クリーニング業の電気代は、業態や設備構成、稼働時間によって大きく異なります。クリーニング業界は「カジュアル化・資材高・節約志向」の三重苦に直面しています。帝国データバンクの調査では、2025年1-9月にクリーニング店の倒産・休廃業解散は合計52件にのぼり、2024年度業績でも「減益」が3割超、「赤字」が2割を占めました。売上が伸びにくい環境だからこそ、固定費の見直しは経営改善の重要な論点になります。中でも電気代は、設備構成や操業条件によって負担差が大きい費目です。
本記事では、一般クリーニング店とリネンサプライ工場の電力使用パターンを分離して分析し、それぞれに適した削減施策と優先順位を整理します。
この記事でわかること
※参考:帝国データバンク「クリーニング店の倒産・休廃業解散動向(2025年1-9月)」
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20251004-cleaning25y1-9/
※本記事は2026年6月時点の情報です。

目次
クリーニング業の光熱費は、「電気」と「蒸気(ガス・重油ボイラー由来)」の2系統で構成されるケースが一般的です。蒸気ボイラーの燃料費は別テーマとなるため、本記事では電力コストに絞って解説します。電気ボイラーを採用している工場では、ボイラーの電力消費も本記事の対象です。
一般クリーニング店(自社工場を持つ店舗型)では、電力を消費する主な設備として、洗濯機のモーター、コンプレッサー、空調設備、照明などが挙げられます。蒸気式のプレス機・仕上げ機はガスまたは重油ボイラーから蒸気を得るケースが多い一方、電気式のプレス機を導入している店舗では、その分だけ電力消費が増えます。
稼働は朝から夕方にかけての日中が中心で、受付店舗の営業に合わせて平日の稼働比率が高い傾向があります。また、ホームクリーニング需要は春秋の衣替え時期に集中しやすく、一般クリーニング店では春(4〜6月)と秋(9〜10月)に処理量が増えやすいとされています。
※参考:信金中央金庫 地域・中小企業研究所「クリーニング店」
https://www.ginken.jp/denshi/680/680/pdf/554.pdf
※参考:厚生労働省「クリーニング業の実態と経営改善の方策(抄)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001353961.pdf
リネンサプライ工場では、ホテルや病院向けのシーツ・タオル・ユニフォームなどを大量処理するため、設備の規模と稼働時間が一般クリーニング店とは大きく異なります。主な設備としては、連続式洗濯機、大型洗濯機・乾燥機、脱水機、コンプレッサー、ロールアイロナー、フィーダー/フォルダー、トンネルフィニッシャーなどが挙げられます。
稼働は早朝から夕方までの長時間に及ぶ工場が多く、一般クリーニング店より操業時間が長くなりやすい傾向があります。ホテルや病院向けリネンは継続的な処理が必要なため、一般クリーニング店に比べると季節変動は小さく、年間を通じて比較的平準化しやすい業態です。
※参考:アイナックス稲本株式会社「製品情報」
https://www.inax-corp.co.jp/products/
※参考:株式会社東京洗染機械製作所「トンネル仕上げ機 | リネンサプライ機器」
https://www.tosen.com/product/linensupply/tunnel/
| 項目 | 一般クリーニング店 | リネンサプライ工場 |
| 主な電力消費源 | 洗濯機モーター・コンプレッサー・空調 | 連続洗濯機・大型乾燥機駆動・コンプレッサー |
| 稼働時間帯 | 日中中心 | 早朝〜夕方の長時間操業になりやすい |
| 繁忙曜日 | 平日中心 | 平日中心(土日稼働の工場あり) |
| 繁忙季節 | 春・秋(衣替えシーズン) | 一般クリーニング店より季節変動が小さい傾向 |
| 契約電力の目安 | 比較的小さめになりやすい(およそ50〜120kW) | より大きくなりやすい(およそ150〜400kW) |
※上記は典型的な2類型での整理です。取次店と自社工場を兼ねる中規模事業所は、両方の特徴を部分的に持つため、自社の稼働パターン(稼働時間・土日稼働有無・設備構成)に基づいて判断してください。
自社の電気代が高いのか低いのかを判断するには、同規模の事業所との比較が有効です。以下に3つのモデルケースを試算します。
以下のモデルケースは仮置き単価に基づく概算であり、相場そのものではありません。自社の検針票の実績値で再計算した上で、相見積りの基準としてください。
| モデルケース | 契約電力 | 年間使用量 | 年間電気代(概算の一例) |
