地球沸騰時代の到来ともいわれる昨今、環境に配慮しながらどのように安定した電力を確保するかが、世界的な課題となっています。近年は、ICT機器の導入やエアコン設置などにより、学校における電力消費量が増えており、企業のみならず学校にも節電の取り組みが求められるようになってきました。
そこで本記事では、学校に求められる省エネ目標や学校の消費電力の内訳、具体的な節電方法について詳しく解説します。本記事を参考に、適切な節電を実施して消費電力を抑えましょう。
※本記事の内容は2024年12月時点の情報です
2023年4月に改正省エネ法が施行されました。改正省エネ法は、原油換算で1,500kl以上を使用する事業者を対象に、定期的なエネルギー使用状況の報告や、省エネに対する取り組みの計画策定・見直しを促すための法律です。
改正省エネ法では事業者の区分が細かく分類されていますが、学校は「工場等(工場又は事務所その他の事業場)」の区分に該当します。教育委員会が管理する学校やその他の施設で使用する年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500klを超える場合、その教育委員会は特定事業者となり、以下の2つが義務付けられます。
義務付けられるのは教育委員会ですが、中長期的にエネルギー消費原単位を年間1%以上減らせるよう、各学校も連携を取りながら省エネ対策に取り組まなければなりません。
※ 参考:経済産業省 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト.「工場・事業場の省エネ法規制」.https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/classification/ ,(2024-10-06).
資源エネルギー庁によると、平均的な学校で電力消費が多いのは9〜17時です。昼間の時間帯の消費電力を100%とすると、夜間の消費電力は10%まで下がるとされています。
平均的な学校の夏季の17時前後の消費電力の内訳は、以下の通りです。
消費電力の内訳 | 割合 |
空調 | 37.0% |
照明 | 33.4% |
調理機器 | 2.4% |
パソコン | 2.1% |
循環ポンプ | 1.6% |
冷凍・冷蔵 | 1.1% |
給湯 | 0.5% |
複合機 | 0.3% |
その他 | 21.6% |
空調と照明の消費電力を合計すると約70%となるため、学校の消費電力を抑えるには特にこの2つの使用電力量や使用状況を見直すことが効果的だといえるでしょう。
※参考:資源エネルギー庁.「事業者のみなさまへ 節電アクション」.https://www.kantei.go.jp/jp/singi/electricity_supply/20110720/east02.pdf ,(2024-10-06).
※参考:資源エネルギー庁.「夏季の省エネ・節電メニュー」.https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230609003/20230609003-6.pdf ,(2023-06).
ここからは学校でできる節電方法を、具体的にご紹介します。
近年は教室に空調を設置する学校も増えています。消費電力の約3分の1を占める空調の節電を行うことで、効率的にエネルギー使用量を削減することが可能です。以下のポイントを意識して、無理なく空調の節電に取り組みましょう。
節電方法 | 概要 |
空調の設定温度を調整する | ・夏と冬で空調の設定温度を調整すると消費電力を抑えることができる ・政府の推奨値は、暖房20度、冷房28度。設定温度を外気温に1度近づけるだけでも消費電力を減らすことができる |
空調をつけている間は、しっかりと窓や扉を閉める | ・空調をつけている間に窓や扉を開けていると、設定した温度になるまでに多くの電力を使ってしまう ・空調使用時は窓も扉もしっかり閉めるよう周知する |
使用していない教室や空間の空調を停止する | ・使用していない教室や空間の空調をつけっぱなしにしないようにする |
教員・職員の残業時は部分的に空調を運転させる | ・残業時は作業を行う場所を1カ所に限定するなど工夫し、空調を部分的に運転させて節電する |
緑のカーテン・ブラインド・ひさしなどを活用する | ・夏場は植物を使った緑のカーテンや、ブラインド、ひさしなどを窓に取り付けると、日差しを避けられ室内が暑くなりにくくなる ・児童・生徒の活動として、緑のカーテンを育てる方法も良い |
