電力小売の取次・代理・媒介・ビジネスマッチングとは? 低リスクで電力ビジネスに参入する4つの方法を解説

電力小売の取次・代理・媒介・ビジネスマッチングとは? 低リスクで電力ビジネスに参入する4つの方法を解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

伊藤忠エネクスは1961年の創業以来 「 社会とくらしのパートナー」として 全国各地の地域に根ざし生活に欠かせないエネルギーをお届けしてまいりました。 老舗エネルギー商社ならではの情報を発信します。

2016年の電力の小売全面自由化以降、日本の電力供給における事業区分は3つに簡略化され、現在、2つの区分への新規参入が可能となっています。電力事業は18〜20兆円規模といわれているので、ビジネスチャンスを求めて参入を検討している企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、電力供給の基本的な仕組みや新規参入できる事業者の要件について解説します。低リスクで電力ビジネスに参入したい企業向けに、事業ライセンスを取得せずに新規参入する方法もご紹介するので、電力ビジネスによる事業拡大を狙っている企業のご担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

※本記事の内容は2024年5月時点の情報です

電力供給の仕組み

電気は、発電・送配電・小売という3つの過程を経て需要家のもとに届きます。2000年以前は、全国10の地域の一般電気事業者(東京電力、九州電力など)のみが、独占的に電力の販売を行っていましたが、2000年から段階的に電力の小売が自由化され、2016年4月には電気の小売事業への参入が全面解禁されました。

またこの電力の小売自由化に合わせて電気事業法が改正され、事業者の区分が「発電事業者」「送配電事業者」「小売電気事業者」の3つに大別されました。ここでは、この3つの事業者について、詳しく解説します。

発電事業者

発電事業者は、一定規模以上の発電設備を持つ事業者です。小売電気事業者へ供給する電力を発電する役割があり、参入するには経済産業省への届出が必要です。

一般電気事業者や卸供給事業者など、これまで「電気事業者」に区分されていた事業者はもちろん、「電気事業者以外の者」に区分されていた、再生可能エネルギー設備認定事業者なども、現在は発電事業者に集約されています。

送配電事業者

送配電事業者は、送電線や配電線を使って発電施設から需要家へ電気を供給する事業者です。送配電事業者は、役割によって以下の3つに分けられます。

  • 一般送配電事業者:発電された電気を託送供給したり、発電量の調整供給を行ったりする事業者
  • 送電事業者:変電所などの設備を持ち、一般送配電事業者へ電気の振替供給を行う事業者
  • 特定送配電事業者:特定の供給地点(鉄道会社や製鉄会社など)の需要に応じて電気の供給を行う事業者

一般送配電事業者と送電事業者は経済産業省の許可が、特定送配電事業者は届出が必要です。

小売電気事業者

小売電気事業者は、需要家に電気を販売する事業者です。電力の調達をはじめ、料金プランの提案や契約・各種手続きなど、需要家とやり取りを行う窓口の役割を担います。事業を営む際は、経済産業省への登録が必要です。

2024年5月15日現在、小売電気事業者として729の事業者が登録されており、サービス競争はさらに激化していくことが予想されます。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「登録小売電気事業者一覧」.https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/ ,(2024-05-15).

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新規参入できるのは発電事業者と小売電気事業者

現在、新規参入ができるのは発電事業者と小売電気事業者の2つのみです。

2022年に「配電事業制度」が開始され、特定の区域における一般送配電事業者の送配電網を、新たな事業者が「配電事業者」として運用することができるようになりましたが、あくまでも既存の配電網を譲渡・貸与したり、運用ライセンスを解放したりするのみであり、送配電事業者として新規参入することはできません。

ここでは、発電事業者と小売電気事業者に参入するに当たって満たさなければならない要件について、詳しく解説します。

発電事業者の要件

発電事業者の届出をするには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 小売電気事業者などに供給する電力の合計が1万kW以上あること
  2. 発電設備の設備容量の合計値が1,000kW以上あること
  3. 託送契約上の同時最大受電電力(自己託送を除く)の割合が5割を超えること
    ※出力10万kWを超える場合は1割を超えること
  4. 年間の逆潮流量(電力量/自己託送を除く)が5割を超えること
    ※出力10万kWを超える場合は1割を超えること

例えば、発電設備の設備容量が5万kWだった場合、所内消費や自家消費、特定供給を除いて、25,000kW以上の電力を小売電気事業者などに供給できれば3の要件を満たしていることになります。また年間の総発電電力量が15,000万kWhで、所内消費が1,000万kWhだった場合、自家消費や特定供給を除いて、7,000万kWh以上の電力量を小売電気事業者などに供給できれば4の要件を満たしていることになります。

小売電気事業者の要件

小売電気事業者の登録をするには、下記の要件を満たす必要があります。

  1. 電力広域的運営推進機関に加入していること
  2. 資源エネルギー庁へ各種書類の提出がされていること

電力広域的運営推進機関は、各社の電気の需給状況を監視する団体で、全ての電気事業者が加入する必要があります。

小売電気事業者の登録は法人・個人を問わず行えます。資本金の額や法人の形態も問われないため、一般社団法人や合同会社でも登録申請を提出できますが、登録を拒否される場合もあるため、注意が必要です。詳しい規定は、電気事業法「第二条の五」を参照してください。

▼電気事業法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339AC0000000170

小売電気事業者にならずに電力ビジネスに参入する4つの方法

発電事業者や小売電気事業者として電力ビジネスに参入するには、さまざまな要件を満たさなければならず、また無事参入できたとしても、近年は燃料価格の高騰や円安といったマーケットリスクも増えているため、本当に参入するべきか迷っている企業もあるでしょう。

