電力会社が提供する電力契約区分の一つが「低圧電力」です。2016年4月に、低圧電力も含めた電力の小売全面自由化がスタートし、多くの企業が電力小売事業に参入しました。その結果、現在、需要家は契約区分にかかわらず、ニーズに合わせて自由に電力会社や料金プランを選べるようになっています。
本記事では、低圧電力の概要や電気料金の計算方法、高圧電力・特別高圧電力との違いなどをご紹介します。電気料金を抑えたいと考えている経営者の方や責任者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事の内容は2024年12月時点の情報です
低圧電力は、電力の契約区分の一つです。契約電力が契約電力が50kW未満の場合、低圧電力に該当します。また「電気設備に関する技術基準を定める省令」では、「直流にあっては七百五十ボルト以下、交流にあっては六百ボルト以下のもの」が低圧電力と定義されています。主に一般家庭や小規模な店舗・オフィス・工場などで利用されています。
※出典:e-GOV 法令検索.「電気設備に関する技術基準を定める省令」.https://laws.e-gov.go.jp/law/409M50000400052#Mp-Ch_1-Se_1-At_2 ,(参照 2024-10-10).
低圧電力には、大きく分けて「従量電灯」と「低圧電力(動力プラン)」の2つがあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
従量電灯とは、主に一般家庭で利用されているプランです。家庭用の照明器具や小型機器など、比較的電力の消費量が少ない機器を対象にしています。供給電圧は100Vもしくは200Vで、コンセントの穴が2つある「単相」を用いて機器に電気が送電される仕組みです。
従量電灯のプランは基本料金が安く設定されており、その分電力量料金の単価が高い傾向にあります。基本料金は契約容量(kW)または契約アンペア数(A)によって決まる固定料金ですが、電力量料金は月々の使用電力量によって変動する仕組みです。
契約容量または契約アンペア数によって、従量電灯A・従量電灯B・従量電灯Cに分類されます。ただし、電力会社によって区分は異なり、従量電灯B・従量電灯Cのみの区分を設定しているケースもあります。なお、従量電灯Aの場合、基本料金ではなく、最低料金を設けている電力会社も多いです。基本料金制なのか最低料金制なのかは電力会社によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
低圧電力(動力プラン)は、主に業務用機器を利用する小規模な店舗・事業所向けのプランです。
業務用機器の例には、業務用エアコン・エレベーター・モーター・大型冷蔵庫などがあります。供給電圧は200Vで、コンセントの穴が3つもしくは4つある「三相」を用いて、機器に電気が送電される仕組みです。従量電灯よりも多くの穴から電気が送られるため、大きな動力が必要な業務用機器でも動かすことができます。
低圧電力(動力プラン)の基本料金は契約容量(kW)で決まる固定料金で、電力量料金は月々の使用電力量によって変動します。料金の仕組みは従量電灯と変わりませんが、基本料金が高く設定されており、その分電力量料金の単価が安い傾向にあります。
一つの店舗や事業所、工場で従量電灯と低圧電力(動力プラン)の2つを同時に契約することもできますが、それぞれ別に電気工事が必要です。
低圧電力の電気料金の計算方法や内訳は、電力会社や料金プランによって異なります。本記事では、多くの電力会社で採用されている従量電灯と低圧電力(動力プラン)の2つの計算方法をご紹介します。
従量電灯の電気料金は、「基本料金(または最低料金)+ 電力量料金(燃料費調整額含む)⁺ 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」で計算できます。各項目の概要と算出方法は、以下の通りです。
項目 | 概要 | 算出方法 |
基本料金(または最低料金) | ・契約電力に基づいて算出される ・使用電力量にかかわらず、毎月契約で定められた料金を支払う必要がある ・従量電灯Aの場合、基本料金ではなく、最低料金が設定されているケースもある | 基本料金単価 × 契約電力 ※従量電灯Aの場合:最低料金 |
電力量料金 | ・使用電力量に応じて変動する従量料金 ・3段階の単価が設定されており、使用電力量が増えると1kWh当たりの単価が高くなる ・燃料費調整額は、燃料価格の変動に応じて単価が決まる調整金で、使用電力量に応じて算出される | 従量料金(使用電力量 × 1kWh当たりの料金単価) ± 燃料費調整額(燃料費調整単価 × 使用電力量) |
再生可能エネルギー発電促進賦課金 | ・FIT制度によって再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際に必要な費用を賄うために、使用電力量に応じて算出される賦課金 ・全ての需要家が負担するもの ・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、毎年経済産業大臣が設定する | 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用電力量 |
低圧電力(動力プラン)は、従量電灯と同様に「基本料金+ 電力量料金(燃料費調整額含む)+ 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」で計算できます。各項目の概要と算出方法は、以下の通りです。
項目 | 概要 | 算出方法 |
基本料金 | ・契約電力に基づいて算出される ・使用電力量にかかわらず、毎月契約で定められた料金を支払う必要がある ・減ってきているものの、力率割引・割増が適用されるケースもある(電力会社によって異なるので、事前に確認が必要) | 基本料金単価 × 契約電力 |
電力量料金 | ・電力量料金単価は、夏季とその他の季節で単価が異なり、基本的に夏季の方が単価が高くなる ・燃料費調整額は、燃料価格の変動に応じて単価が決まる調整金で、使用電力量に応じて算出される | 電力量料金単価 × 使用電力量 ± 燃料費調整額(燃料費調整単価 × 使用電力量) |
