この記事でわかること

九州電力管内で高圧・特別高圧の電力契約を結んでいる法人の担当者にとって、毎月の請求書に記載される「燃料費等調整額」の変動は、電気料金の見通しを難しくする要因のひとつです。九州電力では、2025年4月以降の契約更新等に合わせて、高圧以上の電気料金単価や市場価格調整の見直しを順次実施しています。市場価格調整のバンド方式(一定範囲内では調整しない方式)は見直され、基準市場価格との差を毎月反映する方式に変更されました。基準燃料価格も46,100円/kLとなっており、調整額の見方は従来より重要になっています。
本記事では、燃料費等調整額を構成する3つの項目の計算ロジックから、九州エリアの需給特性が市場価格調整に与える影響、モデルケースによる試算まで、実務に必要な情報を整理します。
※参考:九州電力株式会社「高圧以上お客さまの電気料金の見直し内容について」
https://www.kyuden.co.jp/business/reception_standardmenu.html
※参考:九州電力株式会社「電気のご案内」
https://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0806/2190/M6jt9rz3.pdf
※本記事は2026年3月時点の情報です。
目次
九州電力の高圧・特別高圧向け電気料金に含まれる「燃料費等調整額」は、燃料費調整額・市場価格調整額・離島ユニバーサルサービス調整額の3つの項目で構成されています。請求書ではまとめて表示されることもありますが、コスト変動を把握するには、それぞれを分けて見ることが重要です。
燃料費調整額は、火力発電に使う原油・液化天然ガス(LNG)・石炭の価格変動を電気料金に反映する仕組みです。3か月間の貿易統計価格をもとに平均燃料価格(原油換算)を算出し、基準燃料価格46,100円/kLとの差額に応じて調整単価が決まります。燃料価格実績の反映にはタイムラグがあり、たとえば2025年9月~11月の平均燃料価格は2026年2月分料金に反映されます。平均燃料価格の算定には、原油α=0.0028、LNGβ=0.1819、石炭γ=1.0863の換算係数が用いられます。燃料費調整には上限がありません。
※参考:九州電力「燃料費調整制度について」
https://www.kyuden.co.jp/business/structure/system.html
市場価格調整額の計算の仕組み
市場価格調整額は、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格の変動を反映する項目です。1か月間の平均市場価格を基準市場価格8.22円/kWhと比較し、その差額に調整係数を掛けて算定します。調整係数は高圧0.284円/kWh、特別高圧0.278円/kWhです。平均市場価格は、九州エリアの全日単価と昼間単価を、全日0.4627・昼間0.5373の係数で加重して算出します。
※参考:九州電力株式会社「高圧以上お客さまの電気料金の見直し内容について」
https://www.kyuden.co.jp/business/reception_standardmenu.html
離島ユニバーサルサービス調整額は、九州管内の離島に電力を供給するための追加コストを、託送料金を通じて本土を含む利用者全体で負担する仕組みです。離島平均燃料価格が基準値から変動した場合、その変動が調整単価に反映されます。2023年4月1日以降の離島基準燃料価格は79,300円/kL、上限基準価格は119,000円/kLです。離島基準単価は高圧・特別高圧とも0.003円/kWhです。
※参考:九州電力送配電「燃料費等調整制度について(離島等供給:高圧以上)」
https://www.kyuden.co.jp/td/application/general/business/menu/adjustment-2019-08-kouatsu.html
前章で整理した3項目のうち、離島ユニバーサルサービス調整は、九州エリアならではの制度です。九州には壱岐・対馬・五島列島などの離島があり、一般送配電事業者である九州電力送配電は、ユニバーサルサービスとして本土並みの料金水準で電力を供給する義務を負っています。このため、離島供給に必要な火力燃料費の変動分は、本土・離島を含む全利用者に反映されます。
直近の高圧向け離島ユニバーサルサービス調整単価は、九州電力公表値では次のとおりです。
| 適用月 | 2025年4月見直し後高圧・特別高圧 |
| 2026年4月 | ▲0.04円/kWh |
| 2026年3月 | ▲0.03円/kWh |
| 2026年2月 | ▲0.03円/kWh |
マイナス表示は、離島平均燃料価格が基準を下回っており、電気料金の軽減方向に働いていることを示します。たとえば月間75,000kWh使用する高圧需要家では、▲0.03円/kWhなら月額約2,250円の軽減効果です。
※参考:九州電力「過去の燃料費等調整単価」
https://www.kyuden.co.jp/business/menu/adjustment-past.html
※参考:九州電力株式会社「電気のご案内」
https://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0806/2190/M6jt9rz3.pdf
ここまで見てきた3つの調整項目は、2025年4月以降の契約更新等に合わせて見直しが進められました。変更点のうち、燃料費等調整額に直結するポイントを整理します。
見直し後の燃料費調整制度では、基準燃料価格は46,100円/kLです。また、燃料費調整には上限がありません。したがって、燃料価格が大きく上昇した局面では、従来よりも調整額の上振れを受けやすくなったと見ることができます。もっとも、料金見直しは電力量料金単価全体の見直しとセットで実施されているため、基準燃料価格だけを見て有利・不利を単純比較することはできません。
市場価格調整は、見直し前は平均市場価格が6.00円以上13.00円以下の場合は調整を行わない仕組みでしたが、見直し後は、1か月間の平均市場価格が基準市場価格8.22円/kWhから変動した場合、その変動分に応じて毎月調整される仕組みに見直されました。
九州エリアは太陽光の大量導入により昼間のJEPXエリアプライスが全国最安水準まで下がる傾向があります。この構造下では、毎月調整方式により市場価格の低下がダイレクトに調整額のマイナス(値引き方向)として反映されやすくなりました。一方、冬季や曇天続きで市場価格が上昇した月は、プラス方向にも即座に反映されます。
2025年3月以前から契約している需要家は、4月以降の契約更新に合わせて順次見直し後の料金へ移行します。つまり、2026年3月時点でも「見直し前」と「見直し後」の契約が併存しうる状態です。自社がどちらに該当するかは、契約書、請求書記載の調整単価、または九州電力への確認で判別するのが確実です。

