オフサイトPPAとは? オンサイトPPAとの違いや注目されている背景を分かりやすく解説

オフサイトPPAとは? オンサイトPPAとの違いや注目されている背景を分かりやすく解説

現在、太陽光発電システムで作られた電気を利用して、脱炭素化を進めたい企業が増えています。一方で、太陽光発電システムを購入・設置して運用をするには、多くの費用や手間がかかるため、なかなか導入に踏み出せない企業も多いでしょう。

そこで昨今、注目を集めているのがPPAモデルです。PPAモデルを利用すれば、初期投資不要で手軽に太陽光発電システムを導入できます。ただし、一口にPPAモデルと言っても、オフサイトPPAやオンサイトPPAといった種類があり、それぞれで特徴が異なります。

そこで本記事では、PPAモデルの一つであるオフサイトPPAについて、概要やメリット、デメリットなどを解説します。太陽光発電システムの導入を検討している企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

※本記事は2025年2月時点の情報です

オフサイトPPAとは?

PPAモデルとは「Power Purchase Agreement/電力販売契約」の略で、自家消費型太陽光発電の導入方法の一つです。「第三者所有モデル」とも呼ばれ、PPA事業者が所有している太陽光発電システムで発電された電気を環境価値とともに購入し利用します。需要家(企業)は、使用した分の電気料金をPPA事業者に毎月支払います。

自社で太陽光発電システムを設置・運用するには、多額の費用や手間がかかります。契約内容によりますが、PPAモデルを利用すれば初期投資が不要な上に、通常の運用中の定期点検やメンテナンスなどを行う必要もないことが一般的です。

オフサイトPPAとオンサイトPPAの違い

PPAモデルには、オフサイトPPAとオンサイトPPAの2種類があります。

オフサイトPPAとは、”需要地ではないオフサイト”にPPA事業者が所有する太陽光発電システムを設置する方法です。遠隔地にある太陽光発電システムから、小売電気事業者を介して送電するので、複数の拠点へ電力供給が可能です。

ただし、小売電気事業者や一般送配電事業者を介するため、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)がかかるという点に注意が必要です。再エネ賦課金とは、再生可能エネルギー(再エネ)由来の電気の買い取りに必要な費用を賄うために、全ての電力使用者が負担するものです。またオフサイトPPAでは一般の送配電網を通して電気を送電するので、託送料金もかかります。そのため、オフサイトPPAはオンサイトPPAに比べると、1kWh当たりの単価が高くなる傾向にあります。

一方、オンサイトPPAとは、”需要地の敷地内”にPPA事業者が所有する太陽光発電システムを設置する方法です。主な設置場所には、社屋・工場の屋上や屋根の上、カーポート、遊休地などが挙げられます。

オンサイトPPAで作った電気は敷地内にある施設・設備で使用でき、非常用電源として役立てることも可能です。オフサイトPPAとは違って小売電気事業者や一般送配電事業者を介することがないので、再エネ賦課金はかかりません(余剰電力を販売する場合などで、一般送配電事業者の管理する電線網を使用する場合には、再エネ賦課金がかかります)。また電力は自社の構内線や自営線などから直接供給され一般の送配電網を使用しないので、託送料金もかからないという特長があります。

ここまでご紹介したオフサイトPPAとオンサイトPPAの違いは以下の通りです。

オフサイトPPAオンサイトPPA
太陽光発電システムの設置場所需要家の敷地外需要家の敷地内
太陽光発電システムの所有者PPA事業者PPA事業者
初期費用不要であることが多い(契約内容による)不要であることが多い(契約内容による)
使用した分の電気料金の支払い必要必要
再エネ賦課金の負担必要不要(余剰電力を販売する場合などで、一般送配電事業者の管理する電線網を使用する場合には、再エネ賦課金がかかる)
託送料金の支払い必要不要
維持管理・メンテナンスなどの対応不要であることが多い(契約内容による)不要であることが多い(契約内容による)

オフサイトPPAの種類

オフサイトPPAは、さらに以下の2種類に分けられます。

  • フィジカルPPA
  • バーチャルPPA

それぞれの概要や仕組みについてご紹介します。

フィジカルPPA

フィジカルPPAは、PPA事業者の太陽光発電システムで発電された電気と、その電気が持つ環境価値がセットで供給される方法です。

一般的なフィジカルPPAの仕組みは、以下の通りです。

  • PPA事業者と需要家は、固定価格で電気と環境価値を売買する契約を結ぶ
  • PPA事業者は小売電気事業者を介して、電力を供給する
  • 需要家は小売電気事業者を介して、契約時に取り決めた固定価格を毎月支払う

