なぜ温浴施設の電気代は高い?業態別の削減策と判断基準

なぜ温浴施設の電気代は高い?業態別の削減策と判断基準

伊藤忠エネクス メディア編集部

伊藤忠エネクスは1961年の創業以来 「 社会とくらしのパートナー」として 全国各地の地域に根ざし生活に欠かせないエネルギーをお届けしてまいりました。 老舗エネルギー商社ならではの情報を発信します。

温浴施設の経営で「燃料費は気にしていても、電気代は手つかず」という施設は少なくありません。水光熱費が売上原価の2〜3割を占めるこの業態では、ガスや灯油の燃料費に注目が集まりがちですが、循環ポンプ・ろ過装置・空調・照明が消費する電力コストにも、まだまだ削減余地が残っています。

本記事では、温浴施設の電気代が高くなる構造を設備別に分析し、日帰り温泉・スーパー銭湯・24時間営業型施設それぞれのモデル試算と削減施策の優先順位を整理します。さらに、JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場価格データと各業態の電力使用パターンを対比し、市場連動型プランとの相性を判断できる情報を提供します。

この記事でわかること

  • 温浴施設の電気代を押し上げている設備と、業態ごとのコスト水準(モデル試算で年間約930万〜3,540万円)
  • 投資対効果の高い削減施策を優先順位付きで整理
  • 市場連動型プランが自社に向いているかの判断基準

※本記事は2026年3月時点の情報です。電気料金・補助金制度・市場価格は変動しますので、最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

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温浴施設の電気代が高い理由——費目別に見るコスト構造

温浴施設の電気代を押し上げる大きな要因の一つは、循環ろ過ポンプなどの動力設備を長時間運転する構造にあります。

温浴施設の電力を消費する設備は大きく4つに分類できます。

1. 循環ろ過ポンプ
厚生労働省の資料では、循環式浴槽は浴槽の湯をろ過器等を通して循環させる構造とされており、当該ろ過器は浴槽水を再利用するために微細な粒子や繊維等を除去する装置と定義されています。さらに、循環式浴槽のろ過能力については、1時間に浴槽の湯が1回以上ろ過されることが管理上の目安とされています。複数の浴槽を持つスーパー銭湯では、浴槽ごとにろ過ポンプが設置されるため、5〜10台以上のポンプが24時間稼働するケースも珍しくありません。

2. 空調設備
広い脱衣所・休憩スペース・食事処に加え、浴室内の換気も必要です。浴室は高温多湿の環境から換気量が多く、冷暖房の効率が下がりやすい特性があります。夏場は冷房、冬場は脱衣所の暖房で電力消費が増大します。

3. 照明設備
館内全体(エントランス・脱衣所・浴室・休憩所・廊下・駐車場)の照明が長時間点灯します。営業時間が12時間以上に及ぶ施設では、照明の稼働時間は小売店舗を上回ることもあります。

4. ボイラー補機・給湯設備の電動部分
ボイラー本体の燃料費はガス・灯油ですが、ボイラーの送風ファン・給水ポンプ・温水循環ポンプ等の補機は電気で動作します。これらの補機はボイラー稼働中は常に電力を消費します。

業態タイプ別の電力消費の特徴

業態タイプ営業時間電力消費の特徴最初に着手すべき施策
日帰り温泉10時〜21時頃昼間の空調負荷が中心。閉店後も一部の動力設備が稼働する施設がある循環ポンプのインバーター化
スーパー銭湯10時〜翌1時頃夕方〜夜に空調・照明がピーク。ポンプは長時間運転になりやすいデマンド管理(夕方ピークの抑制)
24時間営業型24時間全時間帯で空調・照明・ポンプが稼働LED化と空調の高効率機種更新

なお、設備ごとの電力消費割合は施設の規模・浴槽数・営業時間によって大きく異なるため、一律の比率で語ることはできません。自社の消費内訳を正確に把握するには、分電盤での個別計測またはBEMS(ビル・エネルギー管理システム)の活用が有効です。

