再生可能エネルギーとは?種類やメリット・デメリットを徹底解説!
バイオマス発電は、廃木材や食品廃棄物、家畜の糞尿といった、生物由来の資源を利用した発電方法です。カーボンニュートラルの実現や廃棄物量の削減といった循環型社会を目指す取り組みが世界中で進められる中、本来であれば廃棄物として処分される資源を活用したバイオマス発電は、環境に優しい発電方法として注目を集めています。一方で、発電コストの高さなど解決すべき課題もあり、日本ではまだ発電電力量が少ないのが現状です。
本記事では、バイオマス発電の種類やメリット・デメリット、国内の事例などをご紹介します。
目次
バイオマスとは「bio」(生物)と「mass」(量)から成る言葉で、動植物由来の化石燃料以外の生物資源全般を指します。木質資源、食品廃棄物、家畜糞尿、下水汚泥などがバイオマスの代表例です。
技術の進歩により、従来は利用が難しかったものも資源として活用できるようになり、日本では2000年代から徐々に各地で導入され、クリーンな再生可能エネルギー(再エネ)として、今後のさらなる普及が期待されています。
なお、資源エネルギー庁の調べによると、日本の総発電電力量に占めるバイオマス発電の割合は、2021年時点で3.2%程度です。
バイオマス発電を含む再生可能エネルギーについての基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。
※参考:資源エネルギー庁. 「令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績(確報)(令和5年4月21日公表)」(参照2023-7-27)
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/results.html
バイオマスには大きく分けて、3つの種類があります。
資源として利用しない限り、廃棄物として処分されてしまうバイオマスのことです。廃木材や廃棄紙、食品廃棄物、家畜の糞尿、パルプ工場廃液、下水汚泥などが挙げられます。堆肥や家畜の飼料として昔から利用されてきたものも少なくありません。
資源を産出する過程で生じ、これまで利用されずに捨てられてきたバイオマスのことです。代表的なものとしては、林地で木材を丸太に加工する際に生じる残材や、稲わら・麦わら・もみがらなどが挙げられます。
初めからバイオマスとして利用することを目的に生産された作物のことです。サトウキビや甜菜、トウモロコシ、菜種油、柳、ポプラなどが代表的なものです。バイオエタノールやバイオディーゼルなどの燃料や、プラスチックの原料として利用されるものもあります。
バイオマス発電の発電方式としては、3種類があります。
廃木材などのバイオマス(木質ペレットや木質チップ)を高温で熱処理し、それにより生じるガスによってタービンを回し発電する方式です。蒸し焼き状態にするとメタンや一酸化炭素などの可燃性ガスが生じる木材の性質を利用します。
ガス化することで直接燃焼させるよりも燃焼温度が高くなり、資源の利用効率が上がるため、小規模な発電所でも効率的に発電できるメリットがあります。
生ごみや家畜の糞尿、下水汚泥などのバイオマスを微生物によって発酵させ、その過程で生じるメタンなどの可燃性ガスを利用してタービンを回し発電する方式です。廃棄物として処理する必要があるものを資源として有効利用できます。
生ごみや家畜の糞尿など水分の多いものは、通常の方法で燃やすと燃焼効率が悪いですが、この方式であれば効率的に発電できます。
バイオマスを直接燃焼させて、水蒸気を発生させることでタービンを回し発電する方式です。間伐材や木くず、廃油、可燃ごみなどがよく利用される原料であり、原理は一般的な火力発電や廃棄物処理プラントと変わりません。
熱分解ガス化方式に比べると燃焼温度が低いため、発電効率の高い大型の発電設備に向いています。
バイオマス発電のメリットとしては、以下の4つがあります。
太陽光発電や風力発電、水力発電など他の再生可能エネルギーとは異なり、バイオマス発電は資源を燃焼することで発電するため、CO2を排出するのでは?という疑問を持たれるかもしれません。しかし、廃木材など、成長の過程で光合成によりCO2を吸収してきたバイオマスを燃料とした発電は、「京都議定書」においてCO2排出量が差し引きゼロの「カーボンニュートラル」と規定されています。
そのため、化石燃料を燃やす火力発電とは異なり、地球温暖化対策として有効な発電方法なのです。
バイオマス発電で利用されない限り、廃棄物として処分されてしまう廃木材や生ごみなどを燃料にするため、廃棄物の量を削減できます。廃棄物処理にかかるエネルギーを発電に使い、資源を有効利用できる点で、循環型社会の実現に寄与します。