九州エリアのJEPXスポット市場価格は、昼間に低くなりやすい傾向があります。背景には、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力4基体制による供給力の存在があります。九州電力の原子力発電所の定格出力合計は414万kWです。
また、JEPXでは0.01円/kWhが最低入札価格として扱われています。九州エリアでは、再エネ出力制御が継続的に発生していることからも、昼間帯に供給が需要を上回りやすい構造がうかがえます。ただし、「いつも0.01円になる」とまでは言えず、天候・季節・需給で変動します。
※参考:資源エネルギー庁 系統ワーキンググループ資料「2024年度出力制御見通しについて」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/050_s02_08.pdf
なお、市場価格調整の平均市場価格には、全日0.4627・昼間0.5373の係数が用いられます。昼間の価格動向の影響がやや大きい設計です。
※参考:九州電力「市場価格調整制度について」
https://www.kyuden.co.jp/business/reception_standardmenu.html
燃料費等調整額が請求額にどの程度影響するかを、契約電力300kW・月間使用量75,000kWhの高圧需要家で試算します。ここでは、実際の請求に近い形で、燃料費調整・市場価格調整・離島ユニバーサルサービス調整を合算した単価を用います。なお、2026年2月~4月分は高圧向け国支援が含まれるため、支援込みの実請求ベースの数値です。
| 適用月 | 燃料費調整単価 | 市場価格調整単価 | 離島US調整単価 | 合計調整単価 | 月額影響額 |
| 2026年4月 | ▲1.78円/kWh | +0.69円/kWh | ▲0.04円/kWh | ▲1.13円/kWh | ▲84,750円 |
| 2026年3月 | ▲3.34円/kWh | +0.14円/kWh | ▲0.03円/kWh | ▲3.23円/kWh | ▲242,250円 |
| 2026年2月 | ▲3.40円/kWh | +0.41円/kWh | ▲0.03円/kWh | ▲3.02円/kWh | ▲226,500円 |
※月額影響額=合計調整単価×75,000kWh
※燃料費調整単価には、2026年2月・3月は▲2.30円/kWh、2026年4月は▲0.80円/kWhの国支援が含まれます。
この3か月平均では、月額約▲18.5万円の軽減です。ただし、これは国の支援単価を含むため、そのまま平常時の年間影響額とみなすのは適切ではありません。支援を除いた参考値で見ると、2026年4月は▲0.33円/kWh、2026年3月は▲0.93円/kWh、2026年2月は▲0.72円/kWh相当で、月間75,000kWhなら軽減幅はそれぞれ約2.5万円、約7.0万円、約5.4万円です。
燃料費等調整額が請求額にどの程度影響するかを、契約電力300kW・月間使用量75,000kWhの高圧需要家で試算します。ここでは、実際の請求に近い形で、燃料費調整・市場価格調整・離島ユニバーサルサービス調整を合算した単価を用います。なお、2026年2月~4月分は高圧向け国支援が含まれるため、支援込みの実請求ベースの数値です。
| 適用月 | 燃料費調整単価 | 市場価格調整単価 | 離島US調整単価 | 合計調整単価 | 月額影響額 |
| 2026年4月 | ▲1.78円/kWh | +0.69円/kWh | ▲0.04円/kWh | ▲1.13円/kWh | ▲84,750円 |
| 2026年3月 | ▲3.34円/kWh | +0.14円/kWh | ▲0.03円/kWh | ▲3.23円/kWh | ▲242,250円 |
| 2026年2月 | ▲3.40円/kWh | +0.41円/kWh | ▲0.03円/kWh | ▲3.02円/kWh | ▲226,500円 |
※月額影響額=合計調整単価×75,000kWh
※燃料費調整単価には、2026年2月・3月は▲2.30円/kWh、2026年4月は▲0.80円/kWhの国支援が含まれます。
この3か月平均では、月額約▲18.5万円の軽減です。ただし、これは国の支援単価を含むため、そのまま平常時の年間影響額とみなすのは適切ではありません。支援を除いた参考値で見ると、2026年4月は▲0.33円/kWh、2026年3月は▲0.93円/kWh、2026年2月は▲0.72円/kWh相当で、月間75,000kWhなら軽減幅はそれぞれ約2.5万円、約7.0万円、約5.4万円です。
弊社供給中の食品加工工場のエネルギー担当者は「燃料費調整がマイナスの時期に安心していたが、原油価格の急変で翌月からプラスに転じた経験がある。年間の平均で考えないと判断を誤る」と話しています。

