SBTとは? 認定要件や日本企業の認定数、メリットを解説

SBTとは? 認定要件や日本企業の認定数、メリットを解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

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世界的に地球温暖化への対策が求められている現在、日本でもSBT認定を受ける企業が増えています。そもそもSBTとはどのようなもので、認定を受けるとどのようなメリットがあるのでしょうか。

本記事では、SBTの概要や日本のSBT認定企業数、認定を受けるメリットなどについて解説します。環境経営への取り組みを検討している、企業の経営者や担当者の方はぜひ参考にしてみてください。


※本記事の内容は2024年12月時点の情報です

SBTとは?

SBTはScience Based Targetsの略称で、企業が設定する温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標のことです。CDP・UNGC(国連グローバル・コンパクト)・WRI(世界資源研究所)・WWF(世界自然保護基金)の4つの国際共同機関が運営しています。

2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して2度未満に保ち、1.5度まで抑える努力をする「2℃(1.5℃)目標」が示されました。SBTはこの2℃(1.5℃)目標に水準を合わせた国際イニシアチブで、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出量の削減目標を示しています。

企業はSBTが定める認定基準を満たす温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、設定内容がSBTに認められればSBT認定を取得できます。

SBT認定の要件

SBT認定を受けるには、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量を削減することが重要です。自社が排出する温室効果ガスだけではなく、事業活動にまつわるあらゆる温室効果ガスの排出量を削減する必要があります。

SBTでは、サプライチェーンを以下の3つのScopeに分け、それぞれに削減目標が定められています。

分類対象となる温室効果ガス削減目標
Scope1企業自らが直接排出する温室効果ガス例:燃料の燃焼1.5℃水準(毎年4.2%以上の温室効果ガス排出量削減)
Scope2他社から供給される電気・熱・蒸気の使用によって、間接的に排出される温室効果ガス例:電気の使用
Scope3企業の事業活動に関連する温室効果ガス排出量のうち、Scope1・2に該当しない間接排出例:原材料、通勤、輸送・配送、製品の使用・廃棄2℃水準(毎年2.5%以上の温室効果ガス排出量削減)

Scope1〜3の合計がサプライチェーン排出量です。SBT認定を受けるには、企業がいつまでにどの程度サプライチェーン排出量を削減するかという目標を設定し、それをSBT事務局から認めてもらう必要があります。ただし、Scope3がScope1〜3の合計の40%を下回る場合は、Scope3の目標設定を行う必要はありません。

※参考:環境省.「SBT(Science Based Targets)について」.https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20240301.pdf ,(2024-10-08).

通常SBTと中小企業向けSBTの違い

SBT事務局は、通常のSBTとは別に中小企業の目標設定に関して独自のガイドラインを設けています。中小企業向けSBTは、通常SBTよりも企業の負担が軽減された内容になっているので、中小企業でも取り組みやすいのが特徴です。

なお、2024年1月1日以降、中小企業向けSBTの要件に変更がありましたが、すでにエントリーした企業への影響はありません。通常SBTと中小企業向けSBTの主な違いは、以下の通りです。

通常SBT中小企業向けSBT
対象特になし・以下全てを満たす企業Scope1と位置基準のScope2の排出量全体が10,000 tCO₂e未満
・海運船舶を所有もしくは管理していない
・非再生可能エネルギーの発電資産を所有もしくは管理していない
・金融機関もしくは石油・ガス企業に分類されていない
・親会社の事業が通常SBTに該当していない