再生可能エネルギー発電促進賦課金 | ・FIT制度によって再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際に必要な費用を賄うために、使用電力量に応じて算出される賦課金 ・全ての需要家が負担するもの ・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、毎年経済産業大臣が設定する | 再生可能エネルギー発電促進賦課金単価 × 使用電力量 |
電力の契約区分には、低圧電力の他に高圧電力と特別高圧電力があります。ここからは、低圧電力・高圧電力・特別高圧電力の違いを詳しく見ていきましょう。
契約区分によって、利用される施設が異なります。
契約区分 | 主な利用施設 |
低圧電力 | 一般家庭、小規模な店舗・オフィス・工場など |
高圧電力 | 中小規模のオフィスビル・工場・施設など |
特別高圧電力 | 大規模なオフィスビル・工場・施設、空港、鉄道会社など |
契約区分による供給電圧の違いは、以下の通りです。
電力の供給方法も、契約区分によって異なります。
契約区分 | 電力の供給方法 |
低圧電力 | 電柱に設置された柱上変圧器(トランス)によって100~200Vに変圧された後、各家庭や施設に電力が供給される |
高圧電力 | 6,600Vの電圧で供給されるため、キュービクルと呼ばれる高圧受電設備を敷地内に設置する必要がある |
特別高圧電力 | 22,000V〜154,000Vの電圧で供給されるため、特高受変電設備を敷地内に設置する必要がある |
契約電力は、契約区分によって異なります。
また契約電力の決定方法も、契約区分によって違いがあります。
契約区分 | 契約電力の決定方法 | 概要 | |
低圧電力 | 主開閉器契約 | メインブレーカー(主開閉器)の定格電流によって契約電力が決まる | |
負荷設備契約 | 使用する全ての電気設備の電気容量によって契約電力が決まる | ||
高圧電力 | 小口 | 実量制 | 当月を含む過去1年間の最大需要電力(デマンド値)によって契約電力が決まる |
大口 | 協議制 | 電力会社と契約者の話し合いによって契約電力が決まる | |
特別高圧 |
電気料金の内訳の一つである基本料金は、契約電力に基づいて決められます。基本的に、契約電力が大きいほど基本料金は高くなりやすいです。
高圧電力や特別高圧電力の基本料金は、一般的に「1kW当たりの基本料金単価 × 契約電力 × 力率割引および割増」によって決まります。契約電力が大きくなる分、高圧電力や特別高圧電力の方が低圧電力よりも基本料金が高くなります。一方、1kWh当たりの電力量料金単価は、高圧電力や特別高圧電力の方が低圧電力よりも安く設定されていることが多いです。
使用電力量が多い場合は、低圧電力(動力プラン)から高圧電力に切り替えた方が、電気料金が安くなる可能性もあります。
例えば、東京電力エナジーパートナーの低圧電力・高圧電力・特別高圧電力の各プランの基本料金と電力量料金は、以下のようになっています。
契約区分 | 基本料金(/kW) | 電力量料金(/kWh) | |||
夏季 | その他季 | ||||
低圧電力 | 1,098円05銭 | 27円14銭 | 25円57銭 | ||
高圧電力 | 業務用電力 ※2025年以降新規加入の申込受付停止 |
小口 | 1,890円00銭 | 20円32銭 | 19円16銭 |
大口 | 1,890円00銭 | 20円32銭 | 19円16銭 | ||
産業用電力 | 小口 ※新規加入の申込受付停止 |
1,989円00銭 | 18円94銭 | 17円93銭 | |
大口 ※2025年度以降、新規加入の申込受付停止 |
1,989円00銭 | 18円94銭 | 17円93銭 | ||
特別高圧電力 | 業務用電力 ※2024年4月1日以降に契約した場合 |
20kV供給 | 1,770円00銭 | 18円85銭 | 17円84銭 |
60kV供給 | 1,715円00銭 | 18円59銭 | 17円63銭 | ||
産業用電力 ※2024年4月1日以降に契約した場合 |
20kV供給 | 1,770円00銭 | 18円29銭 | 17円34銭 | |
60kV供給 | 1,715円00銭 | 18円04銭 | 17円12銭 | ||
140kV供給 | 1,660円00銭 | 17円80銭 | 16円90銭 |
※参考:東京電力エナジーパートナー.「低圧電力」.https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/old02.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「業務用電力(契約電力500kW未満)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan06.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「業務用電力(契約電力500kW以上)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan04.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「高圧電力A(契約電力500kW未満)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan12.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「高圧電力(契約電力500kW以上)」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan10.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「特別高圧電力A」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan02.html ,(2024-11-13).
※参考:東京電力エナジーパートナー.「特別高圧電力B」.https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/plan08.html ,(2024-11-13).
