再生可能エネルギーとは?種類やメリット・デメリットを徹底解説!
近年、地球温暖化対策として世界中が脱炭素、カーボンニュートラルに取り組んでおり、再生可能エネルギーへの注目度がより一層高まっています。一口に再生可能エネルギーと言ってもさまざまな発電方法がありますが、中でも近年注目を集めているのが、波のエネルギーを利用した波力発電です。まだ研究開発段階ではあるものの、日本の地理的条件に合った発電方法として期待されています。
本記事では、波力発電の仕組みやメリット・デメリット、国内外の事例をご紹介します。
波力発電はCO2を排出しない再生可能エネルギーの一つであり、また同じ再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電と比べて1ユニット当たりの発電量が大きく、安定した発電が可能です。そのため近年注目を集めており、世界中で導入が期待されています。
波力発電を含む再生可能エネルギーについての基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。
詳しくは後述しますが、波力発電には以下のようなメリットがあります。
特に、四方を海に囲まれた島国の日本には、波力発電を大規模に導入するポテンシャルがあります。発電の安定性や発電効率の高さを考えると、大規模に導入できれば、主電源化も期待できるでしょう。そのため、波力発電はまだ研究開発の段階ですが、電力供給や環境保全に関する課題を多く抱えている現在、早期実用化への期待が高まっています。
波力発電の発電の仕組みには、いくつか種類があります。本記事では、以下の4つの仕組みをご紹介します。
振動水柱型の発電設備の内部には、空気室と呼ばれる空間があります。波の上下運動によって、空気室の中に海水が流れ込むと、流れ込んだ海水の分だけ、中の空気が押し出されます。この押し出された空気が風となってタービンを回し、発電されるのです。
振動水柱型には、以下のような特徴があります。
先述した通り、波力発電は研究開発の段階ですが、振動水柱型は、実は、唯一実用化されています。主に航路用のブイなどの電源として利用されており、今後、利用範囲が広がっていくことが期待されています。
可動物体型の発電設備には可動物が連結しており、この可動物は波を受けると海面や海中で上下や左右、あるいは、振り子のように揺れ動きます。この可動物の動きによって生み出された運動エネルギーが油圧発生装置を動かし、油圧モーターが回転することで発電されるのです。
ちなみに、可動物が水平・垂直に動くことで発電する形式を「並進動揺型」、可動物が振り子のように揺れ動くことで発電する形式を「屈曲動揺型」といいます。
越波型では、防波堤で海と隔てた貯水池を作り、貯水池から海への排水路に発電設備を設置します。越波によって海水が流入すると貯水池の水位が上がり、貯水池の水面と海面に高低差が生まれます。すると高低差をなくそうと、自然と海水が排水路を通って海へと流れ出て、その海水の流れがタービンを回し、発電されるのです。
※ジャイロモーメント・・・回転する物体が姿勢(回転軸の向き)を一定に保とうとする性質のこと
ジャイロ式の発電設備には、高速回転するフライホイールという円盤が付いており、海に浮かべておくと、波の上下運動でこのフライホイールの回転軸が傾きます。するとジャイロモーメントが生じ、フライホイールの外側を覆うジンバルという部分が回転。その回転エネルギーが発電機に伝わることで発電されます。
ジャイロ式には、他の仕組みと比べて発電設備が小さく、発電効率も高いというメリットがあるため、まだ実証実験の段階ですが、革新的な仕組みとして注目が集まっています。
波力発電のメリットとしては、大きく以下の3つがあります。
先述したように、波力発電は自然発生する波のエネルギーを利用するため、エネルギー源が枯渇する心配がありません。
また波力発電は、他の再生可能エネルギーと比べて、発電量が安定しています。例えば、太陽光発電は太陽が出ている日中しか発電できず、発電量が天候に大きく左右されます。風力発電も風が弱かったり、吹かなかったりすると発電できません。一方、波力発電は、海に波が全くないという状況が一定時間続くことはまずありえませんし、さらに、天候などの外部要因の影響も受けにくいため、常にムラなく安定的に発電が可能です。
波力発電は、空気より重い水の運動エネルギーを利用して発電するため、他の再生可能エネルギーよりも発電効率が非常に高いと言われています。同じ水をエネルギー源とする水力発電も、発電効率が非常に高い発電方法です。
発電効率の高さと、1つ目のメリットとして挙げた安定的に発電できるという点から、将来の主電源化が期待されています。
