工場や商業施設、オフィスビルなどには「変電設備」という表示のある大きな金属の箱が設置されています。金属の箱は「キュービクル」と呼ばれる、発電所から送られてくる電気を変圧し、施設内で使えるようにするものです。
本記事では、高圧電力の受電に欠かせない「キュービクル」について、設置・運用をする際に義務付けられている保安管理業務も含めて、詳しく解説します。記事後半では、保安管理コストを削減する方法もご紹介しているので、高圧電力を契約している企業のご担当者さまは、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事の内容は2024年5月時点の情報です
目次
キュービクルとは、高圧電力を変圧する機器を金属製の箱に収めた設備(自家用電気工作物)です。正式名称は「キュービクル式高圧受電設備」といい、主に受電・変電・配電の3つの機能があります。建物の屋上や駐車場などに設置するのが一般的です。
電気の受電契約は、契約電力によって高圧受電契約と低圧受電契約の大きく2つに分けられます。一般家庭は使用する電力が少ないため、いくつかの変電所と柱上変圧器を通して低電圧に変換された電気が送られてくる低圧受電契約になります。
一方で工場やビル、商業施設などは一度に多くの電力を使用するため、高圧電力契約が必要です。高圧電力を利用するためには、キュービクルの設置が欠かせません。発電所から送られてくる6,600Vの高圧電力を、キュービクルを通して100Vや200Vに変圧することではじめて、施設内で電気を使用できるようになります。
キュービクルは、電気事業法に則って設置・運用をしなければなりません。具体的には、以下の3つが義務付けられています。
第39条に基づき、キュービクルが技術基準に適合しているかの検査をします。設置時だけではなく、運用を開始してからも定期的に点検(月次・年次)や故障対応が必要です。
また第42条と第43条に基づき、キュービクルの保安体制や保安業務などをまとめた保安規定を定め、業務責任者である電気主任技術者を専任する必要があります。電気主任技術者については、次の項目で詳しく解説します。
保安規定と電気主任技術者が決まったら、キュービクルの設置場所を管轄している産業保安監督部に「保安規程に関する届出」と「主任技術者に関する届出」の2つを提出します。なお、キュービクルの設置場所が2つ以上の産業保安監督部の管轄になる場合は、経済産業省へ届出を出さなければなりません。
※出典:経済産業省.「電気設備の申請・届出等の手引き」.https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/tebiki_index2.html , (2024-05-20).
伊藤忠エネクスの保安サービス
03-4233-8041 平日9:00〜17:30電気主任技術者とは、発電所や変電所、工場、施設などに設置された電気設備の保安管理業務を担う資格取得者のことです。
電気事業法に基づく国家資格で、第一種・第二種・第三種に分類され、区分によって対応可能な電気設備が異なります。第一種・第二種・第三種の各業務範囲は、以下の通りです。
資格区分 | 業務範囲 |
第一種電気主任技術者 | 全ての事業用電気工作物(電気事業用電気工作物や自家用電気工作物の総称)の工事、維持及び運用の保安の監督を行える |
第二種電気主任技術者 | 電圧17万V未満の事業用電気工作物の工事、維持及び運用の保安の監督を行える |
第三種電気主任技術者 | 電圧5万V未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所を除く)の工事、維持及び運用の保安の監督を行える |
キュービクルは6,600Vの高圧電力を変圧する自家用電気工作物であるため、第三種電気主任技術者以上の資格取得者であれば保安管理業務を行えます。
自社に電気主任技術者が在籍していない場合は、外部委託承認制度を利用してキュービクルを設置・運用することができます。
外部委託承認制度とは、一定の要件を満たす外部組織や外部の技術者に、電気設備の保安管理業務を委託できる制度です。外部委託先と契約を締結し、管轄の産業保安監督部の承認を受けることにより、委託できます。
2024年現在、約9割の企業が保安管理業務を外部委託しており、外部委託先の選択肢としては以下の3つがあります。
近年、電気主任技術者の資格取得者数は、以下の通り減少傾向にあります。
電気主任技術者の資格取得者数 | 2002~2011年 | 2012~2021年 |
全体数 | 60,331 | 54,851 |
第一種電気主任技術者数 | 1,731 | 1,999 |
第二種電気主任技術者 | 9,331 | 9,059 |
第三種電気主任技術者 | 49,269 | 43,793 |
直近の10年はその前の10年と比べて全体で5,000人以上減少しており、特に第三種電気主任技術者の資格取得者数は1割以上減少しています。また電気保安協会や管理技術者協会に在籍する電気主任技術者の過半数が50歳以上であり、将来的に、電気主任技術者の人手不足が深刻化する可能性が高いです。
一方で、電気主任技術者(第三種電気主任技術者)の保安管理業務を必要とする再生可能エネルギー設備は、毎年約2,000件のペースで増加する見込みです。以上のことから今後、電気主任技術者の需給ギャップは拡大していくと考えられます。また電気保安協会では、人手不足などによる保安管理手数料の値上げの動きも見られています。
※参考:経済産業省.「電気主任技術者制度について」.https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/013_01_00.pdf , (2023-03-31).
※参考:経済産業省.「電気保安人材の現状分析と取組の方向性について」.https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/008_02_00.pdf , (2021-11-05).
※参考:経済産業省.「電気主任技術者制度について」.https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/014_01_00.pdf , (2023-10-26).
キュービクルの保安管理業務を大手電気保安協会に依頼している企業は多いでしょう。しかし、先述した通り、近年は保安管理手数料が値上がり傾向にあるため、少しでも安くしたいと考えている方も少なくないと思います。
保安管理コストを下げたい場合は、民間の電気保安法人に切り替えるのがおすすめです。大手電気保安協会と比較して保安管理手数料が安い傾向にあるため、キュービクルの設置場所に対応している電気保安法人を見つけて、見積もりを依頼してみてください。
伊藤忠エネクスでは、電気保安業務の仲介サービスを提供しています。キュービクルが設置されているエリアや予算、ニーズに応じて、適切な外部委託先をご提案します。
TERASELでんき for Bizと併せてご契約いただければ、請求書を1枚にまとめられ、請求業務の効率化も行えます。電気保安業務のランニングコストを削減したい企業のご担当者さまは、お気軽にご相談ください。
伊藤忠エネクスの保安サービス
03-4233-8041 平日9:00〜17:30キュービクルは高圧電力の受電に欠かせないもののため、高圧電力を契約する以上、保安管理業務も必須になります。これまで、保安管理業務といえば電気保安協会という認識だった方も多いと思いますが、近年は、民間の電気保安法人も増えてきており、選択肢が広がっています。
伊藤忠エネクスでも、キュービクル保安サービスを提供しておりますので、大手電気保安協会の保安管理手数料の値上げに伴って外部委託先の変更を検討している企業や、新たにキュービクルの設置を検討している企業のご担当者さまは、お気軽にご相談ください。
また伊藤忠エネクスでは、法人向け電力販売サービス「TERASELでんき for Biz」やデマンドコントローラー、自家消費型太陽光発電システム「TERASELソーラー」なども提供しています。電気料金のみならず、管理業務の工数も削減できるよう、貴社に適した電力サービスをトータルでご提案いたしますので、ぜひ併せてご相談ください。
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