業務用電力とは? 産業用電力との違いや電力会社ごとの単価を紹介
2004年4月・2005年4月に高圧区分の電力自由化が始まって以降、高圧電力を契約する需要家は、自由に電力会社を選べるようになりました。新電力が次々と登場し、現在は電力会社も料金メニューも選択肢が豊富に用意されています。
本記事では、高圧電力の概要や分類、低圧電力・特別高圧電力との違いを解説します。記事後半では、高圧電力の電気料金の削減方法もご紹介しているので、なるべく電気料金を抑えたいと考えている企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
※2024年12月時点の情報です
高圧電力は、電力の契約区分の一つです。契約電力が50kW以上2,000kW未満の場合、高圧電力に該当します。また「電気設備に関する技術基準を定める省令」では、「直流にあっては七百五十ボルトを、交流にあっては六百ボルトを超え、七千ボルト以下のもの」が高圧電力として定義されています。供給電圧は、6,000Vであることが一般的です。
中小規模のオフィスビルや工場、学校、病院、商業施設、マンションなどで利用されていることが多いです。
※出典:e-GOV 法令検索.「電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十二号)」.https://laws.e-gov.go.jp/law/409M50000400052 ,(2023-03-20).
高圧電力は、契約電力によってさらに「高圧小口」と「高圧大口」の2種類に分類されます。ここからは、それぞれの違いについて見ていきましょう。
契約電力が50kW以上500kW未満の場合は、高圧小口に該当します。主に小規模なオフィスビルや工場、施設などで利用されます。
高圧小口の場合、契約方法は基本的に実量制となります。実量制とは、電力使用のピーク時に電力不足に陥らないよう、当月を含む過去12カ月間の最大需要電力(最大デマンド値)のうち、最も大きい値を基にして契約電力を決定する方法です。
契約電力が500kW以上2,000kW未満の場合は、高圧大口に該当します。主に中規模なオフィスビルや工場、施設などで利用されます。
高圧大口の場合、契約方法は基本的に協議制となります。協議制とは、電力会社と契約者が話し合いによって契約電力を決める方法です。具体的には、最大需要電力に加え、使用する電気設備や同業種の負荷率などを踏まえて決定します。負荷率とは、契約電力のうち実際に使用された電力の割合のことです。
業務用電力とは、旧一般電気事業者とも呼ばれる、東京電力や関西電力などの大手電力会社が法人向けに提供している、高圧電力の料金メニューの一種です。
業務用電力は動力用200Vと電灯用100Vを組み合わせて電力供給を行うメニューで、オフィスや商業施設、学校、病院といったさまざまな施設で利用されています。業務用電力と対になる料金メニューとして産業用電力もあり、こちらは中規模以上の工場で利用されることが多いです。
なお、業務用電力については、以下の記事で詳しく解説しています。
高圧電力の電気料金の計算方法は、電力会社や料金プランによって異なります。本記事では多くの電力会社で採用されている「固定単価プラン」と「市場連動型プラン」の2つの計算方法をご紹介します。なお、高圧小口と高圧大口では、電気料金の計算方法は変わりません。
固定単価プランは、電気料金を構成する要素の一つである「電力量料金」の単価があらかじめ契約で定められている料金プランです。
固定単価プランの電気料金の計算方法は、以下の通りです。
各項目の概要と算出方法は、以下の通りです。
項目 | 概要 | 算出方法 |
基本料金 | ・契約電力および力率に応じて算出される ・使用電力量にかかわらず、毎月契約で定められた料金を支払う必要がある | 基本料金単価 × 契約電力 × 力率割引および割増 |
電力量料金 | ・使用電力量によって変動する従量課金 ・契約期間中の電力量料金単価はあらかじめ定められている | 電力量料金単価 × 使用電力量 |
燃料費調整額 | ・燃料価格の変動に応じて単価が決まる調整金 ・使用電力量に応じて算出される | 燃料費調整単価 × 使用電力量 |