また上記に加え、以下のうち2つに該当している

・従業員が250人未満
・売上高が5,000万ユーロ未満
・総資産が2,500万ユーロ未満
・森林・土地・農業に関連する企業に分類されていない
目標年申請を行ってから5年以上、10年以内の任意の年2030年
基準年最新データが取得できる年での設定を推奨2018〜2023年のうちから選択
削減対象範囲Scope1〜3
※Scope3がScope1〜3の合計の40%を下回る場合、Scope3の目標設定は不要
Scope1・2
目標レベルScope1・2:1.5℃(最低年4.2%削減)
Scope3:Well below 2℃(最低年2.5%削減)
Scope1・2:1.5℃(最低年4.2%削減)
Scope3:算定・削減(特定基準値の設定なし)
費用目標妥当性確認サービス:USD 9,500(税別)
※最大2回の目標評価が受けられる
以降の目標再提出:USD 4,750(税別)/ 回
USD 1,250(税別) / 回
承認プロセス目標提出後、SBT事務局による審査があり、承認されるかどうかが決まる
※最大30営業日
※事務局から質問が送付されるケースあり
目標提出後、デューデリジェンスが実施される

※参考:環境省.「SBT(Science Based Targets)について」.https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20240301.pdf ,(2024-10-08).

SBT参加企業は年々増加

SBT参加企業は2015年以降年々増加しており、2024年3月1日時点で世界でSBT認定を受けている企業は4,779社、コミット中の企業は2,926社となっています。コミットとは、2年以内のSBT認定の取得を宣言することです。

2015〜2024年までの世界の認定企業数とコミット中の企業数の変遷は、以下の通りです。

認定数コミット数合計数
2015年1717
2016年8912101
2017年40166206
2018年97272369
2019年191350541
2020年348493841
2021年6426681,310
2022年1,2371,4342,671
2023年2,2562,5544,810
2024年4,7792,9267,705

※参考:環境省.「SBT(Science Based Targets)について」.https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20240301.pdf ,(2024-10-08).

日本企業のSBT認定数

日本でSBT認定を受けている企業も、年々増加しています。2024年3月1日時点で、SBT認定を受けている日本企業は904社、コミット中の企業は84社で合計988社となりました。2015〜2024年までの日本の認定企業数とコミット中の企業数の変遷は以下の通りです。

認定数コミット数合計数
2015年33
2016年167
2017年51419
2018年154055
2019年393473
2020年622688
2021年9529124
2022年16438202
2023年42567492
2024年90484988

日本では特に電気機器業界や建設業界で、SBT認定を受けている企業が多いです。認定を受けている日本企業の一例を紹介します。

  • 旭化成ホームズ
  • アサヒグループホールディングス
  • オムロン
  • 花王
  • 鹿島建設
  • 京セラ
  • 積水ハウス
  • トヨタ自動車
  • 日立製作所
  • 三井住友建設
  • リコー など

※参考:環境省.「SBT(Science Based Targets)について」.https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20240301.pdf ,(2024-10-08).

SBT認定を受ける5つのメリット

企業がSBT認定を受けることで得られる、5つのメリットをご紹介します。

環境保全に貢献できる

さまざまな面で環境保全に貢献できることは、SBT認定を受けるメリットの一つです。温室効果ガスの排出量削減は、具体的に以下のような環境保全につながります。

  • 地球温暖化防止
  • 異常気象発生の増加抑制
  • 気候変動の防止
  • 生物の絶滅防止
  • 食料問題・水資源枯渇の防止

企業の信頼度を高められる

企業の信頼度を高められることも、SBT認定を受けるメリットです。

SBT認定を受ければ、企業はステークホルダー(顧客・投資家・取引先・従業員など)に対して「環境に配慮し持続可能な事業を行っている企業」としてアピールできます。近年は企業が環境問題にどのように取り組んでいるかに着目している投資家が多いため、特に資金調達の面で有利に働く可能性があるでしょう。

またSBT認定の取得は、CDPの採点で評価されます。CDPは気候変動に関する国際的な情報開示システムで、近年はCDPに署名する投資家も増えています。CDPの得点がアップすれば、投資家からの企業の評価がさらに高まるでしょう。競合他社との差別化につながり、新たなビジネスチャンスも獲得できるかもしれません。