※参考:厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等について」

※参考:クール・ネット東京「公衆浴場の省エネルギー対策テキスト」

業態別モデル試算——日帰り温泉・スーパー銭湯の年間電気代

温浴施設の年間電気代は、契約電力と月間使用量によって大きく変わります。以下は、温浴施設を想定したモデルケース試算の一例です。

業態契約電力(想定)月間使用量(想定)年間電気代の試算
日帰り温泉(小〜中規模)100kW2.5万kWh約930万円
スーパー銭湯(中規模)200kW6万kWh約2,160万円
24時間営業型大型施設300kW10万kWh約3,540万円

モデルケース試算。前提:従量単価25円/kWh、基本料金1,500円/kW/月で計算。年間電気代=(基本料金単価×契約電力×力率割引・割増)+(従量単価×月間使用量)×12か月。例:日帰り温泉の場合、(1,500円×100kW+25円×25,000kWh)×12=(15万円+62.5万円)×12=約930万円。スーパー銭湯の場合、(1,500円×200kW+25円×60,000kWh)×12=(30万円+150万円)×12=約2,160万円。実際の費用は地域・電力会社・契約形態・燃料費調整額・市場価格調整額などにより異なります。また力率割引・割増は加味しておりません。)

加えて、2025年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金は3.98円/kWh(2025年5月検針分〜2026年4月検針分に適用)です。月間6万kWhを使用するスーパー銭湯のモデルケースでは、再エネ賦課金だけで月間約24万円、年間約287万円が上乗せされます(6万kWh×3.98円/kWh=23.88万円/月、年額約286.6万円)。

自社のコスト水準を確認するには、直近の検針票(電力明細)で以下の3点を確認してください。

契約電力(kW)基本料金の算定基礎
最大需要電力(デマンド値)当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力のうち最も大きい値が、契約電力の基準となる
月間使用量(kWh)従量料金の算定基礎

※参考:資源エネルギー庁「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2025年度価格等と2026年度以降の価格等に関する意見

※参考:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電促進賦課金について」

電気代削減の5施策——循環ポンプ最適化からプラン変更まで

温浴施設の電気代削減は、①使う量を減らす(省エネ)、②ピーク電力を下げる(デマンド管理)、③調達単価を見直す(プラン変更)の3分類で考えます。以下の5施策を一般に取り組みやすい順に整理しました。

施策分類初期費用削減インパクト回収目安
①循環ポンプのインバーター化省エネ3年前後の事例あり
②LED照明への更新省エネ小~中3〜5年程度の事例あり
③空調の高効率機種への更新省エネ中~大中〜大個別試算が必要
④デマンド管理の導入ピーク抑制小~中小〜中個別試算が必要
⑤電力調達単価の見直しプラン変更なし中〜大即時

①循環ポンプのインバーター化

循環ろ過ポンプにインバーターを取り付けると、必要な流量に応じてモーターの回転速度を調整できます。ポンプ動力は回転数の3乗に比例するため、回転数を下げられる条件では大きな省エネ効果が期待できます。東京都の公衆浴場の省エネ診断事例では、循環ろ過装置5台へのインバータ制御導入により、投資額369万円、年間約118万円の光熱水費削減、投資回収3.1年という結果が示されています。

②LED照明への更新

LED更新は、温浴施設でも比較的取り組みやすい省エネ策です。東京都の公衆浴場の診断事例では、76台の照明更新で投資額139万円、年間約37.7万円の光熱水費削減、投資回収3.7年とされ、消費電力量は約52%削減しています。

③空調の高効率機種への更新

浴室・脱衣所の空調は高温多湿環境で負荷が大きく、高効率機種への更新で削減効果が出やすい費目です。一方で、更新費用と回収年数は案件差が大きく、一般化は困難です。設定温度の見直しについては、東京都の公衆浴場診断事例で「1℃緩和により空調消費電力を約10%削減できる想定」とされています。

④デマンド管理の導入

デマンド管理は、30分単位の使用電力量を監視し、最大需要電力を抑えることで基本料金の低減を狙う施策です。温浴施設では、利用者への影響が小さいバックヤード設備などから制御対象を選ぶのが現実的です。導入費用や回収年数は制御対象の範囲によって大きく変わるため、個別試算が必要です。

