化石燃料とは? 種類や課題、化石燃料依存から脱却する取り組みについて解説

化石燃料とは? 種類や課題、化石燃料依存から脱却する取り組みについて解説

伊藤忠エネクス メディア編集部

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深刻化する地球温暖化を語る上で、問題視される化石燃料の在り方。化石燃料は、私たちの生活を支える重要な燃料資源ですが、環境問題だけでなく安全保障や枯渇の問題などさまざまな課題を抱えています。

本記事では、化石燃料の概要や種類、直面している課題について解説します。化石燃料に依存しないために知っておきたい代替燃料についても併せてご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

化石燃料とは?

化石燃料とは、石油や石炭、天然ガスといった、地下深くを掘って取り出す燃料資源のことです。火力発電の燃料をはじめ、企業や家庭で使用されるガスやガソリンの原料など、さまざまなものに広く使われており、私たちの生活に欠かせない資源の一つとなっています。

化石燃料と呼ばれるのは、燃料資源ができる過程が化石と似ているためです。自然界の動植物の死骸は、長い年月をかけて土に埋もれ、微生物に分解されます。その過程で、地熱によって暖められたり、土や水によって圧力をかけられたりすることで、ケロジェンや泥炭、メタンガスなど燃えやすい成分に変化するのです。恐竜やアンモナイトのような化石も同様に、長い年月をかけて分解され、押さえつけられることで石のように固くなります。ただし、一般的な化石は燃えやすい成分があまりないため、燃料としては活用されません。

近年は「頁岩層(けつがんそう)」から採れるシェールオイルやシェールガス、南極や北極の海底にあるメタンハイドレートなど、新しい化石燃料の利用も検討されています。

化石燃料の種類

一口に化石燃料と言っても、さまざまな形態があります。ここではその種類について、代表的な5つをご紹介します。

石油

石油とは、炭化水素を主成分とする液体の燃料資源です。火力発電の燃料の他、ガソリンや灯油、軽油、ジェット燃料などの原料として使われます。また石油製品の一つであるナフサは、プラスチックやゴムの原料としても知られています。

石炭

16世紀の産業革命以降、広くエネルギー源として活用されている石炭は、炭素が濃集した固体の燃料資源です。火力発電やボイラーの燃料だけでなく、製鉄やセメント作りの熱源としても利用されています。

天然ガス

都市ガスの原料である天然ガスは、大気汚染の原因である二酸化炭素や窒素酸化物の排出が比較的少ない化石燃料です。-162度で冷やして液化天然ガス(LNG)にすると体積が約600分の1になるため、輸送しやすい燃料として活用されています。

シェールオイル、シェールガス

頁岩層の隙間に残っている原油や天然ガスを、シェールオイル、シェールガスと呼びます。2006年頃からアメリカで開発が進められ、近年では掘削技術の進歩により、効率的かつコストに見合った抽出が可能となりました。

メタンハイドレート

メタンハイドレートとは、メタンガスと水分子が結びついてできた氷状の物質のことで、「燃える氷」とも呼ばれます。燃焼時に排出される二酸化炭素が少なく、日本の周辺海域にもあることから、エネルギー自給率を上げる次世代資源として国内でも注目されています。

化石燃料が抱える課題

化石燃料は多くのエネルギーを得られる上、用途も幅広く、私たちの便利な暮らしを支えている大切な資源の一つです。しかし、化石燃料の使用には、さまざまな課題があることも事実です。ここでは、化石燃料を使用する上で避けては通れない、4つの課題について解説します。

地球温暖化・大気汚染

化石燃料を燃やすと化石燃料の成分である炭素と空気中の酸素が結合し、大量の二酸化炭素を排出します。二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が上がると、地球温暖化や気候変動が加速する恐れがあります。事実、JAXAの海面水温調査によると、2023年は前年と比べて海水の高温状態が続いており、過去最高の海面水温となっています。また2023年7月の世界の平均気温が観測史上最も高くなる見通しであると発表された際には、アントニオ・グテーレス国連事務総長が「地球温暖化の時代は終わりました。地球沸騰化の時代が到来したのです。」と警告しています。

さらに、化石燃料を燃やした際に二酸化炭素と一緒に排出される窒素酸化物は、大気中で硫酸や硝酸に変化し、酸性雨となって降り注ぎます。欧米では酸性雨による森林の衰退や農作物への影響がすでに深刻化しており、国際的な問題となっていることも、無視できません。

※参考:Earth-graphy . 「気候変動2023第1回:海面水温の上昇とエルニーニョ現象」 . https://earth.jaxa.jp/ja/earthview/2023/08/31/7718/ , (2023-08-31) .

