需給調整市場とは? 電気の安定供給に欠かせない4つの調整力や取引の仕組みについて解説

需給調整市場とは? 電気の安定供給に欠かせない4つの調整力や取引の仕組みについて解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

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日本は「電力の安定供給」「電気料金上昇の抑制」「需要家の選択肢・事業者の事業機会の拡大」の3つを目的に、電力システム改革を実施してきました。2021年4月には電力システム改革の一環として需給調整市場が開設され、送配電事業者がより効率的に調整力を調達できるようになっています。

本記事では、需給調整市場や電力の安定供給に欠かせない調整力について、詳しく解説します。

※本記事の内容は2024年5月時点の情報です

需給調整市場とは?

需給調整市場とは?

電気を安定供給するには、需要と供給のバランスを常に保つ必要があります。需要と供給が一致しなければ周波数が乱れてしまい、設備が故障したり停電したりしてしまう可能性があるのです。

「需給調整市場」とは、送配電事業者が電力の需要と供給のバランスを取る際に必要な「調整力」を調達するための市場です。調整力とは、出力の調整ができる発電設備や蓄電池の利用、需要家による節電などによって調整可能な電力リソースのことを指します。

2021年3月までは各地域の送配電事業者がそれぞれ公募によって調整力を調達していましたが、2021年4月に需給調整市場が開設されてからは、エリアを問わず市場を通して調整力を確保できるようになりました。

調整力が必要になる4つの場面

調整力が必要になる4つの場面

調整力が必要な場面はいくつかあり、主に以下の4つが挙げられます。

  • インバランスの発生時
  • 再エネの発電量に予測誤差が生じた時
  • 時間内変動
  • 電源脱落

このような事象が発生した場合には、送配電事業者が調整力を活用して、需要と供給のずれを解消します。

インバランスの発生時

小売電気事業者と発電事業者は、前日正午までに翌日の発電販売計画と需要調達計画を作成し、電力広域的運営推進機関(OCCTO)に提出しなければなりません。計画を立てるに当たって、季節、曜日、時間帯、天候といった要素や過去の需給実績も踏まえて電力需要を予測しますが、突発的な発電所の停止や気温の急激な上昇などにより、計画と実需給がずれてしまうことがあり、これをインバランスといいます。

再エネの発電量に誤差が生じた時

再生可能エネルギー由来の発電は、発電量が天候に左右されやすく、安定しにくいため、発電量の予測と実績に誤差が生じることがあります。

時間内変動

電気の需要はリアルタイムで変わっていきます。需要と供給が30分単位では一致していても、それよりも短い時間では細かな変動が生じているケースがほとんどで、これを時間内変動といいます。

電源脱落

地震や発電所の設備故障などにより、発電設備が送電系統から切り離されることを電源脱落といいます。電源脱落が起こると電気の周波数が低下し、発電所の規模などによっては、大規模な停電が発生する恐れがあります。

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需給調整市場が開設された理由

需給調整市場は、エリアをまたいで公平かつ効率的に電気の需要と供給を調整することを目的として開設されました。それまではエリアごとに調整力を公募する必要があったため、調整力の調達に多くのコストがかかっていましたが、需給調整市場の開設により、エリアをまたいで広域的に調整力を調達することができるようになったため、各エリアで調整力を調達するよりも、調達コストや運用コストが低減されました。

また2020年に発送電分離が行われ、発電部門と送配電部門が法的に切り分けられたこともきっかけとなっています。電気の需要と供給を調整する給電指令機能が発電部門とは別になったことで、市場調達を通して需給調整を行う仕組みを確立することができるようになったのです。

需給調整市場で取引される商品の種類

電気の需要変動は細分化でき、発電機はそれぞれの変動成分に対応させて周波数を制御しています。2024年5月現在、需要調整市場における商品は、需要の変動成分に応じて以下の5種類が提供されています。

