再生可能エネルギーとは?種類やメリット・デメリットを徹底解説!
日本で最も普及している再生可能エネルギーは、太陽のエネルギーを活用した太陽光発電です。しかし実は、太陽のエネルギーを活用した発電方法にはもう一つ、「太陽熱発電」があることをご存知でしょうか。日本では地理的条件などにより普及していませんが、アメリカやイタリア、アラブ首長国連邦などで導入が進んでいます。
本記事では、太陽熱発電の特徴や太陽光発電と比べたメリット・デメリット、国内外の導入状況などをご紹介します。
発電の仕組み自体は火力発電のタービン式と同じですが、化石燃料を燃やすのではなく、太陽の熱エネルギーを利用するため、発電の過程で温室効果ガスや大気汚染物質を排出しません。脱炭素やカーボンニュートラルの実現に世界中が取り組む中、クリーンな発電方法として注目が集まっています。
太陽熱発電を含む再生可能エネルギーについての基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。
太陽光発電と太陽熱発電の最も大きな違いは、電気エネルギーへの変換方法です。
太陽光発電では、太陽の光エネルギーがソーラーパネルに取り付けられた太陽電池(半導体素子)に当たることで、直接電気エネルギーに変換されます。
一方で、太陽熱発電では、反射鏡で太陽光を集め、太陽の光エネルギーをまず一度、熱エネルギーに変換します。その熱エネルギーを使って触媒を熱することで、熱交換器を介して蒸気を発生させ、その蒸気がタービンを回すことで、ようやく電気エネルギーに変換されるのです。
太陽熱発電にはいくつかの種類があり、集光・集熱方法によって、主に4種類に分けられます。
設置面積当たりの発電量が大きく、発電効率も15%程度と比較的高い発電方式です。構造が単純、かつ、高度な技術も必要ないため、設備費用が比較的安価で、メンテナンスも容易であり、発電所を大規模化しやすいというのもメリットでしょう。
世界中で広く導入されている方式で、アメリカやスペイン、中国などの国々で、パラボラ・トラフ型の大規模な太陽熱発電所が稼働しています。日本でもパラボラ・トラフ型の太陽熱発電が導入されており、今後も導入が進むと見込まれています。
※参考:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構. 「NEDO再生可能エネルギー技術白書 第2版」. "第5章 太陽熱発電・太陽熱利用"(参照2023-7-27)
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf
パラボラ・トラフ型と比べると集光の効率は劣り、発電効率は8~10%程度です。一方、反射鏡が比較的安価な上、風に強く運用しやすいというメリットがあります。
※参考:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構. 「NEDO再生可能エネルギー技術白書 第2版」. "第5章 太陽熱発電・太陽熱利用"(参照2023-7-27)
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf
大量の反射鏡を用いて太陽光を一カ所に集めるため、高温の蒸気を発生させることができ、発電効率は20~35%程度と、太陽熱発電の中でもダントツで発電効率の良い発電方式です。
一方で、太陽光を集熱器に集中させるためには、反射鏡の正確な操作・管理が必要であり、また光を遮られないためにタワーを高くする必要があるため、設備費用が高額になりがちというデメリットがあります。今後の技術開発によって、設備費用が値下がりすることが期待されています。
※参考:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構. 「NEDO再生可能エネルギー技術白書 第2版」. "第5章 太陽熱発電・太陽熱利用"(参照2023-7-27)
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf
発電効率は高いですが、反射鏡とスターリングエンジンが一体化しているため、発電設備のサイズが5~15m程度と、太陽熱発電の中では比較的小規模である点がメリットです。またスターリングエンジンによって発電されるため、他の発電方式で必要となる冷却水が不要という点もメリットとして挙げられます。
従来の太陽熱発電のデメリットを解消した発電方式として期待されていますが、導入実績が少なく、技術改良が必要だと言われています。
太陽光発電と比較した太陽熱発電のメリットとしては、大きく以下の2つがあります。
