電力の小売自由化により、電気の契約は、さまざまな電力会社や料金プランの中から選べるようになりました。同じエリア・同じ使用電力量でも、契約内容によって電気料金に差が生まれるため、特に使用電力量が多い企業は、1kWh当たり数円の違いであっても無視できないでしょう。切り替えによって今よりも確実に電気料金を削減するには、見積もりを確認する際にいくつかのポイントを漏れなくチェックする必要があります。
本記事では高圧電力を契約している企業の総務担当の方へ向けて、電力会社を切り替える際の5つのチェックポイントをご紹介します。お手元の見積もり書の内容と照らし合わせながら、一つずつ確認してみてください。
※本記事の内容は2025年11月時点の情報です
目次
高圧電力の料金制度は、大きく「固定単価プラン」と「市場連動型プラン」の2種類に分けられます。この2つのプランは双方にメリット・デメリットがあるため、どちらの方が良いとは一概には言えませんが、電気料金が高騰するリスクを回避したい場合や、電気料金の見通しをある程度立てられるのが望ましい場合は、固定単価プランの方がおすすめです。
電気料金の内訳で最も割合が大きいのが電力量料金です。固定単価プランでは、契約内容の変更や料金改定などがない限り、契約期間中は「電力量料金単価」が固定されており、使用電力量の増減によってのみ電力量料金が変動します。そのため、電気料金が高騰するリスクが低く、また見通しを立てやすいのです。
一方、市場連動型プランでは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格に合わせて、電力量料金単価が30分ごとに変動します。固定単価プランと比べると電気料金の変動が大きくなりやすい料金制度といえるでしょう。市場価格が反映されるため、電気料金の高騰のリスクはもちろんありますが、逆に固定単価プランよりも安くなることもあるのが市場連動型プランのメリットです。
注意しなければならないのは、一見、固定単価プランに見える市場連動型プランです。
電力会社の中には、電力量料金単価は固定にし、代わりに市場価格を反映させた「燃料費等調整額」や「電源調達調整費」といった独自項目を設けているところがあります。見積書をパッと見ただけでは、市場価格と連動する項目があるかどうか分からないケースもあるため、電力会社のWebサイトや電気需給約款などで、各項目の内容や金額の算定方法を確認するようにしましょう。
なお、近年では多様な料金プランが増えてきており、固定単価プランと市場連動型プランの中間に位置するものも登場しています。そのため固定単価プランと市場連動型プランのどちらにするか方向性が定まったら、できるだけ幅広い電力会社をピックアップし、自社により適した料金の仕組みやオプションを導入している料金プランがないかどうか探してみましょう。
固定単価プランと市場連動型プランの違いについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
▼高圧電力の固定単価プランと市場連動型プランとは? メリット・デメリットを徹底解説
切り替え先の料金プランがどの形態のものなのか、またどの料金プランが自社に合っているのかを見分けるには、以下の4つを契約前に確認しておきましょう。
電力会社から見積書を受け取ったら、現在の電気料金と見積もりの内容を照らし合わせてみましょう。このとき、必ず燃料費調整額を含んだ総額をチェックしてください。基本料金と電力量料金の値下がりによって現在より電気料金が安くなるように見えても、独自の燃料費調整額が上乗せされることで、実際に請求される電気料金が跳ね上がってしまう可能性があるからです。
燃料費調整額は、世界の市場動向や為替レートによって大きく変動する燃料価格を、電気料金に反映させるための項目です。世界的なエネルギー需給のひっ迫によって燃料価格が高騰している近年の状況を受け、独自の燃料費調整額を導入する電力会社が増えてきています。先述した燃料費等調整額や電源調達調整費も独自の燃料費調整額の一つです。
2021年から2022年にかけては、新型コロナウイルスの世界的流行による外出自粛からの経済の回復や、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、一時的にLNG(液化天然ガス)や石炭価格が高止まりしました。しかし、2025年現在はエネルギー需給がやや落ち着き、燃料費調整単価は全体として下落傾向にあります。ただし、再び世界的に燃料価格が上昇すれば、電気料金にも即座に反映されるため、油断はできません。
