毎月の電気料金明細に記載される「燃料費調整額」と「市場価格調整額」。この2つが、東京電力エナジーパートナー(以下、東京電力EP)と契約している高圧・特別高圧の法人にとって、電気代が毎月変動する主な原因です。工場や大型施設を運営する電力担当者の方から「電気代が上がっている理由がよくわからない」というご相談をいただくことがありますが、その答えの多くはこの2つの調整制度にあります。本記事では、東京電力EPの公式情報をもとに、仕組みの基礎から2026年の最新動向まで、高圧・特別高圧の法人向けにわかりやすく解説します。
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この記事の要点
目次
多くの電力担当者が明細書を見て最初に困惑するのが、毎月金額が変わる「燃料費等調整額」という項目です。この部分だけを見ていると「なぜ電気代が増えたのか」「どうすれば予測できるのか」が見えてきません。
毎月届く電気料金の請求書(明細書)には、主に以下の費目が記載されています。
| 費目 | 内容 |
| 基本料金 | 契約電力(kW)に基づいて決まる固定費用 |
| 電力量料金 | 実際に使用した電力量(kWh)に応じた変動費用 |
| 燃料費等調整額 | 燃料費調整額+市場価格調整額(毎月変動) |
| 再生可能エネルギー発電促進賦課金 | 再エネ普及のための全国一律の負担金 |
このうち毎月の金額が大きく変動するのが「燃料費等調整額」です。この費目はさらに「燃料費調整額」と「市場価格調整額」の2つに分かれており、それぞれ算定根拠が異なります。
燃料費等調整額はプラス(追加負担)になることもあれば、マイナス(料金の割引)になることもあります。たとえば原油やLNG(液化天然ガス)などの燃料価格が上昇した月は燃料費調整額がプラスになり、基本料金・電力量料金の合計に上乗せされて請求されます。逆に燃料価格が下落している局面では調整額がマイナスになり、燃料費等調整額が割引になります。
電力担当者として毎月の請求書を管理する際、燃料費等調整額の動向を把握することは、電気代の増減要因を正確に分析し、上司や経営層への報告・予算管理に活かす上で不可欠です。
燃料費調整額(燃料費調整制度)は、火力発電所で使用する燃料(原油・LNG・石炭)の価格変動を、電気料金に迅速に反映させることを目的とした制度です。東京電力EPは高圧・特別高圧向けの約款・料金要綱に基づき、月ごとに調整単価を算定・公表しています。
東京電力EPにおける計算の基本的な流れは次の通りです。
このタイムラグが存在するため、燃料価格が急騰した場合でも電気料金への影響は約2か月後となります。電力担当者は貿易統計や原油価格の動向を日頃からウォッチすることで、2か月後の電気代をある程度予測することができます。なお月間電力使用量が50,000kWhの工場では、調整単価が1円/kWh変動するだけで月5万円の電気代に差が生じます。電力消費量の大きい事業者ほど、単価の動向管理は重要です。
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「燃料費等調整制度とは」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/adjust2/fuelcost.html
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「2026年4月1日からの特別高圧・高圧の新標準メニューの見直し内容について」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/minaoshi_2026.html
市場価格調整額(市場価格調整単価×使用電力量で算定)は、卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)のスポット市場価格の変動を電気料金に反映させる制度です。燃料費調整額と並んで、電気代変動の大きな要因となっています。
JEPXは、電力会社や新電力会社が電力を売買する市場です。スポット市場では1日を30分ごとに区切った48コマの取引が行われ、需要と供給のバランスによって電力価格がリアルタイムに決まります。電力会社や新電力会社は必要に応じてJEPXで電力を調達しており、その調達コストが電気料金に影響します。
東京電力EPにおける市場価格調整単価は次の流れで算定されます。東京電力EP管内(関東エリア)は離島ユニバーサルサービス調整項を含まないエリアに該当し、市場価格調整の算定期間は1か月間です。