| 一般クリーニング店(自社工場あり) | 60kW | 18万kWh | 約515万円 |
| 中規模クリーニング工場(取次+自社工場) | 120kW | 40万kWh | 約1,120万円 |
| リネンサプライ工場 | 250kW | 90万kWh | 約2,490万円 |
※モデルケース試算の前提:基本料金単価1,650円/kW・月(仮置き)、従量料金単価23円/kWh(仮置き)、力率割引85%適用。年間電気代=基本料金(契約電力×単価×0.85×12か月)+従量料金(年間使用量×単価)の概算。再エネ賦課金・燃料費調整額は含んでいません(年度・月ごとに変動するため、最新値は公式サイトで確認してください)。実際の電気代は契約条件・使用パターンにより異なります。基本料金単価は、試算用の仮置きとして1,650円/kW・月を設定しています。従量料金単価は、燃料費調整額・再エネ賦課金を除いた試算用の仮置きとして23円/kWhを設定しています。自社の検針票に記載の単価と照合し、差異がある場合はそちらの値で再計算してください。
このモデルケース試算では、従量料金が年間電気代の7〜8割を占める構造になっています。高圧小口の料金設計では、使用量が多い事業所ほど従量料金の比率が高くなりやすいため、「使う量を減らす」だけでなく「単価を見直す」アプローチも削減効果に直結します。
たとえば、従量料金単価を1円/kWh引き下げられた場合の年間削減効果は以下のとおりです。
| モデルケース | 年間使用量 | 単価1円/kWh引下げ時の年間削減額 |
| 一般クリーニング店 | 18万kWh | 18万円 |
| 中規模クリーニング工場 | 40万kWh | 40万円 |
| リネンサプライ工場 | 90万kWh | 90万円 |
この試算は「単価が1円下がったら」という単純化したモデルですが、年間使用量が大きい事業所ほど単価見直しのインパクトが大きいことがわかります。
電気代の削減施策は、大きく3つに分類できます。①使う量を減らす(省エネ設備更新・運転最適化)、②ピーク電力を下げる(デマンド管理で基本料金を削減)、③調達単価を見直す(電力プランの切替・交渉)です。
| 施策 | 分類 | 初期費用 | 即効性 | 削減インパクト | 投資回収の目安 |
| 電力プランの見直し | ③調達単価 | 小 | 高(切替後すぐ) | 中〜大 | 即時 |
| デマンド管理の導入 | ②ピーク電力 | 小〜中 | 中(運用開始後) | 中 | 個別試算 |
| LED照明への更新 | ①使用量 | 中 | 高(交換後すぐ) | 小〜中 | 個別試算 |
| 高効率空調への更新 | ①使用量 | 大 | 中(導入後) | 中 | 個別試算 |
| インバータ制御の導入 | ①使用量 | 中〜大 | 中(導入後) | 中 | 個別試算 |
※初期費用は定性的な目安です。具体的な金額は設備規模・メーカー・工事条件により個別試算が必要です。
LED照明への更新は、工場内の蛍光灯・水銀灯などを対象とする場合に、比較的効果を把握しやすい施策です。照明は工場全体の消費電力に占める比率としては主設備ほど大きくない場合がありますが、交換しやすく、投資回収を比較的検討しやすいのが特徴です。空調については、経年劣化した機器を最新の高効率機種に入れ替えることで消費電力の低減が期待できます。ただし、工場規模の空調設備は投資額も大きくなるため、投資回収の見通しを個別に試算する必要があります。
※参考:環境省「1 LED照明器具の導入」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_215_shift.pdf
※参考:資源エネルギー庁「改修ZEB事例集」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/support/pdf/zeb_example.pdf
高圧契約では、契約電力が当月を含む直近12か月の最大需要電力をもとに決まる料金設計が採用されているメニューがあります。最大需要電力(デマンド値)は、30分間ごとの平均使用電力のうち、その月で最も大きい値です。複数の大型設備が同時に起動するとデマンド値が上がり、基本料金が高止まりしやすくなります。洗濯機と乾燥機の起動タイミングをずらす、コンプレッサーの運転スケジュールを調整するなど、設備の同時稼働を避ける運用ルールの導入が有効です。デマンドコントローラーを設置すれば、設定値を超えそうな場合に負荷制御を行う運用も検討できます。
