石炭とは? 分類や産出国、日本の輸入量・消費量などについて解説

石炭とは? 分類や産出国、日本の輸入量・消費量などについて解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

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燃料資源の一つである石炭は、石油や天然ガスと比べて安価で供給も安定しているため、日本をはじめとした世界中の国で利用されています。

本記事では、石炭の概要や成り立ち、主な産出国、日本の輸入量・消費量などについて解説します。記事の後半では、石炭の代わりとなる新たな燃料についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

石炭とは?

石炭とは、植物を起源とする固体の化石燃料のことです。水や鉱物などが含まれており、炭素や水素、窒素、酸素、硫黄といった元素から構成されています。日本では古くから炊事や暖房の燃料として一般家庭でも使われてきましたが、現在では主に発電や製鉄のための燃料として使われています。

石炭ができるまでの流れ

石炭ができるまでの流れ

石炭は、どのようにしてできるのでしょうか。

  1. 数千万~数億年前に植物が枯れ、湖や沼の底など水中に積み重なる
  2. 枯れた植物の上に土や砂が積もり、長い年月を経て地中深くに埋まる
  3. 微生物の働きで、水分を多く含む泥炭に変化する
  4. 土砂の重みや地熱によって、徐々に泥炭から石炭に変化していく
  5. 数千万~数億年かけて、黒く硬い石炭になる

石炭の元となる植物は地域によっても異なります。日本で産出される石炭は、新生代古第三紀(約2,300万~6,600万年前)に密生していた、メタセコイアなどの樹木だといわれています。

石炭の分類

石炭の分類

石炭はさまざまな分類が可能です。本記事では、石炭化の度合いによる分類と、用途による分類をご紹介します。

石炭化の度合いによる分類

植物が石炭になる過程のことを石炭化作用と呼び、石炭化作用が進行している石炭ほど、炭素が濃縮されています。石炭化の度合いによって、主に以下の4つに分類可能です。

無煙炭(むえんたん)

無煙炭は、最も石炭化が進んでいる石炭です。燃焼時に煙や臭いがほとんどしないのが特徴で、主に家庭用練炭やカーバイドの原料などに用いられます。

瀝青炭(れきせいたん)

瀝青炭は、無煙炭の次に石炭化が進んでいる石炭です。主に発電・ボイラー用の燃料や、コークスの原料として用いられます。一般的に「石炭」と呼ばれているものは、この瀝青炭であることが多いです。

亜瀝青炭(あれきせいたん)

亜瀝青炭は、水分量を15%以上含む石炭です。瀝青炭と似た性質を持ちますが、加熱すると軟化する粘結性がほとんどなく、製鉄の際に欠かせないコークスの原料としては使えません。主に発電・ボイラー用の燃料として用いられます。

褐炭(かったん)

褐炭は、石炭の中でも石炭化の度合いが低い石炭です。水分や不純物などを多く含んでおり発熱量が低いという特徴があります。そのため、輸送コストをかけてまで取引されることが少なく、主に炭田の近くで発電用の燃料として用いられます。

用途による分類

石炭は用途によって、無煙炭、原料炭、一般炭の3つに分類することが可能です。

無煙炭

無煙炭は、主に練炭や還元剤、カーバイドなどに用いられる石炭です。

一般炭

一般炭は、主に発電用の燃料として用いられる石炭です。近年では、セメント製造の燃料やボイラー・窯業の燃料などにまで用途が広がっています。

原料炭

原料炭は粘結性があり、主にコークスの原料として製鉄に用いられる石炭です。

主な石炭産出国

主な石炭産出国

採掘できる地域に偏りのある石油とは異なり、石炭はさまざまな地域で産出されます。政治的に安定している国でも採掘できるので、比較的安価で入手しやすい点が、石炭の特長の一つです。石油や天然ガスの価格は、2022年のロシアによるウクライナへの侵攻によって急騰しました。石炭の価格は石油や天然ガスに比べて低い水準で安定しているため、直近では石炭を積極的に利用しようとする動きもあります。

2022年の石炭の生産量が多い国と、各国の石炭の生産量は、以下のとおりです。

  • 中国:4,430Mt
  • インド:937Mt
  • インドネシア:690Mt
  • アメリカ合衆国:540Mt
  • オーストラリア:459Mt
  • ロシア:440Mt
  • 南アフリカ:225Mt
  • ドイツ:131Mt
  • カザフスタン:109Mt
  • ポーランド:107Mt
  • トルコ:96Mt
  • コロンビア:54Mt

Mtは石炭の量を測る単位の一つです。多くの国で採掘可能な石炭ですが、中国は他の国と比べて特に生産量が多いことが分かります。

※参考:世界のエネルギー・気候統計 – 年鑑2023 . 「石炭と亜炭生産」 . https://yearbook.enerdata.jp/coal-lignite/coal-production-data.html , (2024-02-20) .

