【法人向け高圧電力】電気料金を安くしたい方必見! 単価上限付き市場連動プランについて徹底解説!
電気料金プランの内容は電力会社によってさまざまですが、大きく固定単価プランと市場連動型プランの2つに分られます。市場連動型プランとは、その名の通り電気を取引する市場の価格に連動したプランのことで、電力の小売自由化によって新しく登場しました。新電力を中心に、各社がこぞって市場連動型プランを打ち出していますが、どのように価格が決まるのか、切り替えるとどのようなメリットがあるのかよく分からないという声もあります。
本記事では、市場連動型プランの概要や固定単価プランとの違い、市場連動型プランのメリットを生かす電気の使い方について詳しく解説します。値上がりが続く電気料金への対策として料金プランの変更を検討しているなら、市場連動型プランの仕組みについて理解を深め、自社の電力の使用状況に適しているかを確認しましょう。
※本記事の内容は2024年12月時点の情報です
目次
市場連動型プランとは、日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格の動きに合わせて電力量料金単価が変動するプランです。一般的には以下の計算式で、電気料金を算出します。
料金の内訳や市場価格の反映方法は電力会社によって異なりますが、電力量料金単価が固定ではなく変動制である点は同じです。ただし、市場連動型プランの電力量料金単価は、JEPXの市場価格と全く同じではありません。電力を届ける際に利用する送配電網の利用料金(託送料金)などを電力量料金単価に反映しているため、JEPXの市場価格は大まかな目安として考えておきましょう。
市場連動型プランの中には、市場価格の変動を「燃料費等調整額」や「電源調達調整費」といった独自項目(独自燃調)によって料金に反映しているものもあります。こういったプランは、一般的に市場連動型プランと呼ばれているものとは別物ですが、実際のところ「市場価格を反映したプラン」として紹介されていることが多いです。
独自燃調は燃料費調整と市場価格調整の両方が反映されているケースや、市場価格調整のみが反映されているケースなど、電力会社ごとに内訳や単価の算定方法が異なります。検討している料金プランに独自燃調が含まれているかどうかは、電気需給約款に明記されています。含まれている場合は、その内訳や算定方法を事前にしっかり確認しておきましょう。
2000年3月、電力の小売自由化は特別高圧電力からスタートしました。多くの新電力が小売電気事業に新規参入し、市場の競争力が高まることが期待されましたが、新電力の大半は発電所を所有していません。市場の活性化には、発電施設を保有していない新電力が安定的に電気を調達できる仕組みが不可欠です。そこで、2003年に発電事業者と小売電気事業者の間で電力の取引ができる市場としてJEPXが誕生したのです。
JEPXでは、24時間を30分単位で分割し48コマに分け、1コマごとに電気の売買取引を行うため、市場価格は30分ごとに変わります。また電力取引は北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州の9エリアに分けて行われるため、同じ時間帯でもエリアによって市場価格は異なります。JEPXのWebサイトを見るとシステムプライスとエリアプライスの2つがありますが、実際の市場価格を確認する際は、必ず自社の所在地のエリアプライスを参照してください。
JEPXで市場価格が決まるまでの仕組みを、もう少し深掘りしてみましょう。
JEPXのメイン市場である「スポット市場(1日前市場)」では、実際に電気を供給する10日前から売り入札(供給)と買い入札(需要)が行われ、前日の午前10時に入札を締め切ります。その後、翌日に供給する電力の取引計算を行い、市場価格を決定します。実際に電力が供給される前日にJEPXのWebサイトで市場価格を確認できるので、それをもとに電力使用スケジュールを立てることが可能です。
またスポット市場では、入札情報を他社に開示しない状態でオークションを行い、売り入札と買い入札の曲線が交わる点で価格が決定する「ブラインド・シングルプライスオークション方式」を採用しています。入札価格ではなく売買が成立した約定(やくじょう)価格によって取引を行うため、需要と供給のバランスが価格に直結します。
例えば、雨や曇りなど太陽光発電の発電量が減る日は供給量が減るため、多くの企業が電気を使用する日中の市場価格が高くなる傾向にあります。またエアコンの稼働により消費電力が増える夏季や暖房による消費電力が増える冬季なども、電力需要が増えるため市場価格が高くなりやすいです。一方、深夜や早朝のように電力需要の少ない時間帯だと、市場価格は下降しやすいです。市場連動型プランはこういったさまざまな要因によって変動する市場価格の動きに連動するため、電力量料金の高い時間帯と低い時間帯が存在するのです。
ただし、一定の傾向はあるものの、日によって価格の動き方は全く異なるので、市場連動型プランを利用する場合は、必ず前日に市場価格をチェックするようにしてください。
固定単価プランと市場連動型プランの最も大きな違いは、電力量料金です。
固定単価プランの電力量料金は、あらかじめ契約によって単価が定められています。また燃料費の調達コストを反映する目的で、電力量料金の中に燃料費調整額が含まれていますが、単価は1カ月ごとに設定されます。一方、市場連動型プランの電力量料金は30分ごとに変動します。
そのため、固定単価プランの場合は、主に使用電力量によってのみ電気料金が変動しますが、市場連動型プランの場合は、使用電力量だけではなく、いつ電気を使うかによっても電気料金が大きく変動します。
また固定単価プランの場合は、電力量料金単価が決まっているため、電気料金が高騰するリスクは少ないですが、逆に安くなる可能性もほとんどありません。一方で市場連動型プランの場合は、高騰するリスクはありますが、逆にとても安くなる可能性もあります。
