近年の電気料金の値上がりは、多くの電力を消費する企業にとって大きな悩みの一つとなっているでしょう。少しでも電気料金を削減しようと、節電に取り組んでいる企業も多いと思いますが、電気料金を抑える方法は他にもいくつかあります。その一つが、契約電力を下げることです。
本記事では、契約電力の概要や契約電力の決め方、電気料金の削減につながる理由などを解説します。毎月の電気料金を削減したい企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
※2024年12月時点の情報です
契約電力とは「一度に使用できる最大の電力」です。電気を水に例えるなら、契約電力は水道の蛇口です。蛇口の直径が大きければ大きいほど、一度に流せる水の量は多くなります。つまり、契約電力が大きければ大きいほど、一度に使える電力も多くなるのです。
電力契約は契約電力の大きさによって、低圧電力・高圧電力・特別高圧電力の3つに区分されています。それぞれの契約電力は、以下の通りです。
電力契約区分 | 契約電力 | |
低圧電力 | 従量電灯 | 50kW未満 |
動力 | ||
高圧電力 | 小口 | 50kW以上500kW未満 |
大口 | 500kW以上2,000kW未満 | |
特別高圧電力 | 2,000kW以上 | |
契約電力を決める方法は複数あり、電力契約区分によって異なります。詳細について見ていきましょう。
主開閉器契約とは、メインブレーカー(主開閉器)の定格電流を基に契約電力を決める方法です。低圧電力のうち動力契約のみを対象としています。
主開閉器契約は、設備によって稼働タイミングが異なったり、あまり稼働しない設備があったりと、全ての設備を同時に稼働することがない施設に適しています。設備の稼働状況に基づいてメインブレーカーの定格電流を設定できるので、適切な契約電力となり無駄な基本料金が発生しにくいです。
一方で、メインブレーカーの定格電流が小さ過ぎると、複数の設備を稼働させた際にブレーカーが落ちてしまう可能性があります。過去の使用電力量を細かくチェックしたり専門の業者に調査を依頼したりして、施設ごとに適した定格電流を設定しましょう。
負荷設備契約とは、施設内で使用する全ての設備の電気容量の合計で契約電力を決める方法です。低圧電力を対象としています。
負荷設備契約が適しているのは、全ての設備を24時間フル稼働もしくは長時間稼働させている工場や事業所などです。複数の設備を同時に使用してもブレーカーが落ちる心配がほとんどないため、営業の停止や工場ラインのストップによる生産性の低下といったリスクを避けられます。反対に短時間だけ設備を稼働する場合や、日ごとに使用する設備が異なる場合は契約電力に余剰が出てしまい、無駄な基本料金がかかってしまうケースがあります。
実量制とは、最大需要電力に基づいて、契約電力を決定する方法です。契約電力が50kW以上500kW未満の小口の高圧電力を対象としています。
最大需要電力とは、30分ごとの使用電力の平均値であるデマンド値のうち、1カ月間で最も大きい値のことです。1日24時間を30分ごとに分けると48コマ、1カ月を30日と仮定した場合、1カ月で1,440コマあることになります。この1,440コマのうち最も大きい値が、その月の最大需要電力です。
実量制では、当月を含めた過去12カ月の中で最も値の大きい最大需要電力に基づいて契約電力が決まります。そのため、トータルの使用電力量を抑えたとしても、瞬間的に多くの電力を使用し、最大需要電力の値が大きくなってしまうと契約電力が大きくなり、基本料金も高くなってしまうのです。
例えば、11月から電気の利用を開始し、最大需要電力が100kWだった場合、12月以降の契約電力も100kWです。12月の最大需要電力が80kWだったとしても、契約電力は引き続き100kWとなります。翌年1月以降も最大需要電力が100kWを超えなければ、翌年10月まで契約電力は100kWのままです。
一方で、12月にたった30分でも250kWに達すると、12月からの契約電力は250kWになります。以降は最大需要電力が250kWを超えなければ、翌年11月までは契約電力に250kWが適用されます。
協議制とは、電力会社と契約者の話し合いによって、契約電力を個別に決める方法です。契約電力が500kW以上の大口の高圧電力・特別高圧電力を対象としています。
協議制の場合も、直近1年間の最大需要電力がまず考慮されます。最大需要電力を考慮せずに契約電力を決めてしまうと、電力需要が最も高いタイミングで必要な電力を賄えなくなるからです。
また使用する設備(受電設備含む)や同業種の負荷率(契約電力のうち実際に使用した電力の割合)なども、契約電力の決定に関わる要素です。
