過去の電気料金高騰の要因を徹底解説! 2024年の電気料金の見通しや企業が選ぶべき優良新電力の条件とは?
2016年電力の小売全面自由化によって、企業はさまざまな電力会社が提供するさまざまな料金プランの中から、自社に適したものを選択できるようになりました。一方で、選択肢が増えすぎて、仕組みがよく分からない、どの料金プランがお得なのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、近年登場している新しい料金プランの仕組みを知る上で欠かせない、日本卸電力取引所(JEPX)について詳しく解説していきます。電気の市場価格を高騰させる要因や今後の見通しについてもご紹介しているので、高圧電力の乗り換え先を探している企業のご担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事の内容は2024年5月時点の情報です
目次
日本卸電力取引所(JEPX、ジェイイーピーエックス/ジェイペックス)とは、日本で唯一、卸電力を売買できる市場です。
2000年以前は、東京電力や関西電力などの「一般電気事業者」が発電から供給までを一手に担っていましたが、電力の小売自由化に伴い電気事業法が改正されると、発電・送配電・小売という電力供給の一連の流れが、それぞれ独立した事業者として区分されることになりました。
小売電気事業者として多くの企業が参入しましたが、新電力の大半は発電所を所有しておらず、競争を活発化させるためには、小売電気事業者が安定的に電力を調達できる仕組みが不可欠であるため、発電事業者と小売電気事業者が電気を取引できる場としてJEPXが設立されたのです。
JEPXには4種類の取引市場があり、それぞれ役割や価格の決定方法、取引期間が異なります。
JEPXのメイン市場である「スポット市場」では、翌日に供給する分の電力取引を行います。そのため、一日前市場とも呼ばれます。市場価格といえば、スポット市場価格のことを指すのが一般的です。
JEPXでは基本的に、24時間を30分単位で区切って48コマとし、1コマごとに売買を行います。売買が成立することを「約定(やくじょう)」と呼ぶため、オークションで決定した取引価格は、約定価格といいます。
電力量の最低取引単位は1コマ当たり50kWhで、入札の際は1kWh当たりの価格を0.01円単位で指定します。入札は10日前から可能で、受付時間は午前8時から午後5時までです。毎日午前10時に入札を締め切り、翌日分の取引計算を行います。
スポット市場の約定価格と量は「ブラインド・シングルプライスオークション方式」で決定します。発電事業者は「〇円/kWh以上なら、△△kWh売る」、小売電気事業者は「〇円/kWh以下なら、△△△kWh買う」といった入札情報を取引システムに入力し、他社には開示されない状態(ブラインド)でオークションを行います。全ての入札情報をもとに需要曲線と供給曲線が交わる点を算出し、約定価格と量を決定します。
入札価格に関わらず、全ての参加者が約定価格(シングルプライス)で取引を行うのも、スポット市場の特徴です。
※参考:一般社団法人 日本卸電力取引所.「日本卸電力取引所取引ガイド」.https://www.jepx.jp/electricpower/outline/pdf/Guide_2.00.pdf ,(2019-01-22)
通常、発電事業者や小売電気事業者は、前日正午までに翌日の発電販売計画と需要調達計画を作成し提出しますが、突発的な発電所の停止や気温の急激な上昇などにより、電力の供給量や需要量が計画からずれてしまう場合があります。こういった計画提出後の需給ミスマッチに対応するのが、当日市場(時間前市場)です。
電力量の最低取引単位はスポット市場と同様に1コマ当たり50kWhで、入札の際は1kWh当たりの価格を0.01円単位で指定します。当日市場は24時間開場しており、毎日17時から電力の受け渡し時間の1時間前まで取引が可能です。例えば、15日13時~14時30分の電力量の取引は、14日17時~15日12時まで入札ができるということです。
当日市場の約定価格と量は、ザラバ取引で決まります。発電事業者は「■時~■時の電力を〇円/kWhで△△kWh売りたい」、小売電気事業者は「■時~■時の電力を〇円/kWhで△△△kWh買いたい」という入札情報を取引システムに入力し、最低価格の売り入札と、最高価格の買い入札が合致すると約定となります。
※参考:一般社団法人 日本卸電力取引所.「日本卸電力取引所取引ガイド」.https://www.jepx.jp/electricpower/outline/pdf/Guide_2.00.pdf ,(2019-01-22)
先渡市場とは、将来的に受け渡しをする電力の取引を行う市場です。まとまった期間の電力をあらかじめ確保できるので、市場価格の高騰などのリスクヘッジとして利用されることが多いです。
受け渡しの期間(1年間・1カ月・1週間)と型(24時間型・昼間型)を組み合わせた、以下の5種類の商品から選んで入札をします。商品によって取引期間が異なります。
商品 | 概要 | 取引期間 |
年間24時間型商品 | 4月~翌年3月末まで、0時~24時を通して電気が受け渡される | 受け渡しが開始する3年前の4月1日~受け渡し開始日の前々月末(2月末)まで |
月間24時間型商品 | 土日祝日を含めた1カ月、0時~24時間を通して電気が受け渡される | 受け渡しが開始する前年の同月から受け渡し前々月の19日まで |
月間昼間型商品 | 土日祝日を除いた1カ月、8時~18時の間に電気が受け渡される | |
