太陽光発電所は売却できる? 売却を考えるタイミングと手放す方法、具体的な流れを解説

太陽光発電所は売却できる? 売却を考えるタイミングと手放す方法、具体的な流れを解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

伊藤忠エネクスは1961年の創業以来 「 社会とくらしのパートナー」として 全国各地の地域に根ざし生活に欠かせないエネルギーをお届けしてまいりました。 老舗エネルギー商社ならではの情報を発信します。

再生可能エネルギーから作られた電気を、一定期間にわたって固定価格で買い取るFIT制度が2012年に始まって以来、多くの需要家が太陽光発電システムを導入しました。FIT認定されれば産業用は20年間、住宅用は10年間にわたって固定単価で売電できるので、安定した収入を確保しやすいでしょう。一方で、急に現金が必要になったり管理が難しくなったりして、太陽光発電所を手放す必要が出てくる可能性もあります。

そもそも太陽光発電所を売却することは可能なのでしょうか。本記事では、太陽光発電所の売却を検討するタイミングや売却の方法、流れについて詳しく解説します。

※本記事の内容は2025年3月時点の情報です

※本記事でご紹介している税金の具体的な計算については、皆さまの個々のご事情によって異なりますので、大変お手数ですが、最寄りの税務署または税理士などにご相談いただきますようお願いいたします

太陽光発電所は売却ができる

結論から述べると、稼働している太陽光発電所を売却することは可能です。太陽光発電システムを設置する方法には、地面に架台を置いて設置する野立てと屋根置きの2つがあります。業者によって買い取れる設置方法は異なるため、事前に確認が必要です。

詳しくは後述しますが、そのまま稼働できる状態の太陽光発電所であれば高値になりやすいので、架台や太陽光パネル、パワーコンディショナーといった設備を一式で売却するのがおすすめです。設備の一部が壊れており修理する費用を捻出できない場合は、壊れたままでも買い取り対応可能な業者を探すか、太陽光パネルやパワーコンディショナーだけを買い取れる業者を選びましょう。

太陽光発電所の売却を検討する5つのタイミング

太陽光発電所にはいくつかの売り時があります。またご自身の状況に応じて、その時々で売却を検討するのがよいでしょう。ここでは売却を考える代表的なタイミングを5つご紹介します。

導入から5年が経過したタイミング

太陽光発電所を導入して5年が経過したら、所有を続けるか売却をするかを検討しましょう。また導入後すぐに所有が難しくなってしまった場合でも、5年が経過するまで売却を待つのが望ましいです。その理由は、売却時にかかる税負担が軽減されるからです。太陽光発電所などの設備や住宅、土地などを売却した際に発生する利益は、譲渡所得の対象になります。

総合課税の譲渡所得の区分課税対象
所有から5年以内(短期譲渡所得)譲渡所得金額の全額
所有から5年超(長期譲渡所得)譲渡所得金額の2分の1

土地・建物・株式以外の譲渡所得は、総合課税の対象です。総合課税には累進課税制度が適用されるので、譲渡所得金額が大きくなるほど税率も上がります。所有から5年が経過すると、課税対象が譲渡所得金額の2分の1になるため、太陽光発電所は導入から5年が経過したタイミングで売却をする方が、納税金額を抑えられるのです。

また太陽光発電所を設置している土地を併せて売却する際も、導入から5年が経過したタイミングが望ましいです。土地は分離課税の対象となるため、所有期間によって税率が変わります。

分離課税の譲渡所得の区分所得税住民税
所有から5年以内(短期譲渡所得)30%9%
所有から5年超(長期譲渡所得)15%5%

太陽光発電の売却にかかる税金の負担を少しでも減らすなら、所有から5年が経過したタイミング以降にしましょう。

※参考:国税庁.「No3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3152.htm ,(2025-01-25).

※参考:国税庁.「土地や建物を売ったとき」.https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm ,(2025-01-25).

法定耐用年数を超える18年目以降のタイミング

太陽光発電所の場合、設備の導入費用を減価償却することができます。減価償却とは、時間の経過とともに価値が減っていく資産の購入費用を毎年分割して経費に計上することです。売電収入から経費を差し引くことで、その分の節税効果が期待できます。

太陽光発電システムは、一般的に「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の「31 電気業用設備のうち主として金属製のもの」に該当するので、法定耐用年数は17年です。所有から18年目以降は節税の恩恵を受けられないため、太陽光発電所の売却を検討するタイミングだといえます。

※参考:e-GOV.「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」.https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015/ , (2025-01-25).