こうした動向を踏まえると「今の単価が安いかどうか」だけではなく「高騰時にどこまでの変動を許容できるか」という観点で契約を検討することが重要です。なお、安ければ安いほど良いように思うかもしれませんが、大幅に安過ぎる場合、後述する電力会社の倒産リスクなどが高くなるため注意が必要です。「燃料費調整単価が安過ぎないか」も、併せてチェックしておいてください。
燃料費調整額が高いか安いかは、旧一般電気事業者の燃料費調整単価との比較により判断できます。見積書や電力会社のWebサイトで確認できる燃料費調整単価と比べてみましょう。
例えば東京電力エナジーパートナーの場合、2026年1月の燃料費調整単価は – 1.43円/kWhです。
注意点として、実際には燃料費調整額が電気料金に含まれるのにも関わらず、燃料費調整額の入っていない見積もりを提示してくる電力会社もあります。とはいえ、近年では電気料金の高騰が続いた経験から、需要家の電気料金に対する関心が高まっているため、電気料金の内訳の透明性を高めるような動きも増えてきています。
燃料費調整額、あるいは「燃料費調整額及び再生可能エネルギー発電促進賦課金はエリア電力会社様と同単価にてご請求させて頂きます」といった文言のどちらも記載されていない場合は、改めて燃料費調整額を確認できる見積書を依頼すると共に、契約しようとしている電力会社のWebサイトなどで燃料費調整単価が公表されているか確認してみましょう。
なお、これまで旧一般電気事業者では、規制料金メニューに合わせて自由料金メニューにも燃料費調整額の上限を設けているのが一般的でしたが、近年では自由料金メニューでは上限を撤廃する動きが拡大しています。そのため今後、旧一般電気事業者における電力量料金の変動幅はさらに大きくなる可能性があります。
※参考:資源エネルギー庁.「電力小売全面自由化の進捗状況について」. https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/086_03_00.pdf ,(発表2025-02-28).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「燃料費調整単価等一覧」. https://www.tepco.co.jp/ep/private/fuelcost2/newlist/index-j.html ,(2025-11-28).
切り替えによって燃料費調整額も含め、電気料金が今より安くなるかを判断するには、以下のポイントを確認しましょう。
2016年4月に経済産業省が制定した「電力の小売営業に関する指針」では、需要家へ適切な情報提供を行うために、電力会社に対しさまざまな義務が課されています。例えば、市場連動型の料金プランで小売供給を行う場合には、適用される料金単価を確認できる仕組みを導入するなど、需要家が電気料金の見通しを立てやすいようにすることを、また燃料費調整額が含まれる料金プランで小売供給を行う場合には、その仕組みや料金変動のリスクなどを需要家に対し分かりやすく公表することを電力会社の努力義務としています。
なお、この指針はこれまでに何度か改定が重ねられており、2024年3月には燃料や電力の取引価格の変動に応じた料金メニューにおける契約締結前の説明義務が、2025年3月には需要家に対する丁寧な情報提供に向けた対応に関する内容が追加されています。
直近の政府の意向を反映した内容といえるため、この指針に沿った分かりやすい情報提供がされていることも、優良な電力会社を選ぶための一つの指標にすると良いでしょう。
※参考:経済産業省. 「電力の小売営業に関する指針」. https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220401005/20220401005-1.pdf , (2025-11-20).
※参考:経済産業省.「「電力の小売営業に関する指針」を改定しました」. https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240329004/20240329004.html ,(更新2024-3-29).
※参考:経済産業省.「「電力の小売営業に関する指針」を改定しました」.https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331007/20250331007.html,(更新2025-3-31).
