毎月の電気料金に反映される「燃料費調整額」と「市場価格調整額」は、関西電力エリアで高圧・特別高圧の契約を持つ法人にとって、使用電力量や市場動向によっては年間で大きなコスト差につながる要因です。
関西電力の法人向け料金は、2024年4月の制度改定で、燃料費調整と市場価格調整の「2本立て構造」に移行しました。燃料費調整の基準単価は高圧0.106円/kWh、特別高圧0.105円/kWhで、2025年4月には市場価格調整の算定期間が3か月平均から1か月平均へ見直されています。
本記事では、この2本立て構造の計算式とモデルケース試算、そして関西電力エリアにおける市場価格調整の見方まで、法人の電力コスト管理に必要な情報を解説します。
※本記事は2026年3月時点の情報です。

目次
関西電力の高圧・特別高圧向け電気料金には、2024年4月以降、「燃料費調整制度」と「市場価格調整制度」の2つの調整制度が適用されています。
燃料費調整制度は、原油・LNG(液化天然ガス)・石炭の輸入価格変動を電気料金に反映する仕組みです。貿易統計に基づく3か月間の平均燃料価格と、基準燃料価格(47,000円/kl)との差額に応じて、毎月の電気料金が調整されます。平均燃料価格が基準燃料価格を下回る場合は料金が減額(マイナス調整)、上回る場合は増額(プラス調整)となります。
※参考:関西電力「燃料費調整制度について(電気)」
https://biz.kepco.jp/elec/seido/nencho/
市場価格調整制度は、2024年4月に導入された制度で、JEPX(日本卸電力取引所)スポット市場の市場価格変動の一部を電気料金に反映する仕組みです。従来は電力量料金単価に含まれていた市場調達コストの変動分を、独立した調整項目として分けて反映する考え方です。平均市場価格と基準市場価格(10.82円/kWh)との差額に調整係数を掛けて算定されます。
なお、本記事のモデルケースは高圧需要家の一例として設定したものであり、実際の料金メニューや契約条件は受電電圧・契約電力・用途等によって異なります。
※参考:関西電力「市場価格調整制度について(電気)」
https://biz.kepco.jp/elec/seido/market_adjustment/
燃料費調整単価と市場価格調整単価は、それぞれ異なる算定式で毎月更新されます。
燃料費調整単価は、以下の式で算定されます。
燃料費調整単価 =(平均燃料価格 − 基準燃料価格) × 基準単価 ÷ 1,000
| 項目 | 高圧 | 特別高圧 |
| 基準燃料価格 | 47,000円/kl | 47,000円/kl |
| 基準単価 | 0.106円/kWh | 0.105円/kWh |
平均燃料価格は、原油・LNG・石炭の貿易統計価格を原油換算して算定されます。算定に使用する期間は、請求月の3〜5か月前の3か月間です。
市場価格調整単価は、以下の式で算定されます。
市場価格調整単価 =(平均市場価格 − 基準市場価格) × 調整係数
| 項目 | 高圧 | 特別高圧 |
| 基準市場価格 | 10.82円/kWh | 10.82円/kWh |
| 調整係数(上限値) | 0.499 | 0.493 |
平均市場価格は、JEPXスポット市場の価格を基に算定されます。2025年4月の見直しにより、平均市場価格の算定期間は短縮され、より足元の市場動向が反映されやすい仕組みとなりました。なお、調整係数は2024年4月の制度導入時は固定値でしたが、2025年4月の見直しで月毎設定に変更されています。上記の0.499・0.493は上限値であり、実際の調整係数は月によって異なります。
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※参考:関西電力「市場価格調整制度について(電気)」
https://biz.kepco.jp/elec/seido/market_adjustment/
高圧・特別高圧において、2025年4月分の燃料費調整を例にとると、平均燃料価格は44,100円/kl(算定期間:2024年11月〜2025年1月)でした。
※参考:関西電力「2025年4月分電気料金の燃料費調整等」
