植物工場の電気代はなぜ高い?年間コスト構造を徹底解説

植物工場の電気代はなぜ高い?年間コスト構造を徹底解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

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国内の植物工場のうち、約4割が赤字経営に陥っているという報告があります。その最大の要因として挙げられるのが「電気代の高さ」です。植物工場では照明・空調・環境制御設備などを年間を通じて稼働させる必要があり、人工光型では電気コスト比率が全コストの約26%と高い水準にあります。農業分野への参入を検討する法人担当者や、既存工場の採算改善を目指す経営者にとって、電気代のコスト構造を正確に把握することは経営上の急務です。

本記事では、植物工場の電気代がなぜ高くなるのかという根本的な理由から、コスト内訳・規模別試算・削減手段まで、実務に役立つ情報を体系的に解説します。

※本記事は2026年6月時点の情報です。

※参考:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-92.pdf

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植物工場の電気代が高い原因:LED照明と空調の二重電力負担

植物工場の電気代が高い背景には、露地栽培や太陽光型施設とは根本的に異なるエネルギー構造があります。大きく3つの理由から説明できます。

LEDが発する熱が空調コストを増加させる「二重の電力負担」

完全人工光型の植物工場では、太陽光を使わずに閉鎖された施設で人工光を利用し、高度に環境を制御しながら周年・計画生産を行います。そのため、植物の生育に必要な光を人工照明でまかなう必要があり、照明設備を長時間稼働させる運用が前提になります。

また、植物工場では光だけでなく、温度・湿度・CO2濃度などの生育環境も管理する必要があります。照明装置から生じる熱は空調負荷に影響するため、照明に使う電力に加えて、施設内の温度を適切に保つための空調エネルギーも必要になります。

こうした構造が、完全人工光型の植物工場で電力コストが大きくなりやすい理由の一つです。

※参考:大阪公立大学「完全人工光型植物工場での栽培植物の 生育を診断する手法の提案」
https://omu.repo.nii.ac.jp/record/11842/files/k1953.pdf

※参考:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-92.pdf

※参考:経済産業省「(6) 人工光型植物工場における環境制御 IT の確立」
https://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H25/140203_zyouhou1/zyouhou1_siryou6_2_3.pdf

※参考:特定非営利活動法人植物工場研究会・一般社団法人日本植物工場産業協会「特集 人工光型植物工場の技術革新とビジネスモデルの新展開」
https://www.academy-nougaku.jp/pdf/bullettin021/bullettin021_02_rondan.pdf

太陽光を使えない完全人工光型の宿命的コスト構造

完全人工光型植物工場では、太陽光を一切利用しないため、光合成に必要な光をすべてLED照明で賄わなければなりません。年間365日、1日16時間程度の照明稼働は、電力消費を押し上げる最大の要因です。

さらに、植物工場では温度・湿度・CO2濃度・照度などを精密に管理する「環境制御」が欠かせません。これらの環境制御システム(空調・加湿器・CO2発生装置・循環ファン等)も継続的に稼働させる必要があり、照明電力に加えて設備電力が積み上がります。太陽光型や露地栽培では自然環境を一部利用できますが、完全人工光型にはそのような「省エネの余地」が少ないのが現実です。

こうした構造的な電力消費の多さが、植物工場の電気代を高水準にしやすい要因の一つです。

※参考:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-92.pdf

※参考:NOMURA フード&アグリビジネス・レビュー「転換期の人工光型植物工場(2)わが国における人工光型植物工場収支構造の変化」
https://www.nomuraholdings.com/jp/sustainability/sustainable/services/fabc/report/report20240806102966/main/0/link/File61171932.pdf

植物工場の電気代コスト内訳(照明・空調・設備別の割合)

植物工場の電気代はどの設備にどれだけかかっているのでしょうか。農業関連の研究資料によると、人工光型植物工場の電気代は大きく「照明(LED)系」と「空調・環境制御系」に分かれており、照明系が電気代全体の60%前後を占めるとされています(施設の構成や栽培品目によって変動します)。

また、植物工場全体のランニングコスト(電気代・人件費・資材費・設備維持費等の合計)に占める電気代の比率は、人工光型で26%程度とされています。電気代は人件費(30%以上)に次ぐ主要コスト項目であり、その削減が経営改善の鍵を握ります。

