IPPとは? PPSとの違いや電力ビジネスへの新規参入方法を解説

IPPとは? PPSとの違いや電力ビジネスへの新規参入方法を解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

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1995年4月の電気事業法改正を皮切りに、現在までの約30年間で、日本の電力システムは大きく変化しています。2016年4月には電力の小売全面自由化がスタート。需要家は自由に小売電気事業者や料金プランを選べるようになりました。

本記事では、1995年から2016年まで発電部門の事業者区分として存在していたIPPについて、概要やPPSとの違いなどを解説します。記事後半では、これから発電事業や小売電気事業に参入するための方法をご紹介しているので、電力ビジネスへの参入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は2024年12月時点の情報です

IPPとは?

IPPとは?

IPPは、Independent Power Producerの略称で、日本では独立系発電事業者とも呼ばれます。1995年の電気事業法の改正以降に登場し、2016年3月まで発電を行う事業者の区分の一つとして存在していました。

IPPは自社で発電設備を所有しており、発電した電力を東京電力や中部電力、関西電力といった一般電気事業者と呼ばれる大手電力会社に売り渡していました。

IPPができた背景

1995年3月以前は、一般電気事業者が発電から送配電、小売までを一貫して行っていました。しかし、一般電気事業者による独占的な電力供給の構造には、市場競争が起こりにくく、電気料金が割高になりやすいという課題がありました。

この課題を解決するため、1995年4月に約30年ぶりに電気事業法が改正され、まずは発電部門への新規参入が可能になりました。一般電気事業者に対して自社で発電した電力を販売する、IPPが登場したのです。

PPSとは?

PPSとは?

IPPと似た言葉に、PPSがあります。PPSは、Power Producer and Supplierの略称で、日本では特定規模電気事業者とも呼ばれています。需要家へ電気の販売を行う一般電気事業者以外の事業者です。2012年からは、より分かりやすい表現として「新電力」と呼ばれるようになりました。

一口にPPSといっても、自社で発電設備を所有している企業と所有していない企業があります。発電設備を所有しているPPSの場合は発電と小売を、発電設備を所有していないPPSの場合は、小売のみを行います。

PPSができた背景

1995年の電気事業法改正の後、以下の流れで電力小売自由化が行われました。

  • 2000年3月:特別高圧区分での電力小売自由化が開始
  • 2004年4月・2005年4月:高圧区分での電力小売自由化が開始
  • 2016年4月:低圧区分での電力小売自由化が開始

2000年3月以降、段階的にではありますが、一般電気事業者以外の企業が電気事業の小売部門に新規参入できるようになりました。なお、当時PPSとして小売部門に新規参入した企業の多くは、石油会社やガス会社、商社といった資本力のある大企業でした。

PPSの登場で電気事業の小売部門における市場競争が活性化し、さまざまな料金プランやサービスが提供されるようになり、特別高圧電力・高圧電力の需要家は電力の使用状況やニーズに合った電力会社を自由に選べるようになりました。

2016年4月に電気事業の区分が変更

2016年3月以前は、日本では以下のような事業者区分で発電から小売までが行われていました。

電力小売全面自由化前の電力供給システム(2016年3月まで)

部門事業者区分
発電・一般電気事業者
・IPP
・その他の発電事業者・PPS
送配電・一般電気事業者
小売・一般電気事業者PPS

2016年4月の電力小売全面自由化以降は、以下のような事業者区分に変更になっています。

電力小売全面自由化後の電力供給システム(2016年4月以降)

部門事業者区分
発電・発電事業者
・一定規模未満の発電設備所有者
送配電・送配電事業者
小売・小売電気事業者

一般電気事業者やIPP、PPSといった区分はなくなり、代わりに発電事業者、小売電気事業者というシンプルなくくりになっています。

また2020年には送配電部門の法的分離が実施され、送配電事業者が発電事業や小売事業を行うことが原則禁じられるようになり、あくまでも中立の立場として全ての発電事業者・小売電気事業者へ公平に送配電網を提供することが定められました。

2022年には「配電事業制度」がスタートし、特定区域における送配電事業者の配電網を新たな事業者が運用できるようになりました。しかし、許可されているのは既存の配電網を譲渡・貸与したり、運用ライセンスを解放したりするのみで、送配電事業者として新規参入することはできません。

2024年現在、企業が新規参入できるのは、原則、発電事業者と小売電気事業者のみとなります。

発電事業者になるには?

ここからは電気事業に新規参入する方法の一つである、発電事業者になる方法をご紹介します。発電事業者になるには、以下の要件を満たした上で、経済産業省に届け出を出す必要があります。

  • 小売電気事業者や一般送配電事業者などに供給する電力の合計が、1万kW以上あること
  • 所有している発電設備の出力が、1,000kW以上であること
  • 出力の値(kW)に占める、託送契約上の同時最大受電電力(自己託送を除く)の割合が5割を超えること(出力が10万kWを超える場合は、託送契約上の同時最大受電電力(自己託送を除く)の割合が1割を超えること)
  • 年間の逆潮流量(電力量/自己託送を除く)が5割を超えると見込まれること(出力が10万kWを超える場合は、年間の逆潮流量(電力量/自己託送を除く)が1割を超えること)

発電事業者になるには、自社で発電設備を所有していなければなりません。発電設備を導入するにはコストも時間もかかるため、資本力のある企業でなければ参入ハードルが高いという課題があります。

※資源エネルギー庁.「発電事業について」.https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/004/pdf/hatsuden.pdf ,(2024-12-09).