コスト削減につながる

SBT認定を受ければ、コスト削減にもつながります。温室効果ガス排出量を削減するには、省エネや創エネへの取り組みが必要不可欠です。企業で省エネや創エネにつながる施策を進めることで、電気料金などのコストを減らすことができます。

サプライチェーン全体でのリスクを軽減できる

サプライチェーン全体でのリスクを軽減できることも、SBT認定を受けるメリットです。

自社がどれだけ環境に配慮していたとしても、取引先が環境に配慮して事業を行っていなければ、自社の評価にも悪影響が及び、経済的なリスクが発生する恐れがあります。サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量の削減に取り組むSBT認定なら、自社の事業に関連する取引先にも環境への対策を促せるため、リスクの軽減につながるでしょう。また自社と取引先との関係性の向上や、新規顧客獲得の効果も期待できます。

イノベーションの促進になる

SBT認定は、イノベーションの促進にもつながります。

温室効果ガス排出量の削減目標を達成するには、新しい技術やアイデアが欠かせません。具体的な削減目標を掲げ、従業員全体に周知することで、一人ひとりが自分ごととして捉えるようになります。

目標達成にどのような技術や取り組みが必要かを考えるようになるため、社内でさまざまなアイデアが生まれるようになるでしょう。

SBT認定までの流れ

SBT認定を受けるまでの大まかな流れは、以下の通りです。

  1. SBT事務局にCommitment Letterを提出する(任意)
  2. SBT認定の基準を満たす目標を設定する
  3. 事務局に目標を明記したTarget Submission Formを提出し、SBTi booking systemで審査日を予約する
  4. 事務局が有料で目標の妥当性を審査し、メールで回答する
  5. 認定を受けた場合は、SBTなどのWebサイトで公表される

Commitment Letterは2年以内にSBT目標を設定することを宣言するためのもので、提出は任意ですが、提出するとSBTなどのWebサイトに掲載されます。認定を受けた後は、年1回温室効果ガスの排出量と取り組みの進捗状況を開示し、定期的に目標の妥当性を確認しなければなりません。少なくとも5年に1回程度は、再評価が必要です。

※参考:環境省.「SBT(Science Based Targets)について」.https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20240301.pdf ,(2024-10-08).

伊藤忠エネクスの温室効果ガス削減につながるサービス

伊藤忠エネクスでは、温室効果ガス排出量の削減につながるさまざまなサービスを提供しています。環境経営への取り組みを検討している企業は、ぜひチェックしてみてください。

サービス名概要
TERASELでんきforBiz・法人向け電力供給サービス
・環境価値オプションを組み合わせることで、電力使用によるCO2排出量を実質ゼロにできる
TERASELソーラー・太陽光発電システムを設置し、発電した電気を自家消費できるサービス
GXコンサルティングサービス・CO2排出量を見える化し、削減目標達成まで伴走支援するサービス
省エネルギー商材サービス・初期費用0円で、LED照明設備などの最新省エネ設備を導入できるサービス
GTL燃料・天然ガス由来の軽油代替燃料を使用し、CO2排出量を削減できる
リニューアブルディーゼル・廃食油や廃動植物油などを原料とした軽油代替燃料を使用し、CO2排出量を削減できる

※参考:伊藤忠エネクス株式会社.「リニューアブルディーゼル」.https://www.itcenex.com/ja/business/detail/renewable_diesel/index.html ,(2024-10-08).

まとめ

サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を削減するための目標を設定し、SBT認定を受ければ、環境保全に貢献できるのはもちろん、企業の信頼度向上やコスト削減などにもつながる可能性が広がります。中小企業向けのSBTもあるので、この機会に環境に配慮した経営を推進し、SBT認定の取得を目指してみてはいかがでしょうか。

伊藤忠エネクスでは、SBTの目標達成につながるさまざまなサービスを提供しています。

温室効果ガス排出量を削減する取り組みとして、ぜひ伊藤忠エネクスのサービスをご活用ください。

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