自社の調整額影響を把握するには、毎月の検針票や請求明細で次の3点を確認してください。
1.契約電力(kW)
基本料金の基礎です。
2.月間使用電力量(kWh)
調整額は単価×使用量で決まります。
3.燃料費等調整額の内訳
可能なら、燃料費調整・市場価格調整・離島US調整の内訳を確認します。
九州電力は、燃料費調整単価・市場価格調整単価・離島ユニバーサルサービス調整単価をホームページ等で公表しています。請求書と照合すると、変動要因を追いやすくなります。
※参考:九州電力「過去の燃料費等調整単価
https://www.kyuden.co.jp/business/menu/adjustment-past.html

Q1. 見直し前の契約と見直し後の契約で、調整単価はどのくらい違いますか?
2026年4月分の高圧の例では、見直し後の合計調整単価は▲1.13円/kWh、見直し前は▲1.82円/kWhです。主な差は市場価格調整の扱いで、見直し後は+0.69円/kWh、見直し前は0.00円/kWhでした。
Q2. 特別高圧の場合、国の電気・ガス料金支援は受けられますか?
2026年1月~3月使用分の電気・ガス料金支援では、電気は低圧・高圧が対象で、特別高圧は対象外です。高圧の値引き単価は2026年1月・2月使用分が2.3円/kWh、3月使用分が0.8円/kWhです。
※参考:資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/gekihen_lp/
Q3. 燃料費調整額がマイナスになることはありますか?
あります。平均燃料価格が基準燃料価格46,100円/kLを下回れば、燃料費調整単価はマイナスになり、電気料金の軽減要因になります。たとえば2026年3月分・4月分の高圧は、国支援込みでいずれもマイナスです。
Q4. 新電力に切り替えた場合、燃料費調整額の仕組みは変わりますか?
変わることがあります。新電力各社は独自の燃料費調整制度や市場連動の仕組みを採用している場合があり、基準燃料価格・係数・調整方式・上限有無は会社ごとに異なります。九州電力の単価体系がそのまま適用されるとは限らないため、比較時は「基本料金+電力量料金+各種調整額を含めた実効単価」で見る必要があります。これは一般論としては確かですが、各社差が大きいため、個別比較は見積条件の確認が不可欠です。
九州電力の高圧・特別高圧向け燃料費等調整額は、燃料費調整・市場価格調整・離島ユニバーサルサービス調整の3項目で構成されます。2025年4月以降の見直しで、市場価格調整はより毎月の市場動向を反映しやすい仕組みに変わりました。
ステップ1:自社の契約が「見直し前」「見直し後」のどちらかを確認する
ステップ2:検針票から契約電力・使用量・調整額内訳を毎月記録する
ステップ3:年間影響額を、国支援の有無も分けて試算する
以下に当てはまる場合は、電力調達条件の見直しを検討しやすい局面です。
電力調達の見直しでは、まず直近12か月分の検針票を整理し、どの項目が変動要因だったのかを把握することが出発点です。そのうえで、複数社から見積もりを取り、調整額を含む実効単価で比較するの伊藤忠エネクスの「TERASELでんき for Biz.」では、法人の電力使用パターンに応じた料金プランを提案しています。九州エリアの電力市場特性を踏まえた最適な電力調達の検討材料として、まずは現在の電力契約書と直近12か月分の検針票をお手元にご用意の上、お気軽にお問い合わせください。

※掲載内容は2026年3月時点の情報です。最新の料金・制度については各関係機関にお問い合わせください。
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