  • 一次調整力
  • 二次調整力①
  • 二次調整力②
  • 三次調整力①
  • 三次調整力②

5つの商品の特徴を簡単に表にまとめました。

  一次調整力 二次調整力① 二次調整力② 三次調整力① 三次調整力②
概要 極短周期成分と呼ばれる時間内変動および電源脱落などに対応する調整力 短周期成分と呼ばれる時間内変動もしくは電源脱落などに対応する調整力 ゲートクローズ(実需給の1時間前)以降に生じる予測誤差(長周期成分)に対応する調整力 ゲートクローズ以降に生じる需要予測誤差や再エネ出力予測誤差、電源脱落による需供給誤差について対応する調整力 FIT特例制度を利用している再エネ予測誤差に対応する調整力
取引開始年月 2024年4月~ 2024年4月~ 2024年4月~ 2022年4月~ 2021年4月~
指令・制御 オフライン オンライン オンライン オンライン オンライン
監視 オンライン(一部オフラインも可) オンライン オンライン オンライン オンライン
回線 専用線のみ(オフライン監視の場合は不要) 専用線のみ 専用線または簡易指令システム 専用線または簡易指令システム 専用線または簡易指令システム
入札時間単位 3時間 3時間 3時間 3時間 3時間
応動時間 10秒以内 5分以内 5分以内 15分以内 45分以内
継続時間 5分以上 30分以上 30分以上 3時間 3時間
最低入札量 1MW   1MW 1MW 1MW 1MW

※応動時間:電気の需給調整の指令が出てから、調整力を供給するのにかかる時間

※継続時間:継続して電気を供給できる時間

※簡易指令システム:専用線オンラインでつながっていない発電機やアグリゲーターに対して需給調整の指令を行うシステム

これらの調整力は段階的に取引がスタートしており、2021年4月から三次調整力②、2022年4月から三次調整力①、2024年4月から一次調整力、二次調整力①、二次調整力②の取引が行われています。

※出典:電力広域的運営推進機関.「今後の要件変更等について」. https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/files/youkenhenkou_20240327.pdf ,(2024-03-27).

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需給調整市場の仕組み

需給調整市場の仕組み

日本全国に存在する送配電事業者は、天気や気温などの予測データを基に、電力を供給する前日までに必要となる調整力を算出します。

需要調整市場は、送配電事業者が提示した必要となる調整力に対して売り手となる発電事業者やアグリゲーターが応札し、取引が行われる仕組みです。アグリゲーターとは、電力会社と需要家の間に立ち、需要家の持つエネルギーリソースを束ねて最大限活用することに取り組む事業者のことです。

なお脱炭素社会の実現のために、今後はさらに再生可能エネルギーの利用が増えていくことが予想されます。先述した通り、再生可能エネルギーによって発電された電気は、化石燃料によって作られる電気と比べて、供給量が変動しやすい傾向にあります。再生可能エネルギーの普及に伴い、予想外の需要や供給が発生し、調整力が必要になるケースが増えていくでしょう。そのため将来的には、需給調整市場による調整力の確保がより重要になると考えられています。

一般企業もアグリゲーターを通して需給調整市場に参加可能

一般企業もアグリゲーターを通して需給調整市場に参加可能

ここまでは、需給調整市場において、送配電事業者と発電事業者が取引をする調整力について解説してきましたが、一般企業もアグリゲーターを通して需給調整市場に参加し、電気の需給バランス維持に貢献することが可能です。

電気の供給量に対して需要を合わせる取り組みをデマンドレスポンス(DR)といい、アグリゲーターは主に、供給に対して需要が多いときに、契約している需要家に対して需要の抑制を呼びかけます。需要家が節電をしたりピークシフトをしたりして応えると、需要の抑制量に応じてインセンティブが贈られるのが一般的です。

伊藤忠エネクスのデマンドレスポンス

伊藤忠エネクスは法人向け電力販売サービス「TERASELでんき for Biz」を提供しており、電力需要が増える夏季や冬季には、契約企業向けにデマンドレスポンスを実施しています。対象の時間帯に電気の需要を抑制すれば、その結果に応じて電気料金が割引かれます。

2023年夏には565社が参加し、92.7%となる524社が節約に成功しました。節電できなかった場合のペナルティは一切ないため、リスクなしで参加できるのもメリットの一つです。

【2024年度】伊藤忠エネクスの夏季節電プログラム

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まとめ

2021年4月の需給調整市場の開設によって、送配電事業者はより効率的に調整力を調達できるようになりました。再生可能エネルギーのさらなる普及に伴って、調整力の必要性が増していくと考えられるため、発電事業者の調整力に頼るだけではなく、企業もアグリゲーターを通して積極的に需給調整市場に参加していくのがよいのではないでしょうか。

まずは、契約中の小売電気事業者が行っているデマンドレスポンスプログラムに参加するところから始めてみるのがおすすめです。要請に応じて節電を行えば、電気料金の割引といったインセンティブを得ることができ、また仮に目標を達成できなくても、ペナルティなどはないケースがほとんどです。

伊藤忠エネクスでも、夏季と冬季にデマンドレスポンスプログラムを実施しています。電力の安定供給に貢献したい、電気料金を削減したいという企業のご担当者さまは、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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