フィジカルPPAでは、電気も環境価値も固定価格で取引されるので、価格変動による想定外の支出を抑えられます。なお、2021年に電気事業法施行規則の一部が改正され「発電事業者と需要家で組合を設立する」などの経済産業省が定めた指針に従えば、PPA事業者を介さずに発電事業者と需要家が直接契約できるようになりました。当該組合と直接契約(自己託送)した場合は、オフサイトPPAでも再エネ賦課金がかからなくなります。

バーチャルPPA

バーチャルPPAは、太陽光などの再エネ由来の電力に含まれる環境価値のみを取引する方法です。電力供給は行われず、需要家は従来契約している小売電気事業者の電力を使用します。

一般的なバーチャルPPAの仕組みは、以下の通りです。

  • PPA事業者と需要家は、契約時に再エネ由来の電力に含まれる環境価値の価格を取り決める
  • PPA事業者は太陽光発電システムで発電した電力を市場へ売電し、環境価値のみを需要家へ提供する
  • 需要家は小売電気事業者から電力を購入し、PPA事業者から環境価値を受け取る

契約時に取り決めた価格と市場価値に差がある場合には、その差額をPPA事業者と需要家で相互に補填します。結果的に差額が調整されるので、取引全体で見るとコストを固定化できます。具体的な仕組みや支払い方法はPPA事業者によっても異なるため、契約前にしっかりと確認してください。

オフサイトPPAが注目されている背景

ここからは、近年、オフサイトPPAが注目されている背景をご紹介します。

電気料金の高騰

以前は、オフサイトPPAの電気料金(利用料金)は一般の電気料金と比べると、割高な傾向にありました。しかし近年は、ロシアによるウクライナ侵攻や中東諸国の情勢不安、円安などの影響で燃料価格が高騰しており、それに比例して一般の電気料金も値上がり傾向にあります。

一般の電気料金の価格とオフサイトPPAの価格の差が縮まったことで、これまでコストの観点で導入を見送っていた企業も、オフサイトPPAを検討するようになっています。

再エネ化&CO2排出量削減の重要性

2020年10月に、日本政府は「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。2050年カーボンニュートラル宣言とは、2050年までにCO2を始めとした温室効果ガスの実質的な排出量をプラスマイナスゼロにすることを目指すものです。2050年カーボンニュートラルの実現のために、各企業でもCO2排出量を削減するさまざまな取り組みが進められています。

この取り組みの一つに、太陽光発電システムの導入があります。しかし、自社だけで太陽光発電システムを導入するには、費用や設置スペース、運用の手間などがかかり、ハードルが高くなりがちです。オフサイトPPAはこれらの問題を解決でき、比較的手軽に太陽光発電システムを導入できます。

自己託送の要件の厳格化

太陽光発電システムを導入する方法には、PPAモデルの他に自己託送もあります。自己託送とは遠隔地に設置した自社が所有する太陽光発電システムから、一般の送配電網を通して電気を使用する施設・設備に送電する方法です。太陽光発電システムを自社で所有しているので、使用した分の電気料金がかからない他、再エネ賦課金が発生しません。一方で、太陽光発電システムを導入するための初期費用が必要な他、一般の送配電網を使用するので託送料金がかかります。

オフサイトPPAと自己託送には、企業の敷地外に太陽光発電システムを設置する点や託送料金がかかる点など、類似した要素が多いです。そのためこれまでは予算に余裕があれば、自己託送を選択する企業も一定数存在していました。

しかし「オフサイトPPAでは負担する再エネ賦課金を、自己託送では負担しない」といった公平性の観点から指摘が上がり、2021年からは自己託送の要件厳格化へ向けた方針策定が進んでいます。現在発表されている主な案は、以下の通りです。

  • 太陽光発電システムの管理責任者の名義だけ自社にして、実際に運用をしていない場合は自己託送の対象外
  • 太陽光発電システムの運用・管理を外部委託する場合は、自己託送の対象外
  • 自己託送で送電された電気を自社の敷地内で自家消費する場合、敷地内であれば条件付きで他社(子会社など)と電気を共有できる

上記はあくまでも「案」であり、2025年2月時点で要件は確定していません。資源エネルギー庁は要件や制度の内容が決まるまで、自己託送の新規申し込みの受付を一時停止しています。

このような理由から、自己託送の代わりに自社の敷地外から再エネ由来の電力の供給を受ける方法として、オフサイトPPAを導入する企業が増えているのです。

※資源エネルギー庁.「再エネ導入の拡大に向けた今後の自己託送制度の在り方について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/068_03_00.pdf ,(2023-12-26).