照明(LED)が電気代全体の6〜7割を占める理由

LED照明が電気代の大部分を占める理由は、前述した稼働時間の長さと光変換効率の低さにあります。たとえば、1,000㎡の栽培面積に多段棚を5段設置した場合、照明設備の総消費電力は数百kWに達することも珍しくありません。これが1日16時間程度、年間365日稼働するとなれば、照明だけで膨大な電力量が必要になります。

農業用LED照明の技術は近年急速に進化しており、光合成有効放射(PAR)の効率を高めた高効率型LEDでは、従来比と比較して電力削減が期待できる製品も登場しています。しかし、設備の初期投資コストが高く、全面更新には一定の資本が必要です。

空調・除湿・CO2管理も無視できない設備電力

電気代の残り40%程度は、空調・換気・除湿・CO2発生装置などの環境制御設備が占めます。前述のようにLED照明の発熱を冷却するための空調負荷は非常に大きく、特に夏季は空調の稼働率が高まります。

また、植物の光合成を促進するためにCO2濃度を外気(約400ppm)より高い700〜1,500ppm程度に維持するCO2濃度管理システム(施用装置の種類により電力・燃料コストが異なります)も稼働が必要です。水耕栽培システムの循環ポンプや養液管理システムも常時稼働が必要です。これらが積み重なり、空調・環境制御系の電気代も決して無視できない水準となります。

参考:エアロゾル研究「人工光型植物工場における栽培環境制御とクリーン化技術」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/31/2/31_104/_pdf/-char/ja

※参考:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-92.pdf

※参考:特定非営利活動法人植物工場研究会・一般社団法人日本植物工場産業協会「特集 人工光型植物工場の技術革新とビジネスモデルの新展開」
https://www.academy-nougaku.jp/pdf/bullettin021/bullettin021_02_rondan.pdf

※参考:NOMURA フード&アグリビジネス・レビュー「転換期の人工光型植物工場(2)わが国における人工光型植物工場収支構造の変化」
https://www.nomuraholdings.com/jp/sustainability/sustainable/services/fabc/report/report20240806102966/main/0/link/File61171932.pdf

植物工場の電気代はいくら?規模別・年間コストシミュレーション

実際のコスト感を把握するために、規模別の年間電気代を試算します。以下の数値はあくまで目安であり、栽培品目・段数・稼働時間・設備構成によって大きく変わります。

試算の前提条件

項目内容
LED照明消費電力密度約150〜200W/㎡(段面積あたり仮定値)
照明稼働時間1日16時間(年間5,840時間。試算上の仮定)
空調・環境制御電力照明電力の約50〜60%相当を追加(試算上の仮定・24時間稼働換算)
電気単価(高圧電力契約想定)約22円/kWh(契約条件・エリア・燃料費調整等により実単価は変動)
栽培品目葉菜類(レタス等)

試算の結果

規模栽培面積栽培段数年間消費電力の目安年間電気代の目安(22円/kWh)
小規模約330㎡(100坪)5段約200〜300万kWh約4,400〜6,600万円
中規模約1,650㎡(500坪)5段約1,000〜1,500万kWh約2.2億〜3.3億円
大規模約3,300㎡(1,000坪)5段約2,000〜3,000万kWh約4.4億〜6.6億円

※上記はあくまで概算であり、LED照明の消費電力密度・稼働時間・設備構成によって実際の数値は大幅に異なります。中小規模施設では1棟あたりの棟面積・多段化の程度・品目に応じてさらに異なります。

中規模以上の植物工場では年間数千万円〜数億円規模の電気代が発生し得ることがわかります。レタスなどの葉菜類の生産コスト全体に占める電気代比率は約26%とされており、コスト削減の余地が大きい項目です。

また、植物工場が一般的な農産物以上の販売価格設定を余儀なくされる背景にも、こうした電気代を中心としたランニングコストの高さがあります。

※参考:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-92.pdf

※参考:特定非営利活動法人植物工場研究会・一般社団法人日本植物工場産業協会「特集 人工光型植物工場の技術革新とビジネスモデルの新展開」
https://www.academy-nougaku.jp/pdf/bullettin021/bullettin021_02_rondan.pdf

