水力発電のメリットとは?水力発電の種類や国内の事例をご紹介!

水力発電のメリットとは?水力発電の種類や国内の事例をご紹介!

伊藤忠エネクス メディア編集部

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水力発電は古くから利用されている一般的な発電方法ですが、地球温暖化対策として脱炭素などの取り組みの重要性が増している昨今、クリーンな再生可能エネルギー(再エネ)として再評価されています。発電効率が非常に高く、かつ、低コストで安定的に電力を供給できるため、ベースロード電源としても優秀です。一方で、大規模なダム開発によるコスト面や環境面の問題も指摘されています。

本記事では、水力発電の種類やメリット・デメリット、国内の事例などをご紹介します。

水力発電とは?

水力発電とは
水を高い場所から低い場所へ落とす際の位置エネルギーを利用して水車を回し、電力を生み出す発電方式です。落差が大きければ大きいほど大きなエネルギーを持つため、水力発電では急斜面の山間部などに発電所が建設されることが一般的です。

急勾配の河川が多く、水資源の豊富な日本では戦前から水力発電が盛んに利用されてきましたが、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーであることから、近年改めて注目されるようになりました。

なお、資源エネルギー庁の調べによると、日本の総発電電力量に占める水力発電の割合は、2020年時点で7.8%です。


水力発電を含む再生可能エネルギーについての基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」」. "7.再エネ".(参照2023-7-27)

https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2022/007/

水力発電の種類

水力発電にはさまざまな種類がありますが、大きく2つのパターンで分類が可能です。

  • 運用方法
    • 流れ込み式
    • 調整池式
    • 貯水池式
    • 揚水式
  • 構造
    • 水路式
    • ダム式
    • ダム水路式

運用方法による分類

流れ込み式

後述する3つの方式とは異なり、河川の水を貯め込まずに水流をそのまま発電に利用する方式です。シンプルな構造でダム建設が不要であり、建設コストを抑えることができますが、雨量が少ないと発電量が落ちてしまいます。

調整池式

調整池に水を貯め、水量を調整しながら発電する方式です。夜間など電力需要が小さい時間帯に水を貯め、電力需要の大きい平日昼間などに放水して発電します。

1日、あるいは、1週間単位など、短期間で発電量の調整ができる点がメリットです。

貯水池式

貯水池に水を貯め込み、季節による電力需要の変動に応じて発電する方式です。調整池式よりも長期スパンで発電量の調整を行う点が特徴であり、梅雨や台風シーズンなどの河川の水量が多い時期に水を貯め込んでおき、真夏や真冬など、電力需要が大きい時期に放水して発電します。

河川の水量と電力需要は季節によって大きく変動するので、両者のバランスを見ながら季節ごとに発電量を調整します。

揚水式

発電所を挟んで上流と下流に貯水池を設け、両者の間で水を移動させて発電する方式です。電力需要が少ない深夜などの時間帯に余剰電力を使って上流に水をくみ上げておき、需要の多い昼間に下流に流すことで発電するといった、効率的な運用が可能です。

構造上の分類

水路式

河川の上流から取水口を通じて水を引き込み、落差が見込める位置で元の河川の流れに戻し、その過程で発電する方式です。流れ込み式と組み合わせることが一般的です。

後述のダム式よりも建設コストを抑えられますが、水路に流れ込む水量が河川の水量に依存するため、水流を発電に使わずに無駄に流してしまう無効放流が多くなる傾向があります。

ダム水路式

水路式とダム式のハイブリッド型です。ダムによって水をせき止め、水路を通じて水を引き込み発電します。

水量を調整しやすいダム式の利点と、落差を得やすい水路式の利点の両方を持つのがメリットです。一方で、ダムと水路の両方を建設する必要があるため、大規模な発電施設になる傾向があり、その分建設コストはかなり高額になります。

水力発電のメリット

水力発電のメリットとしては、大きく以下の5つがあります。

  • 環境への負荷が少ない
  • 海外の資源に依存しない電力源
  • 出力の調整が容易
  • 発電にかかるコストが安価
  • エネルギー変換効率が高い

環境への負荷が少ない

水力発電は燃料を燃やさないため、発電の過程で温室効果ガスや大気汚染物質を排出しません。脱炭素やカーボンニュートラルなど、地球温暖化対策へ世界中が取り組む中、水力発電は環境にやさしい重要な電源として位置付けられています。

海外の資源に依存しない電力源

日本は年間を通して雨量が多く、水資源に恵まれているため、海外からの化石燃料の輸入に依存する火力発電と比較すると、安定的にエネルギー資源を確保できます

昨今は燃料価格の高騰が問題になっていますが、水力発電は輸入価格の変動に発電コストが左右されません。海外情勢に関わらず国産の資源を安定して利用できるため、エネルギー安全保障の面からも優れている発電方式です。

出力の調整が容易

他の発電方式に比べて、非常に短い時間で発電できるため、電力需要の変化に柔軟に対応できます。また先述の通り、季節や時間帯ごとの電力需要や水量の違いを踏まえた運用ができることもメリットです。

発電にかかるコストが安価

火力発電のように化石燃料を消費することなく、実質無料の水という資源を利用するため、発電コストが安価な点もメリットです。発電所の維持・管理コストも比較的安い傾向にあります。