協議制で契約した場合、月の最大需要電力が契約電力以上になると、超過分に応じて違約金を支払わなければなりません。
高圧電力や特別高圧電力の場合、設置している変圧器容量で契約電力を算定する方法もあります。
変圧器とは、発電所から送られる電気の電圧を、施設で利用できる電圧に変換するための装置です。低圧電力を利用する場合、電柱にある柱上変圧器(トランス)によって低い電圧に変圧されてから供給されるので、変圧器を設置しなくても電力を利用できます。
しかし、高圧電力や特別高圧電力を利用する場合は、6,600Vや22,000V以上といった高い電圧で電力が供給されるため、変圧器などを用いて電圧を変換しなければなりません。変圧器などを収納しているのが、受電設備やキュービクルです。
変圧器容量で契約電力を決める場合、基本的には以下の計算式で契約電力が決まります。
変圧器容量 | 計算式 |
〜50kVA | 変圧器容量(/kVA) × 0.8kW |
51〜100kVA | 変圧器容量(/kVA) × 0.7kW + 5kW |
101〜300kVA | 変圧器容量(/kVA) × 0.6kW + 15kW |
301〜600kVA | 変圧器容量(/kVA) × 0.5kW + 45kW |
601kVA〜 | 変圧器容量(/kVA) × 0.4kW + 105kW |
例えば、350kVAの変圧器を設置している場合「350kVA × 0.5kW + 45kW」の計算となり、契約電力は220kWになります。
※参考:電気事業連合会.「電気が伝わる経路」.https://www.fepc.or.jp/enterprise/souden/keiro/index.html ,(2024-11-13).
電気料金を削減する方法はいくつかありますが、先述した通り、契約電力を下げることもその一つです。契約電力は電気料金のうち、基本料金に関わってくる項目です。基本料金の内訳は以下の通りです。
基本料金単価は電力会社によって異なりますが、どの電力会社でも契約電力が下がれば基本料金を抑えられます。基本料金は使用電力量にかかわらず毎月発生するので、基本料金を抑えれば使用電力量を抑えなくても、無理なく電気料金を削減することが可能です。
なお、実量制の場合、たった30分であったとしても一度に多くの電力を使い、最大需要電力が上がってしまうと契約電力も大きくなってしまうため、最低でも1年間は高い基本料金を支払わなければなりません。そうならないためにも、電力の使用状況を見える化し、一度に多くの電力を消費させないようにすることが大切です。
ここからは契約電力を下げる方法を、ご紹介します。
契約電力を下げる方法の一つはピークカットです。
ピークカットとは消費電力が最も多い時間帯の電力使用を抑えて、デマンド値の上昇を防止する施策です。デマンド値を抑えれば契約電力の引き上げを防ぐことができるので、次に契約電力が更新されるタイミングから基本料金を引き下げられます。使用電力も低減できるため、トータルで電気料金の削減が可能です。
ピークカットを実現するためには、デマンド監視装置やデマンドコントローラーを導入する方法があります。デマンド監視装置は、リアルタイムでデマンド値を計測し、事前に設定したデマンド値に近づくとアラートを出してくれる装置です。デマンドコントローラーは、事前に設定したデマンド値に近づくと自動で対象の設備の出力などを調整してくれる装置です。
デマンド監視装置もデマンドコントローラーも電力使用状況を可視化でき、最大需要電力が上がるのを防ぎやすいです。デマンド監視装置は小規模のオフィスや施設、飲食店などに、デマンドコントローラーは中規模から大規模のオフィスや工場などに適しています。
伊藤忠エネクスでは、空調設備に特化したデマンドコントローラー「Ai-Glies」を提供しています。
資源エネルギー庁によると、夏季17時頃のオフィスビルの消費電力のうち、48.6%は空調設備に使用されています。Ai-Gliesなら、消費電力割合の高い空調設備を自動で制御してデマンド値を抑えることが可能です。外気の不快指数を監視しながら室温が変化する前に自動で空調の出力を調整するので、デマンド値を抑えつつも快適な空間を維持できます。Ai-Gliesの詳細は、伊藤忠エネクスにお気軽にお問い合わせください。
デマンドコントローラーに関するお問い合わせ
03-4233-8041 平日9:00〜17:30※参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「夏季の省エネ・節電メニュー」.https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230609003/20230609003-6.pdf ,(2024-11-13).