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250227_2j.pdf
モデルケース試算―年間でいくら変わるのか
燃料費調整と市場価格調整が法人の電気料金に与える影響を、モデルケースで試算します。
| 項目 | 設定値 |
| 契約種別 | 高圧需要家の一例 |
| 契約電力 | 300kW |
| 月間使用量 | 75,000kWh |
| 基本料金単価 | 1,650円/kW(仮置き値※) |
| 想定業種 | 商業施設・工場・24時間稼働施設などの一例 |
※基本料金単価は契約条件により異なります。本試算は燃料費等調整額の変動影響に焦点を当てています。
燃料費調整単価は毎月変動します。たとえば、燃料費調整単価が仮に+1.00円/kWhとなる月を想定すると、月間75,000kWhの事業所では月7万5,000円、年間換算で約90万円の増額要因となります。
逆に、マイナス方向に振れれば、その分だけ料金減額要因となります。実際の影響額は、毎月の関西電力公表単価で確認する必要があります。
市場価格調整は、JEPXスポット価格の変動に応じて、燃料費調整とは別のコスト増減要因になります。
仮に平均市場価格が基準市場価格(10.82円/kWh)を2円/kWh下回る月で、調整係数を上限値0.499として試算すると、
逆に、平均市場価格が基準市場価格を3円/kWh上回る月で、調整係数を上限値0.499として試算すると、
※調整係数0.499は上限値です。実際の調整係数は月ごとに異なるため、影響額は上記より小さくなる場合があります。
このように、市場価格調整は市場価格の動きによって、月間で比較的大きな変動要因となり得ます。
2025年度冬の国の電気・ガス料金支援では、高圧は2026年1月使用分・2月使用分が2.3円/kWh、3月使用分が0.8円/kWhの支援対象です。一方、特別高圧は対象外です。
この支援が終了した後は、同じ使用量でもその分の負担増要因になります。たとえば、月間75,000kWhの高圧需要家では、2.3円/kWhの支援終了時で月172,500円、0.8円/kWhの支援終了時で月60,000円の差となります。
※試算は支援単価分のみを単純計算したモデルケースです。実際の電気料金は、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・市場価格調整額・再エネ賦課金等を含む総額で確認してください。
※参考:電気・都市ガスをご利用するみなさまへ「電気・ガス料金支援」
https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/
※参考:経済産業省「電気・都市ガス料金の値引きを行うことができる特例認可・承認を行いました」
https://www.meti.go.jp/press/2025/12/20251216005/20251216005.html
関西エリアの市場価格は、需給状況、再生可能エネルギーの出力、原子力発電所の稼働状況など、複数の要因の影響を受けます。関西電力では、高浜1〜4号機、大飯3・4号機、美浜3号機に関する公開情報を公表しており、これらの稼働状況は関西エリアの供給構造を考えるうえで重要な材料です。
一方で、市場価格は季節や時間帯によって変動するため、料金影響をみる際は月別・時間帯別の変動もあわせて確認する必要があります。
| 見るポイント | 着眼点 |
| 需給状況 | 夏季・冬季は需給逼迫で価格が上がりやすいことがある |
| 再エネ出力 | 昼間の太陽光出力が高い時期は価格が下がる時間帯が出やすい |
| 原子力の稼働状況 | 供給構造を考えるうえで継続的に確認したい要素 |
| 自社の使用パターン | 昼間偏重か、24時間一定負荷かで影響の受け方が異なる |
このため、商業施設のように昼間の使用量が多い需要家と、24時間一定負荷の需要家とでは、市場価格調整の受け方が異なる場合があります。制度そのものだけでなく、自社の30分別・時間帯別の使用実態とあわせて確認することが重要です。
※参考:関西電力「公開情報|原子力発電について」
https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/info/index.html

