新電力に求められる"需給管理力"とは? インバランス料金の影響や事業撤退・倒産・廃業のリスクの少ない新電力の見分け方について解説

新電力に求められる"需給管理力"とは? インバランス料金の影響や事業撤退・倒産・廃業のリスクの少ない新電力の見分け方について解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

伊藤忠エネクスは1961年の創業以来 「 社会とくらしのパートナー」として 全国各地の地域に根ざし生活に欠かせないエネルギーをお届けしてまいりました。 老舗エネルギー商社ならではの情報を発信します。

2024年も電気料金の値上がりが止まりません。一時期に比べると落ち着いてはいるものの、緩やかに値上がりを続けており、また2024年5月使用分をもって「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が終了するため、6月使用分からの値上がりは確実でしょう。

そんな中、少しでも電気料金が安くなる電力会社に乗り換えようと、乗り換え先を探している企業も多いと思います。新電力を探していると、ついつい電気料金の削減額にばかり目がいってしまいますが、本当に注目すべきは電力供給の安定性と企業の安定性です。

本記事では、高圧電力の乗り換え先を探している企業のご担当者の方へ向けて、知っておきたい「需給管理」と「インバランス」について解説します。事業撤退・倒産・廃業のリスクの少ない新電力の見分け方もご紹介しているので、ぜひ電力会社選びの参考にしてみてください。

※本記事の内容は2024年5月時点の情報です

小売電気事業に欠かせない「需給管理」とは?

電力を安定供給するには、需要(消費量)と供給(発電量)が常に一致している必要があり、これを「同時同量の原則」といいます。電力の需要と供給のバランスが崩れると、電気の品質(周波数)が低下し、正常な供給が行えなくなってしまうのです。最悪の場合、大規模停電(ブラックアウト)を引き起こしてしまうことも。

電力の安定供給を維持するため、小売電気事業者や発電事業者は、日々、需要と供給を一致させるための「需給管理」を行っています。

需要の予測

需給管理においてはまず、30分ごとの電力需要を予測します。

電力需要は、季節、曜日、時間帯、天候などによって、大きく変動します。例えば、春や秋よりも夏や冬の方が電力需要が多いですし、晴天よりも雨天の方が電力需要が多くなります。また生活サイクルや企業活動によっても変化するため、1日の中でも時間帯によって電力需要は大きく変動し、もちろん平日か休日かでも変わります。

こういったさまざまな要素を考慮し、過去の需給実績も踏まえながら、需要計画を立てるのです。

発電計画を立てる

需要計画を元に、自社の発電設備でどのくらいの電力を発電するか計画を立てます。太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギー由来の電力を供給している場合は、天候などが発電量に影響するため、需要と併せて考慮する必要があります。

市場からの購入量を決定する

自社で発電設備を持っていない場合や自社の発電設備では賄えない分がある場合などは、JEPXから電力を購入します。どのくらいの電力を市場から購入するかを決定し、入札をするのも需給管理の仕事の一つです。

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計画値同時同量制度とは?

計画値同時同量制度とは、小売電気事業者と発電事業者に対し、作成した発電販売計画と需要調達計画の通りに実際の需給が行われるよう努めることを義務付ける制度です。

まず小売電気事業者と発電事業者は、前日正午までに翌日の発電販売計画と需要調達計画を作成し、電力広域的運営推進機関(OCCTO)に提出します。この計画は、実需給の1時間前までであれば変更が可能で、例えばその日のそれまでの実需給の状況が計画から外れている、需要計画や発電計画を立てた際の条件が変わってしまったなど、当初の計画と実需給がずれる可能性がでてきた場合には、新たな計画に変更しなければなりません。

つまり計画を立てて終わりではなく、需給管理の仕事には、実需給や発電状況を監視したり、それに応じて計画の変更をしたりといった業務も含まれているのです。

実需給が計画通りにならなかった場合はペナルティが課せられる

実需給が計画と一致しなかった場合は、インバランスとなります。需要計画<需要実績の場合は不足インバランス、需要計画>需要実績の場合は余剰インバランスとなり、不足インバランスの際は不足分の補給を、余剰インバランスの際は余剰分の買取を一般送配電事業者が行うことでインバランスが解消されます。

