ドラッグストア業界は2024年度に総売上高10兆円を突破し、2万3,000店舗を超える規模に成長しました(日本チェーンドラッグストア協会調べ)。この成長を支えているのが食品の取り扱い拡大ですが、冷蔵ショーケースの増設は電気代の上昇に直結します。「LED化は済んだのに電気代が下がらない」「食品売場を拡張するたびに電気代が膨らむ」――こうした課題を抱える電力担当者に向けて、本記事ではドラッグストアの電力コスト構造を業態別に分解し、「使用量を減らす」「ピークを下げる」「調達単価を見直す」の3つのアプローチで削減の優先順位を整理します。
※参考:日本チェーンドラッグストア協会関連報道「JACDS 2024年度実態調査、ドラッグストア売上10兆円突破」
https://www.this.ne.jp/news/19218/
※参考:株式会社薬事日報社「ドラッグストア『25年10兆円産業化』」
https://www.yakuji.co.jp/entry117530.html
※本記事は2026年3月時点の情報です。
目次
ドラッグストアの電気代が他の小売業態と比べて高くなりやすい理由は、冷蔵ショーケース・照明・空調の3設備が営業中は止めにくい構造にあります。
経済産業省・資源エネルギー庁が公表している卸・小売店の電力消費内訳では、空調が約26%、照明が約22%、冷凍・冷蔵とショーケースがそれぞれ約7%を占めるとされています。ただし、この数値は百貨店やホームセンターを含む「卸・小売店」全体の統計であり、ドラッグストア固有のデータではありません。食品売場の規模によって冷蔵設備の比率は大きく変動するため、あくまで構造を理解するための参考値として捉えてください。
本記事では、近似業態(卸・小売店、食品スーパー)のデータを参照し、ドラッグストアの電力消費構造を推定しています。以下の記述には推定を含む箇所がありますので、自社の検針票データとの照合をおすすめします。
※参考:経済産業省「夏季の省エネ・節電メニュー(事業者の皆様)」
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230609003/20230609003-6.pdf
※参考:資源エネルギー庁「省エネ(事業者向け節電メニュー)」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/2025_summer/syouenemenu_jigyosha02.pdf
近年のドラッグストアは、食品売上の構成比によって大きく2つの方向性に分かれます。食品構成比が高い「食品併売型」と、医薬品・化粧品の比重が相対的に高い「医薬品特化型」です。
食品併売型は冷蔵・冷凍ショーケースを多く設置するため、電力消費構造が食品スーパーに近づきます。ほくでんネットワークが公表している食品スーパーのデータでは、ショーケースが電力消費の約42%を占めるとされており、食品売場が充実したドラッグストアでも冷蔵設備関連の比率が高くなりやすいと考えられます。
一方、医薬品特化型は冷蔵設備の比率が相対的に小さく、照明と空調が電力消費の主要因になりやすい業態です。食品併売型と比べると、冷蔵設備の常時稼働負荷が相対的に小さいため、電力使用量は抑えやすい傾向があります。
※参考:ほくでんネットワーク「食品スーパー」
https://www.hepco.co.jp/network/electric_life/power_saving/business/supermarket.html
| 店舗タイプ | 主な電力消費源 | 最初に着手すべき施策 |
| 食品併売型(食品比率50%超) | 冷蔵ショーケース+空調 | ショーケースの省エネ機器への更新、夜間カバー設置 |
| 食品併売型(食品比率30〜50%) | 照明+空調+冷蔵設備 | LED照明の完全導入、空調設定の最適化 |
| 医薬品特化型(食品比率30%未満) | 照明+空調 | 電力調達単価の見直し(契約切替) |
前章で見た電力消費構造を踏まえて、店舗タイプ別に年間電気代をモデルケースで試算します。食品併売型の大型店舗では、年間電気代が700万円を超えるケースもありえます。以下は、3つの店舗タイプ別のモデルケース試算です。
下記の金額は仮置き単価に基づく概算の一例であり、業種相場ではありません。自社の検針票の実績値で再計算した上で、相見積りの基準としてください。
| 項目 | 食品併売型(大型) | 食品併売型(標準) | 医薬品特化型 |