オフサイトPPAのメリット

オフサイトPPAの導入には、さまざまなメリットがあります。ここからは主なメリットを6つ、ご紹介します。

敷地の広さや条件にかかわらず導入できる

企業が必要とする電力を太陽光発電システムで賄うには、ある程度の敷地面積が必要です。しかし、規模の大きな太陽光発電システムを設置できるほど、自社の敷地や屋根の上のスペースに余裕がある企業は多くないでしょう。

その点、オフサイトPPAでは自社の敷地外に太陽光発電システムを設置するので、敷地の広さにかかわらず導入できます。また敷地の広さの他にも、以下のような条件下の企業でも導入可能です。

  • 太陽光発電システムを設置しようと考えている屋根の形状や耐重量に問題がある
  • 強風や積雪、塩害の影響で、自社の敷地内に太陽光発電システムを設置できない

敷地の広さや条件にかかわらず太陽光発電システムを導入できる点が、オフサイトPPAのメリットの一つといえるでしょう。

初期費用がかからない

オフサイトPPAは、PPA事業者が所有する太陽光発電システムを利用するので、企業側で設備を購入したり設置したりする必要がありません。そのため設備購入費や設置費用といった初期費用がかからない点もオフサイトPPAのメリットです。一度に多額の費用をかけられないという企業でも、導入しやすいでしょう。

メンテナンス費用がかからない

太陽光発電システムは、定期的な保守点検・メンテナンスが義務化されています。そのため所有者はこれらにかかる費用を全額負担しなければなりません。

オフサイトPPAの場合、太陽光発電システムの所有権はPPA事業者にあるので、点検費用やメンテナンス費用はPPA事業者が負担します。さらにPPA事業者が適切なタイミング・頻度で点検やメンテナンスを行ってくれるので、企業側の手間がかからない点もメリットの一つです。

CO2排出量を削減できる

近年では、自社が排出するCO2だけではなく、サプライチェーン全体でCO2排出量を削減することが求められています。サプライチェーンにおけるCO2排出量は、以下の3つに分類されます。

  • Scope1:製品の製造・加工などによって、自社が直接排出するCO2排出量
  • Scope2:他社から供給された電気・熱・蒸気によって間接的に排出されるCO2排出量
  • Scope3:原材料の調達や、製品の販売後に排出されるCO2排出量

オフサイトPPAを導入すれば、Scope2のCO2排出量を削減できます。企業のイメージアップを図れる他、競合他社と差別化でき新たなビジネスチャンスをつかめる可能性もあるでしょう。

電力の価格変動リスクを軽減できる

一般的な電気料金は、化石燃料の調達コストや電力の需給バランスなどの影響により、一定の期間で単価が変動します。

例えば2021年1月には、卸電力取引市場「JEPX」の開設以来初めて、1日の平均市場価格が100円/kWhを超える事態が起こりました。市場価格が大幅に高騰したのには、主に以下の原因が挙げられます。

  • 気象庁の天候の見通しが外れ、激しい寒波が到来。想定外の電力需要が発生
  • 天候の見通しに合わせてストックしていたLNG(液化天然ガス)の在庫がひっ迫、燃料不足に陥った
  • 発電所のトラブルにより、電力供給力が低下

上記の市場価格の高騰は一時的なものでしたが、先述したウクライナ侵攻や中東諸国の情勢不安、円安などの影響で依然として電気料金は値上がり傾向にあります。企業は使用電力量が多いので大きな負担となるでしょう。

一方オフサイトPPA(フィジカルPPA)の場合、PPA事業者に毎月支払う単価は基本的には固定です。そのためオフサイトPPA(フィジカルPPA)を導入すれば、世界情勢や需給バランスの崩れによって起こる電力の価格変動リスクを軽減でき、安定した経営につなげられるでしょう。

※参考:資源エネルギー庁.「2021年初頭、電力供給が大ピンチに。どうやって乗り切った?(前編)」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/2020_2021winter_denryokukyokyu01.html ,(2021-11-15).