想定していた利益を確保できなくなったタイミング

太陽光発電所を導入したものの、当初の予定通りに利益を確保できなくなったときも売却を検討するタイミングの一つです。利益が少なくなる理由にはいくつかありますが、代表的な例は以下の通りです。

  • 太陽光パネルの表面が汚れている、雑草が伸びてパネルを覆ってしまっている
  • 太陽光パネルやパワーコンディショナーが故障している
  • 日照時間が短い、近くに建物があり影になってしまう時間が長い
  • 出力制御により売電収入が減ってしまう
  • 廃棄費用の積立義務化に伴い、売電収入から積立費用が差し引かれてしまう

パネルの汚れや設備の故障、日照時間の短さなどは発電量の減少に直結するので、必然的に売電収入も減ります。太陽光発電設備は雨風にさらされたり、鳥や小動物の糞で汚れてしまったりするので、毎月発電量をモニタリングし、減少傾向に転じたら販売店や保守・点検の専門家に依頼してメンテナンスをしましょう。また発電量に変化が無くても、FIT制度を適用している場合や発電出力容量が50kW以上の太陽光発電所を所有している場合は、定期的なメンテナンスや保守点検が義務化されています。50kW未満は4年に一度、50kW以上は、太陽光パネルやパワーコンディショナーといった設備は6カ月に1回程度、受変電設備は2~6カ月に1回程度は点検や清掃を行ってください。

※参考:一般社団法人太陽光発電協会.「メンテナンスや点検はどうすればいいですか?」.https://www.jpea.gr.jp/faq/579/ ,(2025-01-29).

売電収入が減る「出力制御」とは

電力会社から出力制御が要請されている間は作った電気を売ることができないので、収入が減る要因となります。出力制御とは、電力の需給バランスを保つために発電量を抑えたり、発電を一時的に停止したりすることを電力会社が要請できる制度です。出力制御の際には火力発電や水力発電(揚水発電)、他の地域への送電、バイオマス発電の抑制・停止が優先されますが、これまでに以下の表の通り、太陽光発電への出力制御が要請されました。

エリア実施年度
北海道2022年度、2023年度
東北2022年度、2023年度
東京
中部2023年度
北陸2023年度
関西2023年度
中国2022年度、2023年度
四国2022年度、2023年度
九州2018年度、2019年度、2020年度、2021年度、2022年度、2023年度
沖縄2022年度、2023年度

出力制御を実施するエリアは年々増加傾向にあります。売電収入が減るリスクに備えて太陽光発電所の売却を検討する方もいるようです。

※参考:資源エネルギー庁.「再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について」.https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/052_01_00.pdf ,(2025-01-25).

売電収入から差し引かれる「廃棄費用の積立」とは

2022年7月から、FIT制度を利用している10kW以上の太陽光発電所を対象に、太陽光発電設備の廃棄費⽤積⽴制度が始まりました。積立金は「積立基準額(円) × 売電量(/kWh)」で算出し、売電収入から差し引かれます。そのため2022年以降に売電収入が減り、太陽光発電所の売却を検討する方がいるようです。

積立基準額は、以下の通りです。

FIT制度の適用開始年度解体等積立基準額(/kWh)売電量が10kWの場合の廃棄費用積立金(年間)※
2012年度1.62円1万6,200円
2013年度1.40円1万4,000円
2014年度1.28円1万2,800円
2015年度1.25円1万2,500円
2016年度1.09円1万900円
2017年度(入札対象外)0.99円9,900円
2017年度(第1回入札対象)0.81円8,100円
2018年度(入札対象外)0.80円8,000円
2018年度(第2回入札対象)
2018年度(第3回入札対象0.63円6,300円
2019年度(入札対象外)0.66円6,600円
2019年度(第4回入札対象)0.54円5,400円
2019年度(第5回入札対象)0.52円5,200円
2020年度(10~50kW以外)0.66円6,600円
2020年度(10~50kW)1.33円1万3,300円
2021年度(10~50kW以外)0.66円6,600円
2021年度(10~50kW)1.33円1万3,300円
2022年度(10~50kW以外)0.66円6,600円
2022年度(10~50kW)1.33円1万3,300円
2023年度(10~50kW以外)0.64円6,400円
2023年度(10~50kW)1.33円1万3,300円
2024年度(地上・10~50kW以外)0.62円6,200円
2024年度(地上・10~50kW)0.60円6,000円
2024年度(屋根・10kW以上)1.12円1万1,200円
2025年度(地上・10~50kW以外)0.62円6,200円
2025年度(地上・10~50kW)0.60円6,000円
2025年度(屋根・10kW以上)1.12円1万1,200円

