化石燃料の仕入れコストは依然として高止まりが続いており、電気料金の高騰に悩んでいる企業は多いでしょう。2023年1月以降、政府による電気料金・ガス料金の補助金事業(電気・ガス価格激変緩和対策事業/酷暑乗り切り緊急支援)が断続的に行われていますが、期間限定の支援であるため、電気料金を削減するには抜本的な対策を行う必要があります。
本記事では、低圧電力を契約している企業が活用できる、電子ブレーカーを使った電気料金の削減方法をご紹介します。導入に当たって把握しておくべき、電子ブレーカーの仕組みや導入できる契約種別についても詳しく解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事の内容は2024年12月時点の情報です
目次
ご家庭でエアコンや電子レンジ、ドライヤーといった消費電力が大きい家電を同時に使った際に、ブレーカーが落ちて電気が消えてしまったという経験をしたことがある方は多いでしょう。
このようにブレーカーとは、許容範囲以上の電流が流れた際に、電気を自動で止める装置です。過剰な電流を検知するとブレーカーが落ちて電気を遮断し、設備に負荷がかかるのを防いだり、電気回路の異常による火災や感電といった事故を防いだりする役割があります。
ブレーカーの一種である電子ブレーカーは、CPU(中央処理装置)と電流値を測定するセンサーを内蔵しており、電流の大きさや時間を正確かつリアルタイムで監視・制御できるのが特長です。一般的なブレーカーのように電流の開閉だけをする機器ではなく、電気回路内の無駄なエネルギー消費を抑えたり、電気信号を解析して過剰な電流を素早く検知したりできます。また設備に負荷がかからない程度であれば、一時的に過剰な電流が流れた場合でもブレーカーを落とさずに電気を使い続けられるよう、プログラムされています。
原則、電子ブレーカーを設置できるのは、企業や工場、店舗などの低圧電力(契約電力50kW未満)の施設です。高圧・特別高圧に分類される契約電力50kW以上の施設には、キュービクルと呼ばれる高圧受電設備を設置する必要があるため、電子ブレーカーは設置できません。
日本の産業製品に関する規格を定めたJIS規格では、ブレーカーの定格電流ごとに動作時間が設定されています。つまり、どのくらいの電流値の超過が何分続いたらブレーカーを作動させる必要があるという許容範囲が定められているのです。
先述した通り、電子ブレーカーではCPUとセンサーによって細かく電流値と時間を測定できるので、電流値の超過がJIS規格によって定められた許容範囲内かどうかを正確に監視できます。そのため許容範囲内である限り、過剰な電流が流れてもブレーカーを落とさずに設備を使い続けられるのです。
この電子ブレーカーの特性を生かせば、定格電流に大幅な余裕を持たせる必要がないため、契約電力を減らすことが可能です。契約電力が減れば電気料金の基本料金を削減できるので、コストカットが期待できます。
一般的なブレーカーは熱動式で、膨張率が異なる2種類の金属が組み込まれています。電気が流れる際に発生する熱によって2つの金属の温度が上昇すると、収縮したり変形したりして掛け金が外れ、ブレーカーが落ちる仕組みです。CPUで監視しながら電流の開閉を調整する電子ブレーカーとは、仕組みが全く異なります。
熱動式のブレーカーが落ちた直後はまだ金属に熱が残っているため、冷めないまま電気を使い始めると、何度もブレーカーが落ちてしまう恐れがあります。ブレーカーが落ちないよう、実際に使用する電力よりも余裕を持たせた定格電流にする必要があり、必然的に契約電力は大きめに設定されます。
また一般的なブレーカーは外気温などの影響を受けやすく、ブレーカーが落ちるまでの時間や条件が一定ではないことが多いです。そのため、電子ブレーカーのような正確な測定や動作は難しいといわれています。
実際に電子ブレーカーを導入すると、いくらかかるのでしょうか。一般的なブレーカーと電子ブレーカーの初期費用(本体代と工事費の合算)の相場を見てみましょう。
電子ブレーカーは、さまざまな電子部品を搭載した機器です。そのため、初期費用が一般的なブレーカーよりも高い傾向にあります。まとまった初期費用はかかるものの、契約電力の下げ幅によっては2~5年程度で投資分を回収できる可能性があるので、電子ブレーカーの見積もりを取る際には、契約電力の目安も業者へ相談してみましょう。
また初期費用を抑えるために、リースやレンタルを利用するのも選択肢の一つです。電子ブレーカーをリースする場合の相場は、月々1万円程度です。
国税庁が定める減価償却資産の耐用年数表によると、電子ブレーカーは建物付属設備のうち電気設備に当てはまり、耐用年数は15年とされています。ただし、CPUに使われている電解コンデンサの寿命は10年程度といわれているため、10年を交換時期として推奨しているメーカーもあります。投資回収のシミュレーションをする際は、10年を目安に計算するのがよいでしょう。
※参考:国税庁.「主な減価償却資産の耐用年数表」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf ,(2024-09-27).