電力の調達先やプランを見直すことは、初期費用がほぼかからず、比較的着手しやすい施策です。契約条件や使用パターンによっては、電力会社や料金メニューの見直しにより削減余地が生じる場合があります。見直しにあたっては、検針票で現在の契約電力(kW)・月間使用量(kWh)・従量料金単価を確認した上で、複数社から見積もりを取得し比較することが第一歩です。

前章で挙げた「調達単価の見直し」の選択肢の中でも、近年注目されているのが市場連動型プランです。市場連動型プランとは、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格に連動して電力単価が30分ごとに変動する料金プランです。固定単価型と比べて、安い時間帯に多く使える事業者ではコスト低減につながる可能性があります。
一般クリーニング店は日中(8〜17時)に稼働が集中します。JEPXの市場価格は、太陽光発電の出力が高まる昼間に安くなりやすく、朝夕や夜間は相対的に高くなりやすい傾向があります。このため、一般クリーニング店の稼働パターンは昼間の安値帯と重なりやすく、市場連動型プランが有利に働く可能性があります。
加えて、春(4〜5月)は、年によってJEPXの市場価格が比較的低下しやすい局面があります。衣替え需要で電力使用量が増える時期とこうした価格局面が重なる場合、一般クリーニング店にとってプラスに働く可能性があります。
リネンサプライ工場は早朝から夕方まで長時間稼働するケースが多く、午前中から昼にかけては安値傾向の恩恵を受けやすい一方、夕方にかかる時間帯は注意が必要です。特に太陽光出力が低下する時間帯は、市場価格が相対的に上がりやすい傾向があります。
また、土日に価格が相対的に落ち着く局面では、土日稼働が有利に働く可能性があります。ただし、年間を通じて安定的に稼働するため、夏季など価格上昇局面の影響を受けやすい点には留意が必要です。
クリーニング業固有のリスクとして、夏季は空調負荷が高まる一方で、市場価格も需給次第で上昇しやすい時期があります。ただし、一般クリーニング店は夏季が閑散期となる場合があり、使用量自体が抑えられるケースもあります。リネンサプライ工場は季節変動が比較的小さく、年間を通じて稼働するため、夏季の高値時間帯の影響を受けやすい点に注意が必要です。このように、同じクリーニング業でも業態によって市場連動型プランのリスク構造は異なります。
| 判定軸 | 一般クリーニング店 | リネンサプライ工場 |
| 時間帯(昼間安値との合致) | 合致しやすい | 午前〜昼は合致しやすいが、夕方は注意 |
| 曜日(土日安値との合致) | 平日中心のため恩恵は限定的 | 土日稼働がある場合は有利に働く局面あり |
| 季節(春季安値との合致) | 春の繁忙期と合致 | 年間安定稼働のため季節効果は中程度 |
| 総合判定 | 有利に働く可能性がある(30分値データでの検証推奨) | 個別検証が必要(稼働パターンにより大きく異なる) |
※上記は市場価格の過去の傾向に基づく判定であり、将来の価格を保証するものではありません。自社の使用パターンに基づくシミュレーションで個別に確認する必要があります。
※参考:一般社団法人日本卸電力取引所「スポット市場 | 市場情報 | 電力取引」
https://www.jepx.jp/electricpower/market-data/spot/

市場連動型プランのリスクと判断基準
市場連動型プランにはメリットだけでなく、市場価格の急騰リスクがあります。2021年1月には大寒波とLNG供給不足が重なり、JEPXのシステムプライスが最高251円/kWh、1月13日には1日平均154.6円/kWhまで上昇しました。
また、2022年には国際情勢や燃料制約の影響を受け、高値局面が続いた時期もありました。足元では以前より価格が落ち着いている時期もありますが、市場価格は需給や燃料動向の影響を受けて変動します。
一部の市場連動型プランでは価格上限(キャップ)が設けられている場合がありますが、すべてのプランに共通するわけではないため、契約前に個別の確認が必要です。
※参考:経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会「今冬のスポット価格高騰に関する 電力・ガス取引監視等委員会における分析について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/032_03_00.pdf
※参考:経済産業省「電力システムを取り巻く現状」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/069_03_00.pdf
以下の項目に多く当てはまるほど、市場連動型プランとの親和性が高い傾向があります。
最終的な判断は、自社の過去12か月分の使用データに基づくシミュレーションで確認することを推奨します。