週間24時間型商品 | 土~金曜日の1週間、0時~24時を通して電気が受け渡される | 受け渡しが開始する月の前々月20日~受け渡し開始日の3日前まで |
週間昼間型商品 | 祝日を除いた月~金曜日の1週間、8時~18時の間に電気が受け渡される |
約定価格と量は、当日市場と同様、ザラバ取引で決まります。毎日前場(10時~12時)と後場(13時~15時)で入札できます。
※参考:一般社団法人 日本卸電力取引所.「日本卸電力取引所取引ガイド」.https://www.jepx.jp/electricpower/outline/pdf/Guide_2.00.pdf ,(2019-01-22)
ベースロード市場とは、原子力や石炭火力、一般水力、地熱など、常時安定して発電できる電源を取引する市場です。ベースロード電源は、発電量を増やしたり減らしたりする細やかな調整は難しいものの、運用コストが比較的低く安定的に電力を供給できます。
しかし、ベースロード電源は、大規模な発電施設が必要で、場所や初期投資のハードルが高いため、日本でベースロード電源の発電所を保有しているのは大手電力会社のみでした。そこで、売買の機会均等を図ることで新電力の競争を活発化させるという目的で、2019年にベースロード市場が開設されたのです。ベースロード電源を持つ大手電力会社は、発電した電力をオークションに出すことが義務付けられています。
現在は、8月・10月・11月・1月の年4回、スポット市場と同様のシングルプライスオークション方式で取引が行われています。
先述した通り、市場価格はオークションによって決まりますが、以下のようなことが要因となって、高騰することがあります。
実際、日本でもこれらの要因によって電気料金が高騰しました。例えば大寒波と燃料不足、発電所の停止などが重なった2020年12月~2021年1月や、ロシアのウクライナ侵攻による燃料価格の高騰と円安が重なった2022年は、記憶に新しいでしょう。
過去の電気料金高騰の事例については、以下の記事で詳しく解説しています。
2022年は市場価格が高止まりしていましたが、2023年の春ごろから比較的低い水準で落ち着いています。2024年もこのままの水準が続くと考えられますが、世界は原油の調達に対して、大きなリスクを抱えています。
それは、2023年10月から本格化した、ガザ地区を巡るイスラエルとハマスの戦闘です。2024年4月1日にイスラエルが在シリアイラン大使館を空爆し、イランの革命防衛隊幹部を含む7名が死亡したことに対して、革命防衛隊の海軍司令官は、反撃とホルムズ海峡封鎖の可能性を示唆しました。ホルムズ海峡が封鎖されてしまうと、中東の原油はほとんど流通しなくなり、ロシアによるウクライナ侵攻の時と同じように原油の奪い合いとなって、燃料価格が高騰するでしょう。原油の輸入の9割を中東に依存している日本が大きな影響を受けるということは、言うまでもありません。燃料価格の高騰や原油の在庫のひっ迫によって、市場価格は著しく値上がりするでしょう。脅しの可能性もありますが、イランがホルムズ海峡の封鎖を実行しないとは言い切れないため、戦闘の状況は注視しておいた方がよさそうです。
電気の料金プランには、従来の料金プランである固定単価プランと、市場価格と連動して電気料金が変動する市場連動プランの大きく2つがありますが、目先の電気料金だけを見れば、市場連動プランの方がお得である可能性が高いです。
しかし、市場連動プランは電気料金が高騰するリスクを孕んでいます。過去に実際に起こったように、燃料価格が高騰したり、需要量に対して供給量が大幅に少なかったりすると、市場価格は一気に高騰し、電気料金が跳ね上がります。市場価格には上限が設けられているとはいえ、通常時で80円/kWh、需給がひっ迫している場合は200円/kWhまでは高騰する可能性があり、使用電力量の多い企業の場合は、1カ月で数十万円〜数百万円も電気料金が高くなる可能性も。
市場連動プランは、メリットも大きいけれどリスクも大きいということを、覚えておいてください。
しかし実は、電気料金の高騰のリスクを抑えた新たな市場連動プランも登場しています。それが「単価上限付き市場連動プラン」です。市場価格が高騰しても、設定されている上限単価以上にはならないため、電気料金が高騰するのを防ぐことができます。
伊藤忠エネクスは、数少ない、単価上限付き市場連動プランを提供している電力会社です。法人向け電力販売サービス「TERASELでんき for Biz」では、お客さまの業界や事業規模、電気の使用状況に合わせて適切なプランをご提案する「オーダーメイド式プラン」を採用しており、固定単価プランでも、他社からTERASELでんき for Bizに切り替えた場合の電気料金の平均削減率は8.1%(/拠点)です。電気料金の削減のために、電力会社の乗り換えを検討している企業のご担当者さまは、ぜひ、お気軽にご連絡ください。
市場価格が現在のような低い水準であれば、市場連動プランに切り替える方が電気料金が安くなる可能性が高いです。しかし、電気の市場価格はさまざまな要因によって高騰する恐れがあり、2020年12月~2021年1月のような事態が今後も起こらないとは言い切れません。
マーケットリスクを考慮するならば、固定単価プランか単価上限付き市場連動プランを選ぶのがおすすめです。
先述した通り、伊藤忠エネクスの「TERASELでんき for Biz」では、両方のプランを取り扱っており、お客さまが最大限メリットを得られる適切なプランをご提案できます。電力会社の乗り換えによる電気料金の削減を検討している企業のご担当者さまは、ぜひ一度、伊藤忠エネクスにご相談ください。
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