扇風機やサーキュレーターを併用する | ・空調と、扇風機やサーキュレーターを併用することで、冷たい空気や暖かい空気が一カ所にとどまってしまう状況を避けることができる ・冷房の場合は空調からの冷風が当たる場所、暖房の場合は床から天井に向けて送風できる場所に設置するとよい |
窓に断熱フィルムを貼る | ・窓に断熱フィルムを貼ることで、夏は室温の上昇を避け、冬は暖かい空気が外に逃げることを防ぐ |
定期的に空調のフィルター掃除をする | ・空調のフィルターが目詰まりすると、冷暖房効率が低下し、より多くの電力を消費してしまう ・定期的にフィルター掃除を行えば、消費電力を抑えやすい |
特別教室はできるだけ連続して使用する | ・音楽室や美術室、コンピューター室といった特別教室は、連続して使用するスケジュールにする |
教員・職員のクールビズ・ウォームビズを推進する | ・クールビズやウォームビズを推進すれば、過度な冷暖房に頼らず快適に過ごしやすくなる |
空調のオンオフをするタイミングに気を付ける | ・頻繁に空調の電源を操作すると、多くの電力を消費してしまう ・教室の使用スケジュールなどを考えて、必要な場合は連続運転させる |
スイッチに空調の範囲を表示する | ・空調のスイッチに、対象の範囲を表示することで、必要以上に冷暖房を使用することを防ぐ効果がある |
ガスコージェネレーションシステムを導入する | ・ガスコージェネレーションシステムとは、ガスを燃料として発電を行い、その際の排熱を冷暖房や給湯などに使用するシステムで、消費電力を抑えることができる |
空調を集中管理する | ・施設全体の空調を1カ所で集中管理する空調管理システムを導入することで、無駄なく空調を運転させることができる |
高効率の空調に交換する | ・近年のエアコンは省エネ性能が向上している ・高効率の空調に交換するだけで、電力消費を抑えることができる |
※参考:文部科学省.「レッツ!省エネ ステップ1(校長編)」.https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/04/24/1319063_03.pdf ,(2024-10-06).
伊藤忠エネクスは、空調特化型のデマンドコントローラー「Ai-Glies」を提案しています。「Ai-Glies」は、外気の温度・湿度による不快指数の変化を監視し、自動で空調の出力を調整、室内を快適に保ちます。消費電力の中でも多くを占める空調設備を自動制御することで、使用電力量を無理なく削減。省エネにつながるのはもちろん、電気料金も削減できます。
デマンドコントローラーに関するお問い合わせ
03-4233-8041 平日9:00〜17:30照明は空調と同様に学校の消費電力の約3分の1を占めているため、照明の節電に取り組めば、効率的に消費電力を抑えることができるでしょう。
以下のポイントを意識して、照明の節電に取り組みましょう。
節電方法 | 概要 |
小まめに電気を消す | ・普通教室や特別教室、職員室、トイレ、廊下などを使用しないときは、小まめに電気を消す習慣を作る |
部分的に照明を消す | ・窓から採光できるときは窓側の照明を消すといったように、部分的に照明を消して電力を無駄に使わない ・職員室や廊下などの照明を間引きするのも効果的 |
定期的に照明の掃除をする | ・照明器具にほこりがたまると、実際の照明の明るさよりも暗く見えやすい ・定期的に照明の掃除をすれば、光量を上げなくても明るさを確保できる ・夏休みや冬休みの前などの期間に行うとよい |
定期的に蛍光灯を交換する | ・蛍光灯の両端の一部が黒ずんだり、照明が暗くなったように感じたりしたら交換のタイミング ・蛍光灯の寿命前に交換すれば、消費電力を抑えて光量を確保できる |
従来の蛍光灯からLEDに変更する | ・一般的に、従来の蛍光灯から直管形LEDやHf蛍光灯に変更した場合、消費電力が40%抑えられるとされている |
体育館の水銀灯の使い方を工夫する | ・多くの体育館では水銀灯が使用されているが、水銀灯は点灯時の消費電力が大きい ・体育館を使用する時間帯を集中させ、使用後は消灯する習慣を付ける |
体育館の水銀灯をセラミックメタルハライドランプに変更する | ・セラミックメタルハライドランプは水銀灯よりも消費電力が少なく発光効率が良いため、消費電力を抑えられる ・水銀灯と比較し寿命が長い |
可能な限り校庭で全校集会を実施する | ・校庭で全校集会を実施すると、照明が不要になり電力消費を抑えられる ・夏場など校庭での実施が難しい場合は、オンラインで実施するのも選択肢の一つ |