Q. クリーニング工場の電気代は月いくらが目安ですか?
契約電力と月間使用量によって大きく異なります。本記事のモデルケース試算(基本料金単価1,650円/kW・月、従量料金単価23円/kWhの仮置き)では、契約電力60kWの一般クリーニング店で月約43万円、契約電力250kWのリネンサプライ工場で月約208万円が目安です。まずは自社の検針票で契約電力(kW)・月間使用量(kWh)・現在の従量料金単価を確認し、本記事の試算と比較してみてください。
Q. 電力会社を切り替えると、停電リスクが高くなりますか?
電力の供給品質そのものは変わりません。小売電力会社を切り替えても、送配電網は従来どおり一般送配電事業者が管理・運用します。万が一、契約先の小売電力会社と契約継続が難しくなった場合でも、高圧・特別高圧では一般送配電事業者による最終保障供給の制度があります。ただし、最終保障供給の料金条件は通常の契約と異なる場合があるため、切替先の経営安定性も確認しておくと安心です。
Q. 高圧契約の切替にはどのくらいの期間がかかりますか?
高圧(50kW以上500kW未満の実量制)の切替は、契約内容の確認や検針日調整などが必要になるため、一定の準備期間を要します。現在の契約内容、新旧電力会社間の手続き、検針日や計量条件によって所要日数は異なります。違約金・解約条件は現在の契約内容に依存するため、切替を検討する際は現在の契約書で解約条項を確認してください。
Q. 市場連動型プランに価格上限(キャップ)はありますか?
一部のプランでは上限価格(キャップ)が設定されている場合がありますが、すべてのプランに共通する制度ではありません。キャップの有無・水準・適用条件はプランごとに異なります。契約前に「キャップの有無と条件」「過去の高騰時にどのような対応がなされたか」を確認することを推奨します。
クリーニング業の電気代は、蒸気ボイラーとは別に、電力コストだけでも無視できない固定費です。コスト削減の第一歩は、自社の電力消費構造を正確に把握し、業態に合った施策を選ぶことです。
一般クリーニング店:
日中稼働が中心のため、市場連動型プランの昼間安値傾向と重なりやすく、調達単価の見直しに検討余地があります。
リネンサプライ工場:
使用量が大きいため単価削減のインパクトが大きい一方、夕方稼働のリスクを含めたシミュレーションが必要です
共通:
LED照明やデマンド管理など比較的着手しやすい施策と、中長期的な調達戦略の両輪で取り組むことが効果的です。
以下に当てはまる場合は、電力調達の見直しを早めに検討することを推奨します。
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見積り依頼時に用意するもの
電力調達の見直しは、設備更新と比べると初期費用を抑えて着手しやすい施策です。電気代に課題を感じている事業者は、まず自社の使用データに基づいたシミュレーションで削減効果を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
伊藤忠エネクスが提供する「TERASELでんき for Biz.」 は、クリーニング業の電力コスト削減を無料で相談できる法人向け高圧電力サービスです。現在の電気料金明細をお手元にご準備の上、お気軽にお問い合わせください。

※掲載内容は2026年3月時点の情報です。最新の料金・制度については各関係機関にお問い合わせください。
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