繰り返しになりますが、波力発電はまだ研究段階です。実用化され、波力発電所が建設される際には、波力発電に適した新たな機械や部品などが必要になるでしょう。また長期間海中に設置されるため、耐久性や腐食防止などに優れた新素材の開発も進められるはずです。波力発電の実用化に伴って、上記のような専門技術を持つ企業に対し、新たな市場が開かれることが期待できます。
一方で、波力発電には以下のようなデメリットもあります。
波力発電は、主に設置と維持のコストが高いとされています。
発電設備を設置する際は、当然、海上・海中での作業となるため、陸上での作業よりも費用と時間がかかります。
また発電設備が海水によって腐食したり、フジツボなどの生き物が付着したりする可能性があるため、定期的な点検やメンテナンスは必須です。同じ水をエネルギー源とする水力発電よりも、波力発電の方が維持コストが高くなると言われています。
波力発電の設備は近海や堤内などに設置されるため、台風による大波や地震による津波などが起こった際の安全性の確保が重要です。波に乗って陸地の人や物に被害を与えたり、沖に流されたりしないよう、十分な強度を備えておかなければなりません。
海中に設置するが故の安全対策の必要性も、波力発電のコストを引き上げる要因となっています。
波力発電所を建設するに当たっては、海の先行利用者である漁業者や海運業者などの理解と協力を得ることが必要不可欠です。
波力発電の発電量を最大化するには、海流の動きが活発な場所に発電設備を設置するのが望ましいですが、そういった場所は既に漁場となっているはずです。船の往来がある場所なので、発電設備との接触のリスクがあるのはもちろん、もしかすると、発電設備を設置することが、漁場の生態系に何らかの影響を及ぼしてしまうかもしれません。
今後、波力発電が普及していく過程で、漁業者や海運業者との調整が難航して、なかなか発電所を建設できないというケースも出てくることが想定されます。
まだ本格的な実用化にこぎ着けられていない波力発電ですが、研究は早くから行われていました。1965年に、世界初の波力発電装置を活用した益田式航路標識ブイを稼働させたのは、日本の海上保安庁です。ここからは、現在注目を集める波力発電の国内外の事例をご紹介します。
2016年に、文部科学省の「東北復興次世代エネルギープロジェクト」の一貫として、岩手県久慈市に「久慈波力発電所」が完成しました。これまでも実験用の波力発電所はありましたが、久慈波力発電所は、電力会社の電力網に接続して配電する日本初の波力発電所です。
可動物体型の発電設備で、波が海中の「波受け板(ラダー)」を動かすことでモーターが回転し、発電します。
出力は43kWと小規模ではありますが、東北電力の送電網を経由して、地元漁協の冷凍冷蔵庫の電力に使われており、余剰分は東北電力に無償で提供されています。
※参考:一般社団法人環境金融研究機構. 「岩手県久慈市で、日本初の電力網と接続する波力発電所完成。寄せる波と引く波で、安定的な発電。東大生産技術研究所が開発(各紙)」(参照2023-7-27)
https://rief-jp.org/ct4/65309
イギリスを拠点とする研究開発会社「Sea Wave Energy」が、従来の波力発電の大きな課題であるコストの高さを解決した新しい発電機「Waveline Magnet(ウェーブラインマグネット)」を開発しています。
ウェーブラインマグネットは、ボードが複数枚連なった形をしたプラスチック製の波力発電機です。海に浮かべると、波の上下運動で各ボードに搭載されたシリンダーがスライドし、発電します。
ウェーブラインマグネットには、以下のようなメリットがあります。
適切な条件下での発電電力はユニット当たり100MWに達すると言われており、これは約2万8000世帯分の電力を賄える発電量です。波長によっては従来の波力発電の10倍以上の電力を得られるそうで、ウェーブラインマグネットを複数ユニット海に浮かべるだけで、低コストで大規模に発電できるのはとても魅力的です。次世代の波力発電として、実用化が期待されています。
※参考:Sea Wave Energy Ltd. 「Sea Wave Energy Ltd」(参照2023-7-27)
https://swel.eu/
日本は2030年度時点で、再生可能エネルギーの発電電力量を、総発電電力量の36~38%に引き上げるという野心的な目標を掲げています。この再生可能エネルギーの中に波力発電は含まれていませんが、波力発電が普及すれば総発電電力量に対する再生可能エネルギーの割合を引き上げることができるため、実用化への期待は大きいです。
波力発電以外の再生可能エネルギーの種類を知りたい方はこちら
海が持つエネルギーを利用する発電方法には、波力発電の他に、海洋温度差発電や潮汐力発電、海流発電などがあり、また洋上に風車を設置する洋上風力発電にも注目が集まっています。四方を海に囲まれた島国の日本には、海洋再生可能エネルギーで大規模に発電するポテンシャルがあるため、2050年にカーボンニュートラルを実現するためにも、その利用を可能にする海域利用の制度の整備は必要不可欠です。