優良な電力会社を選ぶためには、Webサイトなどで以下のポイントを確認しましょう。
契約した電力会社が万が一、事業撤退や倒産、廃業してしまった場合は、電力の供給が停止するまでに他の電力会社と契約を締結しなければなりません。供給停止日までに切り替え先を見つけられない場合は、最終保障供給の対象となります。
最終保障供給とは、高圧または特別高圧で電力の供給を受けている需要家が、どの小売電気事業者からも電力の供給を受けることができなくなった場合に、使用場所を管轄する一般送配電事業者から一時的に電気を供給してもらうことができる制度です。最終保障供給は、原則1年以内の契約となっており、また長期化を防止するために、一般送配電事業者の標準料金メニューよりも割高に設定されています。
実際のところ、2024年3月に公開された帝国データバンクの調査を見ると「小売電気事業者」として登録された電力会社のうち累計で119社が、すでに撤退・倒産・廃業していることが分かります。また電力の小売自由化開始当初は急増していた小売電気事業者の数自体も、近年では横ばい状態です。2025年11月時点での、全国の小売電気事業者の数は788社です。
これらの数字から、電力の小売市場は全体のうち一定数の電力会社が入れ替わりながら、規模を維持しているといえるでしょう。そのため新たに電力会社と契約を結ぶ際は、その電力会社が長きにわたり、市場で生き残れるのかどうかを見極める必要があります。
契約している電力会社が倒産してしまうと、予期せぬ切り替え先の再検討や、一時的な電気料金の値上がりを余儀なくされる可能性があるため、倒産のリスクが少ない、すなわちできるだけ経営が安定している電力会社に切り替えるのが望ましいです。
※参考:帝国データバンク.「「新電力会社」事業撤退動向調査(発表2024-3)」. https://www.tdb.co.jp/report/industry/5mwc1cunt7/?utm_source=chatgpt.com ,(2025-11-20)
※参考:経済産業省.「電力小売全面自由化の進捗状況について」. https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/086_03_00.pdf,(2025-11-20)
電力会社の安定性を測るには、以下のポイントを確認しましょう。
伊藤忠エネクスの主要グループ会社
03-4233-8055 平日 9:00~17:30高圧電力の契約では、契約期間が定められているケースがほとんどです。契約期間中に解約をすると違約金が発生するケースも多いため、切り替えに当たっては、現在の契約内容をきちんと確認しておく必要があります。契約期間や中途解約違約金は、契約時に取り交わす「重要事項説明書」に記載されているのが一般的です。切り替えのタイミングを現契約が終わる日に合わせ、違約金が発生しないようにするのも一つの手です。
意図せず違約金が発生し、損をしないためには、以下のポイントを確認しましょう。
電力会社の切り替えを検討している企業担当者の方は、伊藤忠エネクスが提供する法人向け電力サービス「TERASELでんき for Biz.」をぜひご検討ください。伊藤忠エネクスは、発電・需給・供給までを一気通貫で行うエネルギー商社として、全国各地の企業に安定した電力を届けています。
「TERASELでんき for Biz.」では固定単価型・市場連動型をベースに、お客さまの業種やご利用状況に合わせたオーダーメイドでのプランをご提案しております。最新の業界動向に対応した柔軟なプラン構成により、電気料金の変動リスクを抑えながらコスト削減を実現します。また再エネ比率を高めたプランの提案にも対応しており、企業の脱炭素経営や環境配慮型の取り組みを後押しします。
販売エリアは全国に広がっており、供給地点数は20,000カ所以上です。豊富な導入実績と、伊藤忠グループの確かな信頼性を背景に、長期的な電力コストの最適化をサポートします。電力契約の見直しや新規導入をお考えの企業は、お気軽にご相談ください。
高圧電力の契約先を選ぶ際は、料金単価だけではなく、燃料費調整額や企業としての安定性なども重要な判断材料となります。近年では選択肢が多様化しており、自社の電力使用状況やリスク許容度に応じた適切なプランを見極めることが欠かせません。
電力の安定供給と企業の脱炭素化の両立を図るためには、エネルギー全体を見渡した提案力を持つパートナーを選ぶことが大切です。コスト削減と環境配慮を両立させた電力利用を実現するなら、発電から供給まで一貫した体制を持つ伊藤忠エネクスの「TERASELでんき for Biz.」がおすすめです。
また以下の記事では、高圧電力でおすすめの新電力会社をご紹介しています。優良な電力会社をお探しの方は、こちらも参考にしてみてください。
▼【2023年12月最新】高圧電力でおすすめの新電力会社8選
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