つまり、インバランスになったからといって、実際の電力供給に影響があるというわけではありません。しかし、計画値同時同量制度の下では、計画と実需給を合わせることは小売電気事業者と発電事業者の義務であり、また小売電気事業者と発電事業者の計画の精度が低く、インバランスが多発するような状況になってしまうと、電力を安定供給できなくなってしまうリスクが高まります。

そのため、インバランスにはインバランス料金というペナルティが課せられています。一般送配電事業者が調整したインバランス分の電気については、市場価格よりも高い費用を支払わなければならないのです。また需給管理の精度が低く、インバランスを多発させているような場合には、厳重注意を受ける可能性もあります。

新電力はインバランス料金のリスクが大きい

先述した通り、インバランス料金は、市場価格よりも高く設定されているため、何度も発生させてしまうとその分、電力の調達費用が高くなってしまいます。インバランス料金をどのように賄うかはそれぞれの電力会社に委ねられており、需要家の支払う電気料金に転嫁することも可能です。しかし、インバランス料金によって電気料金が高くなれば、需要家は他の新電力への乗り換えを検討するでしょう。またインバランス料金を電力会社が飲み込む場合は、電気料金は値上がりしませんが、企業の体力によっては、事業撤退や倒産、廃業に追い込まれる可能性があります。

このようにインバランス料金は、新電力にとって大きなリスクの一つなのです。インバランスにならないためには、需給管理力が重要です。正確な需給予測、調達計画を立てれば、インバランスになることなく、調達費用を抑えて安定的に電力を供給することができます。

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事業撤退・倒産・廃業のリスクの少ない新電力とは?

インバランスになるかどうかは、先述した通り、需給管理の精度次第なので、そのリスク自体はどの電力会社にもありますし、需要家が外から見て判断できるものでもありません。しかし、仮にインバランスが何度も発生したとしても電気料金や経営に影響しない新電力や、事業の安定性の面で優れている新電力というのはあります。

例えば、以下のような新電力が該当します。

  • 資本力がある
  • 自社の発電設備を保有しておりJEPXからの購入が少ない
  • エリア電力会社とアライアンスが組めている

資本力がある

まず重要なのが、企業としての安定性です。資本力があれば、インバランス料金や、燃料価格や市場価格の高騰によって調達費用が高くなったり、利益が圧迫されて一時的に赤字状態になったりしたとしても、小売電気事業を継続することができます。単に資本金の額だけではなく、多角的な事業を行っている、規模の大きなグループ会社に属しているといった点に注目してみてください。

自社の発電設備を保有しておりJEPXからの購入が少ない

自社の発電設備を保有していてJEPXからの購入が少ない新電力は、市場価格の変動の影響を受けにくく、事業の安定性が高いといえます。また発電設備を保有していれば、2024年から実際の取引が始まった容量市場において、容量拠出金を受け取ることができます。

販売している電力がどこから調達されているのかは、各社がWebサイトなどで公開している電源構成を見れば分かります。またもしも、自社の発電設備を保有していない新電力の場合は、他社からの購入とJEPXからの購入のバランスが良いか、JEPXに頼りすぎていないかをチェックすると良いでしょう。

エリア電力会社とアライアンスが組めている

日本に10社あるエリア電力会社とアライアンスが組めている新電力も、事業の安定性が高いといえます。エリア電力会社には、電力事業のノウハウはもちろんのこと、長年地域に根差して電力供給を行ってきた実績があります。エリア電力会社とアライアンスを組めている新電力であれば、電力の安定供給はもちろんのこと、魅力的なサービスの拡大も期待できるでしょう。

まとめ

伊藤忠エネクスは先述した要件を全て満たす、安定性と需給管理力に優れた新電力です。60年以上の歴史があるエネルギー総合商社として、グループ会社を通じて、水力・太陽光・石炭火力・天然ガス火力の発電所を計19カ所保有しており、また2020年より、高圧電力や特別高圧電力の電力小売事業に関して九州電力と業務提携をしています。

伊藤忠エネクスのTERASELでんき for Bizは、お客さまの業界や事業規模、電気の使用状況に適した「オーダーメイド式プラン」で電力を供給しています。安定的な電力供給はもちろんのこと、電気料金の削減といった電力会社の乗り換えのメリットを最大限得られるよう適切なプランをご提案いたしますので、新しい電気の契約先をお探しの企業のご担当者さまは、ぜひお気軽にご連絡ください。

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