カーボンニュートラルだけでなく、廃棄物削減という意味でも、バイオマス発電は環境にやさしい発電方法です。
太陽光発電や風力発電といった他の再生可能エネルギーは、天候などによって発電量が左右されるため、安定電源にならないものも少なくありません。一方で、バイオマス発電は、廃棄物などの資源を安定的に確保しさえすれば、発電量を自由に調整しやすく、安定電源として利用可能です。
廃木材や食品廃棄物、家畜の糞尿など、農山漁村には利用されていないバイオマスが多くあります。これらをバイオマス発電に利用することで農山漁村の自然循環機能が高まる他、発電事業を通じた産業の活性化や雇用の拡大などの効果も期待できます。
また国内の山林は木材が余剰状態にあり、森林機能の低下などが問題視されています。この余剰木材をバイオマス発電に有効活用することで、林業の活性化や山林の再生などにつながり得る点もメリットです。
一方で、バイオマス発電には以下のようなデメリットもあります。
バイオマス発電は他の再生可能エネルギーに比べて、発電コストが高い傾向があります。太陽光発電や風力発電、水力発電などは、一度設備さえ整えればエネルギー資源はほぼ無料で得られますが、バイオマス発電は資源の調達に多くの費用がかかるからです。例えば廃木材を利用する場合、林地から搬出し、木材を乾燥させた上で木質ペレット・木質チップに加工する必要があり、それぞれの工程でコストがかかります。
またバイオマスは広い地域に分散していることが多く、小規模分散型の発電設備になりやすく、資源の調達や運搬の他、管理にもコストがかかる点も、発電コストが高くなる一因です。
バイオマス発電で利用する資源は、生ごみや糞尿など水分が多いものも少なくありません。そのため燃焼温度が低くなり、その分エネルギー変換効率も低くなりやすいデメリットがあります。
一般的に木質バイオマスの変換効率は、蒸気タービンを使用する場合、約20%とされています。これは太陽光発電と同程度ですが、風力発電の変換効率は約30~40%、水力発電は約80%であり、再生可能エネルギーの中でも決して高いとは言えません。また火力発電の約40〜60%と比べても低い数字です。
特に小規模な発電設備の場合や、燃焼温度の低くなりやすい「直接燃焼方式」を用いる場合は、エネルギー変換効率が低くなりやすいです。
※参考:林野庁. 「令和2年度 森林・林業白書(令和3年6月1日公表)」(参照2023-7-27)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/R2hakusyo_h/all/chap3_2_3.html
木質バイオマスに関しては、森林・林業基本計画により利用できる間伐材の量が制限されているため、現状で大量の木質バイオマスを確保しようとすると、輸入に頼らざるを得なくなってしまいます。
輸入に依存すると、国際情勢によって価格や供給量が不安定になる可能性があります。国内の余剰木材を有効利用する観点からも、国内での資源供給を安定させる取り組みが必要です。
ここからは、日本におけるバイオマス発電の取り組み事例を、資源エネルギー庁の事例紹介を参考にご紹介します。
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「なっとく!再生可能エネルギー」(参照2023-7-27)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/biomass/index.html
林業や製材業が盛んな大分県日田市に立地するグリーン発電大分は、間伐材などの山林未利用材や、製材過程で発生する木くずを燃料とした木質バイオマス発電に取り組んでいます。間伐材や林地残材を日田地域を中心とした林業者と共に収集し、長期的かつ継続的に利用することで、森林の持続的な再生の仕組みづくりを目指しています。
出力は5,700kWで、隣接する園芸ハウスに排温水を提供するなど、低炭素型農業の実践にも寄与しています。
※参考:株式会社グリーン発電大分. 「山林未利用材による木質バイオマス発電事業」(参照2023-7-27)
http://www.gho.co.jp/plant/
岩手県葛巻町のくずまき高原牧場内にある畜ふんバイオマスシステムは、牛の排泄物を発酵させてメタンガスを抽出し、発電および熱回収をする仕組みです。畜ふんの適正管理を目的にしており、1日で乳牛200頭分にあたる13トンの糞尿を処理しています。
一般家庭生ゴミや事業所系生ゴミも利用しており、発生電力および熱はプラント内で消費しています。