環境汚染

化石燃料の採掘の際には地中深くを掘るため、周辺の自然環境に悪影響を及ぼす可能性があります。原油を輸送するタンカーの座礁などが起きた場合は、海に油が流れ出て、生態系を破壊する恐れもあります。

また化石燃料から作られたプラスチックやビニールが捨てられ海面に漂うことで、水鳥やクジラ、ウミガメなどが誤飲し、死に至るケースも少なくありません。細かく砕けたマイクロプラスチックを体内に取り込んだ魚を私たち人間が食べ、有害物質を体に取り込んでしまうという連鎖も生まれてしまうでしょう。

このように化石燃料は、さまざまな形で環境汚染の一因となってしまっているのです。

枯渇

前述のとおり、化石燃料は長い年月をかけて作られるもので、再生産までには時間がかかるため、現在使える資源には限りがあります。にもかかわらず、化石燃料の消費量は世界的に増え続けており、このペースで消費を続けていれば、いずれ枯渇してしまうでしょう。2020年末時点の各資源の可採年数は、以下のとおりです。

  • 石油:53.5年
  • 石炭:139年
  • 天然ガス:48.8年

技術の進歩により採掘量が大幅に増える、あるいは、化石燃料の代替となる次世代燃料が一般化され、化石燃料に依存する状況から世界が脱するといった大きな変化が起こらない限り、いずれ訪れる枯渇は避けられないでしょう。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)第2部 エネルギー動向-第2章 国際エネルギー動向-第1節 エネルギー需要の概要」 . https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/2-2-2.html , (2024-02-16) .

安全保障・価格変動

2023年時点の日本のエネルギー自給率は、約12%です。つまり残りの9割弱は、中東やアメリカ、ロシア、中国など海外からの輸入に頼っています。そのため、昨今のウクライナ侵攻のような国際情勢の変化が起こると、安定して化石燃料を仕入れられなくなり、燃料価格が高騰したり、最悪の場合、電気やガスの供給が止まってしまったりする恐れがあります。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁.「令和4年度(2022年度)エネルギー需要実績を取りまとめました(速報)」.https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/gaiyou2022fysoku.pdf ,(2023-11-29)

化石燃料に依存する世界

化石燃料にはさまざまな課題があるものの、世界の化石燃料の消費量は増え続けています。中でも石油・石炭・天然ガスが占める割合が大きく、全体の8割を占めています。なぜ、私たちは化石燃料に依存し続けてしまうのでしょうか。

一つ目の理由として、化石燃料の用途の広さがあります。前述のとおり石油は、燃料資源としてだけでなく、プラスチックなどの原料としても活用されています。レジ袋やストローの有料化のような動きはあるものの、それらを全く使わずに生活するのは困難でしょう。

二つ目の理由として、現代の社会インフラが、化石燃料で作られるエネルギーを前提に成り立っていることが挙げられます。電気やガスは私たちが毎日生活する上で欠かせないものであり、化石燃料に取って代わる仕組みを作るには、膨大な時間と費用がかかるでしょう。

国際エネルギー機関(IEA)の見通しによると、すべての化石燃料の需要は、2030年にピークに達するそうです。化石燃料が枯渇する前に各国が協力し、依存から脱却する取り組みを行うことが必要です。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁 . 「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)第2部 エネルギー動向-第2章 国際エネルギー動向-第1節 エネルギー需要の概要」 . https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/2-2-1.html , (2024-02-19) .

※参考:IEA . 「World Energy Outlook 2023 – Executive summary」 . https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2023 , (2024-02-19) .