⑤電力調達単価の見直し

電力調達単価の見直しは、大きな設備投資を伴わずに取り組める施策です。削減余地は使用パターンや契約条件によって変動するため、複数プランを比較して判断するのが有効です。
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※参考:クール・ネット東京「公衆浴場の省エネ対策」
※参考:クール・ネット東京「公衆浴場の省エネルギー対策テキスト」

温浴施設の電力使用パターンと市場連動プランの相性

市場連動型プランとは、JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場価格に連動して電力単価が30分ごとに変動する料金プランです。温浴施設との相性は、業態ごとの電力使用パターンによって異なります。

まず、JEPX価格の傾向を大きく整理すると、近年は日中の一部時間帯が相対的に安く、需給が逼迫しやすい夕方以降が相対的に高くなりやすい傾向があります。また、季節や曜日によっても価格差が生じます。

ただし、時間帯別・曜日別・季節別の差額は年度や需給環境によって変動するため、固定的な平均値で判断するのではなく、必ず直近のJEPX実績と自社の30分値データを照合して確認する必要があります。

業態別の相性判定

日帰り温泉(昼間型営業)は、市場連動型プランと有利に働きやすい傾向があります。営業時間が概ね10時〜21時で、空調・照明の電力消費ピークが昼間に集中します。JEPXの昼間価格は太陽光発電の出力ピーク(10〜14時)と重なり、全時間帯で最も安い水準にあります。

スーパー銭湯(夕方〜夜型営業)は、条件付きで検討の余地があります。来客ピークが17〜21時の夕方〜夜に集中する施設では、この時間帯の電力消費はJEPXの高値時間帯と重なります。一方で、循環ポンプは衛生管理上24時間稼働しており、そのうち深夜〜早朝(0〜6時)の稼働分はJEPXの安値時間帯と構造的に重なるメリットがあります。電力使用量全体に占めるポンプの稼働比率が高い施設ほど、この恩恵を受けやすくなります。

24時間営業型施設も、条件によっては検討可能です。全時間帯で均等に電力を使うため、価格変動のメリット・デメリットが相殺されやすい構造です。ただし、深夜〜早朝の来客が少ない時間帯にポンプ・換気は稼働し続けるため、その分の安値恩恵は享受できます。土日の来客が多い施設は、土日のJEPX安値が有利に働く可能性があります。

いずれの業態でも、導入の判断は自社の30分単位の電力使用データとJEPX価格を照合して行う必要があります。「業態の傾向」だけで判断せず、自社固有の使用パターンを確認してください。

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※参考:日本卸電力取引所(JEPX)「スポット市場 月間平均価格」

市場連動プランのリスクと導入判断の基準

「プランの切り替えを検討したいが、価格が高騰したら不安」「手続きが面倒そう」「今の電力会社との関係が変わるのが不安」――温浴施設の担当者が見直しをためらう理由として、こうした懸念は一般的です。特に価格変動リスクは正面から確認すべきポイントです。

過去の高騰事例

2021年1月には大寒波とLNG供給不足が重なり、JEPXのスポット市場価格は1月15日にコマ単位でシステムプライス251円/kWhまで高騰しました(通常の約25倍)。この時期に市場連動型プランを利用していた需要家では、電気代が通常の2〜3倍以上に跳ね上がるケースが発生しています。

ただし、その後のJEPX価格は2021年1月のような異常高騰局面に比べれば落ち着いています。もっとも、今後も需給や燃料事情によって価格は変動し得るため、常に動向は確認しておくことが大切です。

また、一部の市場連動型プランでは価格上限や調整係数の上限が設けられている場合がありますが、すべてのプランに共通するわけではありません。プラン選択時には、上限の有無と計算方法を個別に確認してください。

導入を検討してよい条件

以下に当てはまる温浴施設は、市場連動型プランの導入を前向きに検討できます。

  • 「昼間の営業が中心」で、日中のJEPX安値時間帯に空調・照明の消費が集中する
  • 「循環ポンプや換気の稼働比率が高く」、24時間のうち深夜〜早朝(0〜6時)の消費量が全体の一定割合を占める
  • 「土日の来客が平日より多い」施設(JEPXの土日価格は平日比で安い傾向がある)
  • 「電力使用量の季節変動が小さい」施設(夏季ピークが小さいほどJEPX高値月の影響を受けにくい)

