脱炭素経営とは?重要性やメリット、始め方を徹底解説!
脱炭素社会の実現を目指して、日本では既に多くの大企業が脱炭素経営を導入しています。しかし脱炭素経営は、大企業だけにメリットがあるわけではありませんので、企業の規模に関係なく積極的に導入を検討してみましょう。
「脱炭素経営の重要性とメリット」だけでなく、「導入する際のポイント」にも触れるため、ぜひ参考にしてください。
近年、環境への配慮や気候変動対策を目的に、世界の多くの企業が積極的に脱炭素経営に取り組んでいます。
2020年10月に、日本は「2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする」長期目標を宣言しました。日本がこの目標を達成するには、数多くの企業が脱炭素経営を導入する必要があります。
脱炭素経営の取り組みには「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」「SBT(Science Based Targets)」「RE100」の3つの枠組みがあります。
「TCFD」「SBT」「RE100」の具体的な取り組み内容は、下記のとおりです。
TCFD | ・企業が気候変動や地球温暖化への影響を分析する ・気候変動に関する分析情報や財務情報を開示する |
---|---|
SBT | ・企業の5~15年先のCO2排出削減目標を設定する |
RE100 | ・事業に必要な電力の100%を再生可能エネルギー100%で賄うことを目指す |
それぞれ国際的な枠組みとして設けられているため、世界中の企業が気候変動や脱炭素にコミットできる仕組みとなっています。
世界各国で脱炭素社会実現に向けた取り組みが行われていますが、「TCFD」「SBT」「RE100」に加盟している日本の企業数は世界でトップクラスを誇ります。
それぞれの取り組みを行っている日本の企業数は、下記のとおりです。
2022年1月31日時点 | 2022年9月30日時点 | |
---|---|---|
TCFD | 696機関 | 1,061機関(世界1位) |
SBT | 153社 | 277社(世界1位) |
RE100 | 63社 | 73社(世界2位) |
(※)参考:環境省「中小企業における脱炭素経営」
https://www.kansai.meti.go.jp/3-9enetai/energypolicy/details/save_ene/datsutansokeiei.pdf(参照2023-01-29)
(※)参考:環境省「企業の脱炭素経営への取組状況」
https://www.env.go.jp/earth/datsutansokeiei.html(参照2022-12-31)
近年の推移を比較すると、わずか半年の間に「TCFD」に取り組む企業数は約1.5倍、「SBT」の認定企業数は約1.8倍となり、脱炭素への取り組みが加速していることが分かります。
さらに、「TCFD」「SBT」「RE100」の全てに加盟している企業は、2022年1月31日時点で40社以上です。建設業・不動産業・サービス業など、脱酸素経営に力を入れている企業の業種は多岐にわたります。
今後、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが拡大していくにつれ、脱炭素経営を導入する企業はますます増えていくでしょう。
脱炭素経営を導入すると、「投資家や求職者からの評価が上がる」「投資や融資による資金調達が見込め、経営を円滑に進めやすくなる」などのメリットがあります。
一方、脱炭素経営を導入しない場合に考えられる主なデメリットは、次の3つです。
脱炭素経営を導入していない中小企業は、これらのリスクを回避するためにも急いで導入を検討する必要があります。
ここでは、脱炭素経営を導入しない場合に考えられるデメリットを詳しく解説します。
脱炭素経営を導入しないと、大手企業からの仕事が来なくなる可能性があります。
グローバル企業を中心に、材料の製造や製品の使用時など、サプライチェーン全体で脱炭素化に取り組むことで効果を高めようとする動きが活発化しているためです。具体的には材料の調達や製造時のCO2削減などが挙げられますが、見直しの一環として脱炭素経営に取り組んでいない取引先よりも導入している企業が優先されやすくなる可能性も考えられます。
競合他社が既に脱炭素経営を導入している場合は、自社でも早めに検討を始めましょう。一方、業界で脱炭素経営を始めている企業が少ない場合は、早期導入により優位に立てます。
脱炭素経営を導入しないことで、金融機関からの融資が受けにくくなる可能性があります。
取引先に脱炭素経営を求める企業があるように、脱炭素経営を行う企業を優遇する金融機関も少なくありません。実際に日銀や一部の金融機関が行っている優遇の具体例は、次のとおりです。
脱炭素経営の導入により、これまでよりも資金調達がしやすくなる企業もあるでしょう。
さらに、脱炭素経営を導入している企業は、国から補助金や支援を受けられます。主な支援内容は、下記のとおりです。
主な補助や支援 | 補助の内容 | 補助割合 |
---|---|---|
脱炭素化促進計画策定支援 | 中小企業が「脱炭素化促進計画」策定にあたって、専門の支援機関に依頼する費用 | 2分の1 (上限100万円) |
設備更新補助 | 工場・事業場単位で15%以上削減、または主要なシステム系統で30%以上削減するための設備を更新する費用 | 3分の1 (上限 1億円) |
この他に各自治体が行う補助金や支援もあります。脱炭素経営に向けて、利用できる補助金や制度がないか確認してみましょう。
脱炭素経営を導入していないことが、人材採用に影響する可能性があります。