固定単価プランと市場連動型プランにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、自社の使用電力量や設備の稼働状況などを加味した上で、どちらがよいか選択をしましょう。
市場連動型プランは一部の新電力が提供しているイメージが強いですが、中部電力ミライズや東京電力エナジーパートナーでも提供が始まるなど、電力業界全体のトレンドになっています。なぜ、電力会社は市場連動型プランを次々と打ち出しているのでしょうか。
この背景には、2020年12月〜2021年1月に起こった市場価格の高騰があります。予期せぬ寒波の到来により、10年に1度と呼ばれるほどの電力需要が発生しました。それに加え、石炭火力発電所のトラブル、液化天然ガス(LNG)の在庫の逼迫などが重なり、一日の市場価格の平均が100円/kWhを超える事態となってしまったのです。
固定単価プランは市場価格の高騰を電気料金に転嫁できないため、市場価格との差額を電力会社が負担することになってしまい、2022年は電気料金の引き上げや料金プランの見直し、電力会社の事業撤退、倒産、廃業が相次いで起こりました。
2021年と同程度の市場価格の高騰が再び起こった場合、固定単価プランでは採算が取れない可能性が高いため、電力会社は電力の調達コストを適正に反映できる市場連動型プランをこぞって提供し始めたのです。
ここでは、企業が市場連動型プランに切り替えることで得られるメリットについて解説します。
先述の通り、市場連動型プランは30分ごとに市場価格が変動するため、価格が高い時間帯と低い時間帯があります。この時間帯に応じて設備の稼働量や従業員のシフトなどを調整できる企業であれば、市場価格の安い時間帯に使用する電力量を増やして高い時間帯には電力量を減らすといった対応ができます。同じ使用電力量で比較すると、市場価格の安い時間帯に使用する電力が多ければ多いほど、電力量料金単価が一定の固定単価プランよりも電気料金を抑えられるでしょう。
昼間に稼働が多い工場やオフィス、需要の少ない深夜・早朝や休日に設備を稼働する企業は、市場連動型プランへの切り替えを検討してみてください。
燃料費調整額は、3〜5カ月前の化石燃料の貿易統計価格に基づいて算定されます。例えば、6月分の燃料費調整額は1〜3月の貿易統計価格に基づいています。そのため固定単価プランでは、過去に起きた燃料価格の高騰の影響が、後になって電気料金に反映されるのです。
市場価格には化石燃料の調達コストの変動が反映されているので、燃料費調整額が含まれていない市場連動型プランも多いです。そのため、過去の燃料価格の高騰の影響を時間差で受けることがないというのもメリットの一つとして挙げられます。
市場連動型プランには魅力的なメリットがある一方で、注意するべきポイントもあります。市場連動型プランへの切り替えを検討しているなら、しっかり把握しておきましょう。
市場価格は電力の需給バランスが崩れると、短期間で一気に高騰する恐れがあります。以下のようなさまざまな要因によって価格の高騰が起こる可能性があるため、注意が必要です。
先述の通り、JEPXの市場価格を確認できるのは早くても前日なので、市場価格の高騰を受けて使用電力量を大幅に減らす調整をするのは容易ではありません。結果的に設備の稼働を止められず、予想以上に高い電気料金の負担を強いられる可能性があります。
市場連動型プランは月々の電気料金がいくらになるのか、請求書が来るまで分かりません。ある程度見通しを立てるには、30分ごとの市場価格と使用電力量から計算して把握しておく必要がありますが、手間がかかるため現実的ではないでしょう。
市場連動型プランに切り替える際は、電気料金の見通しが立てにくく急に変動する可能性があるリスクを踏まえた上で、予算管理をする必要があります。
先述した市場連動型プランのメリットを生かして電気料金を削減したいなら、JEPXの市場価格に合わせて使用電力量をコントロールする方法を検討しましょう。
例えば、電力を使うタイミングを市場価格が高い時間帯から安い時間帯に移行させるピークシフトや、市場価格が高い時間帯の使用電力を減らすピークカットなどがおすすめです。それぞれの具体策は、以下の通りです。
【ピークシフトの具体策】
【ピークシフトの具体策】
システムや設備を導入する場合は、削減できる電気料金を試算して、初期費用を回収できる見込みがあるかをしっかりと確認しましょう。
上限付き市場連動型プランとは、JEPXの市場価格と連動する電力量料金単価に上限を設けたプランのことです。単価に上限を設定することで、市場価格の高騰リスクに備えることができます。市場価格が安い時のメリットを享受しつつ、高騰のリスクにも備えたいという企業におすすめです。
以下の記事では、市場価格が高騰した際に上限があるかないかでどのくらい電気料金に差が出るのかをシミュレーションしています。併せてご覧ください。
市場連動型プランは、電力の小売自由化以降に登場した比較的新しい料金プランです。そのため、興味はあってもメリットやデメリットが分からず、切り替えるタイミングを逃しているという企業も多いでしょう。市場連動型プランはその特長を生かした電気の使い方ができれば電気料金を削減できるので、日中の使用電力量が多い企業や電気を使う時間を調節しやすい企業は、ぜひ料金プランの切り替えを検討してみてください。
伊藤忠エネクスが提供する「TERASELでんきforBiz」では、通常メニューの他、市場連動メニューも用意しており、お客さまの使用電力量や設備の稼働状況、事業規模などに応じて、オーダーメイドのプランをご提案しています。伊藤忠エネクスグループで全国19カ所に発電所を保有し、九州電力とアライアンス提携をしているため、電力事業の安定性にも定評があります。市場連動型プランを含めて電気料金プランの見直しを検討しているなら、ぜひ伊藤忠エネクスへご相談ください。
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