太陽光発電のPPAモデルとは?仕組みや導入によるメリット・デメリットを解説!
電気料金の高騰などを背景に、太陽光発電で生み出した電気を自ら消費する「自家消費型太陽光発電」が注目されています。自家消費型太陽光発電には、電気料金やCO2排出量を削減できる、非常用電源としても活用できるといった多くのメリットがあります。
本記事では、太陽光発電設備の導入を検討されている方へ向けて、自家消費型太陽光発電の種類や導入する際の注意点、導入事例などをご紹介します。
目次
需要家(電力を使用する企業や一般家庭)が、ソーラーパネルをはじめとする太陽光発電設備を自らが所有する敷地などに設置し、そこで作られた電気を自らで使用します。売電目的ではなく、原則として、自らの電力需要を賄うために発電する点が特徴です。
太陽光発電システムを導入すると、発電した電気を電力会社に買い取ってもらい、収入を得ることが出来ます。一方、自家消費型太陽光発電は先述した通り、自らの電力需要を賄うことを目的としており、売電収入を得ることが目的ではありません。
では、なぜ近年、自家消費型太陽光発電に注目が集まっているのでしょうか。その理由としては、大きく以下の2つがあります。
FIT制度(固定価格買取制度)による電気の買取価格は、各電源(再生可能エネルギー)ごとに、通常必要となるコストや価格目標、適正な利益などを勘案し、調達価格等算定委員会の意見を尊重して、経済産業大臣が決定します。この買取価格は卸売市場の需給関係に左右されないものであり、発電事業者は発電した電気を安定した価格で売却することができます。
FIT制度は再生可能エネルギーに普及を目的として作られたのもであり、制度の導入以降、太陽光発電の発電量が大きく増えたことから、その目的は達成されつつあります。また太陽光発電設備の設置費用も下がっており、こうしたことから太陽光発電の売電価格は年々下落しています。実際に、10kW未満の売電価格は2012年度には1kWh当たり42円でしたが、2023年度には16円に、10kW以上50kW未満の売電価格も2012年度には40円+税でしたが、2023年度には10円にまで下落しています。
このように売電価格が10年で半分以下にまで下落したため、近年では売電するよりも自家消費した方がコスト的に見合うと思われ始めているのです。
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「買取価格・期間等」,(参照2023-7-14)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「過去の買取価格・期間等」,(参照2023-7-14)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html
近年、電気料金が大幅に値上がりしています。2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、多くの原子力発電所が稼働を停止していることに加え、最近では燃料価格の高騰や円安のあおりを受けて、さらに電気料金が値上がりしています。実際に東京電力エナジーパートナー・北海道電力・東北電力・北陸電力・中国電力・四国電力・沖縄電力の大手7社は、2023年6月に14~42%の規制料金の値上げを実施。高圧・特別高圧区分でも、東京電力エナジーパートナー・北海道電力・東北電力・中部電力ミライズ・北陸電力・中国電力・四国電力の大手7社が値上げを実施しています。
このような電気料金の相次ぐ値上げを受けて、比較的導入が簡単で、自家消費によって電気の購入量を減らして電気料金を削減できる、自家消費型太陽光発電に注目が集まっているのです。
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?」(参照2023-7-14)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/denkidai_kaitei.html
一口に自家消費型太陽光発電と言ってもいくつかの種類があります。具体的には、「発電した電力の使い方」と「導入形態」の2つのパターンで分類が可能です。
1つ目は、発電した電力の使い方による分類です。これは以下の2つに分けられます。
2つ目は導入形態による分類です。これも以下2つに分けられます。
一方で、需要家の負担と責任で太陽光発電設備を導入するため、まとまった額の初期費用がかかり、また設備メンテナンスも自らで行わなければなりません。
初期投資なしに太陽光発電システムを導入でき、契約期間中はPPA事業者がメンテナンスを行ってくれるため、手軽に太陽光発電を利用出来ます。一方で、毎月の電気料金は発生するため、自己所有型と比べると電気料金の削減効果は小さめです。
PPAモデルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
自家消費型太陽光発電の導入メリットとしては、以下の3つが挙げられます。
太陽光発電設備を導入して自家消費することで、電気の購入量を減らすことができるため、電気料金の削減が可能です。余剰売電型であれば、余った分を売電し、収入を得ることもできます。
電気料金の値上げが続く現在、自家消費型太陽光発電の導入による電気料金の削減効果はより大きなものになるでしょう。大量の電力を消費する業種では、電気料金に利益が圧迫されている企業も少なくないと思いますが、電気料金を削減することで、収益性や価格競争力を改善する効果も期待できます。
また自己所有型の場合、太陽光発電設備は減価償却費として費用計上できるため、中小企業においては節税対策になり、この点でも経済的メリットを得られます。
太陽光発電は、太陽の光が専用のパネルに取り付けられた太陽電池(半導体素子)に当たることで発電するため、発電時にCO2を排出しません。カーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)の達成が社会全体で求められている現代において、自家消費型太陽光発電の導入によってCO2排出量の削減に取り組むことは、企業の価値を高める手段として非常に有効です。
またCO2排出量の削減をはじめとする環境対策に積極的に取り組んでいることをアピールすれば、企業のイメージアップにもつながり、持続的な成長を後押しする効果も期待できます。
近年、日本では大規模な自然災害が頻発しており、企業では、緊急事態が発生した場合でも損害を最小限に抑え、事業を途切れずに継続、あるいは、途切れたとしても早期に復旧するための手段などを取り決めたBCP(事業継続計画)を策定することが重要となっています。
こうした中で、自家消費型太陽光発電は、停電発生時の非常用電源としての活用も期待されています。太陽光発電には太陽に出ている時間しか発電できないというデメリットがありますが、蓄電池を併用することで日中に発電した電気を貯めておくことができ、夜間も含めて非常用電源として活用可能です。
自家消費型太陽光発電には、導入する際に注意すべき点もあります。主な注意点は以下の4つです。
初期費用の高さは自家消費型太陽光発電導入の大きなハードルです。太陽光発電を導入するには、ソーラーパネルやパワーコンディショナーなどの設備費用、それらを設置するための工事費用といった初期費用がかかります。初期費用の相場は年々下落傾向にはあるものの、依然としてある程度まとまったお金が必要なことには変わりありません。初期費用の捻出が難しい場合は、PPAモデルでの導入を検討してみると良いでしょう。
自家消費型太陽光発電を導入するには、ソーラーパネルの設置に適したスペースを確保する必要があります。日当たりの良さを考慮すると、自社の社屋や工場、倉庫などの屋上・屋根に設置するのが一般的ですが、カーポートの屋根や遊休地、農地などに設置するケースも珍しくありません。全量を自家消費する場合や非常用電源として活用する場合は、蓄電池の設置場所も確保する必要があります。
50kW未満の太陽光発電で、全量自家消費の場合(FIT制度による売電をしていない場合)以外は、定期的な設備の点検・メンテナンスが義務化されています。またメンテナンスを怠るとソーラーパネルに汚れや破損が生じ、発電効率が低下してしまうため、長期運用に定期的なメンテナンスは欠かせません。
50kW以上の太陽光発電では、年2回の電気主任技術者によるメンテナンスが義務付けられています。また50kW未満の太陽光発電では、設置後1年目、以降は最低でも4年に1回はメンテナンスを行いましょう。特にメーカー保証が切れる直前や、出力保証が切れた後のメンテナンスは重要です。
太陽光発電は、文字通り太陽光のエネルギーを活用するため、悪天候の日や夜間には発電できません。天候や時間帯によって発電量の変動が大きい点は、太陽光発電の前提として押さえておく必要があります。対策としてはやはり、発電した電気を蓄えられる蓄電池の導入が有効です。
先述した通り、太陽光発電設備の導入には高額な初期費用がかかるため、国は需要家が活用できる補助金事業を展開しています。ここからは、自家消費型太陽光発電の導入に活用できる補助金をご紹介します。
民間企業などによる自家消費型・地産地消型の再生可能エネルギー導入を促進し、再エネ主力化とレジリエンス強化を図る支援事業です。以下の6つの事業に分かれています。
このうち、自家消費型太陽光発電の導入に活用できる補助金は、「1」と「2」の2つです。