脱炭素は、幅広い世代に浸透しています。特に若い世代は関心度が高く、企業だけでなく自分自身も取り組むべき課題であると認識している人が多いことも特徴です。
そのため、脱炭素化に取り組んでいることを公表することは企業にとって大きなイメージアップとなります。優秀な人材の確保につながるだけでなく、従業員のモチベーション向上にも効果が期待できます。
脱炭素経営を導入するにあたって、まずは脱炭素化に向けた基本的な考え方を理解しておく必要があります。CO2大幅削減を目指すための方向性は、次の3つです。(※)
熱より電力の方が低炭素化しやすいため、低炭素化を実現するには熱エネルギーを電気エネルギーへ転換することが効果的です。また、LED電球などの高効率な照明の導入などもエネルギー消費量の削減に貢献できる方法の一つです。
CO2大幅削減に向けた方向性を踏まえ、下記の4ステップで脱炭素経営に取り組みましょう。
まずは、自社のCO2排出量を把握し、脱炭素化に向けた計画を策定します。CO2排出量を算定する際は、環境省が作成した資料や動画を参考にしましょう。
ここからは、脱炭素経営導入の4ステップを詳しく解説します。
(※)参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック-温室効果ガス削減目標を達成するために-」
https://www.env.go.jp/earth/SMEs_handbook.pdf(参照2023-02-13)
省エネ対策は確かに脱炭素化につながりますが、それだけでCO2の大幅削減を実現することは困難です。
脱炭素化を実現するには、将来の技術開発動向にも注目しつつ主要設備のエネルギー転換を考えることも大切です。主要設備のエネルギーをCO2排出量ゼロまたは少ないものに転換することで、脱炭素化を進めやすくなります。
エネルギー転換の具体例は、下記のとおりです。
主要設備 | エネルギー転換の具体例 |
---|---|
ボイラー | ・ヒートポンプ ・バイオマスボイラー |
燃焼炉・工業炉 | ・電気加熱炉 ・水素バーナー |
自動車 | ・ハイブリッド車や電気自動車 ・燃料電池車(FCV) |
転換するエネルギーとして、電気・バイオマス・水素などが挙げられます。
ただし、導入コストやインフラの普及率などを考えると、エネルギー転換が現状では難しいケースもあります。エネルギーの安定供給が見込めるかどうかも含めて、慎重に方針を検討しましょう。
検討した長期的なエネルギー転換の方針をベースに、短中期的に取り組む省エネ対策を洗い出します。既存設備の稼働の最適化、エネルギーロスの低減など、考えられる省エネ対策をリストアップして可視化しましょう。
企業の省エネ対策の具体例は、次のとおりです。
取り組む省エネ対策を挙げたら、省エネ対策の実施によりどれくらいのCO2削減につながるのかを算定します。目指すべき数値が分かることで、企業全体で脱炭素化に取り組みやすくなります。
長期的なエネルギー転換の方針に対する検討と短中期的な省エネ対策の洗い出しを行ったら、取り組みによって自社のCO2削減量がどれくらい変化するのか把握しましょう。
把握した結果、自社のCO2排出量が削減目標に届かないことも十分に考えられます。その場合は、電気エネルギーを再生可能エネルギーに切り替えることも一つの方法です。
再生可能エネルギー電気を利用するには「小売電気事業者と契約する」「屋根や遊休地で自家発電する」などの方法で電気の調達が必要となります。
小売電気事業者との契約は、低コストで始めやすく小口調達も可能です。一方、手続きが多く調達リスクがあるなどのデメリットがあります。自家発電の場合は、設置場所があれば発電から消費まで自社で行えます。ただし、継続的なメンテナンス・清掃などの維持費が必要です。
再生可能エネルギー電気の導入を検討する際は、メリットとデメリットを比較した上で自社に合った方法を選びましょう。
CO2削減に向けて計画した内容をもとに、下記の情報を整理します。
また、「削減対策によって目標達成は可能か」「CO2削減にかかる追加的な支出を許容できるか」など、計画を進める上での懸念点があれば十分な検討が必要です。
主要設備のエネルギー転換や高効率設備の導入には、まとまった初期費用がかかります。脱炭素経営を導入するメリットと費用負担を比較して、自社にとってベストな選択をすることも重要です。
資金繰りに不安がある場合は、政府の補助金制度も積極的に活用しましょう。以下は脱炭素経営の導入にあたって活用できる補助金の一例です。
補助金に関する情報や詳しい脱炭素経営の導入方法は、環境省が発行する「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」を参考にしましょう。
(※)参考:環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」
https://www.env.go.jp/earth/SMEs_handbook.pdf(参照2023-02-13)
脱炭素経営は、日本だけでなく世界的で急速に拡大しています。
脱炭素経営には、「競合他社より優位に立てる」「金融機関から優遇される」「優秀な人材採用につながる」などのメリットがあります。脱炭素経営の仕組みや導入方法を詳しく知りたい場合は、環境省が発行する資料を参考にするのがおすすめです。
地球規模で取り組まなければいけない環境対策に力を入れているのが、伊藤忠エネクスです。太陽光発電以外にも、ESGやLED照明に関して、様々な取り組みを行っています。この機会に、ぜひ検討してみませんか?
脱炭素化の重要性を理解し、企業にできる取り組みを実施してCO2削減目標の達成を当社と一緒に目指しましょう。
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