実際、経済産業省と国土交通省は、海洋再生可能エネルギー事業を安全かつ円滑に行うために「再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)」を成立させ、一般海域の利用における関係者との調整の枠組みを定めた他、長期にわたって海上の占用ができるようにしました。現在は、洋上風力発電をターゲットとして、検討委員会の設置や設備に関する基準の検討などを行っていますが、「再エネ海域利用法」は洋上風力発電に限定した法律ではないため、波力発電が実用化された暁には、洋上風力発電の例を踏まえて、よりスムーズに普及していくことが期待されます。
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁. 「エネルギー基本計画の概要(令和3年10月)」(参照2023-7-27)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_02.pdf
※参考:e-Gov法令検索. 「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成三十年法律第八十九号)」(参照2023-7-27)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=430AC0000000089
波力発電はまだ本格的な実用化には至っていないものの、再生可能エネルギーの中でも高い安定性と発電効率を有しており、海に囲まれた島国の日本にとって、主電源化も期待できる重要な発電方法であると言えます。洋上風力発電の導入促進をきっかけに、海洋再生可能エネルギーに関する法律や制度の整備なども進んでいるため、波力発電の技術が実用化されれば、普及が進んでいくでしょう。
もし、今の段階から自社の使用電力を再生可能エネルギーに切り替えていきたいと考えているなら、現時点では太陽光発電システムを導入するのがおすすめです。
伊藤忠エネクスでは自家消費型太陽光発電システム「テラセルソーラー」を提供しています。お客さまの保有施設に太陽光発電設備を設置し、発電した電気は自家消費いただき、当社へは定額エネルギーサービス料(設備利用料、メンテナンス費など)をお支払いいただきます。初期費用を抑えて太陽光発電を導入できる他、CO2排出量の削減や電気料金の上昇リスクの低減など、さまざまなメリットがあります。
「テラセルソーラー」のサービスの詳細や導入事例は、以下のページをご覧ください。
03-4233-8055 平日 9:00~17:30参考URL
https://enechange.jp/articles/wave-energy-power-station https://shizen-hatch.net/2020/03/03/wave_activated-power_generation/ https://www.mlit.go.jp/common/001235504.pdf https://www.nedo.go.jp/content/100544821.pdf https://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber/2013/201307/pdf/2013_07_p12.pdf https://www.jt-tsushin.jp/articles/column/article-casestudy_wave-power https://www.aircon-demacon.com/columns/wavepower_generation/ https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1610/26/news022.html https://rief-jp.org/ct4/65309 https://nazology.net/archives/113601 https://chizaizukan.com/property/762/ https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_02.pdf https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=430AC0000000089 https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk6_000033.html
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