再生可能エネルギー発電促進賦課金 | ・FIT制度によって再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際に必要な費用を賄うために、使用電力量に応じて算出される賦課金 ・全ての需要家が負担するもの ・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、毎年経済産業大臣が設定する | 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用電力量 |
固定単価プランの電力量料金単価はあらかじめ契約で定められていますが、中には季節や時間帯によって異なる単価が設定されているプランもあります。事前に契約内容や電気需給約款を確認しておきましょう。
市場連動型プランとは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格に応じて、30分ごとに電力量料金が変動する料金プランです。
市場連動型プランの電気料金の計算方法は、以下の通りです。
各項目の概要と算出方法は、以下の通りです。
項目 | 概要 | 算出方法 |
基本料金 | ・契約電力および力率に応じて算出される ・使用電力量にかかわらず、毎月契約で定められた料金を支払う必要がある | 基本料金単価 × 契約電力 × 力率割引および割増 |
電力量料金 | ・JEPXの取引価格に合わせて30分ごとに変動する電力量料金単価と、使用電力量に応じて決まる変動料金 | 電力量料金単価 × 使用電力量 |
再生可能エネルギー発電促進賦課金 | ・FIT制度によって再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際に必要な費用を賄うために、使用電力量に応じて算出される賦課金 ・全ての需要家が負担するもの ・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、毎年経済産業大臣が設定する | 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用電力量 |
市場連動型プランでは、燃料費調整額が設定されていないのが一般的です。電力調達コストの変動が、電力量料金に反映されているからです。
電力量料金はJEPXの取引価格に応じて変動します。ただし、取引価格がそのまま電力量料金に反映されるわけではなく、単価の算出方法や条件は電力会社によって異なります。市場連動型プランを選択する場合は、事前に必ず確認しましょう。
電力の契約区分には、高圧電力以外に低圧電力と特別高圧電力があります。ここからは、契約区分ごとの違いについて見ていきましょう。
契約区分ごとに利用される施設が異なります。詳細は以下の通りです。
契約区分 | 主な利用施設 |
低圧電力 | 一般家庭、小規模の店舗・オフィス・工場など |
高圧電力 | 中小規模のオフィスビル・工場・施設など |
特別高圧電力 | 大規模なオフィスビル・工場・施設、空港、鉄道会社など |
契約電力は、それぞれ以下の通りです。
また契約電力の決定方法も、契約区分によって異なります。
契約区分 | 契約電力の決め方 | 詳細 | |
低圧電力 | 主開閉器契約 | メインブレーカー(主開閉器)の定格電流によって契約電力が決まる | |
負荷設備契約 | 使用する全ての電気設備の電気容量によって契約電力が決まる | ||
高圧電力 | 小口 | 実量制 | 当月を含む過去12カ月間の最大需要電力(デマンド値)によって契約電力が決まる |
大口 | 協議制 | 電力会社と契約者の個別の協議によって契約電力が決まる | |
特別高圧 |
供給電圧は、それぞれ以下の通りです。
発電所で作られた電力は、以下の配電系統で複数の変電所を経由し、少しずつ電圧を下げながら供給されます。
高圧電力の場合、配電用変電所から送電された6,600Vの電力を、需要家の施設内に設置したキュービクルと呼ばれる受電設備で変圧し、100Vや200Vに下げてから施設内へ供給します。
また特別高圧電力の場合は、一次変電所や中間変電所から送電された22,000V〜154,000Vの電力を需要家の施設内に設置した特高受変電設備で変圧し、施設内や工場内へ供給します。
一方、低圧電力の場合は、配電用変電所から送電された電力が、電柱に設置されている柱上変圧器(トランス)によって100Vもしくは200Vに変換されてから、配電線を通して各家庭や施設に供給されます。
※参考:電気事業連合会.「電気が伝わる経路」.https://www.fepc.or.jp/enterprise/souden/keiro/index.html ,(2024-11-13).