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「燃料費調整制度・市場価格調整制度とは」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/adjust2/index-j.html
| 項目 | 燃料費調整額 | 市場価格調整額 |
| 参照する価格 | 原油・LNG・石炭の貿易統計価格 | JEPXスポット市場価格 |
| 算定方法 | (平均燃料価格-基準燃料価格)×基準燃料単価/1,000 | (平均市場価格-基準市場価格)×基準市場単価 |
| 平均価格の算定期間 | 平均燃料価格 直近3か月の平均 | 平均市場価格 1か月間のスポット市場価格平均 |
| 基準価格の設定時期 | 基準燃料価格 2024年4〜6月平均 | 基準市場価格 2024年5〜7月平均 |
| 基準単価 | 基準燃料単価 高圧:19銭0厘/kWh 特別高圧:18銭5厘/kWh | 基準市場単価 プラン・エリアごとに異なる |
| 料金への反映 | 2か月後 | 約1.5か月後検針日が1日の場合:当月それ以外の場合:翌月 |
| 価格変動要因 | 国際燃料市況、円相場 | 電力需給バランス、気象 |
この2つの制度を合わせて「燃料費等調整制度」と呼びます。東京電力EPでは高圧・特別高圧のお客さまに対して、両制度をセットで適用しています。
なお、東京電力EP管内(関東エリア)は「離島ユニバーサルサービス調整項」が適用されないエリアです。北海道・東北・北陸・中国・九州エリアでは離島向けの調整項が別途加算されますが、東京電力EPの管内では燃料費調整と市場価格調整の2項目のみで構成されます。
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「燃料費調整制度・市場価格調整制度とは」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/adjust2/index-j.html
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「燃料費等調整制度とは」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/adjust2/fuelcost.html
高圧・特別高圧で電気を利用する法人向け(自由化料金)の燃料費等調整制度には、家庭向け(低圧)と大きく異なる重要な特徴があります。それが「上限の設定なし」という点です。
家庭向けの低圧・規制料金プランでは、燃料費調整単価に上限(キャップ)が設けられており、燃料価格が極端に高騰しても電気料金が一定水準以上に跳ね上がらない仕組みになっています。一方、高圧・特別高圧の法人向け(自由化料金)では上限の設定がありません。これは電力自由化の理念に基づいており、市場原理によって電力調達コストが電気料金に正直に反映される設計です。
上限なしのため、燃料費や電力市場価格が急騰した局面では電気代が大幅に増加するリスクがあります。実際に2022年から2023年にかけて世界的なエネルギー価格高騰が起きた際、高圧・特別高圧を利用する法人の電気料金は前年比で大幅な増加となり、製造業・物流業などの経営に大きな影響を与えました。電気代の大幅増加は製品製造コストやサービス提供コストに直結するだけでなく、長期の予算計画や生産計画の見直しを余儀なくされます。
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「燃料費等調整制度とは」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/adjust2/fuelcost.html
電力会社によって燃料費等調整制度の算定方式や過去の変動実績は異なります。伊藤忠エネクスが提供するTERASELでんき for Biz.では、法人向けの電力料金体系を透明に開示しています。上限なしの影響を受けやすい契約かどうか、一度確認しておくことが大切です。

燃料費等調整制度は、市場環境の変化に応じて各電力会社が定期的に算定諸元を見直しています。2026年時点での主な最新動向をご紹介します。
東京電力EPは2025年4月1日より、特別高圧・高圧向けの燃料費等調整制度の算定諸元を見直しました。基準燃料価格・基準市場価格の改定が中心で、電源調達および販売電力量の最新動向を反映させる内容です。この見直しにより設定された基準値が、現行制度の土台となっています。