| 想定売場面積 | 400坪超の一例 | 200〜300坪の一例 | 150〜200坪の一例 |
| 契約電力(想定) | 120kW | 80kW | 50kW |
| 年間使用量(想定) | 38万kWh | 26万kWh | 15万kWh |
| 基本料金(年間) | 約238万円 | 約158万円 | 約99万円 |
| 従量料金(年間) | 約532万円 | 約364万円 | 約210万円 |
| 年間電気代合計 | 約770万円 | 約522万円 | 約309万円 |
| 従量料金の比率 | 約69% | 約70% | 約68% |
※モデルケース試算の前提:基本料金単価1,650円/kW/月(仮置き値・力率割引前)、従量単価14円/kWh(燃料費調整額・再エネ賦課金除く)。
本試算では、基本料金単価1,650円/kW/月を仮置き値として設定しています。従量単価14円/kWhも燃料費調整額・再エネ賦課金を除いた仮置き値です。燃料費調整額・再エネ賦課金を含む実効単価はこれより高くなります。
基本料金=契約電力×基本料金単価×12か月、従量料金=年間使用量×従量単価で算出。自社の検針票に記載の実際の単価と照合し、差異がある場合はそちらの値で再計算してください。
3パターンに共通するのは、従量料金が電気代全体の約7割を占めるという構造です。基本料金の削減(デマンド管理)も効果はありますが、従量料金=「使用量×単価」の部分をどう下げるかが、ドラッグストアの電気代削減においてより大きなレバーとなります。
ドラッグストアの電気代削減は「①使う量を減らす ②ピーク電力を下げる ③調達単価を見直す」の3分類で整理すると、施策の優先順位が明確になります。
ただし、実際には「電力契約の見直しは面倒そう」「切り替えると供給が不安定になるのでは」「市場連動型は価格が読めない」といった心理的な障壁があり、特に③の検討が後回しになりがちです。しかし、③は初期投資ゼロで取り組めるアプローチであり、従量料金が約7割を占めるドラッグストアでは効果が大きい可能性があります。
| 施策 | 分類 | 初期費用 | 即効性 | 削減インパクト | 回収目安 |
| LED照明への全面切替 | ①量を減らす | 中 | 中 | 照明電力の大幅削減が見込める | 個別試算が必要 |
| 冷蔵ショーケースの省エネ機器更新 | ①量を減らす | 大 | 中 | 食品併売型では大きい | 個別試算が必要 |
| 夜間ショーケースカバー設置 | ①量を減らす | 小 | 高 | 小〜中 | 短期間で回収見込み |
| 空調設定の最適化(フィルター清掃含む) | ①量を減らす | 小 | 高 | 小〜中 | 即時効果 |
| デマンドコントローラー導入 | ②ピークを下げる | 中 | 中 | 基本料金への効果あり | 個別試算が必要 |
| 電力契約の見直し(市場連動型等) | ③単価見直し | なし | 高 | 使用パターン次第で大きい | – |
※初期費用の「小・中・大」は弊社経験則からの定性表現です。具体的な費用は店舗規模・設備状況により異なるため、個別の見積もりが必要です。
照明のLED化は、ドラッグストアの省エネ対策として比較的取り組みやすい施策です。売場照明だけでなく、冷蔵ショーケース内の照明をLED化することで消費電力の削減が期待できます。
空調については、ドラッグストアは来店客の出入りが頻繁で外気の流入が多い業態です。エアカーテンの設置やフィルターの定期清掃は、追加投資を抑えながら空調効率を改善できる手段です。ただし、医薬品の保管温度基準があるため、売場の温度設定は商品品質を考慮した範囲での最適化が前提となります。
高圧契約では、最大需要電力の管理が基本料金に影響します。夏季の冷房ピーク時にデマンド値が跳ね上がると、その後の基本料金負担が重くなる場合があります。
対策としてデマンドコントローラーの導入があります。空調の一時停止やショーケースの霜取りタイミングの分散制御で、ピーク電力を抑制します。ただし、食品を扱うドラッグストアでは冷蔵設備の運転を止めることによる温度上昇リスクがあるため、非重要負荷(バックヤード空調・サイン照明等)に制御対象を限定する設計が望ましいです。
従量料金が約7割を占めるドラッグストアでは、電力の調達単価を見直すことが電気代削減の大きなレバーになります。電力自由化により、高圧契約の法人は電力の調達先を比較検討し自由に選択できるようになっています。契約の切替自体に大きな設備投資を伴わないため、着手しやすい施策の一つです。
