00銭 20円32銭 19円16銭
大口 1,890円00銭 20円32銭 19円16銭
産業用電力 小口※新規加入の申込受付停止 1,989円00銭 18円94銭 17円93銭
大口※2025年度以降、新規加入の申込受付停止 1,989円00銭 18円94銭 17円93銭
特別高圧 業務用電力 20kV供給 1,770円00銭 18円85銭 17円84銭
60kV供給 1,715円00銭 18円59銭 17円63銭
産業用電力 20kV供給 1,770円00銭 18円29銭 17円34銭
60kV供給 1,715円00銭 18円04銭 17円12銭
140kV供給 1,660円00銭 17円80銭 16円90銭

※参考:東京電力エナジーパートナー.「低圧電力」.https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/old02.html ,(2024-11-13).

※参考:東京電力エナジーパートナー.「業務用電力(契約電力500kW未満)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan06.html ,(2024-11-13).

※参考:東京電力エナジーパートナー.「業務用電力(契約電力500kW以上)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan04.html ,(2024-11-13).

※参考:東京電力エナジーパートナー.「高圧電力A(契約電力500kW未満)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan12.html ,(2024-11-13).

※参考:東京電力エナジーパートナー.「高圧電力(契約電力500kW以上)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan10.html ,(2024-11-13).

※参考:東京電力エナジーパートナー.「特別高圧電力A」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan02.html ,(2024-11-13).

※参考:東京電力エナジーパートナー.「特別高圧電力B」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan08.html ,(2024-11-13).

電力供給の経路と仕組み

発電所で作られた電力は、以下の配電系統で複数の変電所を経由し、少しずつ電圧を下げながら供給されます。

  1. 発電所
  2. 超高圧変電所
  3. 一次変電所(特別高圧電力を供給)
  4. 中間変電所(特別高圧電力を供給)
  5. 配電用変電所(高圧電力を供給)
  6. 柱上変圧器(低圧電力を供給)

発電所で作られた電力は、まず超高圧変電所で275,000〜500,000Vの超高圧に変電されます。超高圧にするのは、低い電圧にしてから送電すると電気抵抗が強くなり、送電中の電気のロスが多くなるからです。その後、いくつかの変電所を経て特別高圧は22,000V以上、高圧は6,600V以上、低圧は100Vもしくは200Vに変圧され、各施設や一般家庭に供給されます。

なお、特別高圧電力は、配電系統の中でも上流の一次変電所・中間変電所から受電するため、高圧電力や低圧電力よりも電気のロスが少ないです。

※参考:電気事業連合会.「電気が伝わる経路」.https://www.fepc.or.jp/enterprise/souden/keiro/index.html ,(2024-11-13).

特別高圧電力における停電リスクを軽減するための4つの受電方式

特別高圧電力は、空港や鉄道会社、大型医療機器を保有する病院といった停電が発生した際に大きな影響が出やすい施設で利用されることが多いです。そのため、停電リスクを軽減できるように受電方式が工夫されています。

ここからは、特別高圧電力の4つの受電方式について見ていきましょう。

本線予備線受電

本線予備線受電とは、本線と予備線の2回線を使用して受電する方式です。

通常は本線で受電しますが、万が一本線が故障した場合は予備線に切り替えて受電できるため、停電を短時間にできます。

本線予備電源受電

本線予備電源受電とは、本線と予備線の2回線を使用して受電する方式、かつ本線と予備線で異なる変電所から電力が供給される方式です。

前述した本線予備線受電の場合、電力を供給している変電所自体に問題が発生すると、停電した際の復旧に時間がかかってしまいます。

しかし、本線と予備線で別の変電所から電力が供給される本線予備電源受電なら、片方の変電所でトラブルが発生してももう片方の変電所に切り替えられるので、長時間の停電を回避できる可能性が高いのです。

ループ受電

ループ受電とは、特別高圧電力の契約をしている他の施設とループ状に配電線を設置することにより、常に2回線で受電できる方式です。

万が一、一つの回線が故障した場合でも、その回線を遮断すれば、もう一つの回線から受電できるため、停電が起こりきません。22〜60kVの特別高圧電力で採用されている方式です。

スポットネットワーク受電

スポットネットワーク受電とは、一般的に3回線を使って受電する方式です。

万が一、一つの回線が故障しても、残りの回線から受電できるため、停電のリスクを限りなく低くできます。契約電力が2,000kW以上の事業者を対象にした受電方式です。4つの受電方式の中でも特に停電が起きにくいといわれていますが、その分コストがかかってしまうため、大規模かつ重要度の高い施設を有している需要家に適しています。

特別高圧電力の受電設備の保守・点検におけるルール

特別高圧電力は、その名の通り非常に高い電圧のため、電気事故が発生してしまったときの危険性が高いです。そのため電気事業法では、受電設備の保守・点検に関して以下が義務付けられています。

  • 保安規定の作成および定期点検の実施(毎月、隔月もしくは3カ月ごとの月次点検および年1回の年次点検)
  • 第一種電気主任技術者・第二種電気主任技術者免状を所有する「主任技術者」の選任と届け出の実施

電気主任技術者には以下の3種類があり、資格の種類によって扱える電圧が異なります。

  • 第一種:あらゆる電圧の事業用電気工作物を扱える
  • 第二種:17万V未満の電圧の事業用電気工作物を扱える
  • 第三種:5万V未満の電圧の事業用電気工作物を扱える(出力5,000kW以上の発電所を除く)

特別高圧電力を利用する施設の場合、第一種電気主任技術者・第二種電気主任技術者の常駐が義務付けられているので、外部委託は認められていません。

また労働安全衛生法では、特別高圧電力を契約している施設で働く全従業員に対して、「高圧・特別高圧電気設備取扱特別教育講習会」の受講が義務付けられています。

電気主任技術者や保安管理業務については、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ

特別高圧電力を利用している施設は使用電力量が桁違いのため、電力量料金単価がたった数円違うだけでも、電気料金は大幅に変わります。少しでも電気料金を抑えるには、複数の電力会社を比較して自社に合った料金プランを選ぶことが大切です。

特別高圧電力で電力会社の切り替えを検討しているなら、伊藤忠エネクスが提供している法人向け電力供給サービス「TERASELでんきforBiz」がおすすめです。企業の電力使用状況やニーズに応じてオーダーメイドの料金プランを提供しているため、無理なく電気料金の削減を目指せます。さまざまな業界で電気料金の削減実績があるので、特別高圧電力の電気料金にお悩みの企業は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

TERASELでんき for Biz. 法人向け電力供給サービス 詳細はこちら 一覧へ戻る 一覧へ戻る

キーワード検索