ピークシフトも、契約電力を下げる方法の一つです。ピークシフトとは、設備を稼働させるタイミングを消費電力の多い時間から少ない時間に変更して、デマンド値の上昇を防止する施策です。
ピークシフトの具体例として、消費電力の少ない夜間に蓄電池を充電し、消費電力の多い日中に蓄電池の電気を使用するという方法が挙げられます。1日での使用電力量は変わらないので、前述したピークカットが難しい企業でも導入しやすいでしょう。
契約区分が低圧電力(動力プラン)の企業の場合、全ての設備を同時に稼働するタイミングがないのであれば、負荷設備契約から主開閉器契約に切り替えることで、基本料金が安くなる可能性があります。
また主開閉器契約を結んでいる企業であれば、電子ブレーカーの導入によってさらに契約電力を下げられる可能性もあります。電子ブレーカーとは、CPUとセンサーによって電流値を正確かつリアルタイムに計測でき、必要に応じて制御することもできるブレーカーのことです。
電子ブレーカーの場合、JIS規格で定められた許容範囲内であれば、一時的に過剰な電流が流れてもブレーカーが落ちず、電気を使い続けられます。従来のブレーカーとは異なり、定格電流に大幅な余裕を持たせる必要がないため、基本料金を抑えられる可能性があるのです。
電気料金を削減したいなら、電力会社の見直しを検討してみるのも一つの方法です。
先述した通り、基本料金単価は電力会社ごとに異なるため、今よりも基本料金単価が安い電力会社に乗り換えれば、契約電力はそのままでも基本料金を抑えられます。また電力会社ごとにさまざまな料金プランが提供されているので、自社の電力使用状況に合ったものに変更すれば、電力量料金を下げられる可能性もあります。
特に契約電力が大きい企業や事業規模が大きい企業の場合、基本料金単価や電力量料金単価が少し下がるだけでも、電気料金の削減効果を実感しやすいです。まずは複数の料金プランを比較し、自社に合った電力会社を見つけてみてください。
契約電力は一度に使用できる最大の電力を指し、契約電力の大きさで基本料金が変動します。契約電力を抑えて電気料金を削減したいなら、本記事でご紹介したピークカットやピークシフト、低圧電力の場合は電子ブレーカーの導入といった方法を実践してみてください。
契約電力を下げるのが難しい場合は、電気料金の単価やメニューを見直すことがおすすめです。伊藤忠エネクスは法人向け電気供給サービス「TERASELでんきfor Biz」を提供しています。企業の電力使用状況やニーズ、課題に合わせて、オーダーメイドの料金プランをご提案しているため、無理なく電気料金の削減が可能です。契約後はマイページで30分ごとの使用電力量を確認できるので、ピークカットやピークシフトにも取り組みやすくなります。まずはお気軽に、伊藤忠エネクスにご相談ください。
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