照明のスイッチに点灯範囲の表示を付ける | ・複数のスイッチがある場合、スイッチごとにどの範囲が点灯するのかを表示していれば、無駄に照明をつけてしまうのを避けられる ・児童・生徒に対しても、点灯範囲を理解させることができる |
照明のスイッチの上に「節電」の表示を付ける | ・照明スイッチの上に「節電」表記をすることで、注意喚起の効果がある ・体育館など一般への解放がある場合は、「節電のお願い」を掲示することも効果的 |
照度設定を適切に行う | ・照度を設定できる照明の場合、むやみに明るくしないことで、消費電力を抑えられる ・特に夜間の照明は、安全を確保することを考えた上で、どの程度の照度が必要かをしっかりと検討する |
調光センサーや人感センサーを設置する | ・夜間の校庭や運動場、人の行き来がある外通路などの照明や街灯は、調光センサーや人感センサーを搭載したものにする ・必要に応じて自動的に照度調節や照明の点灯が行われるため、電力消費を抑えられる |
※参考:資源エネルギー庁.「事業者のみなさまへ 節電アクション」.https://www.kantei.go.jp/jp/singi/electricity_supply/20110720/east02.pdf ,(2024-10-06).
伊藤忠エネクスでは、省エネルギー商材サービスを提供しています。省エネルギー商材サービスを利用すれば、初期費用0円でLEDの導入が可能です。
LEDの場合、白熱電球と比較して消費電力を平均で約84%削減でき、また耐用年数も約40倍に延びます。導入する照明は新品のもので、最大5年間の保証付きです。5年間ご利用いただければ、所有権は契約者に移転するため、6年目以降は毎月の照明の電気代しかかかりません。
省エネルギー商材サービス
03-4233-8041 平日9:00〜17:30換気設備への対策は、空調の節電につながります。具体的には以下のような対策が可能です。
節電方法 | 概要 |
ナイトパージを導入する | ・空気が冷たい夜間に外気を取り入れて、空気の冷却に必要な電力を抑える省エネシステム「ナイトパージ」を導入する |
全熱交換器を設置する | ・換気で排出される熱エネルギーを活用する全熱交換機を設置すれば、冬場の暖房負荷を小さくできるので、消費電力を抑えられる |
教員・職員が利用する事務用機器も、使い方を工夫することで節電が可能です。以下のポイントを意識して使用しましょう。
節電方法 | 概要 |
機器を省エネモードにする | ・事務用機器の設定を省エネモードにすると、一定時間使用しない場合には自動的に省エネモードに切り替わり、消費電力を抑えられる |
長時間使用しない場合は電源を落とす | ・業務終了時や夏休みなどの長期休暇時に事務用機器の電源を落とすことで、待機電力を抑えられる |
電源スイッチに「節電」と書いたシールなどを貼る | ・事務用機器の電源スイッチに「節電」のシールなどを貼り、節電への意識を高める |
プリンターの使用頻度を落とす | ・プリンターは消費電力が比較的大きな事務用機器なので、使用頻度を落とせば消費電力を抑えられる |
トップランナー機器に変更する | ・エネルギー消費効率が優れたトップランナー機器に変更することで、消費電力を抑えやすい |
水回りの節電では、具体的には以下のような対策が可能です。
節電方法 | 概要 |
便座の省エネ機能を利用する | ・トイレの便座には省エネ機能が搭載されたものがある ・省エネ機能を利用することで消費電力を抑えられる |
温水・便座ヒーターの利用を控える | ・温水・便座ヒーターは冬季の利用に限定するなどの工夫をすると節電になる |
電気設備を見直すことも節電につながります。具体的には以下のような対策が可能です。
節電方法 | 概要 |
太陽光発電システムを導入する | ・太陽光発電システムを導入し自家消費することで、再生可能エネルギー由来の電力を使用でき、電気料金も抑えられる ・公立の小中学校の約34%が太陽光発電システムを導入している |
電気設備の力率を改善する | ・力率改善コンデンサーを設置して力率が改善すると、基本料金で力率割引が受けられる可能性がある ・力率とは、「供給された電力のうちどのくらいが有効であったか = 使用されたかを示す割合」のこと |
※参考:文部科学省.「再生可能エネルギー設備等の設置状況に関する調査結果(概要)」.https://www.mext.go.jp/content/20210831-mxt_sisetujo-100001897_1.pdf ,(2021-05-01).