特に注目されるのが、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格に連動して電力単価が30分ごとに変動する「市場連動型プラン」です。次のセクションで、ドラッグストアの電力使用パターンとの相性を見ていきます。
ドラッグストアと市場連動型プランの相性は要検証です。昼間の安値帯を活かせる一方で、夕方〜夜間営業の長い店舗は高値帯に当たる可能性があり、業態・営業時間によって判断が分かれます。
市場連動型プランの有利・不利は、JEPXの市場価格が安い時間帯・曜日・季節に電力使用が集中しているかどうかで左右されます。一般に、以下のような傾向があります。
・時間帯:
太陽光発電の出力が高まりやすい昼間(概ね10〜14時)は価格が低下しやすく、夕方〜夜間(16〜20時)は上昇しやすい傾向があります。
・曜日:
工場やオフィスの稼働が減る土日は、平日と比べて市場価格が安くなる傾向があります。
・季節:
冷暖房需要が比較的小さい時期は価格が落ち着きやすく、需要が高まる夏季・冬季は上振れしやすくなります。
ドラッグストア固有の注意点として、夕方〜夜間(16〜22時)に来店ピークが集中する店舗では、JEPXの高値時間帯と重なりやすくなります。特に食品併売型の大型店舗は冷蔵設備の稼働が長時間に及ぶため、深夜の安値帯で恩恵を受ける可能性がある一方、夕方ピーク時の高値影響も受けやすくなります。営業時間の長い店舗ほど、30分値データに基づくシミュレーションが重要になります。
| 判定軸 | ドラッグストアの使用パターン | JEPX安値帯との一致 |
| 時間帯 | 10〜22時程度(店舗により異なる) | 昼間(10〜14時)は一致しやすいが、夕方〜夜間は高値帯に当たりやすい |
| 曜日 | 毎日営業(土日も営業) | 土日営業分は安値帯の恩恵を受けやすい |
| 季節 | 年間を通じて営業 | 夏季・冬季の価格上昇の影響を受ける可能性がある |
食品併売型の場合: 冷蔵ショーケースは長時間稼働するため、深夜帯の安値恩恵を受ける可能性があります。一方で、夕方〜夜間の来店ピークと照明・空調の電力消費が高値帯と重なるリスクがあります。
医薬品特化型の場合: 営業時間が比較的標準的な店舗では、昼間の安値帯を活用しやすい可能性があります。ただし、実際の相性は営業時間だけでなく、空調・照明・冷蔵設備の負荷配分にも左右されます。
いずれの業態でも、自社の検針票データや30分値データを元にシミュレーションを行った上での判断が前提となります。「市場連動型だから必ず安くなる」わけではなく、使用パターンとの適合性を個別に検証する必要があります。
市場連動型プランには、市場価格の急騰リスクがあります。2021年1月には大寒波とLNG供給不足が重なり、JEPXのシステムプライスが251円/kWhまで上昇しました。
また、2022年度はスポット取引の年間平均価格が20.38円/kWhまで上昇しており、燃料価格や需給逼迫の影響を受けると価格水準が大きく変動しうることがわかります。夏場には20〜30円/kWh程度の高値圏で推移する局面もありました。
一部の市場連動型プランでは価格上限(キャップ)が設けられている場合がありますが、すべてのプランに共通する仕組みではありません。契約前に上限設定の有無と条件を個別に確認してください。
※参考:電力・ガス取引監視等委員会「2020年度冬期スポット市場価格の高騰について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/034_b09_00.pdf
※参考:電力・ガス取引監視等委員会「スポット市場価格の動向等について」
https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc_system/pdf/075_03_00.pdf
1.自社の電力使用パターンを把握する
検針票から契約電力(kW)・月間使用量(kWh)・最大需要電力(デマンド値)の3点を最低12か月分確認します。可能であれば30分値データを電力会社から取得し、時間帯別の使用量分布を把握してください。
2.シミュレーションを依頼する
過去の使用実績データを基に、市場連動型プランに切り替えた場合の試算を依頼します。簡易シミュレーションを用意している小売電気事業者もあります。
3.リスク許容度を社内で合意する
「月間電気代が最大何%上振れしても許容できるか」を事前に社内で議論します。固定単価型プランやキャップ付きプランとの比較も検討材料になります。