低圧電力の場合、電気料金以外の費用は基本的にかかりません。
一方、高圧電力や特別高圧電力の場合は、敷地内にキュービクルや特高受変電設備といった受電設備の設置が必要です。そのため、設置費用やメンテナンス費用がかかります。また定期点検では、電気主任技術者の人件費や外部委託費も発生します。
さらに特別高圧電力では、敷地内への送電線の引き込み工事や、場合によっては敷地内に鉄塔を立てなければならない場合もあり、さらに費用がかかる可能性もあります。
現在、自社が利用しているのが低圧電力か高圧電力か分からない場合は、以下の2つの確認方法があります。
先述した通り、低圧電力の場合は電柱に設置されているトランスによって変圧されるため、敷地内に受電設備を設置する必要はありません。敷地内に受電設備がある場合は、高圧電力や特別高圧電力を契約していることが分かります。受電設備には「高圧受電盤」や「高電圧変電設備」といった表示があります。
請求書でも、契約電力の区分を確かめることが可能です。請求書の「契約種別」という欄に「低圧」「高圧」といった記載があります。電力会社によっては契約種別の欄にプラン名が記載されているケースがありますが、その場合は供給電圧の欄を確認しましょう。供給電圧が6,000V以上の場合は、高圧電力もしくは特別高圧電力を契約しているということです。
ここからは、低圧電力(動力プラン)の電気料金を削減する方法を4つご紹介します。
電気を使わないときは、ブレーカーから切る習慣を付けましょう。
低圧電力(動力プラン)では、1カ月の使用電力量が0kWhの場合、基本料金が半額になります。ただし、たった1kWhでも電気が流れると、基本料金は満額発生してしまいます。それぞれの機器の電源を落とすだけでは少量の電気が流れてしまうため、一定期間全く電気を使わない場合は、ブレーカーから切っておくのがおすすめです。
負荷設備契約から主開閉器契約に切り替えると、基本料金を削減できる可能性があります。
低圧電力には主開閉器契約と負荷設備契約の2つの契約方法があり、それぞれで契約電力の決め方が異なります。主開閉器契約は、メインブレーカーの定格電流によって契約電力が決まります。一方で、負荷設備契約は、使用する全ての設備の電気容量の合計で契約電力が決まります。
負荷設備契約では、全ての設備が同時に稼働することを前提に契約電力が決まるので、一度に全ての設備を使用することがない場合や、日によって使用する設備の種類やタイミングが異なる場合は、余分な契約電力が生まれてしまうことになります。基本料金が無駄になってしまうので、上記に当てはまる施設の場合は、主開閉器契約への切り替えを検討してみてください。
電子ブレーカーを導入することでも、電気料金を削減できる可能性があります。電子ブレーカーとは、CPU(中央処理装置)と電流値を測定するセンサーが内蔵されているブレーカーの一種です。電力契約が主開閉器契約の場合に導入できます。
電子ブレーカーの特長は、電流の大きさや時間を正確かつリアルタイムで監視・制御できる点です。JIS規格によって定められた許容範囲内であれば、一時的に過剰な電流が流れたとしても、ブレーカーが落ちることはありません。
従来のブレーカーの場合は、ブレーカーが頻繁に落ちるのを防ぐために、ある程度余裕を持った定格電流にしなければなりませんが、電子ブレーカーの場合は大幅な余裕を持たせる必要がないため、契約電力を減らすことができ、基本料金を削減できます。
なお、電子ブレーカーの導入には50万円程度かかるのが一般的です。初期費用を捻出できるのか、初期費用はどのくらいの期間で回収できるのかといったことを事前にシミュレーションをしてから導入するようにしましょう。
電力会社を切り替えるのも、一つの方法です。基本料金や電気量料金の単価は、電力会社や料金プランによって異なります。直近の使用電力量を用いて、どの程度電気料金が変わるのかをシミュレーションし、よりお得な電力会社や料金プランに切り替えるのがおすすめです。
伊藤忠エネクスの法人向け電力供給サービス「TERASELでんきforBiz」でも、低圧電力をご提供しています。
企業の電気の使用状況やニーズに応じたオーダーメイドプランをご提案するので、電気料金の削減につながりやすいのが特長です。その他にも、30分ごとの使用電力量を見える化するサービスや、指定された時間に節電を行い、目標達成すると電気料金が割引になる節電プログラム(デマンドレスポンス)も用意されています。
電力の契約区分には、低圧電力や高圧電力、特別高圧電力があります。その中でも低圧電力は、一般家庭や小規模な店舗・オフィス・工場などで用いられている契約区分です。電気料金の値上がりにお悩みの経営者や責任者の方は、本記事でご紹介した内容を参考に、電気料金の削減に取り組んではいかがでしょうか。
電力会社の切り替えを検討している場合は、伊藤忠エネクスが提供している法人向け電力供給サービス「TERASELでんきforBiz」がおすすめです。使用電力量や目的に合った料金プランをご提案しますので、無理なく電気料金を削減できます。イニシャルコストや電気料金以外のランニングコストもかからないので、まずはお気軽にお問い合わせください。
一覧へ戻る 一覧へ戻るキーワード検索
キーワード検索