過去の電気料金高騰の要因を徹底解説! 2024年の電気料金の見通しや企業が選ぶべき優良新電力の条件とは?
電気料金の値上がりが続く昨今、どの電力会社のどの料金プランにすれば電気料金が最も安くなるのかと頭を悩ませている方も多いと思います。近年はJEPXのスポット市場価格と連動したプランが増えており、2024年は従来の料金プランよりも電気料金が安くなるという話を耳にして、市場連動プランを検討している方もいらっしゃるでしょう。実際のところ、どうなのでしょうか?
本記事では、高圧電力の乗り換え先を探している企業のご担当者の方へ向けて、現在の固定単価プラン・市場連動プランの状況と、新たに登場した「単価上限付き市場連動プラン」について詳しく解説します。
※本記事の内容は2024年5月時点の情報です
固定単価プランの電気料金が上がる要素はいくつかありますが、そのうち、需要家側でコントロールできないのが「燃料費調整額」です。
東京電力エナジーパートナーの高圧電力の燃料費調整単価を見ると、上のグラフにあるように、2021年以前はマイナス調整でしたが、2022年の2月よりプラス調整となり、2023年1月〜2月は12円程度まで高騰しました。1カ月に数千〜数万kWhもの電力を消費する高圧電力では、単価がたった1円変動しただけでも、年間で数十万円〜数百万円も電気料金に差が生まれます。例えば1カ月当たり1万kWhの電力を消費する企業の場合、東京電力EPの2021年と2022年の単価で年間の燃料費調整額を比較すると、なんと921,000円もの差が出るのです。
2023年の春以降、燃料費調整単価は緩やかに下落していますが、マイナス調整に転じる様子は、今のところありません。また2024年5月使用分をもって「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が終了するため、6月使用分からの値上がりは確実です。
※参考:東京電力エナジーパートナー. 「過去の燃料費調整等(法人)」. https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/adjust/backnumber/index-j.html , (2024-05-29).
少しでも電気料金を抑えたいという需要家のニーズから、近年注目を集めているのが、JEPXのスポット市場価格と連動して電気料金が変動する「市場連動プラン」です。
2023年の春以降、スポット市場価格は比較的低い水準を保っており、同じ電力使用量でも、固定単価プランより市場連動プランの方が電気料金が安くなるというケースが多くなっています。目先の電気料金だけを見れば、市場連動プランに切り替えた方が、安くなる可能性が高いでしょう。
現在のようにスポット市場価格が安い時はメリットが大きい市場連動プランですが、一方で、市場価格が高くなると、電気料金も高くなるというリスクがあります。
実際、2020年12月~1月にかけて、市場価格が一時最高価格250円/kWhを超える水準で高騰。2005年の電気の市場取引開始以来、初めて1日の平均価格が100円/kWhを超える事態となり、多くの新電力や市場連動プランを契約していた需要家が影響を受けました。現在はスポット市場価格に上限が設けられているため、この時の水準まで高騰することはありませんが、それでも通常時で80円/kWh、需給がひっ迫している場合は200円/kWhまでは高騰する可能性があり、市場連動プランはその影響を大きく受けることになります。
メリットも大きいけれどリスクも大きい市場連動プランですが、実は、新たな市場連動プランとして、電気料金の高騰のリスクを抑えたプランも登場しています。それが「単価上限付き市場連動プラン」です。
その名の通り、単価に上限が設けられている市場連動プランで、市場価格が高騰しても、設定されている上限単価以上にはならないため、電気料金が高騰するのを防ぐことができます。
市場価格が高騰した際に、単価上限がある場合とない場合でどの程度電気料金に差が出るのか、実際にシミュレーションをしてみましょう。
本記事では以下の3つのパターンで、電気料金がどのくらい削減されるのかをシミュレーションします。
前提となる条件は以下の通りです。
契約電力 | 319kW |
力率 | 100% |
電力使用量 | 501,438kWh |
負荷率 | 18% |
エリア | 中国 |
現在のプラン | 中国電力 高圧電力A |
基本料金 | 1,507円 |
従量料金 | 夏季:31.89円 その他季:30.40円 |
各月の使用電力量は以下の通りで、これはどのプランでも変わらないものとします。
月 | 電力使用量(kWh) |
4月 | 38,590 |
5月 | 42,068 |