同じ電力会社でも、契約区分によって電気料金を構成する基本料金や電力量料金の単価は異なります。基本的には契約電力が大きくなるに従って、電力量料金の単価が安くなる仕組みです。一例として、東京電力エナジーパートナーの低圧電力・高圧電力・特別高圧電力それぞれの基本料金と電力量料金をご紹介します。
契約区分 | 基本料金(/kW) | 電力量料金(/kWh) | |||
夏季 | その他季 | ||||
低圧電力 | 1,098円05銭 | 27円14銭 | 25円57銭 | ||
高圧電力 | 業務用電力 ※2025年以降新規加入の申込受付停止 | 小口 | 1,890円00銭 | 20円32銭 | 19円16銭 |
大口 | 1,890円00銭 | 20円32銭 | 19円16銭 | ||
産業用電力 | 小口 ※新規加入の申込受付停止 | 1,989円00銭 | 18円94銭 | 17円93銭 | |
大口 ※2025年度以降、新規加入の申込受付停止 | 1,989円00銭 | 18円94銭 | 17円93銭 | ||
特別高圧電力 | 業務用電力 ※2024年4月1日以降に契約した場合 | 20kV供給 | 1,770円00銭 | 18円85銭 | 17円84銭 |
60kV供給 | 1,715円00銭 | 18円59銭 | 17円63銭 | ||
産業用電力 ※2024年4月1日以降に契約した場合 | 20kV供給 | 1,770円00銭 | 18円29銭 | 17円34銭 | |
60kV供給 | 1,715円00銭 | 18円04銭 | 17円12銭 | ||
140kV供給 | 1,660円00銭 | 17円80銭 | 16円90銭 |
※参考:東京電力エナジーパートナー.「低圧電力」.https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/old02.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「業務用電力(契約電力500kW未満)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan06.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「業務用電力(契約電力500kW以上)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan04.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「高圧電力A(契約電力500kW未満)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan12.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「高圧電力(契約電力500kW以上)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan10.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「特別高圧電力A」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan02.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「特別高圧電力B」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan08.html ,(2024-11-13).
電気料金以外にかかる費用についても、契約区分によって違いがあります。
高圧電力や特別高圧電力の場合、受電設備であるキュービクルや特高受変電設備を必ず設置しなければならないため、設備の設置費用やメンテナンス費用が必要です。また定期点検も実施する必要があるので、電気主任技術者の人件費や外部委託費も発生します。
一方、低圧電力の場合は受電設備は不要なので、基本的に電気料金以外の費用は発生しません。
現在の契約区分が高圧電力か低圧電力か分からない場合の確認方法は、主に2つです。
一つ目は受電設備の有無です。先述した通り、低圧電力には受電設備は必要ありません。そのため、電気の供給を受ける施設内にキュービクルや特高受変電設備があれば、高圧電力もしくは特別高圧電力を受電していることが分かります。
二つ目は請求書の内容です。請求書には「契約種別」という欄があります。ここに「高圧」と記載されていれば、高圧電力の契約区分であるということです。電力会社によっては契約種別にプラン名が記載されているケースもありますが、その場合は「供給電圧」に6,000V以上と記載されていれば、高圧電力もしくは特別高圧電力の契約区分であるということになります。
ここからは、高圧電力の電気料金を削減する方法を4つご紹介します。