複数の拠点に電力供給ができる

オフサイトPPAでは、一般の電力系統を介して再エネ由来の電気を複数の拠点に供給することができるため、PPA事業者1社とオフサイトPPAの契約をすれば、本社はもちろんのこと、全国にある子会社や事業所、工場なども再エネ由来の電気を利用できます。そのためオフサイトPPAは、複数の拠点を持つ企業に適しています。

オフサイトPPAのデメリット・注意点

オフサイトPPAには、デメリットや注意点もあります。実際に導入を決める前に詳細を把握しておきましょう。

長期契約をする必要がある

オフサイトPPAを利用するには、PPA事業者と長期契約を結ぶ必要があります。どのくらいの期間にわたって契約しなければならないのかはPPA事業者によって異なりますが、一般的には10~20年単位で契約するケースが多いです。

契約内容により異なりますが、PPA事業者は、太陽光発電システムの導入費用やメンテナンス費用を負担する代わりに、利用企業にその分の費用を上乗せした電気料金を毎月請求することが一般的です。1カ月に請求する額はそこまで高くないため、全ての費用を回収するには長期間必要になり、10~20年単位での契約になることが多いのです。

途中解約をする場合は違約金が発生する可能性もあるので、契約前に確認しておきましょう。

再エネ賦課金や託送料金がかかることが一般的

先述した通り、オンサイトPPAでは再エネ賦課金はかかりませんが、オフサイトPPAでは小売電気事業者や一般送配電事業者を介して送電するので、再エネ賦課金がかかることが一般的です。また送電する際には一般の送配電網を使用するため、託送料金もかかります。

なお、オフサイトPPAは「計画値同時同量制度」の対象です。PPA事業者は事前に30分ごとの電気の需給量を予測して、発電量の計画を電力広域的運営推進機関へ提出・報告しなければなりません。

計画と乖離が出た際には、インバランス料金が発生します。インバランス料金自体はPPA事業者が支払うものですが、オフサイトPPAの電気料金にはその分の費用も含まれていることを認識しておきましょう。

今後一般の電気料金がオフサイトPPAより安くなる可能性もある

最近では一般の電気料金が高騰しているため、オフサイトPPAとの価格の差は縮まっている傾向にありますが、この傾向が長期間続く保証はありません。

実際に2023年1月~2024年5月には、政府による電気料金・ガス料金の値引き措置「電気・ガス価格激変緩和対策」が行われ、電気料金が大きく下がりました。電気・ガス価格激変緩和対策は一時的なものでしたが、2025年1月~3月には、再び電気料金・ガス料金を値下げする補助金事業が行われています。今後、政府が何らかの長期的な支援を行ったり世界情勢が大きく変わったりすることで、電気料金が値下がりする可能性もゼロではありません。

その場合、長期間にわたって固定単価で契約したオフサイトPPAよりも、一般の電気料金の方がお得になることもあるでしょう。そのようなリスクを踏まえて、オフサイトPPAの導入を検討する必要があります。

2025年の電気料金の見通しについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。

非常用電源として利用できない

オンサイトPPAの場合、周辺地域で停電が発生しても、太陽が出ている間は発電することができます。また蓄電池を併用すれば太陽光発電システムで作った電気をためることも可能です。ためた電気は災害時など、万が一のときの非常用電源として活用できるでしょう。

一方でオフサイトPPAの場合、遠隔地に太陽光発電システムを設置して一般送配電網で送電する仕組みのため、非常用電源として利用できません。自然災害などで一般送配電網がダメージを受けたときには使えなくなってしまいます。停電時のBCP対策として太陽光発電システムを導入したいと考えている場合は、オフサイトPPA以外の方法を選択するのがよいでしょう。

まとめ

オフサイトPPAは、企業の敷地の広さや条件にかかわらず、太陽光発電システムを導入できる方法です。初期費用やメンテナンス費用がネックで設置をためらっていた企業でも取り組みやすく、手軽に再エネ由来の電力を調達できるので、近年注目を集めています。

ただし、オフサイトPPAと一口に言っても、PPA事業者によって契約期間や電気料金の内訳が異なります。複数のPPA事業者を比較検討して、自社に合った企業を見つけることが大切です。

伊藤忠エネクスでは、法人向けの電力供給サービス「TERASELでんきforBiz」を提供しています。通常の電力供給の他、さまざまなメニューをご用意しており、オンサイトPPAやオフサイトPPAの導入も可能です。オフサイトPPAはフィジカルPPAとバーチャルPPAのどちらにも対応しています。

また必要な分の環境価値だけを調達できる環境価値オプションも提供しており、不足分の環境価値を追加で調達することも可能です。

企業の脱炭素化を推進したい企業担当者の方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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