※設置容量1kW当たりの年間発電量 = 1,000kWhを目安に算出

所有する太陽光発電所の売電量を確認し、どのくらいの積立額が差し引かれているのか計算してみましょう。

※参考:資源エネルギー庁.「廃棄等費用積立ガイドライン」.https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/haiki_hiyou.pdf ,(2025-01-25).

※参考:一般社団法人 太陽光発電協会.「FAQ-太陽光発電により、家庭で使用する電気を全部まかなえますか?-」.https://www.jpea.gr.jp/faq/563/ ,(2025-01-25).

早急に現金が必要なタイミング

「太陽光発電所以外の投資をしたい」「より発電出力容量の大きい太陽光発電所を購入したい」など、さまざまな理由から所有している太陽光発電所を現金化したいときも売却を検討するタイミングです。太陽光発電所の場合、所有者が提示する条件のすり合わせや現地調査の進み具合によっては、1~3カ月程度で売却が完了します。

ただし、中には「スピード感」や「高額買い取り」をうたって設備を買いたたく業者も存在するため、買い取り実績が多い会社や電力業界の老舗企業など、信頼性の高い会社に売却するようにしましょう。

太陽光発電所の管理が負担になったタイミング

先述した通り、発電量を維持するためには太陽光発電所の定期的なメンテナンスが欠かせません。専門家が行う点検の他に、所有者でも行える日常点検があります。一般社団法人日本電機工業会及び一般社団法人太陽光発電協会が公開している目視での日常点検の一例は、以下の通りです。

  • 設備の外周に設置しているフェンスに傾きや損傷などの異常がないか、立ち入り禁止の標識などがきちんと立っているか
  • 太陽光パネルの下の雑草が増えていないか、動物や虫などが侵入した形跡がないか
  • 配線ケーブルに破損や傷がついている箇所はあるか
  • 外箱に腐食やさび、傷がついている箇所はあるか
  • 野立ての場合、設備を置いている基礎部分の地盤沈下や積雪による沈降などがないか

こうした点検や修繕といった管理には、手間と時間がかかります。所有する太陽光発電所が遠方にあったり、本業が忙しく管理する時間がなかったりして、太陽光発電所の売却を視野に入れる方もいます。

※参考:一般社団法人日本電機工業会.「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」.https://www.jema-net.or.jp/engineering/solar/evefa20000002bnl-att/191227_pv_maintenance.pdf ,(2025-01-25).

2025年以降は太陽光発電所を売るベストタイミング?

太陽光発電所を売却したいと思っても、買い手が付かなければ現金化はできません。2025年以降は売却をするのに適したタイミングなのでしょうか。

2025年以降は中古の太陽光発電所の需要が高まり、セカンダリー市場が拡大すると予測されます。そのため、売却を検討しているならベストタイミングといえるでしょう。

中古の太陽光発電所が人気の理由としては、次のようなものが挙げられます。

  • 過去のFIT価格を適用できるから
  • これまでの発電実績が分かるから収入予測を立てやすい、融資を受けやすい
  • 全て新しいものを購入するよりも、初期費用を抑えられるから
  • すぐに稼働でき、売電収入を得られるから
  • 再生可能エネルギーの導入を進めている企業が多いから

中でも「過去のFIT価格を適用できる」「発電実績が分かる」という理由は、中古の太陽光発電所ならではでしょう。以下の表の通り、FIT価格は年々下がっています。

年度10KW未満の買い取り価格(/kWh)10kW以上の買い取り価格(/kWh)※
2012年度42円40円
2013年度38円36円+税
2014年度37円32円+税
2015年度35円(33円 ※出力抑制対応義務なし)27円+税※7月1日以降
2016年度33円(31円 ※出力抑制対応義務なし)24円+税
2017年度30円(28円 ※出力抑制対応義務なし)21円+税
2018年度28円(26円 ※出力対応義務なし)18円+税
2019年度26円(24円 ※出力対応義務なし)14円+税
2020年度21円13円+税
2021年度19円12円+税
2022年度17円11円
2023年度16円10円(12円 ※10月~3月まで)
2024年度16円12円
2025年度15円11.5円