太陽光発電は、ソーラーパネルやパワーコンディショナーといった高価な設備が必要であるため、初期費用が高くなりがちです。一方、太陽熱発電は構造が単純なため、同じ規模の太陽光発電と比べると初期費用が安いと言われています。
太陽光発電は太陽の光エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、太陽が出ていない夜間は発電できません。
太陽熱発電も太陽が出ていないと集光できないという点は同じですが、光エネルギーから変換した熱エネルギーを蓄熱装置で蓄えておくことができるため、日中に蓄えた熱を利用して夜間に発電することが可能です。
蓄熱技術は近年、溶融塩やコンクリートを活用するなど進歩してきているため、蓄熱装置のさらなる性能向上が期待されています。
一方で、太陽熱発電には以下のようなデメリットもあります。
太陽熱発電は発電設備が大規模になりがちで、導入のためには広い土地が必要です。また発電設備の設置場所は平地が適しているため、国土が狭く、山地の多い日本にはあまり向いていません。
太陽熱発電の発電量は日射量に依存するため、一般的には年間2,000kWh/㎡以上の直達日射量が得られる地域が適地とされています。そのため、必然的に日照量の多い北緯37度以南の「サンベルト地帯」と呼ばれるエリアに主要地域が限定されます。
一方で、太陽熱発電の設備には冷却水が必要なため、水資源の確保も重要な要素と言われていますが、一般的に日射量の多い地域は水資源に乏しいという問題もあります。ちなみに、十分な水量を確保できない場合は、水冷式熱交換器ではなく、冷却水を必要としない空冷式熱交換器を導入せざるを得ませんが、空冷式熱交換器は熱交換効率が低く、設備費用が高いため、技術改良が求められています。
なお日本の年間直達日射量は1,000~1,300kWh/㎡であり、日本の地理的条件では、太陽熱発電で採算を取るのはなかなか難しいです。
※参考:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構. 「NEDO再生可能エネルギー技術白書 第2版」. "第5章 太陽熱発電・太陽熱利用"(参照2023-7-27)
https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf
日本では早くから太陽熱発電の研究が行われており、1981年8月6日に、香川県仁尾町の仁尾太陽熱試験発電所が、世界で初めて1,000kW級の本格的な太陽熱発電に成功しました。
太陽熱発電の研究が進んでいた日本ですが、先述したように、日本の地理的条件が太陽熱発電に向いていないことから普及はしておらず、現在日本で最も導入容量の多い再生可能エネルギーは、太陽光発電となっています。
発電に適した地域が限られていることから、世界で見ても一部の国と地域でのみ太陽熱発電の導入が進んでいる状況です。アメリカやイタリア、スペイン、モロッコ、イスラエル、アラブ首長国連邦などでは、大規模な太陽熱発電所が稼働しています。
今後、太陽熱発電は、発電に適した地域では導入が進むことが考えられ、特にサンベルト地帯では、太陽熱発電所の建設が活発化することが予想されます。
日本でも、低コストかつ安定した電力供給を実現する太陽熱発電システムの技術開発を推進する動きはあります。2016年には環境省からの外部委託によって、太陽熱発電システムの集光・集熱を検証する事業が行われました。
また日本では、太陽熱発電よりも、「太陽熱利用システム」の導入の方が進むかもしれません。太陽熱利用システムは、太陽の光エネルギーを集熱器で熱エネルギーに変換し、それを電気エネルギーに変換するのではなく、熱エネルギーのままで温水や温風を作り、給湯や冷暖房に利用するというものです。太陽熱利用システムのエネルギー変換効率は40〜60%程度であることから、省エネ設備として改めて注目度が高まってきています。
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「太陽熱利用システムとは ~システムの概要~」(参照2023-7-27)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/img/tv/PDF_vol001.pdf
太陽熱発電は、残念ながら日本にはあまり向いていない発電方法のため、今後も導入容量はあまり増えない可能性が高いです。しかし、世界的に見れば、発電に適した地域では導入が進んでいくことが考えられます。
日本で太陽のエネルギーを活用するなら、現時点ではやはり太陽光発電がおすすめです。
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