伊藤忠エネクスのTERASELソーラーは、契約者の保有する施設に太陽光発電システムを設置し、発電した電力を自家消費していただくサービスです。
エネルギーサービス料をお支払いいただくことで、初期投資不要で太陽光発電システムを導入できます。CO2排出量の削減に貢献するだけではなく、発電した電気を自家消費するため、電力会社からの電力の購入量が減り、電気料金を削減することができます。
TERASELソーラー(自家消費型太陽光発電システム)
03-4233-8055 平日 9:00~17:30最後に、学校で節電を実施する際に、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
節電を実施する際には、節電・省エネに関するルールを決めておきましょう。
照明や空調の範囲、メンテナンスやオン・オフのタイミング、夏季・冬季の設定温度などを明文化しておくことで、節電・省エネ対策を徹底しやすくなります。ルールをまとめて、教員・職員や児童・生徒が確認できるように職員室や各教室に掲示するのがおすすめです。
節電や省エネを学校が取り組むべき目標・課題として設定し、節電担当の教員を決めて、その方を中心に具体的な取り組みを実施していきましょう。もちろん節電担当の教員だけではなく、学校全体で節電意識を高めて取り組むことが大切です。
節電を実施する際には、児童・生徒への呼びかけを行うことも重要です。
いくら教員・職員に節電意識があっても、児童・生徒に節電の意識付けができていないと、うまく節電できません。単に呼びかけるだけではなく、チェックシートを作ってクラス・学年ごとに節電目標達成度をゲーム感覚で発表してもらう、また児童・生徒に節電啓発ポスターを作成してもらうなど、楽しみながら節電意識を身に付けられるようにするとよいでしょう。
節電の取り組みは、省エネのみならず、電気料金の削減にもつながります。
電力の小売全面自由化以降、電力会社や料金プランの選択肢は大幅に増えています。電力会社によって電気料金や契約内容が異なるため、学校の電力使用状況や課題に合った事業者を選びましょう。複数の電力会社の公式Webサイトを確認したり実際に問い合わせをするなど、比較検討することが大切です。
伊藤忠エネクスでは、法人向け電力供給サービス「TERASELでんきforBiz」を提供しています。学校の電気の使用状況やニーズに合わせて、オーダーメイドプランの提案が可能なため、無理なく電気料金を削減できます。
また電力切り替えと非化石証書を組み合わせて、使用する電力を実質的に100%再生可能エネルギーにできる環境メニューがあり、電力使用によるCO2排出量を実質ゼロにすることも可能です。環境メニューの他に、必要な分の環境価値を調達する環境価値オプションもあるので、電力会社の切り替えが難しい場合でも、実質再エネ化、CO2フリー化を実現できます。
学校で行える節電には、大小さまざまなものがあります。継続的に節電を実施するには、取り組みやすさや期待できる節電効果を踏まえて、無理なくできるものから始めることが大切です。本記事でご紹介した節電方法を参考に、目標を定めて具体的な取り組みを検討してみましょう。
本記事内でご紹介した通り、伊藤忠エネクス株式会社では、以下に挙げるような省エネ(使用電力量の削減)、再エネ化(使用する電力を実質再生可能エネルギーに変更する)などに関する、さまざまなサービスを提供しております
学校の節電効果を高めたい方は、ぜひ伊藤忠エネクスへご相談ください。
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