※複数区分がある場合は、一番出力容量が低い区分を明記しています

1年変わるだけでFIT価格に1~2円近くの差が出るため、過去のFIT価格で売電した方がトータルの売電収入が増え、投資を早期回収しやすいです。そのため、中古の太陽光発電所は需要が高いのです。

また過去の発電実績が分かることで、設備の購入に際して融資を受けやすいというメリットも多くの人が中古購入を検討する理由の1つでしょう。

※参考:経済産業省.「買取価格・期間等(2024年度以降)」.https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html ,(2025-01-25).

太陽光発電所の売却方法

太陽光発電所の売却方法には、大きく分けて「買い取り業者に依頼する方法」と「仲介業者に依頼する方法」の2つがあります。ご自身で購入希望者を探すことも可能ですが、手間がかかる上にトラブルに発展しやすいので、避けたほうがよいでしょう。

ここでは、それぞれの売却方法について詳しく解説します。

買い取り業者に依頼する

買い取り業者に依頼する場合、業者が直接太陽光発電所を買い取ります。所有者と業者の2者間で取引が完結するため、現金化までのスピードが早い点がメリットです。

ただし、業者から提示される金額が安めに設定されていることがあるので、必ず複数の買い取り業者に査定依頼を出しましょう。売却の適正価格がどのくらいなのかを把握できれば、買い取り業者の選定もスムーズに進みます。

仲介業者に依頼する

仲介業者に依頼する場合、仲介業者が購入希望者を探します。所有者と仲介業者、購入希望者の3者間で取引を行い、手間のかかる作業や複雑な手続きは仲介業者に任せられる点がメリットです。太陽光発電の仲介実績が豊富な業者を選べば、太陽光発電所の適正価格を把握しているので、購入希望額が安すぎる希望者はそもそも所有者に紹介しなかったり、購入希望者との間に入って代わりに交渉をしてくれたりします。

ただし、購入希望者が決まるまで時間がかかりやすいので、買い取りと比べると現金化までのスピードが遅い傾向にあります。また仲介業者に支払う手数料が発生する点にも注意が必要です。

個別の直接取引はリスクと労力が大きい

太陽光発電所を売却する方法としては、所有者自身で購入希望者を探す直接取引というやり方もあります。太陽光発電所売買のマッチングサイトやWebサイトの掲示板などを活用して購入希望者を探すこと自体は可能ですが、想定よりも安く買いたたかれてしまう、不当な条件の契約を結ばされてしまうといったリスクがあるためおすすめしません。

また商談や資料の準備、価格の交渉、売買成立後の申請手続きといった複雑な業務を全てご自身で行わなければならないので、大きな労力がかかります。太陽光発電所の売却を検討しているなら、買い取り業者か仲介業者に依頼するのがよいでしょう。

太陽光発電所を売却する流れ

太陽光発電所の売却を検討しているなら、業者の選定と同時に必要な書類を用意しておきましょう。ここでは、売却の大まかな流れと準備しておくべき書類についてご紹介します。

売却の査定依頼をする

売却を検討しているなら、複数の業者に査定を依頼をしましょう。簡易査定ならWebサイト上ですぐに結果が見れたり無料で依頼できたりするので、あまり手間がかかりません。複数社に査定依頼をすれば売却相場が分かるのはもちろん、業者ごとの強みも分かります。

提示された金額を確認した上で、現時点で売却をするのか所有を続けるのか意思決定を行うのもおすすめです。

査定に必要な情報を開示する

査定依頼が済んだら、調査に必要な情報を業者に開示します。一般的に以下のような情報を求められるので、事前に準備しておきましょう。

  • FIT価格
  • 年間発電量(kWh)または直近1年間の売電実績
  • 発電所の所在地
  • 発電出力容量
  • 設置している機器の一覧

査定価格が提示される

上記の情報をもとに、簡易査定によって査定価格が提示されます。複数社から出てきた概算の査定価格や応対品質を比較して、数社に絞ったら現地調査を依頼してください。現地調査では、資料では分からない日照時間や土地の形状、設備の状態などさまざまな部分がチェックされます。これによって売却価格が変わることもあるので、簡易査定で一番高い業者だけに絞ってしまうのは避けましょう。

