風力発電のメリットとは?風力発電の種類や国内の事例をご紹介!

風力発電のメリットとは?風力発電の種類や国内の事例をご紹介!

伊藤忠エネクス メディア編集部

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地球温暖化対策として脱炭素、カーボンニュートラルに世界中が取り組む中、クリーンな発電方法である風力発電が注目されています。風力発電は再生可能エネルギー(再エネ)の中でも発電効率が高く、海に囲まれた日本では洋上での風力発電を拡大するポテンシャルも十分にあります。しかし、陸地では適した場所が限られ、また洋上での運用に関するルールが整備途上であるなど、課題も少なくありません。

本記事では、風力発電の種類やメリット・デメリット、国内の事例などをご紹介します。

風力発電とは?

風力発電とは
風の力を利用して羽を回転させ、そのエネルギーで発電する再生可能エネルギーの一つです。発電時にCO2を排出しないため、クリーンな発電方法として注目されています。

資源エネルギー庁の調べによると、2021年度の風力発電の発電電力量は、日本の総発電電力量の1%未満にとどまっており、まだまだ割合は小さいです。一般社団法人日本風力発電協会の調べによると、2021年12月末時点での風力発電の累積導入量は4,581MWで、発電機は2,574基です。2050年のカーボンニュートラルの実現へ向けて、今後のさらなる普及が求められています。


風力発電を含む再生可能エネルギーについての基礎知識は、以下の記事で詳しく解説しています。


※参考:経済産業省 資源エネルギー庁.  「令和3年度(2021年度)エネルギー需給実績(確報)(令和5年4月21日公表)」(参照2023-7-27)

https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/results.html

※参考:一般社団法人日本風力発電協会. 「2021年末日本の風力発電の累積導入量」(参照2023-7-27)

https://jwpa.jp/information/6225/

風力発電の仕組み

風力発電は、大きな風車状の発電機が風を受け止め、「ブレード」と呼ばれる巨大な羽が回転することで運動エネルギーを生み、それを電気エネルギーに変換することで発電します。

ブレードと回転軸の後方には「ナセル」と呼ばれる構造物が伸びており、この中にはブレードの回転数を増幅させる「増速機」(ギアボックス)や、台風などが近づいてきた際にブレードの回転を止める「ブレーキ装置」などが入っています。

風力発電の種類

風力発電には大きく分けて、「陸上」に設置するタイプと「洋上」に設置するタイプの2種類があり、風車の形状にもさまざまな種類があります。

陸上風力発電

陸上風力発電
陸上に設置し発電するタイプの風力発電です。一定以上の強さ(一般には年間平均風速6m/s以上)の風が安定的に吹いている広い場所であれば、設置の候補となります。日本では北海道や九州地方などに多く設置されています。

設置コストが比較的安価な点がメリットです。一方で、風の強さ以外に騒音の問題などもあり、設置に適した場所は限られます。

洋上風力発電

洋上風力発電
海上や湖面に設置するタイプの風力発電であり、近年注目されています。日本は陸上風力発電の設置が増え、それに伴い、新たな陸上風力発電の設置に適した場所が減っているためです。

洋上の方が強い風が常時吹くことや、人々の居住エリアから離れており騒音の心配が少ないことなどからも、今後は洋上風力発電が発展していくものと予想されます。

洋上風力発電には下記の2つのタイプがあります。

  • 着床式
    • 海底に発電機を固定するタイプで、水深の浅いところであれば、発電力の大きい大型の発電機を設置可能です。遠浅の海や湖面、港湾などに適しており、ヨーロッパでは一般化しています。
  • 浮体式
    • 発電機を海底に固定せず洋上に浮かべるタイプで、水深が深く海底に基礎を築けない場所にも設置できる点がメリットです。日本近海は水深が深いところが多いため、近年は浮体式が注目されていますが、着床式よりも多くの導入コストがかかるなど、課題もあります。

風力発電の風車の種類と大きさ

風力発電の風車というと、プロペラ型のものをイメージする方が多いかもしれませんが、実際にはさまざまな種類があります。

風車は回転軸の向きによって、下記の2種類があります。

  • 水平軸型
    • 回転軸が地面と水平になっているもので、羽の数が3枚または2枚の「プロペラ型」が最も一般的です。その他、多くの羽がついた「多翼型」や木製の羽に布を張って風を受け止める「オランダ型」があります。
  • 垂直軸型
    1. 回転軸が地面に対して垂直になっているタイプで、「ダリウス型」や「サボニウス型」と呼ばれるものがあります。どの方向からの風でも発電できるメリットがありますが、水平軸型に比べ発電効率は高くありません。