Q. 電力会社を切り替えると停電しやすくなりますか?
送配電網は一般送配電事業者が管理しており、小売電気事業者を切り替えても使用する送配電網は変わりません。そのため、切替自体によって停電しやすくなる仕組みではありません。
※参考:資源エネルギー庁「よくある質問」 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/faq/
Q. ドラッグストアのように食品を扱う店舗で、電力契約を見直す際に注意すべき点は?
冷蔵・冷凍ショーケースは停電時に商品ロスが発生するため、万が一に備えた契約切替時の対応フローや、供給停止時に利用しうる最終保障供給の位置づけを事前に確認しておくことが重要です。なお、最終保障供給は通常契約とは料金条件が異なる場合があるため、恒常的な利用を前提とするものではなく、セーフティネットとして捉えるのが適切です。
※参考:資源エネルギー庁「最終保障供給について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/060_04_00.pdf
Q. 複数店舗を一括で契約切替できますか?
多くの小売電気事業者では、チェーン店舗の一括契約や複数拠点の見積りに対応しています。店舗数が多いほど、契約条件を比較しやすくなる場合があります。まずは本部側で、全店分の検針票や契約情報を整理した上で相談するのが一般的です。
Q. 市場連動型プラン以外に、ドラッグストアに向いている電力プランはありますか?
固定単価型プランは、価格変動リスクを抑えたい場合に検討しやすい選択肢です。使用パターンやリスク許容度に応じて、市場連動型と固定単価型の両方を比較するのが適切です。
ドラッグストアの電気代は、冷蔵ショーケース・照明・空調の3設備が営業中に止めにくい構造上、高くなりやすい傾向があります。特に食品併売型では冷蔵設備の電力負荷が大きく、食品売場の拡大に伴って電気代が上がりやすくなります。
削減のアプローチは3つです。
「①使う量を減らす(設備更新・運用改善)」
「②ピーク電力を下げる(デマンド管理)」
「③調達単価を見直す(電力契約の切替)」
なかでも③は初期投資を伴いにくいため、まだ検討していない場合は、候補の一つとして早めに比較検討する価値があります。
検針票を12か月分集める
契約電力・月間使用量・デマンド値の推移を確認する
店舗タイプを分類する
食品併売型(大型・標準)と医薬品特化型のどれに近いかを整理する
シミュレーションを依頼する
使用実績データを基に、市場連動型プランを含む複数プランの試算を比較する
比較見積り依頼時に用意するもの
電力の調達単価見直しは、設備投資と異なり大きな初期費用を伴いにくい施策です。まずは自社の使用パターンに合ったプランがあるかどうか、情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
伊藤忠エネクスが提供する「TERASELでんき for Biz.」 は、ドラッグストアの電力コスト削減を無料で相談できる法人向け高圧電力サービスです。現在の電気料金明細をお手元にご準備の上、お気軽にお問い合わせください。
※掲載内容は2026年3月時点の情報です。最新の料金・制度については各関係機関にお問い合わせください。
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