現地調査が完了すると正式な買い取り価格が提示されます。

売買契約を締結

業者が提示する価格に納得できたら、契約締結に進みます。買い取り業者であれば売買契約、仲介業者であれば仲介契約の締結を行いましょう。

買い取り業者に依頼する場合、業者から所有者へ手付金が支払われる場合があります。手付金の有無や金額については、契約を締結する前に必ず確認してください。またこのタイミングで手続きに必要な書類がそろっているかもチェックします。売却に必要な書類は、主に以下の通りです。

書類名概要
設備認定通知書FIT制度で売電する太陽光発電所を国(経済産業省)が認定したことを証明する書類
電力需給契約書電力需給について具体的な契約条件をまとめた書類
土地の登記簿謄本土地の所有者についての情報が記載された公的な書類
太陽光パネルやパワーコンディショナー、遠隔監視装置などの保証書設備を購入したメーカーの保証内容や期間が分かる書類。名義変更後も保証を引き継げるかの確認に必要
太陽光パネル配置図物件や土地に設置した太陽光パネルのレイアウト平面図
単線結線図電気の流れや接続を線と記号で示した図
点検報告書定期点検やメンテナンスの結果が分かる書類

仲介業者に依頼する場合、これらの書類を基に購入希望者への提案書が作られます。提案書ができたら募集を開始し、価格交渉や条件のすり合わせが行われます。売却価格や諸条件の確認が完了し、双方が合意したら売買契約の締結となります。

代金の支払いと土地の引き渡し

売買契約を基に、業者もしくは購入希望者が電力会社や経済産業省などに事業申請を行います。申請は数カ月程度かかる場合があるので、所有者は定期的に業者へ状況を確認してください。事業申請の許可が下りたら、次は設備や土地の名義変更を行います。

これらの作業が完了次第、買い取り代金が支払われます。代金が支払われるタイミングは業者によって異なるので、早急に現金が必要な場合はあらかじめ確認しておきましょう。

太陽光発電所の売却が完了するまでの期間

太陽光発電所を売却する際は、買い取り業者に依頼するか仲介業者に依頼するかで細かいフローが変わります。必然的に太陽光発電所の売却が完了するまでの期間も異なります。

買い取り業者であれば、所有者と業者間で合意が取れればすぐに売買契約を進められるため、査定依頼から代金の支払いまで、1~3カ月程度で完了するのが一般的です。仲介業者の場合は、購入希望者を募ってから希望者の選定や条件のすり合わせを行うため、売却が完了するまでに2・3カ月~6カ月ほどかかります。条件の折り合いが付かなければ、1年程度かかる場合もあります。

売却をする際の注意点

太陽光発電所の売却方法を決めたり業者を選んだりする際に、知っておきたい注意点をご紹介します。

手数料がかかる

仲介業者を利用する場合、資料の作成や購入希望者の募集、商談交渉、手続きの代行などをまとめて依頼できますが、売買契約が成立したタイミングで仲介手数料の支払いが発生することを認識しておきましょう。仲介手数料は「売却価格の〇%分」と定められているケースが多いですが、業者によって異なります。

また業者によっては、所有者と購入希望者をマッチングするWebサイトを運営しており、情報を掲載する際に手数料がかかる場合もあります。売却益が減ってしまうので、サービスを利用したり仲介契約を結んだりする前には、必ずどのくらい手数料がかかるのかを確認しましょう。

売却後に税金を納める必要がある

太陽光発電所の売却時に利益が出たら、確定申告をして税金を納める必要があります。売却益は以下の計算式で算出してください。

  • 売却益 = 売却額 – (太陽光発電所の購入金額 – 売却時までに減価償却した合計額)

個人が得た利益は譲渡所得に区分され、不動産収入や給与などとまとめて所得税と住民税の対象となります。所得税は累進課税なので、所得が多ければ多いほど税率も納税額も大きくなります。売却益を他の投資に充てようとしている場合は、後で税金の納付があることを忘れないようにしておきましょう。

出力制御を受けたエリアにあると売却予想金額を下回るケースがある

先述した通り、出力制御の要請が出た場合は売電することができません。そのため、2023年度に出力制御が要請されなかった東京電力の管轄エリアは、太陽光発電所のニーズが高い傾向にあります。一方で、2022年度・2023年度に出力制御が要請されたエリアは、売電収入が減ってしまうリスクがあることから、想定よりも売却金額が安くなる可能性があります。