小売電気事業者になるには?

電気事業に新規参入するもう一つの方法である、小売電気事業者になる方法もご紹介します。小売電気事業者になるには、以下の要件を満たした上で、経済産業大臣の登録を受ける必要があります。

  • 小売の対象となる区分を選択し、その区分に合う事業計画を立てること
  • 「電力広域的運営推進機関」に加入すること
  • 資源エネルギー庁へ各種書類の提出がされていること
  • 電気事業法「第二条の五」に記載されている、登録拒否要件に該当しないこと

電力小売全面自由化以降、小売電気事業に参入する企業は増加傾向にありました。しかし2021年度をピークに、新規参入する企業は減少傾向にあります。また小売電気事業に参入したものの、ロシアのウクライナ侵攻や円安などの影響による燃料価格の高騰や電気の市場価格の高騰により電力調達コストが増大し、事業撤退や倒産、廃業に追い込まれている企業も多く見受けられます。

また2024年からは、4年後の供給力を取引する「容量市場」における実際の取引が始まりました。小売電気事業者・一般送配電事業者・配電事業者は、発電設備の維持や新設のために容量拠出金を支払う必要があります。自社の発電設備を所有している小売電気事業者であれば、容量拠出金を支払うだけではなく受け取ることもできますが、発電設備を所有していない事業者は容量拠出金がそのまま負担となってしまうでしょう。

上記を踏まえると、小売電気事業への参入後、事業撤退や倒産、廃業のリスクを減らすためには、以下の条件を満たしていることが望ましいです。

  • 自社で発電設備を所有している
  • 資本力がある
  • ノウハウや実績のあるエリア電力会社とアライアンスを組めている

しかし、上記の条件に当てはまる企業はそう多くはないでしょう。参入ハードルの高い企業向けに、リスクを低減して小売電気事業に参入する方法を4つご紹介します。

事業形態概要契約形態収益性取り扱い難易度
取次・小売電気事業者が調達する電気を、取次店が自社の名義で需要家へ販売
※供給元の明示が必須
・小売電気事業者との取次契約にのっとった料金プランで営業活動を行う
・小売電気事業者と取次店が取次契約を締結する
・取次店と需要家が小売供給契約を締結する
代理・小売電気事業者が調達する電気を、小売電気事業者のブランド、もしくは、代理店のオリジナルブランドや料金メニューで需要家へ販売(代理契約あり)
・小売電気事業者と需要家が小売供給契約を締結する
・小売電気事業者と需要家が小売供給契約を締結する
媒介・仲介役として小売電気事業者と需要家が小売供給契約を締結するための橋渡しを行う(代理契約なし)・小売電気事業者と需要家が小売供給契約を締結する
ビジネスマッチング・電力会社の乗り換えに興味のある需要家を小売電気事業者に紹介するのみで、PRや商品説明などは行わない・小売電気事業者と需要家が小売供給契約を締結する

リスクを低減して小売電気事業に新規参入するなら、4つの中でも取り扱い難易度が高くなく、収益性もある「代理」「媒介」がおすすめです。それぞれの形態について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。


※経済産業省 資源エネルギー庁.「小売電気事業の登録申請・届出」.https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/entry/ ,(2024-12-09).

※e-Gov 法令検索.「電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)」.https://laws.e-gov.go.jp/law/339AC0000000170 ,(2024-12-09).

伊藤忠エネクスの電力媒介サービス

伊藤忠エネクスは小売電気事業者または他小売電気事業者の取次事業者として、媒介店を募集しています。媒介店には、伊藤忠エネクスと需要家の仲介役として、サービス説明や見積もり、プランの提案、重要事項の説明などを行っていただきます。媒介店が行うのは営業活動がメインとなり、請求業務は基本的に伊藤忠エネクスが担当します。媒介店は仕入れのリスクを負うことなく、電力事業を始めることが可能です。

伊藤忠エネクスの電力媒介サービス

03-4233-8041 平日9:00〜17:30

まとめ

IPPは、電気事業法が改正された1995年4月から2016年3月まで、自社で発電した電力を一般電気事業者に販売していた事業者です。またPPSは、2000年3月以降に電力小売事業に参入した事業者を指します。

2016年4月以降は日本の電力供給システムが大きく変わり、IPPやPPSといった事業者区分はなくなりました。また電力小売が全面自由化されたので、低圧も含めて全ての契約区分の需要家が、電気の使用状況やニーズに合わせて自由に電力会社や料金プランを選べるようになりました。

多くの企業が新電力として小売電気事業に参入したことで電力市場は活性化しましたが、近年は燃料価格や市場価格の高騰によって電力調達コストが増大し、事業撤退や倒産、廃業を余儀なくされる小売電気事業者も少なくありません。

なるべくリスクを抑えて電力事業へ新規参入したいのなら、伊藤忠エネクスの媒介店となるのがおすすめです。媒介店からの紹介により契約締結した需要家の使用電力量に応じて手数料を獲得することができるので、媒介店は安定した収益を見込むことができます。「これから電力ビジネスに新規参入したい」「安定した収益を得られる事業を始めたい」とお考えの企業の担当者の方は、お気軽に伊藤忠エネクスにお問い合わせください。

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