化石燃料依存から脱却する取り組み

1992年、地球温暖化防止のための国際的な枠組みとして「気候変動枠組み条約」が採択され、1994年に発効されました。そこから毎年198の国や機関が参加する国際会議(COP)が行われており、政府・学者・NGOらが気候変動に関する議論を行っています。

2023年11月にドバイで行われたCOP28では、2015年のパリ協定で定めた、世界の平均気温上昇を工業化以前に比べて1.5度に抑えるという目標の実現へ向けて、「化石燃料からの脱却」が合意されました。さらに2030年までに再生可能エネルギーの容量を3倍にすることや、省エネ改善率を2倍にすることも取り決められ、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使った発電にますます注目が集まることが予想されます。

私たち一人ひとりが取り組める脱化石燃料のアクションとしては、次のようなものが挙げられます。

  • エネルギーの消費をなるべく抑える(エアコンの温度設定を工夫する、遮光カーテンを利用するなど)
  • ZEH住宅に住む
  • プラスチック製品を大切に使う(リサイクルに出す)
  • 植物由来の代替製品を積極的に使う
  • 再生可能エネルギーで発電した電気を積極的に活用する

一つのアクションの効果は小さくとも、行動に移すことで、脱・化石燃料に貢献できるでしょう。

化石燃料以外の燃料

サイモン・スティル気候変動条約事務局長は、COP28閉幕時に「ドバイで、化石燃料の時代に終止符を打つことはできなかったが、今回の合意は化石燃料時代の終わりの始まりだ」と述べています。化石燃料依存から脱却するためには、"再生可能エネルギーをはじめとした次世代の非化石エネルギーをいかに取り入れるか"が鍵を握るでしょう。ここでは、代表的な非化石エネルギーをご紹介します。

バイオ燃料

バイオ燃料とは、再生可能な生物資源(バイオマス)を原料にした代替燃料です。植物性の油で作るバイオディーゼル燃料や、食用と競合しない廃食油や廃動植物油が原料のRD(リニューアブルディーゼル燃料)、家畜の排泄物や生ごみなどを発酵させて作るバイオガスなど、原料も製造方法もさまざまです。

これらの燃料も燃やすと二酸化炭素を排出しますが、原料となる植物の成長過程で二酸化炭素を吸収しているため、排出量はプラスマイナスゼロになると考えられています。またRDのようにエンジンや発電機を改造することなくそのまま使用できる代替燃料は、早期導入がしやすい燃料として注目を集めています。

伊藤忠エネクスのリニューアブルディーゼル

核燃料

核燃料とは、原子力発電に使用するウランやプルトニウムなどのことです。核分裂の際に発生する膨大な熱エネルギーで水を水蒸気に変え、タービンや発電機を回して発電します。燃料の製造や発電所の建設時に二酸化炭素の排出があるものの、燃焼時に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化防止の策としての期待が高まっています。

合成燃料

合成燃料とは、二酸化炭素と水素を合成して作られる燃料のことです。「人工的な原油」といわれているとおり、石油や重油の代替燃料としてジェット機や車、タンカーなどへの活用が検討されています。天然ガス由来のGTL燃料は、実際に建設機械の代替燃料として使用されています。

伊藤忠エネクスのGTL燃料

SAF

SAFとは「Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)」の略で、バイオマス由来の原料や飲食店などから出る廃食油、ごみなどを活用して作られる航空用燃料です。バイオ燃料と同じく、ジェット機から二酸化炭素を排出しても、SAFの原料となる植物が光合成の際に吸収するため、一方的に二酸化炭素を排出する化石燃料と比べると、80%もの二酸化炭素削減効果が期待できます。

まとめ

化石燃料は長い年月をかけて作られる有限の燃料資源です。産業革命以降の、経済発展や豊かな暮らしの大切な動力源として欠かせないものではあるものの、二酸化炭素や窒素酸化物などの排出による地球温暖化や大気汚染、採掘や輸送時の環境汚染、枯渇、エネルギー安全保障など、化石燃料を使い続けることにはさまざまな問題があります。

化石燃料に依存しない社会を作るには、科学技術の発展と同時に、私たち一人ひとりができることからアクションを起こすことが大切です。

伊藤忠エネクスは、RDやGTL燃料をはじめとした次世代代替燃料の開発・提供を積極的に行っています。また太陽光発電事業やバイオマス発電事業などを通じて、グリーンエネルギーへの移行もお手伝いしています。脱化石燃料、脱炭素経営を目指す取り組みにご興味をお持ちの企業のご担当者さまは、ぜひお気軽にご連絡ください。

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