風車の大きさは、陸上に設置される発電機の場合、ローターの最高到達点は120m、ブレードの直径が80mに達するものもあります。

風力発電のメリット

風力発電のメリットとしては、大きく以下の5つがあります。

  • 環境への負荷が少ない
  • エネルギーの変換効率が高い
  • 他の再生可能エネルギーよりも発電コストが安価
  • 洋上でも発電できる
  • 昼夜を問わず発電できる

環境への負荷が少ない

風力発電では発電の過程で燃料を燃やさないため、温室効果ガス(CO2)や大気汚染の原因となる有害物質を排出しません。地球温暖化対策が世界的な課題となる中で、こうした環境負荷の少なさは大きなメリットです。

また風は地球上で絶え間なく吹くため、エネルギー資源が枯渇する心配がなく、さらに、火力発電や水力発電などに比べると発電施設が比較的小規模であるため、施設の建設によって周囲の環境を大きく変化させることがないというメリットもあります。

ただし、ブレードが回転することで生じる騒音の問題や、鳥がブレードに衝突する「バードストライク」のリスクなどはあります。そのため、周辺環境に全く影響を与えないわけではないということには留意すべきでしょう。

エネルギーの変換効率が高い

風力発電は他の再生可能エネルギーと比べて、エネルギーの変換効率が高い点もメリットです。太陽光発電や地熱発電、バイオマス発電の変換効率が約20%とされるのに対し、風力発電の変換効率は、風車の大きさや形状、設置場所などによって異なるものの、約30〜40%ほどの発電効率を実現できます。

※参考:EV-DAYS by東京電力エナジーパートナー.「太陽光発電の「交換効率」とは?計算方法や発電量を増やす方法を紹介

https://evdays.tepco.co.jp/entry/2023/03/10/kurashi35

他の再生可能エネルギーよりも発電コストが安価

エネルギーの変換効率が高いこともあり、発電コストが比較的安価というメリットもあります。大規模に導入できれば火力発電並みのコストパフォーマンスを実現できるなど、経済性を確保しやすい発電方法です。

洋上でも発電できる

先述した通り、風力発電には洋上に設置するタイプもあります。陸上では発電に適した土地が限られるものの、洋上は常に強い風が吹き、面積の制約もそれほどありません。さらに日本は海に囲まれているため、大規模な導入のポテンシャルがあります。

昼夜を問わず発電できる

日本において最もメジャーな再生可能エネルギーである太陽光発電には、日中しか発電できないというデメリットがありますが、風力発電であれば昼夜を問わず、一定以上の強さの風が吹いていればいつでも発電可能です。時間帯によって発電量がそれほど上下しないため、比較的安定した電力供給が期待できます。

風力発電のデメリット

一方で、風力発電には以下のようなデメリットもあります。

  • 発電量が風の強さに依存する
  • 騒音の心配がある
  • 設置に適した場所が限られている
  • 気象条件によって故障や破損のリスクがある

発電量が風の強さに依存する

エネルギー変換効率が高いとはいえ、常に一定以上の強さの風が吹いていないと風力発電は効果を発揮しません。風が弱いと発電量が落ちる他、季節などによって風の強さが大きく変わる場所に設置した場合、安定した発電量を確保できないというデメリットがあります。

騒音の心配がある

風力発電のブレードが回転すると、少なからず風切り音や機械音が発生するため、騒音の心配があります。耳障りに感じやすい低周波音も発生するため、居住地域から離れた場所に設置するなどの工夫が必要です。

設置に適した場所が限られている

安定して強い風が吹き、さらに騒音の心配も少ないという条件の場所はどうしても限られてしまいます。特に陸上に設置する場合、風力発電の条件に合う場所にはすでに発電機が設置されていることも多く、今後新たに設置しようとしても、適した場所はかなり限られてくると予想されます。

気象条件によって故障や破損のリスクがある

効率的に発電する上で強い風は必須ですが、極端に強い風が吹くと風車が破損したり、部品が飛ばされたりする可能性があります。その場合、修理の間は運転を停止しなければならず、また部品が飛ばされることで周囲に被害が及ぶ可能性もゼロではありません。

さらに、大型の台風が接近・上陸した場合などは、風車の基礎から倒壊する危険性があり、雷が発生している場合には、落雷を受けるリスクもあります。

日本の風力発電の現状とこれから

風力発電は環境負荷が少なく、かつ、エネルギー自給率を高める方法として注目されていますが、先述した通り、現状では日本の総発電量に占める割合は1%未満に過ぎません。

国が定める第6次エネルギー基本計画では、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目指しており、省エネルギーや非化石エネルギーの拡大を進めています。その中の2030年度エネルギーミックスでは、風力発電の割合を5%にまで引き上げる目標を定めていることから、風力発電の普及を加速させることが求められています