東京電力EPは2026年4月から燃料費調整の平均燃料価格算定期間を「3か月間」から「1か月間」に変更すると公表しました。これは、同社の電源調達状況が大きく変化することを踏まえ、より実態に即した形で燃料価格を電気代に反映させることを目的とした措置です。
この変更により、燃料価格の変動がより速やかに電気代に影響するようになります。電力担当者として注意すべき点は次の通りです。
また、市場価格調整についても2026年4月より算定諸元の見直しが実施されております。2026年4月以降の契約内容や請求への影響については、東京電力EPの公式発表を引き続きご確認ください。
※参考:東京電力エナジーパートナー株式会社「2026年4月1日からの特別高圧・高圧の新標準メニューの見直し内容について」
https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/plan_h/minaoshi_2026.html
2026年1〜3月使用分の電気料金には、国の「電気・ガス料金支援」措置が適用されています。高圧供給向けの値引き単価は使用月によって異なる点に注意が必要です。
| 使用月 | 高圧供給向け値引き単価 |
| 2026年1月使用分 | 2.30円/kWh |
| 2026年2月使用分 | 2.30円/kWh |
| 2026年3月使用分 | 0.80円/kWh |
この値引きは公表単価に反映されており、プランによっては燃料費調整単価または市場価格調整単価等への反映方法が異なるため、単価の実績値を確認する際は支援分が含まれていることを念頭に置いてください。 現状は3月使用分が最後の値引き対象となっているため、4月以降の電気代増加に備えた対策を早めに検討することをおすすめします。
東京電力EPは毎月の燃料費調整単価・市場価格調整単価を公式サイト(燃料費調整等のお知らせページ)で公表しています。電力担当者は定期的に確認することで、翌月の電気代を事前に把握することができます。単価が大きく動いた月は、請求額への影響を試算しておくとよいでしょう。なお、電力会社によって燃料費等調整制度の算定方式は異なるため、現在の契約内容を東京電力EPの公式ページで確認することをおすすめします。
本記事の要点を以下の表にまとめます。
| 項目 | 燃料費調整額 | 市場価格調整額 |
| 目的 | 火力燃料の価格変動を電気代に反映 | 卸電力市場の価格変動を電気代に反映 |
| 参照価格 | 原油・LNG・石炭の貿易統計価格 | JEPXスポット市場価格 |
| 平均価格の算定期間 | 平均燃料価格 直近3か月の平均※2026年4月〜1か月に変更予定 | 平均市場価格 直近1か月間のスポット市場価格平均※2026年4月~変更予定 |
| 料金への反映 | 2か月後※2026年4月~以下へ変更予定検針日が1日の場合:当月それ以外の場合:翌月 | 約1.5か月後検針日が1日の場合:当月それ以外の場合:翌月 |
| 高圧・特別高圧の特徴 | 上限設定なし(自由料金) | 上限設定なし(自由料金) |
| プラスになる状況 | 燃料価格が基準より高い時 | 市場価格が基準より高い時 |
| マイナスになる状況 | 燃料価格が基準より低い時 | 市場価格が基準より低い時 |
☐ 毎月の請求書で「燃料費等調整額」の金額と前月比を確認しているか
☐ 現在の契約の燃料費調整単価・市場価格調整単価の算定方式を把握しているか
☐ 電力会社の公式サイトで翌月の調整単価(公表済みの場合)を定期確認しているか
高圧・特別高圧で電気を使用する法人にとって、燃料費調整額・市場価格調整額は毎月の電気代を左右する重要な変動要素です。制度の仕組みを理解することで、電気代の増減要因を正確に把握し、予算管理・コスト削減対策に活かすことができます。
また、電力会社やプランによって燃料費等調整制度の算定方式・過去の変動幅・透明性の開示度は異なります。現在の契約が自社のコスト最適化に適しているかどうかを定期的に見直すことをおすすめします。
電力プランの見直しをご検討中の法人のお客様は、伊藤忠エネクスが提供するTERASELでんき for Biz.をぜひご確認ください。高圧・特別高圧向けの電力供給について、お客様の電力使用状況に合わせた最適なプランをご提案しています。電気代の現状確認・無料診断も承っています。まずはお気軽にお問い合わせください。

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