関西電力の高圧・特別高圧向け料金制度は、2024年以降に2度の大きな見直しが行われています。
2024年4月の改定では、以下の3つが同時に実施されました。
| 項目 | 変更前 | 変更後 |
| 基準燃料価格 | 27,100円/kl | 47,000円/kl |
| 燃料費調整基準単価(高圧) | 0.158円/kWh | 0.106円/kWh |
| 市場価格調整制度 | なし | 新設(基準市場価格10.82円/kWh) |
ここで押さえるべきポイントは、基準燃料価格の引き上げだけを切り取って評価しないことです。関西電力の公表資料では、2024年4月の見直しは、燃料費調整の前提諸元の見直しとあわせて、電力量料金単価の見直し、市場価格調整の導入が行われています。つまり、従来は料金単価の中に含まれていた変動要素を、より明確に分けて反映する構造へ見直したと理解する方が実態に近いです。
2025年4月の見直しでは、市場価格調整制度に2つの変更が加えられました。
| 項目 | 変更前 | 変更後 |
| 算定期間 | 3〜5か月前の3か月間 | 21日〜翌月20日の1か月間 |
| 調整係数 | 固定値(高圧0.292) | 月毎設定(上限:高圧0.499) |
算定期間の短縮は、JEPXスポット価格の変動がより速やかに電気料金に反映されることを意味します。関西電力はこの変更を関西・九州エリアに先駆けて実施しており、2025年4月の見直しでは、市場価格調整について、調整係数の月毎設定への見直しや、平均市場価格の算定期間の見直しが実施されています。これにより、市場価格の動きが従来より速やかに反映されやすい仕組みとなりました。
※参考:関西電力「特別高圧・高圧分野の標準メニューの見直しについて」
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231205_1j.pdf
※参考:関西電力「特別高圧・高圧分野における市場価格調整の見直しについて」
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2024/pdf/20241115_1j.pdf
2026年に注視すべきポイントは主に以下の3つです。
特に、LNG・原油などの価格変動は燃料費調整に一定の時間差をもって反映されるため、足元のニュースだけでなく、数か月後の料金影響まで見ておくことが重要です。

平均燃料価格が基準燃料価格(47,000円/kl)を下回っているためです。2024年4月の制度改定で基準燃料価格が47,000円/klに引き上げられた結果、現在の燃料価格水準ではマイナス調整(料金減額)が出やすい構造になっています。ただし、これは電力量料金単価の引き下げとセットの改定であり、「マイナス調整が出ている=電気代が安くなった」とは限りません。
2025年4月より、市場価格調整の算定期間が3か月平均から1か月(21日〜翌月20日)に短縮されました。これにより、JEPXスポット価格の変動が電気料金に反映される速度が上がります。メリットとしてはスポット価格が下落した際の料金減額が早く反映される点、一方で急騰時の増額も従来より早く反映される点に注意が必要です。
2026年1〜3月の「電気・ガス料金支援」において、特別高圧は対象外です。高圧(500kW未満)では1〜2月分が2.3円/kWh、3月分が0.8円/kWhの値引きが適用されていますが、特別高圧にはこの支援が適用されません。特別高圧の事業所では、燃料費調整額・市場価格調整額がそのまま電気料金に反映されます。
新電力の料金にも、多くの場合は燃料費調整に相当する仕組みが含まれています。ただし、基準燃料価格、基準単価、市場価格調整の有無や算定方法は各社によって異なります。特に市場連動型プランでは、JEPXスポット価格がより直接的に反映される場合があるため、関西電力の標準メニューとはリスク特性が異なります。
※参考:関西電力「燃料費調整制度について(電気)」
https://biz.kepco.jp/elec/seido/nencho/
※参考:関西電力「市場価格調整制度について(電気)」
https://biz.kepco.jp/elec/seido/market_adjustment/
まとめ
関西電力の高圧・特別高圧向け燃料費等調整制度のポイントを整理します。

以下に当てはまる場合は、電力コストの見直しを検討する時期です。
伊藤忠エネクスの「TERASELでんき for Biz.」では、法人の電力使用パターンに応じた料金プランを提案しています。関西エリアの電力市場特性を踏まえた最適な電力調達の検討材料として、まずは現在の電力契約書と直近12か月分の検針票をお手元にご用意の上、お気軽にお問い合わせください。

※掲載内容は2026年3月時点の情報です。最新の料金・制度については各関係機関にお問い合わせください。
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