電子ブレーカーは低圧電力のうち、契約区分が動力プランかつ主開閉器契約を結んでいる施設へ導入することができます。
そもそも低圧電力は、一般家庭で契約される「従量電灯プラン」と、店舗や工場で契約される「動力プラン」という契約区分に分けられます。2つのプランの大きな違いは、供給電圧の高さと送電方法です。
従量電灯プランの供給電力は100Vもしくは200Vで、「単相」と呼ばれる送電方法を用います。2つ穴のコンセントから電源供給を受けている場合は、従量電灯プランに該当します。一方動力プランは、業務用冷蔵庫やエレベーターなどの大型業務用機器を使用するため、供給電圧は200Vのみです。単相と比べて送電効率の高い「三相」と呼ばれる方法で送電します。3つ穴もしくは4つ穴のコンセントから電源供給を受けている場合は、動力プランに該当します。
低圧電力には、負荷設備契約と主開閉器契約という2つの契約種別があり、契約電力の算定方法が異なります。負荷設備契約は、施設内で使用する全ての設備の電気容量を足した合計値を算出し、その容量を賄える分の契約電力を決定します。
一方、主開閉器契約は設備ごとの容量ではなく、メインブレーカーの定格電流を基に契約電力を決定します。
どちらの算定方法が施設に合っているのかは、電力の使用状況によって異なります。ただし、電子ブレーカーを導入できるのは、主開閉器契約の施設のみです。
主開閉器契約の方がお得になる企業の条件は、以下の通りです。
負荷設備契約は、全ての設備が同時に稼動する前提で契約電力を決めているので、稼動しない設備が多かったり稼動するタイミングがずれていたりすると、余分な契約電力分の基本料金が無駄になってしまいます。その点、主開閉器契約であれば設備の稼働状況に合わせてメインブレーカーの定格電流を決めるので、適切な契約電力となり、無駄な基本料金が発生しなくなります。
電子ブレーカーに切り替える最大のメリットは、やはり電気料金を削減できる点です。
月々支払う電気料金は、主に基本料金と従量料金の2つに分けられます。主開閉器契約に切り替えて電子ブレーカーを導入し、契約電力を減らせば基本料金を下げられるので、電力の使用量に関係なく電気料金を削減できます。
また電子ブレーカーの正確性の高さもメリットの一つです。一般的なブレーカーは外気温や劣化による影響を受けるため、同じ時間帯に同じ機器を使用しているにもかかわらず、ブレーカーが落ちてしまうといったことも起こり得ます。タイミングが悪ければ、突然の停電により従業員がケガをしてしまう恐れもあります。電子ブレーカーならCPUとセンサーによって電流値を管理するため、こうしたトラブルを回避できるでしょう。
電子ブレーカーにはさまざまなメリットがありますが、導入する前に把握しておきたい注意点もあります。
1つ目は、適切な定格電流を決定するのが難しいことです。電子ブレーカーは定格電流を超えてもある程度は設備を使い続けられますが、稼動状況に対して定格電流が少なすぎるとブレーカーが頻繁に落ちてしまいます。一方、契約電力があまり減らないと電気料金削減のメリットを得にくくなってしまいます。そのため電子ブレーカーを導入する際は、過去の電気使用量を確認したり、専門家に調査を依頼したりして施設に適した定格電流を決定しましょう。
2つ目の注意点は電子ブレーカーを設置する際には、電気を遮断して全ての設備を停止する必要があることです。導入の際は、企業活動に影響が出ないスケジュールを組んでください。
3つ目の注意点は、エアコンや業務用冷蔵庫など常時フル稼働している設備が多い場合、主開閉器契約に切り替えてしまうとかえって電気料金が割高になってしまう可能性があることです。電子ブレーカーの導入を進める前に、どちらの契約の方が自社に適しているのかを電力会社や専門家に相談しておきましょう。
電子ブレーカーは、低圧電力の動力プランかつ主開閉器契約の施設に導入できます。一般的なブレーカーとは異なり、内蔵されたCPUとセンサーによって電流値や時間を正確に測定・監視できるのが特長です。この特長を生かせば、契約電力を減らして電気料金を削減することが可能なので、低圧電力を契約中で固定費を削減したい企業の担当者の方は、本記事を参考に自社での導入を検討してみてください。
伊藤忠エネクスでは、法人向けの電力供給サービス「TERASELでんきforBiz」を提供しています。エネルギー総合商社として60年以上の歴史がある伊藤忠エネクスグループは、全体で19カ所・合計設備容量451MWの発電所を保有・管理しており、電力会社としての安定性に定評があります。各企業の電力使用量やニーズを基に「オーダーメイド式プラン」をご提案するので、無理なく電気料金を削減できるでしょう。高圧電力や特別高圧電力のみならず、低圧電力を契約している企業の担当者の方も、ぜひご相談ください。
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