出力制御の見通しは毎年経済産業省が公表するため、太陽光発電所が所在するエリアがどのような傾向にあるか確認しておきましょう。

補助金を受けた場合売却できないことがある

太陽光発電所を導入する際に、国や自治体が行う補助金制度を利用した方もいるでしょう。補助金の交付を受けた設備を売却する場合、稼働期間が太陽光発電所の法定耐用年数である17年に達していなければ、補助金の一部を返還しなければなりません。また補助金の種類によっては、売却ができないことがあるので注意が必要です。

補助金を返還する際は、一般社団法人太陽光発電協会へ「財産処分承認申請」を行い、「補助金返還請求通知」を発行してもらいます。通知が発送されてから20日以内に口座へ返還額を振り込む必要があるので、費用の算段を付けておきましょう。

※参考:一般社団法人太陽光発電協会.「補助対象システムの財産処分承認申請の手続き」.https://www.jpea.gr.jp/law/subsidy/disposal_process/ ,(2025-01-25).

設備が現行の法令に対応していないと売却できない可能性がある

2017年のFIT法の改正以降、発電出力容量が20kW以上の太陽光発電所は、感電防止や安定した運営を維持するためフェンスの設置が義務化されています。そのため、現時点でフェンスが設置されていないと、法令に準拠していない設備と見なされて売却そのものができない可能性があります。

また売却できる業者が見つかったとしても、フェンスの設置台を差し引いた売却価格を提示されるため、思ったような売却益が見込めません。フェンスの一部が破損している場合も同様です。設備が法令に準拠していない場合は、現地調査が行われる前に必ず対応しておきましょう。

少しでも太陽光発電所を高く売るポイント

太陽光発電所の売却で少しでも多くの利益を得るために、高く売るためのポイントをご紹介します。

複数の業者に査定依頼をする

太陽光発電所を売却する業者は、複数社を比較してから決定しましょう。主にチェックしたい項目は以下の通りです。

  • 買い取り・仲介の実績がどのくらいあるか
  • ご自身が所有する太陽光発電所と同規模の実績があるか
  • どのようなタイミングで費用が発生するか
  • 査定価格はどのように算出されているか
  • (仲介業者の場合)購入希望者の母数はどのくらいか
  • 対応業務の範囲、サポートの範囲

業者を決める際は売却価格に目が向きがちですが、名義変更や確定申告などのサポートを受けられるかどうかも重要なポイントです。状況に応じて、提携している税理士や行政書士といった専門家にアドバイスをもらえたり、書類作成や申請手続きを代行してもらえたりできれば、売却にかかる負担を減らせるでしょう。

売却する前にメンテナンスや修繕を行う

太陽光発電所の査定を依頼する前に専門家にメンテナンスを依頼して、故障や破損がないかを確認しましょう。設備の状態が良ければ購入後すぐに売電収入を得られるため、売却価格が高くなりやすいです。またメンテナンスや修繕を行ったことによって売電実績を改善できれば、太陽光発電所の価値を高められるのでより高値で売却できます。

まとめ

太陽光発電所は売却して現金化することができます。「早急に現金が必要」「別の投資に充てたい」と考えている方は、一度所有している太陽光発電所の簡易査定を依頼して市場価値を確認してみましょう。

簡易査定は、太陽光発電所の買い取り業者や仲介業者に依頼できます。買い取りであれば、業者が直接設備を購入するのでスピーディな現金化が可能です。仲介であれば、所有者と購入希望者の間に業者が入って価格交渉や条件のすり合わせを行うので、比較的高く売却できる可能性があります。いずれにしても設備の売却相場や手数料、業者の対応力を把握するために、複数社に査定依頼をするのがおすすめです。

適正価格での売却を重視しているなら、伊藤忠エネクスの太陽光発電所買い取りサービスがおすすめです。伊藤忠エネクスは、エネルギー商社として60年以上の歴史があり、これまで培ってきた知識やノウハウを生かして太陽光発電所を適正に査定いたします。海外メーカーの設備やメーカー保証期間が過ぎている設備も買い取れるので、まずはお気軽に簡易査定をご依頼ください。

※本記事でご紹介している税金の具体的な計算については、皆さまの個々のご事情によって異なりますので、大変お手数ですが、最寄りの税務署または税理士などにご相談いただきますようお願いいたします

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