初期費用ゼロでの自家消費型太陽光発電や蓄電池の導入を支援することにより、太陽光発電設備や蓄電池の価格低減を促進しながら、太陽光発電のみを導入するよりも、蓄電池とセットで導入した方が経済的メリットのある状態(ストレージパリティ)の達成を目指す事業です。
対象者 | 自家消費型の太陽光発電設備や蓄電池などの導入を行う民間事業者・団体 |
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要件 | ・平時において導入する太陽光発電設備による発電量の一定割合(戸建て住宅:30%以上、その他:50%以上)を導入場所の敷地内で自家消費すること ・停電時にも必要な電力を供給できる機能を有する太陽光発電設備などを導入すること ・【オンサイトPPAモデルまたはリースモデルで業務・産業用の定置用蓄電池をセットで導入する場合】補助対象設備の法定耐用年数が経過するまでに、需要家とPPA事業者またはリース事業者との契約で、補助金額の4/5以上がサービス料金、リース料金の低減などにより需要家に還元、控除されるものであること ・【オンサイトPPAモデルまたはリースモデルで業務・産業用の定置用蓄電池をセットで導入しない場合】補助対象設備の法定耐用年数が経過するまでに、需要家とPPA事業者またはリース事業者との契約で、補助金額相当分(全額)がサービス料金、リース料金から還元、控除されるものであること ・再エネ特措法に基づくFIT制度またはFIP制度による売電を行わないものであること など |
補助率 | 太陽光発電設備に対して、 ・オンサイトPPAまたはリースの場合は、5万円/kW ・自己所有型の場合は、4万円/kW ・戸建て住宅に限り、蓄電池セット導入の場合は、7万円/kW |
公募詳細 | https://www.eic.or.jp/eic/topics/2022/st_r03c/001/ |
地域の再エネポテンシャルを有効活用するため、地域との共生を前提とした上で、新たな手法による自家消費型・地産地消型の再エネ導入を促進する事業です。
対象者 | 自家消費型の太陽光発電設備や蓄電池などの導入を行う民間事業者・団体 |
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対象事業 | ①建物における太陽光発電の新たな設置手法活用事業:駐車場を活用した太陽光発電(ソーラーカーポート)について、コスト要件を満たす場合に、設備などの導入の支援を行う ②地域における太陽光発電の新たな設置場所活用事業:営農地・ため池・廃棄物処分場を活用した太陽光発電について、コスト要件を満たす場合に、設備などの導入の支援を行う ※コスト要件:本補助金を受けることで、導入費用が、最新の調達価格等算定委員会の意見に掲載されている、同設備が整理される電源・規模などと同じ分類の資本費に係る調査結果の平均値または中央値のいずれか低い方を下回るものに限る |
補助率 | ①:1/3 ②:1/2 |
公募詳細 | https://www.env.go.jp/content/000070148.pdf |
工場・事業場における脱炭素化のロールモデルとなる、意欲的なCO2削減計画の策定や省CO2型設備への更新に対して支援を行う事業です。
対象者 | ①CO2削減計画策定支援:年間CO2排出量50t以上3000t未満の工場・事業場を保有する中小企業など ②省CO2型設備更新支援:年間CO2排出量50t以上の工場・事業場に対して、CO2削減計画を策定済みである事業者 |
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補助対象 | ①CO2削減計画策定支援:CO2排出量削減余地の診断およびCO2削減計画の策定支援に係る委託料など(人件費、業務費、一般管理費) ②省CO2型設備更新支援:以下の対象設備機器の導入・更新に係る経費(工事費、設備費、測量・試験費など) ・エネルギー使用設備機器:高効率化あるいは電化・燃料低炭素化した産業・業務用設備機器や生産設備 ・エネルギー供給設備機器:低炭素燃料供給設備および受変電設備、再生可能エネルギー発電設備・太陽熱供給設備・コジェネ発電設備(発電設備、熱供給設備は100%自家消費する場合に限る) |
補助率 | ①CO2削減計画策定支援:補助対象経費の3/4と補助金の上限額のうち低い額 ②省CO2型設備更新支援: A.標準事業:1/3 B.大規模電化・燃料転換事業:1/3 C.中小企業事業:以下のⅰ)ⅱ)のうちいずれか低い額を補助 ⅰ)年間CO2削減量×法定耐用年数×7,700円 ⅱ)補助対象経費の1/2 |