今後は、陸上風力発電に比べポテンシャルの高い洋上風力発電の重要性が増していくと予想されますが、日本では現在、海上の占用に関する統一的なルールが定められておらず、都道府県の条例に基づく占用許可も数年間の期間限定であるため、洋上風力発電の長期的な運用が難しい状況です。

また漁業者や海運業者など、海上には先行利用者が多く存在しますが、そうした先行利用者と発電事業者の間で意見を調整する枠組みが整っていないことも課題です。

これらの課題を解決するために、国は「再エネ海域利用法」を制定し、海上での風力発電を促進する海域の指定や、先行利用者と意見調整するための協議会の設置など、洋上風力発電普及のための後押しをしています。

経済産業省 資源エネルギー庁. 「エネルギー基本計画の概要(令和3年10月)」

https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_02.pdf

経済産業省 資源エネルギー庁. 「日本でも、海の上の風力発電を拡大するために」

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/yojohuryokuhatuden.html

風力発電の設置事例

ここからは、日本における代表的な風力発電の設置事例をご紹介します。

新青山高原風力発電所

新青山高原風力発電所は、株式会社青山高原ウインドファームが運営する、三重県の青山高原にある陸上風力発電所です。出力2,000kWの発電機40基を擁し、合計出力80,000kWという国内最大級の風力発電施設を形成しています。

青山高原は標高600~800mの大平原であり、平均風速が7.6m/sと安定して強い風が吹く、風力発電にとって非常に条件の良い場所です。

※参考:株式会社青山高原ウインドファーム. 「風力発電施設」

http://www.awf.co.jp/publics/index/25/

※参考:株式会社青山高原ウインドファーム. 「青山高原について」(参照2023-7-27)

http://www.awf.co.jp/publics/index/24/

宗谷岬ウインドファーム

宗谷岬ウインドファームは、株式会社ユーラスエナジーが運営する、北海道稚内市にある陸上風力発電所です。北海道最北端の宗谷丘陵は、年間を通じてオホーツク海と日本海から強風が吹く好立地。57基の発電機があり、47基は牧草地に、10基は森林地に設置されています。合計出力は57,000kWです。

※参考:株式会社ユーラスエナジー. 「発電所のご案内」(参照2023-7-27)

https://www.eurus-energy.com/project/project-jp/376/

※参考:日本内燃力発電設備協会. 「風力発電」(参照2023-7-27)

https://nega.or.jp/publication/press/2011/pdf/2011_04_22.pdf

ウィンド・パワーかみす洋上風力発電所

ウィンド・パワーかみす洋上風力発電所は、茨城県神栖市・鹿島港の沖合で2010年に本格稼働した、日本初の本格的な洋上風力発電所です。護岸から40~50mの水域に位置し、出力2,000kW×7基の第1発電所と、出力2,000kW×8基の第2発電所があり、合計出力は30,000kWに達します。

第1発電所は株式会社ウィンド・パワー・いばらき、第2発電所は株式会社ウィンド・パワーが運営しています。

※参考:株式会社ウィンド・パワー・グループ. 「風力発電事業」(参照2023-7-27)

https://windpower.co.jp/windfarm/

秋田洋上風力発電

秋田県秋田港、能代港港湾区域にある着床式洋上風力発電施設です。秋田港に4,200kW風車を13基、能代港に同風車を20基設置し、合計出力は約140,000kWです。秋田県内の企業など13社が出資する秋田洋上風力発電株式会社が運営しており、2023年1月に全面的な商業運転を開始しました。

※参考:秋田洋上風力発電株式会社. 「事業概要」(参照2023-7-27)

https://aow.co.jp/jp/project/

※参考:秋田洋上風力発電株式会社. 「会社概要」(参照2023-7-27)

https://aow.co.jp/jp/company/

まとめ

風力発電は他の再生可能エネルギーに比べて発電効率が高く、発電コストも比較的安価であり、日本は洋上風力発電の高いポテンシャルを秘めています。しかし、太陽光発電に比べると現状の発電電力量は小さく、また洋上風力発電を長期的に行うためのルールが整備途上にあるなど、普及に向けてはまだまだ乗り越えるべきハードルがあることも事実です。一刻も早く課題を解決し、2050年のカーボンニュートラルの実現へ向けて、普及を加速させることが求められています。

発電事業者ではない一般企業が風力発電を導入するのはなかなか難しいですが、同じ再生可能エネルギーでも太陽光発電なら比較的容易に導入できます


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