エネルギー変換効率が高い

エネルギー変換効率で比較すると、火力発電は約30~40%、原子力発電は約30%、また他の再生可能エネルギーは約20~40%ですが、水力発電は約80%であり、非常に変換効率が高いです。

水は重く、エネルギー密度が高いため、これほどの変換効率の高さを実現しているのです。

※参考:EV-DAYS by東京電力エナジーパートナー.「太陽光発電の「交換効率」とは?計算方法や発電量を増やす方法を紹介

https://evdays.tepco.co.jp/entry/2023/03/10/kurashi35

水力発電のデメリット

一方で、水力発電には以下のようなデメリットもあります。

  • ダムの建設に多くの時間と費用がかかる
  • 環境に悪影響を及ぼす恐れがある
  • 降水量が少ないと発電量に影響が出る

ダムの建設に多くの時間と費用がかかる

ダムを建設する場合、非常に多くの金銭的、時間的コストがかかります。現在開発されていない地域は、開発済み地域に比べ奥地であることも多く、その点でも新規開発には多くのコストがかかることが想定されます。

また大規模な開発計画の場合、ダム建設予定地周辺の住民が移住を余儀なくされるケースもあり、調整に膨大な時間が取られることも珍しくありません。発電コスト自体は安いものの、巨額の初期投資が必要で、多くの時間と手間がかかる点はデメリットです。

環境に悪影響を及ぼす恐れがある

ダムを建設する場合、建設予定地の森林を伐採するなど、自然環境への影響は少なからず生じてしまいます。ダムが障害となって魚が河川を遡上できなくなったり、下流の水流減少によって河川の生態系が破壊されたりするリスクもあります。

降水量が少ないと発電量に影響が出る

水力発電は水という天然資源に依存しているため、例年より雨量が少なく渇水状態になった場合、十分に発電できなくなります。貯水池やダムはこうした課題に対処するための施設ですが、あまりに雨量が少ないと貯水率が大きく低下し、発電量が減少する恐れがあります。

太陽光発電や風力発電と同じく、水力発電も天候に左右される要素があるということです。

国内で注目されているマイクロ水力発電(小水力発電)とは?

先述した通り、水力発電には多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。特に、ダム建設に伴うコスト面や環境面のデメリットは無視できません。

こうした水力発電特有のデメリットを解消し得る先進的な水力発電の方法として、「マイクロ水力発電(小水力発電)」があります。

マイクロ水力発電とは
出力1,000kW以下の水力発電のことで、2008年4月に施行された新エネルギー法の改正により、「新エネルギー」に分類されます。発電方式としては「水路式」または「流れ込み式」であり、大規模なダムの建設を必要としません。

砂防ダムや農業用水路など、既存の施設を利用するため建設コストがそれほどかからず、経済的なメリットもあります。また浄水場や下水処理場、ダムの維持放流水の利用など、一定量の水が流れているところであればどこでも利用できる可能性があり、今後、さらに導入が増えることが期待されます。

マイクロ水力発電(小水力発電)の事例

ここからは、日本におけるマイクロ水力発電の導入事例をご紹介します。

※参考:全国小水力利用推進協議会. 「導入事例」.(参照2023-7-27).

https://www.j-water.org/result/index.html

農業用水路の活用例

山梨県北杜市村山六ヶ村堰水力発電所では、村山六ヶ村農業用水の全長約16kmの用水路のうち、山間部を通過する用水路の上流で取水し、落差85.24mを使って発電しています。発電出力は320kWであり、峡北地域広域水道企業団大門浄水場に電力を供給し、年間電力を賄っています。

水道水路の活用例

福岡市の瑞梅寺浄水場では、瑞梅寺川上流の瑞梅寺ダム(ダム直下の量水池)から浄水場着水井までの間の落差42.75mを利用して発電しています。発電出力は35kWであり、発電開始1年で浄水場で使用する電力とほぼ同じ発電実績を上げました。

水力発電のこれから

水力発電は、一度発電所を造ってしまえば安定的に電力を供給できる再生可能エネルギーであり、これまでも重要なベースロード電源としての役割を担ってきました。

国が2030年のエネルギーの見通しを示した「第6次エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギーの比率の目標を総発電電力量の36~38%としており、そのうち11%程度を水力発電で賄うことを目標としています。

日本ではこれまで大規模な水力発電所が電力需要を支えてきましたが、同じ規模の新規の発電所を建設できる場所は限られています。そこで今後は、マイクロ水力発電をはじめとした、未開発の発電可能な場所が多く残っている中小規模の水力発電の重要性が高まっていくことが予想されます。

※参考:経済産業省. 「今後の再生可能エネルギー政策について」(参照2023-7-27).

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/040_01_00.pdf

まとめ

水力発電は水資源が豊富な日本の地理的条件に適した発電方法です。発電コストが安く、かつ、エネルギー変換効率が非常に高いことに加え、出力調整が容易で発電需要の変化に柔軟に対応できる点もメリットです。一方で、大規模なダム開発はコスト面や環境面での課題があり、今後は中小規模の水力発電所の普及が期待されます。

河川や水路などが近くになければ、マイクロ水力発電を導入するのはなかなか難しいですが、同じ再生可能エネルギーでも太陽光発電なら、立地を気にすることなく比較的容易に導入できます。


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