6月 | 48,635 |
7月 | 44,197 |
8月 | 44,502 |
9月 | 41,772 |
10月 | 39,056 |
11月 | 37,956 |
12月 | 40,326 |
1月 | 38,221 |
2月 | 43,147 |
3月 | 42,968 |
上記の条件で算出した、現在の料金プランの年間の電気料金は、以下の通りです。
年間の電気料金 | 16,499,049円 |
平均単価 | 32.9円/kWh |
この年間の電気料金をベースに、電気料金の削減額を見ていきましょう。
市場連動プランの料金の内訳は以下の通りです。市場連動プランも単価上限付き市場連動プランも、ベースとなる料金は同じです。
託送基本料金単価 | 549.43/kW |
託送従量料金単価 | 2.21円/kWh |
管理手数料 | 8.50円/kWh |
※託送料金は当該地点において適用される料金を示していますが、実際には託送供給約款にて適用される単価となります
※管理手数料は参考値であり、伊藤忠エネクスの標準的なメニューではございません
また現在のスポット市場価格の水準が維持されたと仮定して、各月の市場価格は以下の通りとします。
月 | 市場価格(円/kWh) |
4月 | 8.42 |
5月 | 9.42 |
6月 | 10.52 |
7月 | 12.49 |
8月 | 12.13 |
9月 | 12.22 |
10月 | 10.05 |
11月 | 11.35 |
12月 | 12.42 |
1月 | 12.51 |
2月 | 12.43 |
3月 | 10.38 |
上記の条件で、市場連動プランに切り替えた場合の年間の電気料金を算出すると、以下のようになります。
年間の電気料金 | 12,777,907円 |
平均単価 | 25.48円/kWh |
固定単価プランとの差額 | 3,721,142円 |
固定単価プランからの削減率 | -23% |
現在のスポット市場価格がどれだけ安いかが、よく分かります。
12月〜2月にかけて市場価格が高騰したとして、各月の市場価格を以下の通りとします。
月 | 市場価格(円/kWh) |
4月 | 8.42 |
5月 | 9.42 |
6月 | 10.52 |
7月 | 12.49 |
8月 | 12.13 |
9月 | 12.22 |
10月 | 10.05 |
11月 | 11.35 |
12月 | 35.00 |
1月 | 40.00 |
2月 | 25.00 |
3月 | 10.38 |
この場合の年間の電気料金を算出すると、以下のようになります。
年間の電気料金 | 15,281,444円 |
平均単価 | 30.48円/kWh |
固定単価プランとの差額 | 1,217,605円 |
固定単価プランからの削減率 | -7% |
現在の料金プランよりも安くはなりますが、電気料金の削減のインパクトはかなり小さくなってしまいます。
単価上限付き市場連動プランで、市場価格が高騰した12月〜2月のみ、管理手数料+2.5円/kWhで市場価格の上限を20円にした場合の年間の電気料金は、以下の通りです。
年間の電気料金 | 14,000,634円 |
平均単価 | 27.92円/kWh |
固定単価プランとの差額 | 2,498,415円 |
固定単価プランからの削減率 | -15% |
単価上限がある場合とない場合とでは、年間の電気料金に1,280,810円もの差が生まれるのです。
※オプション手数料として2.5円/kWhを加算しておりますが、設定する上限価格および適用時の市況などにより変動します
※上記の市場価格上限はあくまで一例であり、適用方法は実際の契約条件などにより異なります
シミュレーション結果からもお分かりいただける通り、単価上限のあるなしで、万が一市場価格が高騰した場合の電気料金は大きく変わります。スポット市場価格の安さの恩恵を受けるために市場連動プランを検討しているなら、断然、単価上限付き市場連動プランを選ぶのがおすすめです。なお、電力会社によっては、単価の上限だけではなく下限も設けている場合があるため、検討する際は必ずチェックしましょう。
伊藤忠エネクスは、数少ない、単価上限付き市場連動プランを提供している電力会社です。法人向け電力販売サービス「TERASELでんき for Biz」では、お客さまの業界や事業規模、電気の使用状況に合わせて適切なプランをご提案する「オーダーメイド式プラン」を採用しており、固定単価プランでも、他社からTERASELでんき for Bizに切り替えた場合の電気料金の平均削減率は8.1%(/拠点)です。電気料金の削減のために、電力会社の乗り換えを検討している企業のご担当者さまは、ぜひ、お気軽にご連絡ください。
一覧へ戻る 一覧へ戻る