※参考:くずまき高原牧場. 「畜産バイオガスプラント」(参照2023-7-27)
https://kuzumaki.jp/?post_type=map&p=2364
愛知県豊橋市が運営する汚泥処理施設のバイオマス利活用センターでは、下水汚泥に加えて、し尿・浄化槽汚泥、生ごみをメタン発酵処理することでバイオガスを取り出し、ガス発電に利用しています。さらに発酵処理後の残さである汚泥を固形燃料に加工し、石炭代替エネルギーとして活用しています。
発電量は、一般家庭換算で約1,890世帯分に当たる、6,800,000kWh/年です。
※参考:豊橋市上下水道局. 「豊橋市バイオマス資源利活用施設整備・運営事業」(参照2023-7-27)
https://www.city.toyohashi.lg.jp/30705.htm
太陽光発電などに比べると普及が遅れているバイオマス発電ですが、一般社団法人バイオマス発電事業者協会によると、一般木質・農作物残さに関しては、2030年には4,840,000kWの設備が稼働する見通しであり、2021年の1,980,000kWの2倍以上になります。
現在、国内の森林は伐採期を迎えた樹木が多くなっており、CO2の吸収量はこの20年で30%以上減少しています。そのため、カーボンニュートラルの実現や循環型社会を構築していく上では、こうした森林資源を安定的に循環利用できるバイオマス発電の普及がさらに重要になってくると予想されます。
国内に眠る未活用のバイオマスを利用することで、循環型社会の実現に近づくのはもちろん、国産のエネルギー資源の安定確保にもつながるため、バイオマス発電の一刻も早い普及が期待されます。
※参考:一般社団法人バイオマス発電事業者協会. 「今後のバイオマス発電の導入見通し <一般木質・農作物残さ>」(参照2023-7-27)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/030_02_00.pdf
バイオマス発電は、これまで利用されることのなかった生物由来の廃棄物などを資源として有効活用できる発電方法であり、カーボンニュートラルの実現や廃棄物量の削減を目指す上で、重要な取り組みの一つです。しかし、発電コストの高さや安定したバイオマスの確保といった解決すべき課題もあり、まだまだ発電量は少ないのが現状です。
一般企業が今すぐバイオマス発電を導入するのはなかなか難しいかもしれませんが、同じ再生可能エネルギーでも太陽光発電なら比較的容易に導入できます。
伊藤忠エネクスでは自家消費型太陽光発電システム「テラセルソーラー」を提供しています。お客さまの保有施設に太陽光発電設備を設置し、発電した電気は自家消費いただき、当社へは定額エネルギーサービス料(設備利用料、メンテナンス費など)をお支払いいただきます。初期費用を抑えて太陽光発電を導入できる他、CO2排出量の削減や電気料金の上昇リスクの低減など、さまざまなメリットがあります。
「テラセルソーラー」のサービス詳細や導入事例は、以下のページをご覧ください。
03-4233-8055 平日 9:00~17:30参考URL
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/biomass/index.html
https://enechange.jp/articles/biomass_power_generation
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/results.html
https://ykpartners.jp/2021/10/21/biomass_types/
https://benesse.jp/sdgs/article18.html
https://www.yanmar.com/jp/about/ymedia/article/biomass.html
href=”https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/R2hakusyo_h/all/chap3_2_3.html”>https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/R2hakusyo_h/all/chap3_2_3.html
https://evdays.tepco.co.jp/entry/2023/03/10/kurashi35
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/030_02_00.pdf