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植物工場の電気代削減に効果的な3つのアプローチ

植物工場の電気代を削減するには、大きく「①省エネ設備」「②電力調達の最適化」「③自家発電・再エネ活用」の3つのアプローチがあります。それぞれの特徴と効果の目安を解説します。

※参考:農林水産省「施設整備への支援策」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/seibi_sien.html

※参考:一般社団法人環境共創イニシアチブ「省エネ設備への更新支援(省エネ・非化石転換補助金)」
https://syouenehojyokin.sii.or.jp/

省エネ設備:高効率LEDと光反射シートで照明電力を削減

最も直接的な削減手段は、照明設備の高効率化です。電気代の60%前後を占めるLED照明の消費電力を下げることで、電気代全体を大幅に圧縮できます。

具体的な手法としては以下が挙げられます。

項目内容
高効率LED照明への更新光合成有効放射(PAR)効率を最大化した最新型LEDは、従来型と比較して省エネ効果が見込めます。初期投資は必要ですが、補助金の活用も可能です。
光反射シートの導入棚周囲に光反射シートを設置し、植物への光到達率を高めることで、同じ照度を維持しながら照明出力を下げることができます。
照明スケジュールの最適化植物の光飽和点を超えない範囲で照明時間を見直し、深夜電力の活用も含めた稼働スケジュールを最適化します。
デマンド管理の導入最大需要電力(デマンド)を監視・制御し、基本料金の引き下げを図ります。受電設備が50kW以上(高圧電力契約)の施設では、デマンド超過が1年間にわたって基本料金を引き上げるため、デマンド管理は特に重要です。

※参考:明治大学「農商工連携モデルを基盤とした都市地域における植物工場普及拡大戦略に関する研究」
https://www.meiji.ac.jp/research/promote/strategic/2017/6t5h7p00000o93o9-att/kenkyuseikahoukokusyo_ikeda1.pdf

※参考:東京電力エナジーパートナー「契約電力について知りたい|電気料金の仕組み(法人)」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/charge_c/decision01.html

電力調達の最適化:高圧契約への移行と新電力の活用

省エネ設備と並行して取り組むべきが、電力調達コストの最適化です。中規模以上の植物工場は受電設備が50kW以上となることが多く、高圧電力(6.6kV)での受電が可能です。高圧電力契約では低圧電力より電力量単価が低く設定されており、電力多消費施設ほどメリットが大きくなります。

さらに、電力小売自由化後に参入した新電力会社への切り替えを検討することで、既存の電力会社契約と比較してコスト削減が期待できます。電力単価が1〜3円/kWh下がるだけで、年間1,000万kWhを消費する中規模工場では年間1,000〜3,000万円規模の削減効果につながります。伊藤忠エネクスが提供する「TERASELでんき for Biz.」では、植物工場のような電力多消費施設向けに最適化された電力プランを提供しており、使用量・使用パターンに応じたコスト削減プランをご提案しています。

なお、電力調達の見直しは設備投資なしで取り組めるため、まず最初に着手すべき施策のひとつです。

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自家発電:太陽光PPA・蓄電池の農業施設への導入事例

自家発電・再エネ活用は、電気代削減に加えて、カーボンニュートラル対応や環境配慮の訴求につながる可能性がある中長期的な施策です。

植物工場や農業施設では、自家消費型太陽光発電や、施設・敷地を活用したPPAといった導入手法があります。農林水産省の事例では、水耕栽培施設に隣接して設置した太陽光発電設備の自家消費により、年間電力購入量が約25%削減された例が報告されています。

蓄電池との組み合わせにより、昼間の余剰発電電力を夜間照明に転用する運用も可能です。導入コストは高いものの、補助金(農林水産省・経済産業省の省エネ補助金等)の活用で初期費用を抑えられる場合があります。

電力契約の見直しが電気代削減の近道です。
設備投資なしで始められる電力調達コストの最適化について、TERASELでんき for Biz.にご相談いただくと、現在の契約との比較シミュレーションをご提供しています。

※参考:農林水産省「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック(2025年度版)」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-61.pdf

※参考:農林水産省「省エネルギー型ハウス転換事業について」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/midori-36.pdf