慎重になるべき条件

  • 夕方〜夜(16〜20時)に電力消費がピークとなる施設
  • 予算の変動を許容しにくい経営体制

高圧契約の温浴施設で切り替えを検討する場合、現在の検針票と直近12か月分の電力使用データを準備した上で、複数の新電力会社からシミュレーション見積もりを取得するのが最も確実な判断方法です。

※参考:日本卸電力取引所(JEPX)「公式サイト」

よくある質問(FAQ)

Q1. 温浴施設の電気代は月いくらかかりますか?

施設の規模・業態・営業時間により大きく異なります。本記事のモデルケース試算では、日帰り温泉(契約電力100kW)で月額約78万円、スーパー銭湯(200kW)で月額約180万円、24時間営業型(300kW)で月額約295万円が目安です(従量単価25円/kWh・基本料金1,500円/kW想定。実際は地域・契約形態により異なります)。

Q2. 電力会社の切り替えで営業に影響はありますか?

切り替えに伴う停電は発生しません。物理的な送電線や変電設備はそのまま使用するため、電気の品質(電圧・周波数)も変わりません。切り替え手続きは新しい電力会社が代行するのが一般的であり、施設担当者が行う作業は申込書の記入と検針票の提供程度です。ただし、高圧契約の切り替えには一般的に数か月程度かかるケースがあります。

Q3. 市場連動プランの価格が高騰した場合はどうなりますか?

2021年1月のようにJEPX価格が大きく上昇した局面では、電気料金が跳ね上がる可能性があります。リスクを抑えるには、上限設定の有無、調整方式、解約条件を事前に確認することが重要です。

Q4. 省エネ設備への更新に使える補助金はありますか?

高効率空調・LED照明・高効率ボイラー等への更新は、年度ごとに各省庁・自治体が公募する補助金制度の対象となる場合があります。制度名・要件・補助率は年度ごとに変わるため、資源エネルギー庁や環境省の最新の公募情報、または各都道府県の省エネ支援事業を確認してください。

※参考:省エネルギー政策について|資源エネルギー庁

まとめ

温浴施設の電気代は、循環ポンプの24時間稼働・広い館内の空調・長時間の照明という構造的な要因で高くなりやすい業態です。しかし、設備の最適化と電力調達の見直しを組み合わせることで、削減余地が出る可能性があります。

今日から始められる3ステップ

  1. 検針票で現状を把握する:
     契約電力(kW)・最大需要電力(デマンド値)・月間使用量(kWh)を直近12か
     月分確認する
  2. 設備の電力消費を特定する:
     分電盤での個別計測またはBEMSで、循環ポンプ・空調・照明の消費内訳を把握
     する
  3. 電力調達の見直しシミュレーションを依頼する:
     30分単位の電力使用データをもとに、市場連動型プランを含む複数プランの見積
     もりを比較する

市場連動型プラン検討チェックリスト

  • 昼間(10〜15時)または深夜〜早朝(0〜6時)に電力消費が集中しているか
  • 土日営業比率や来客パターンを踏まえて価格照合できるか
  • 電気代の月額変動を一定範囲で許容できる経営体制か

上記に当てはまる施設は、市場連動型プランの導入で電力コストを改善できる可能性があります。TERASELでんき for Biz.では、温浴施設を含む法人向けに市場連動型プランを提供しています。まずは自社の検針票をご準備のうえ、電力使用データに基づく無料のシミュレーションで自社への適合性を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
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※掲載内容は2026年3月時点の情報です。最新の料金・制度については各関係機関にお問い合わせください。

※足元では、ホルムズ海峡をめぐる情勢不安などを背景に、燃料価格やJEPXスポット市場価格の先行きに不透明感が高まっています。市場連動型プランでは市場価格上昇の影響を受ける可能性があるため、固定単価型プランを含めた契約条件の比較も重要です。固定単価型プランは電力会社によって新規受付状況が異なるため、早めに確認しておくと安心です。

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