高圧電力の電気料金を削減する方法の一つは、節電の実施です。具体的には、以下のような方法があります。
節電を実現するには従業員の協力も必要です。節電対策によってどの程度使用電力量を抑えられたかを可視化すれば、従業員の節電に対するモチベーションを高められ、協力を得やすくなるでしょう。また省エネ効果の高い設備に切り替えることもおすすめです。消費電力が抑えられるので、電気料金の削減につながります。
伊藤忠エネクスは、省エネ効果の高いLEDや空調設備への切り替えを支援する「省エネルギー商材斡旋サービス」を提供しています。省エネルギー商材斡旋サービスを利用すれば、最新の省エネ設備を初期投資ゼロで導入可能です。省エネ設備に入れ替えただけで、消費電力を約60%以上削減できたという事例もあります。
導入から5年間は電気料金とは別に月額のサービス料が発生しますが、6年目からは設備の所有権が移転し、契約者のものになります。サービス料もかからなくなるため、さらなるコストダウンにつながるでしょう。
省エネルギー商材斡旋サービス
03-4233-8041 平日9:00〜17:30最大需要電力を抑えることも、高圧電力の電気料金削減に効果的です。
先述した通り、高圧小口は実量制、高圧大口は協議制によって契約電力が決まりますが、いずれの場合も最大需要電力が影響します。つまり、最大需要電力を抑えると契約電力が下がり、基本料金も安くなるのです。最大需要電力を抑える主な方法には、ピークカットとピークシフトがあります。
ピークカットは、使用電力が多い時間帯の消費電力を抑えて、デマンド値を下げる方法です。一方、ピークシフトは、電力を使用するタイミングを使用電力の多い時間帯から少ない時間帯にずらして、デマンド値を下げる方法です。ピークシフトの場合、一日当たりの使用電力量は変えずに、ピーク時のデマンド値を下げられるので、ピークカットよりも取り組みやすいでしょう。
ピークカット・ピークシフトについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
デマンド値の上昇を防いで最大需要電力を抑えるには、伊藤忠エネクスが提供しているデマンドコントローラー「Ai-Glies」がおすすめです。
デマンドコントローラーとは、あらかじめ設定したデマンド値に近づくと、自動で設備の稼働を制御する機器です。「Ai-Glies」は消費電力が大きくなりやすい空調設備に特化しており、外気の不快指数を監視し、室温が変化する前に空調の出力を自動で調整します。そのため室内の快適さを維持しながら、デマンド値の上昇を抑えることができるのです。
デマンドコントローラーに関するお問い合わせ
03-4233-8041 平日9:00〜17:30力率の改善も、高圧電力の電気料金削減につながります。力率とは送電された電力のうち、有効な電力の割合のことです。つまり、力率が高ければ、電気を効率良く使えているということになります。
高圧電力や特別高圧電力の場合、力率85%を基準とし、1%上回るごとに基本料金が1%割引になり、逆に1%下回るごとに基本料金が1%割増になる「力率割引・割増」が採用されているケースが多いです。
力率を改善すればするほど基本料金が安くなるので、電気料金の削減が可能です。電力の無駄をなくすコンデンサを設置することで、力率を改善できます。
高圧電力の電気料金を削減するなら、電力会社の乗り換えも検討しましょう。基本料金や電力量料金は、電力会社や料金プランによって異なります。自社の電力使用状況に合った電力会社や料金プランに切り替えれば、今と同じ使用電力量でも電気料金を削減できるでしょう。
特に契約電力の大きい企業や使用電力量の多い企業の場合は、基本料金単価や電力量料金単価が少し下がるだけでも、電気料金の削減効果を実感しやすいです。まずは複数の電力会社の料金プランや契約内容を比較検討してみるのがおすすめです。
高圧電力は契約電力が50kW以上2,000kW未満で、中小規模のオフィスビルや工場、施設などの利用に適している契約区分です。同じ高圧電力でも料金の計算方法は、固定単価プランと市場連動型プランで異なるため、自社の電力使用状況に合った料金プランを選ぶことが大切です。また電力会社によっても料金プランや契約内容は変わってくるので、電気料金を無理なく削減したいなら、電力会社の見直しも検討しましょう。
伊藤忠エネクスが提供する「TERASELでんきforBiz」は、法人向けの電力供給サービスです。企業の電力使用状況やニーズに合わせてオーダーメイドの料金プランをご提案するので、電気料金を削減したいと考えている企業に適しています。また使用電力量に応じて環境価値を調達することもできるので、電力由来のCO2排出量を実質ゼロにでき、脱炭素経営の実現にもつながるでしょう。
高圧電力の電力料金を削減したい、電力会社を乗り換えたいと考えている企業の担当者の方は、お気軽に伊藤忠エネクスにお問い合わせください。
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