公募詳細 | https://shift.env.go.jp/ |
なお、自家消費型太陽光発電システムの導入に補助金・助成金を利用したいと考えている方は、ぜひ、こちらの資料もご覧ください。補助金・助成金の基本をわかりやすく解説しています。
ここからは、自家消費型太陽光発電の導入事例を、環境省の導入事例集をもとにご紹介します。
※参考:環境省.「自家消費型太陽光発電・蓄電池の導入事例集」. (参照2023-7-14)
https://www.env.go.jp/content/000143155.pdf
プリント基板組立加工・検査などを行う株式会社協同電子工業の北茅原工場では、平時のCO2排出量の抑制および電力コストの低減を図るため、オンサイトPPA方式で太陽光発電設備と蓄電池を導入。またBCP対策として自立型パワコンも導入し、昼間の必要最小限の電源を確保しました。
導入の結果、自社CO2およびサプライチェーン全体のCO2排出量の削減を実現し、電力コストの低減や電気使用量のピークカットにもつながりました。またPPA方式で導入したことによって初期投資を抑制し、さらに補助金も活用して総コストを抑制することができました。
陸運、海運、倉庫を含めた物流会社である日本興運株式会社の中央物流センターでは、CO2排出量の抑制と事業継続性の向上へ向けて、オンサイトPPA方式で太陽光発電設備と蓄電池を導入しました。BCP対策として蓄電池を併設することで、停電時などの非常時に一時的な電源として活用できるようにしました。
導入の結果、使用電力の一部が再生可能エネルギーとなることから、CO2の排出を抑えることができ、また光熱費の一定の費用削減効果も見込まれています。
電子部品の貴金属表面処理加工のメーカーである株式会社山王の東北事業部は、電子部品業界がサプライチェーン全体で脱炭素化に進む方向性にあり、それに貢献する取り組みの必要性を感じ、自己所有型で太陽光発電設備と蓄電池を導入。太陽光発電によりCO2排出量の削減を進めるとともに、蓄電池の導入によって、余剰電力の最大効率化およびBCP対策を実施しました。
導入の結果、事業の収益性向上とBCPの強化という両面を実現でき、さらに、社員、顧客、ステークホルダー、採用へのPR効果が期待されています。
エンジニアリングセラミックスやエレクトロニクセラミックスなどを製造する日本ファインセラミックス株式会社は、製造過程で大きな電力消費を伴うMMC第二工場に、自己所有型で太陽光発電設備と蓄電池を導入。化石燃料由来の電力購入量を減らし、CO2排出量の削減を目指すのに加え、停電時に稼働中の設備が安全に停止するための電力をスムーズに提供する仕組みを設け、レジリエンス向上を図りました。
発電した電気を自らで使用する自家消費型太陽光発電は、近年の固定買取価格の下落や電気料金の値上がりを背景に注目を集めています。電気料金やCO2排出量を削減でき、さらには、災害時の非常用電源としても活用できる、まさに現代にマッチした導入形式であり、ご紹介したように企業の導入実績も豊富です。電気料金の削減はもちろん、地球温暖化防止への貢献やBCP対策をご検討中の方は、自家消費型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
伊藤忠エネクスでも自家消費型太陽光発電システム「テラセルソーラー」を提供しています。お客さまの保有施設に太陽光発電設備を設置し、発電した電気は自家消費いただき、当社へは定額エネルギーサービス料(設備利用料、メンテナンス費など)をお支払いいただきます。自家消費型太陽光発電の導入にご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
「テラセルソーラー」のサービス詳細や導入事例は、以下のページをご覧ください。
03-4233-8055 平日 9:00~17:30参考URL
https://rakuene-shop.jp/columns/solarpower-spend/
https://enemanex.jp/jikashouhi-pv-toha/
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.html
https://amnimo.com/column/028/
https://toyosolar.co.jp/news/detail/4422/
https://www.eic.or.jp/eic/topics/2022/st_r03c/001/
https://www.env.go.jp/content/000143155.pdf
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