実は、小売電気事業者にならなくても、電力小売事業に参入することは可能です。具体的には、以下の4つの方法があります。

参入方法概要収益性取扱い難易度
取次・小売電気事業者が調達する電気を、取次店が自社の名義で需要家へ販売
ㅤ※供給元の明示が必須
・取次店と需要家が小売供給契約を締結する
・基本的なお客さま対応を全て担う
代理・小売電気事業者が調達する電気を、小売電気事業者のブランド、もしくは、代理店のオリジナルブランドや料金メニューで需要家へ販売(代理契約あり)
・小売電気事業者と需要家が小売供給契約を締結する
媒介・仲介役として小売電気事業者と需要家が小売供給契約を締結するための橋渡しを行う(代理契約なし)
ビジネスマッチング・電力会社の乗り換えに興味のある需要家を小売電気事業者に紹介するのみで、PRや商品説明などは行わない

取次

取次では、小売電気事業者が調達する電力を、供給元を明示した上で、取次店が自社の名義で需要家へ販売します。小売電気事業者との取次契約に則った料金プランで営業活動を行い、需要家への説明や契約締結なども全て取次店が行います。需要家と小売供給契約を締結するのは、取次店です。

基本的なお客さま対応は全て取次店の業務となるため、お問い合わせへの対応はもちろん、料金計算や請求、収納管理、債権回収なども対応する必要があります。手間はかかりますが、需要家との密接な関係構築が可能です。

代理

代理では、小売電気事業者が調達する電力を、小売電気事業者のブランド、もしくは、代理店のオリジナルブランドや料金プランで需要家へ販売します。自社のサービスとして提案することができ、例えばガスやインターネットなどとセットで販売することも可能です。

取次とは異なり、需要家と小売供給契約を締結するのは小売電気事業者であるため、見積もりや重要事項の説明といった営業活動は代理店が行いますが、契約や請求などの対応は小売電気事業者の業務となります。オリジナルブランドの開発や運用管理、お客さまの窓口対応といった手間はかかりますが、小売電気事業者にならなくても、電力小売を自社のサービスとして展開することができます。

媒介

媒介では、媒介店は仲介役として小売電気事業者と需要家の間に入り、小売供給契約の締結へ向けて、双方の要望の擦り合わせなどを行います。もちろん、需要家と小売供給契約を締結するのは、小売電気事業者です。

代理と同様に、見積もりや重要事項の説明といった営業活動は媒介店が行いますが、契約や請求などの対応は小売電気事業者の業務となります。あくまで仲介であり、代理のように自社のサービスとして展開することはできませんが、継続的な手数料収入が見込めるため、サブ事業として第2、第3の収益の柱にもなり得ます。

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ビジネスマッチング

ビジネスマッチングでは、電力会社の乗り換えに興味のある需要家を小売電気事業者に紹介します。パンフレットの配布などは行いますが、自社でPRをしたり、サービスの説明をしたりといったことは行いません。手数料率が低く単発の収入になることが多いですが、手間がかからず手離れも良いため、ドアノックツールとして活用できます。

伊藤忠エネクスの電力媒介サービス

伊藤忠エネクスでは、電力媒介サービスを提供しています。先述した通り、媒介店が行うのは見積もりや重要事項の説明などの営業活動のみで、需要家への請求や与信管理、お客さまからのお問い合わせの対応などは全て伊藤忠エネクスが行います。もちろん債権も伊藤忠エネクスが持つので、媒介店には手間も負担もかからず、営業活動のみに注力できます。

また獲得使用量に応じて手数料をお支払いしているので、媒介店は安定したストック収益を見込むことができます。電力小売に初めて参入する企業や、新たな収益の柱となるサブ事業を探している企業、既存顧客へのフック商材を探している企業などにおすすめです。

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導入実績

実際に伊藤忠エネクスの電力媒介サービスには、以下のような実績があります。

お客さまの業種年間収益営業活動時期契約件数主な顧客
物流系商社約1,300万円60カ月約700件事業所、工場、一般商店など
金融系販売会社約380万円25カ月約300件事業所、工場
保険代理店約250万円6カ月約200件法人保険契約
部品会社約220万円19カ月約200件工場、車関連事業所
通信機器修理サービス会社約120万円9カ月約120件グループ会社の取引先

まとめ

電力の小売自由化以降、さまざまな企業が電気の小売事業に参入してきていますが、一方で、電気の市場価格や燃料価格の高騰のあおりを受けて、事業撤退や倒産、廃業に追い込まれた小売電気事業者も少なくありません。本記事でご紹介した、取次・代理・媒介・ビジネスマッチングであれば、そういったリスクを負うことなく、電力ビジネスに参入することができます。ただし、取り引きを行う小売電気事業者が事業撤退や倒産をしてしまうと、せっかくのストック収益が無くなってしまうため、どの小売電気事業者の電気を販売するかはしっかりと比較検討する必要があります。

伊藤忠エネクスは、60年以上の歴史があるエネルギー総合商社です。水力・太陽光・石炭火力・天然ガス火力の発電所を計19カ所保有しており、企業としての安定性と電力供給の安定性の両方を持ち合わせています。電力媒介サービスを活用すれば、初期投資ゼロで安定したストック収益を見込むことが可能です。電力市場への参入を検討している企業や新たな収益の柱となるサブ事業を探している企業のご担当者さまは、ぜひお気軽にご連絡ください。

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