日本の主な炭田

日本にも石炭は埋蔵されています。主な炭田は以下のとおりです。

  • 北海道:石狩炭田
  • 北海道:釧路炭田
  • 福島県・茨城県:常磐炭田
  • 山口県:宇部炭田
  • 福岡県:筑豊炭田
  • 福岡県:三池炭田
  • 長崎県:崎戸・高島炭田

日本では明治時代に、燃料や工場原料に用いるため石炭の使用量が増え、それと同時に石炭を採掘する炭鉱も多く作られました。しかし、海外からの安価な石炭の輸入や石油への転換などにより、近年では日本の炭鉱の多くは閉鎖されています。

日本の輸入量と消費量

日本の輸入量と消費量

日本で現在稼働している炭鉱は少なく、生産量も少ないため、石炭調達の大部分を海外からの輸入に頼っています。日本の石炭輸入量は、以下のとおりです。

国内原料炭(100万トン)国内一般炭(100万トン)輸入原料炭(100万トン)輸入一般炭(100万トン)輸入比率
1965133816125.30%
1970132650157.10%
19759961277.00%
198071165880.10%
1985412692585.10%
199008683792.90%
199506655995.20%
200003668498.00%
200501.25829699.30%
201001.157611199.40%
201501.267311899.30%
202000.756211199.60%
202100.666312099.60%

また2021年度の各国からの輸入量と、輸入割合を一般炭と原料炭に分けて見ていきましょう。

国名一般炭の輸入量(千トン)輸入割合(%)
オーストラリア82,58672.30
ロシア12,74811.20
インドネシア10,8129.50
アメリカ合衆国4,1323.60
カナダ3,0342.70
中国5140.40
その他3840.30
国名原料炭の輸入量(千トン)輸入割合(%)
オーストラリア34,53554.50
インドネシア11,58218.30
アメリカ合衆国5,7849.10
カナダ5,1008.00
ロシア4,5507.20
コロンビア8011.30
その他1,0261.60

原料炭・一般炭のどちらもオーストラリアからの輸入が半分以上を占めています。日本の2021年度の石炭の消費量は、電気業が1億1,161万トンと多く、次いで鉄鋼業が5,959万トンです。屋外貯炭と屋内貯炭の2つの方式で、約30日分が備蓄されています。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「第3節 一次エネルギーの動向」 . https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/2-1-3.html , (2024-02-20) .

※参考:日本エネルギープランナー協会 . 「化石エネルギー(石油、LPガス、天然ガス、石炭)の備蓄はどうなっているの?」 . https://www.energy-planner.jp/contents/know/now/now01-007.html , (2024-02-20) .

石炭の埋蔵量と可能採掘年数

2020年末時点での世界の石炭の埋蔵量と、可能採掘年数は以下のとおりです(※)。

  • 石炭の埋蔵量:10,741億トン
  • 石油の可能採掘年数:139年

可能採掘年数は、あと何年石炭を採掘できるのかという一つの指標です。「可採埋蔵量÷年間消費量」で計算されます。化石燃料の一つである石油の可能採掘年数は53.5年、天然ガスの可能採掘年数は48.8年なので、石炭の可能採掘年数は比較的長いといえます。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「第2節 一次エネルギーの動向」 . https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/2-2-2.html , (2024-02-20) .

石炭の代わりになる新しい燃料

石炭の消費量は、増加傾向にあります。生産量もある程度伸びているものの、このまま消費量が増え続ければ、枯渇してしまう恐れがあります。

また燃焼時に大量の二酸化炭素が排出される点も、石炭の課題の一つです。石炭は化石燃料の中でも特に、二酸化炭素の排出量が多いといわれています。日本は2050年までに、二酸化炭素を含む温暖化ガスを実質ゼロにする目標を掲げており、この目標を達成するためには石炭や石油の代わりになる新しい燃料を活用していかなければなりません。ここからは石炭の代わりになる新しい燃料について、いくつかご紹介します。

RPF

RPFとは「Refuse derived paper and plastics densified Fuel」の略称で、産業系廃棄物のうちマテリアルリサイクルが困難な、古紙や廃プラスチック類を原料とした燃料のことです。主に工場の熱源や発電などに用いられます。リサイクル燃料でありながら、発熱量が多い上、二酸化炭素の排出量を抑えられるという特長があります。

バイオコークス

バイオコークスとは、植物や食品廃棄物などの有機資源を原料とした燃料のことです。主に製鉄や発電の燃料に用いられます。石炭は数千万~数億年かけてようやくできるものですが、バイオコークスの場合は1時間程度で製造可能です。またごみの削減や、二酸化炭素の排出量の低減にもつながります。

ブラックペレット

ブラックペレットとは、木を低温で加熱して炭素成分が多い状態にし、特定の形に加工した燃料のことです。主に発電の燃料に用いられます。排出する二酸化炭素を低減できる他、耐水性・耐久性に優れているなどの特長があります。

石炭火力発電所における伊藤忠エネクスの取り組み

伊藤忠エネクスでは地球環境や資源の保持のために、さまざまな取り組みを行っています。

一例を挙げると、二酸化炭素の排出量の削減を目標として、伊藤忠エネクスの連結子会社である防府エネルギーサービスが運営する石炭火力発電所で、木質バイオマス混焼試験を実施しています。試験では前述したブラックペレットを石炭と混焼させ、混焼量を段階的に変動させた際の稼働状況の確認と、各種データを採取。ブラックペレットの本格運用に向けた検討を進めています。

この他にも脱炭素化に向けた取り組みを、燃料の安定供給と両立しながら進めていく予定です。

防府エネルギーサービスの木質バイオマス混焼試験

まとめ

石炭は古くから使われている燃料資源であり、現在でも発電や製鉄などに欠かせない存在です。しかし、石炭は埋蔵量に限りがある他、二酸化炭素の排出量が多く環境負荷が高いというデメリットもあります。

環境に配慮した持続可能な社会を作るためには、石炭の代替燃料の研究・開発を進め、切り替えが可能なところから徐々に取り入れていく必要があるでしょう。

伊藤忠エネクスでは燃料の安定供給とともに、次世代燃料の開発・提供を積極的に行っています。二酸化炭素の排出量を低減するバイオマス発電事業や太陽光発電事業などカーボンニュートラルを実現するさまざまな事業を行っているので、脱炭素経営を目指す取り組みにご興味をお持ちの企業のご担当者さまは、お気軽にご連絡ください。

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