※参考:農林水産省「農林水産業・食品産業に関する ESG地域金融実践ガイダンス」
https://www.maff.go.jp/j/keiei/kinyu/attach/pdf/esg_finance-12.pdf

※参考:一般社団法人環境共創イニシアチブ「令和6年度補正 再生可能エネルギー電源併設型蓄電システム導入支援事業」
https://sii.or.jp/saieneheisetsu06r/

黒字化している植物工場のコスト管理に共通する3つの特徴

回答事業者ベースでは約4割が赤字であるなか、黒字を維持している事業者には共通した特徴があります。実態調査によると、赤字事業者は黒字事業者よりも光熱水道費の割合が高い傾向があり、特に人工光型では10ポイント以上の差が見られます。黒字工場が実践している特徴を3つに整理します。

※参考:一般社団法人日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査について」
https://jgha.com/wp-content/uploads/2020/03/TM04-2-text7_1.pdf

※参考:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-92.pdf

1. 電力調達コストの継続的な最適化

黒字工場は電力契約を「設備導入時に決めたまま放置」せず、市場環境の変化に応じて定期的に見直しているケースが多いです。高圧電力契約の切り替え、新電力への移行、デマンド管理の徹底による基本料金の引き下げなど、複数の施策を組み合わせて電力調達コストを継続的に圧縮しています。

電力調達の見直しにより植物工場の電気代は「10〜15%改善」する可能性も大いにあります。設備投資なしで成果が出る施策として、黒字化を実現した工場では早期から電力調達の最適化に着手するケースが多い傾向があります。

2. 高単価で売れる販路の確保と販売率の向上

黒字経営企業では、高い販売率を維持し、施設栽培野菜より高い価格で販売できる売り先を確保しているとされます。最新調査でも、取引先件数が多い事業者ほど黒字・収支均衡の比率が高い傾向が見られます。

3. 省エネ設備への計画的な投資とPDCAサイクル

黒字工場は省エネを「一度やればよいもの」とは捉えず、照明効率・空調COP(成績係数)・デマンド値などを定期的にモニタリングし、改善を繰り返すPDCAサイクルを確立しています。スマートメーターや電力可視化ツールを活用して設備別の電力消費を把握し、投資効果が高い箇所から優先的に手を打つアプローチをとっている傾向にあります。

赤字工場と黒字工場の差には「電気代に対する経営的な感度の高さ」も要因としてあるといえます。電気代を経営指標として日常的に管理するかどうかが、長期的な収益性を左右します。

※参考:一般社団法人日本施設園芸協会「大規模施設園芸・植物工場 実態調査について」
https://jgha.com/wp-content/uploads/2020/03/TM04-2-text7_1.pdf

※参考:農林水産省「大規模施設園芸・植物工場 実態調査・事例調査」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/attach/pdf/index-92.pdf

まとめ:植物工場の電気代削減は電力調達の見直しから

植物工場の電気代が高い理由は、①LED照明の長時間稼働と発熱による空調の二重電力負担、②完全人工光型ゆえの太陽エネルギー不使用、③環境制御設備の常時稼働という3つの構造的要因にあります。電気代は植物工場のランニングコストの約26%を占め、黒字化の最大の壁となっています。

電気代削減に向けた優先順位は以下のとおりです。

  1. 電力調達の見直し(即効性が高く、設備投資不要):
     電力会社・プランの切り替えやデマンド管理の強化から着手
  2. 省エネ設備への投資(中期):
     高効率LED照明の更新・光反射シート・インバーター制御の導入
  3. 自家発電・再エネ活用(長期):
     太陽光PPA・蓄電池の導入でエネルギー自給率を高める

特に「電力調達の見直し」は初期投資なしで取り組める最も即効性の高い施策です。現在の電力契約が最適かどうか、まず専門家に相談することをおすすめします。

伊藤忠エネクスのTERASELでんき for Biz.では、植物工場をはじめとする電力多消費の農業・食品関連施設に向けて、コスト削減に特化した電力プランをご提案しています。現在の電力使用量・契約内容をお知らせいただくだけで、削減シミュレーションをご提供します。電気代の最適化をご検討の際は、ぜひTERASELでんき for Biz.にお問い合わせください。【どのくらい安くなるか無料で診断する。】

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